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八月一〇日――真夏である筈の今現在だというのに東京はまるで真冬の如く凍り付いている。
この不可思議現象がデジタルワールド由来である事は
「くっ! どうなってるの?」
「判らないわ! 見た目には多分だけど兄さんのグレイモン。青いからウィルス種なのは確かよ」
「だけど、あのグレイモンは間違いなく私達の知るグレイモンじゃない」
ウィルス種だからとかでは無い、姿が若干ながら異なっていた。
「同じ成熟期の筈なのに、この私が手も足も出ないなんて!」
「テイルモン!」
彼女は白猫みたいなファンシーな
グレイモン(青)も成熟期、単純な進化形態自体は同等な筈だが、あのグレイモンは余りに強い。
「グギャァァァアアッ!」
暴れるばかりのグレイモン(青)、テイルモンが得意技のキャッツアイを使っても、必殺技である猫パンチを使ってもビクともしなかった。
彼女はテイルモンのパートナーの八神ヒカリ、兄――八神太一のパートナーデジモンのアグモンが進化すれば、確かにグレイモンである。
然しそれはワクチン種、即ち橙色の表皮を持ったグレイモンの筈だ。
嘗て望まぬ暗黒進化で、スカルグレイモンだったり青いメタルグレイモンに超進化をしたけど、通常の進化でウィルス種には成らない。
詰まりアレは、兄のアグモンとはまた別の個体の筈だった。
息を吸うグレイモン(青)。
「メガフレイムッ!」
「拙い、ヒカリッ!」
テイルモンはヒカリを庇って無理矢理に遠くへと動かす。
「キャッ!」
「うわぁぁぁぁぁっ!?」
「
そんなヒカリとテイルモンを庇う様に結晶で出来た障壁が展開、それはユートの技では無いけど使える様に視たし、修練もしてたからこそ。
「だ、誰?」
「大丈夫か?」
「え、はい……」
ユートの言葉に頷くヒカリ。
メガフレイムを完全に防いだユートは懐の内側から縦長な黒い機器を取り出し、バッと右手に持った機器を前に突き出しながら叫んだ。
「リアライズッ!」
それは形こそ違えど、ヒカリがもっている物と同じデジヴァイスだ。
だから光が放たれて顕現したのはデジモンで、薄い紫に近い灰色をした哺乳類、目付きが鋭くて兎みたいな長い羽っぽい耳を持っている。
「あれは、ガジモン?」
ウィルス種で成長期の哺乳類型のデジモンであり、ユートが【テイマーズ】の世界にてパートナーと成ったデジモン、元は四聖獣と呼ばれている神にも近しい力を持った連中が、人間界に送り込んだエージェントとしてのドーベルモンが退化をした存在でもあった。
「ガジモン、X抗体発動っ!」
「
進化と云うが、成長期のガジモンである事には変わらないらしい。
「ガジモンの侭だけど、姿が結構変わってる?」
呟くテイルモン。
「それってまさか、あのグレイモンと同じで?」
ヒカリは両手で口を押さえながらも叫んだ。
「そうだ、あのグレイモンもガジモンと同じくでX抗体デジモンだな。故にX抗体からガジモンXだとか、グレイモンXだと呼んでいるな」
X抗体のデジモンは通常の進化形態より強い。
例えば、同じグレイモンでも矢っ張り通常体とX抗体ではある程度だが強さが違う、流石に世代が一つ上の完全体という程では無いけど。
仮に成熟期と完全体に一〇倍の差があるのだとして、少なくとも六割から七割くらいには成るのではなかろうか? 故にこそテイルモンが全く敵わなかったのだから。
飽く迄も概算でしかないが……
だからガジモンXがXー進化したのだとして、それでも同じX抗体デジモンであるからには勝てない。
「目には目を、歯には歯を、なら成熟期には成熟期をだっ!」
グッと右手を握り締めると、黄金に輝きを放つモザイクみたいな光が顕れて、ユートはこの光を自身のデジヴァイスの上部へ叩き付ける。
モニターには静かに[EVOLUTION]の文字が浮かんでいた。
「デジソウル……チャージッ!」
「ガジモン……Xー進化ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
特殊なX抗体がドクンと脈打ち、0と1の情報が爆発的に増加、元のガジモンの
「ドーベルモンXッ!」
ドーベルモンで間違いなかった、だけどそれは矢張り通常の個体では無くてX抗体デジモンだ。
即ちそれはドーベルモンX。
「征けっ、ドーベルモンX!」
「往っ!」
ビッと指差して指事出しをしたユートに対して返事をすると、ドーベルモンXは四本足で駆け出してグレイモン(青)Xに向かっていく。
「メガ……」
対抗するべく再び息を吸う。
「グラオ・レムルッ!」
だが、既に準備をしていたドーベルモンXには及ばず、先に攻撃を喰らってしまった訳だけれど何故だかダメージを受けていない。
「フレイムッ!」
だから構わずメガフレイムを吐き出そうとしたものの……
「っ!?」
メガフレイムは発動しない。
グラオ・レムルは敵の能力を封印してしまう、完全体や究極体には効き難いけど同じ成熟期なら話は別。
「グオオオッ!」
ドーベルモンXは自慢の牙でグレイモン(青)X抗体の首に噛み付く。
「ギィィヤァァァァッ!?」
X抗体に進化すると、ドーベルモンは唯でさえ荒かった気性が更に狂化のレベルで荒くなる。
ユートのパートナーデジモンのドーベルモンは理知的且つ理性的だったが、X抗体を獲た事によって可成りその気性が荒くなってしまった。
狂暴性が増したという訳だ。
「コイツでトドメだぁぁぁぁっ! シュヴァルツ・シュトラールッ!」
「ウギャァァァァァァァァッ!」
闇色をした破滅の光が、グレイモン(青)Xを貫いて
「ふぃ~」
「ふぅ、討伐完了だ」
ユートが溜息、ドーベルモンXも小さな溜息と同時に呟く。
そして元のガジモンに戻った。
「良し、戻ってくれ」
「待った」
「どうした?」
「俺が一旦、辺りを見回って何が起きているのか探ってみたい」
探索はいずれにしても不可欠で、ユートは頷いてガジモンの好きに行動をさせる事にする。
「じゃあ、頼んだ。デジタルフードを渡しておくから、休憩がてら食べて探索をしてくれ」
「了解だ!」
Xプログラムに対抗するX抗体、然しX抗体を獲てしまうとこれをを喰らおうとしてしまう。
危険な抗体だから安易に獲ては成らないモノ。だからこそユートもX抗体の改良をして与えた。
野生を縛る理性は要らないけど、過ぎた野生は世界を壊し兼ねない。
「大丈夫か?」
「は、はい……」
「ふむ、右の脚から血が出てるな。治療をしないとな」
先ずは血を綺麗な水で脚の傷の周囲を拭って、消毒をしてから薬を塗って傷をパッドで塞いでやったら、包帯が外れない程度に巻いてやる。
「これで良しだな」
「あ、有り難う御座います」
笑顔にて御礼を言おうとしたのではあろうが、青褪めた表情で苦笑いに成りブルリッと震える。
先程の命懸けな逃避行、それに加えて真夏の筈がこの雪景色であるが故の薄着、これでは仕方が無いか。
何よりもう夕方だ、何処か安全な場所で休んだ方が良さそうだった。
ユートはアニマアニムスを開く。
其処はユートの精神世界、暖かい気候や涼しい気候、それに住み易い邸も建築が成されている。
水や大気の循環、自給自足も叶うこの中に居れば仮に宇宙が滅亡したとしても生き延びられる、とはいえ木星圏の星帝ユニクロンに住んでいれば間違いなく、宇宙が消えて再び発生するくらいの全てが循環をしても生存が可能と成っていた。
「こ、此処は?」
「アニマアニムス、僕個人の精神世界に創られた異世界だ。ある意味で
「そ、そうなんだね」
この世界がユートの精神世界であるからには、自身の頭に思い浮かべれば何処にでも行けよう。
「まるでお城だね」
瞬間転移で連れて来られたのは江戸城みたいな和風の城、勿論だけど内部は空間湾曲技術を駆使しているから、その見た目より遥かに広い。
「和風の城が良かったか?」
「え? いえ、和風で良いです」
取り敢えずだが、ヒカリは城に拘りは無かったみたいで、洋風で無くとも構わなかったらしい。
「そういえば未だに名前を名乗っていなかった、僕の名はは緒方優斗、パートナーはガジモンだ」
「あ、私は八神ヒカリ。パートナーはこのテイルモンです」
ユートとヒカリは、御互いに握手をしながら名乗り合う。
「先ずは治療を本格的にしよう」
「治療を?」
「痛かろう?」
「それは……確かに……」
実は、脚の痛みの所為で庇って歩いていたからか、疲労が脚にキていてプルプルとしていた。
「茶々一号」
「はい、主様」
パンパンと手を叩きつつ呼ぶと、奥から現れたのは翠髪をポニーテールに結わい付けている和服の美女、だけど人間っぽく無い表情である。
「茶々一号、彼女を治療ルームへと連れて行ってくれるか?」
「了解致しました」
一礼をしてヒカリを横抱きにして連れて行ってしまった。
「あ、ヒカリ~ッ!」
「あう~、テイルモ~ン!」
パタパタと、慌ててテイルモンが追い掛ける形で駆けていく。
「茶々二号、夕飯を頼む」
「判りました」
深々と一礼をしたのは、先程の茶々一号と全く同じ顔をした女性。
彼女達こそ量産型茶々丸。
戦闘も家事炊事も救護も、夜伽の御相手までも仕事する事が出来る。
救護室に連れて来られたヒカリ、傷は出血も収まっていた事もあって、ヒールカプセルに容れて治療を行う事になったので治療は直ぐだ。
ヒールカプセルは昔に造ったポッドをダメージ治療に特化した物、ダメージの治療に特化させ、病への治療やハイバネーション機能のオミットをする事で、ダメージ治療はより短時間且つ効果的に行える様に。
それ故に、ヒカリも極短時間で完治する筈だ。
「テイルモン様もどうぞ」
「え? だけど……」
「デジモンであっても治療は叶いますので、問題はありません」
「そ、そうなの?」
治療をする相手は、アンデットとかでも無い限り選ばない。
デジモンであっても、肉体的な組成のデータが入力成されていれば、ちゃんと治る様に造られている。
テイルモンもヒールカプセルに入って数分ご、無事にどちらも治療が完了をするのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
茶々二号が作ってくれた夕飯だ、これをユートもヒカリもテイルモンも確りと食べている。
電脳食も有るけど、デジモンも普通の食事を摂れるのだから、食べさせせない理由なども無い。
「「「御馳走様~」」」
食べ終わった二人と一体は御茶を飲んでおり、食休みであるとばかりにユートはヒカリと会話を始める。
話題は先の闘いに関して。
「何故、テイルモンを進化させなかったんだ? グレイモン(青)Xは確かに通常のグレイモンよりは強いが、テイルモンを完全体のエンジェウーモンに超進化させれば、闇のデジモンじゃ無いとはいえ斃せた筈」
「私も進化をさせようとはしたの。だけど何故かアーマー進化は出来たけど超進化は出来なくて」
「……何?」
見た目に高校生なヒカリ、ならばデジモンカイザーは既に存在していないし、ダークタワーだって今や有り得ないだろう、詰まりアーマー進化が出来て通常進化が出来ないなんて成り得ない。
それが有り得るのなら、ダークタワーが存在している事になる。
「ただ、ネフェルティモンに進化しても敵わなかったのよ」
テイルモンが俯きながら呟いた。
「グレイモン(青)Xが我が物顔で歩いていたが、X抗体デジモンは今まで出てきた事は有った?」
「無かった」
「そうね、私もデジタルワールドで見た事が無かったもの」
ユートからの質問を受けるけど、ヒカリもテイルモンも首を振る。
「Xプログラムが、デジタルワールドやリアルワールドに撒かれた?」
「エ、Xプログラム?」
「デジモンを削除するプログラム、それがXプログラムだ」
「デ、デジモンを削除!?」
「そして問題なのは、誰がばら撒いたのかが問題になるんだよな」
「ばら撒いた誰かって?」
「さて? 果たして
聖騎士型デジモンが二体、ならばイグドラシルも居るのかも知れないし、少なくとも恒常体が支配しているのは間違いが無い筈だろう。
恒常体は名前の通り恒常性を保つ存在であり、恣意的に動いて何かを仕出かすとも思えない。
ユートが最初に行ったのは【デジモンテイマーズ】の世界、最初に事を起こしたのは四聖獣の一つであるスーツェーモンで、
その後は真の敵のデ・リーパーとの決戦に移行したし、究極進化に必要なテイマーのデータ化をするのに必須なプログラムを届けている。
それをレッドカードに落とし込んだのは人間の科学者集団だが、デジタル・グライドが無ければ松田タカト達が究極進化が叶わなかった。
「恒常体は名前の通りに恒常性を守る筈だから、こんな大規模な変革を無理矢理には起こすまい。四聖獣は神に近しいとは云われても、デジモンの究極体である事には変わらんのだから、Xプログラムをばら撒けば自滅する。となると七大魔王というのも有り得るか? 否、この世界の七大魔王はデーモンが既に居なくなっていた筈だよな?」
ならば、恒常体とは違うプログラムなのか? 違う気がするが? イグドラシルが遣るとしたら下手すると、ロイヤルナイツが反逆しそう。
(そういや【デジモンセイバーズ】の世界では、実際にイグドラシルの奴が動いたんだったよな。別の世界だと実際にXプログラムをばら撒いたんじゃなったかね?)
だけど果たして、この【デジモンアドベンチャー】の世界にもイグドラシルが存在するのか?
それが判らない。
「八神は――」
「ヒカリで良いよ、私も優斗君って呼ばせて貰うから」
「判ったよ、ヒカリ。それで、君達は“イグドラシル”という名前を聴いた事はあるか?」
「うん、あるよ」
どうやら【デジモンセイバーズ】と同じ様に、デジタルワールドの神を名乗っていたイグドラシルが存在しているらしく、ヒカリは頷いた。
「矢っ張り居るのか。そうなるとイグドラシルが黒幕という可能性も」
「そ、そんな……」
「イグドラシルはデジタルワールドのホストコンピューター、その存在としては“神と”して自らを任じているんだ。そして一三体のロイヤルナイツを従えてもいる」
「一三体のロイヤルナイツ……?」
「アルファモン、ガンクゥモン、アルフォースブイドラモン、ロードナイトモン、エグザモン、ジエスモン、ドゥフトモン、デュークモン、スレイプモン、クレニアムモン、マグナモン、オメガモンの全一三体の事だな」
「オメガモンとマグナモン……」
ヒカリは【デジモンアドベンチャー02】の頃、ブイモンが“奇跡のデジメンタル”でアーマー進化したマグナモンを見ており、更にそれより前にの時期には、ウォーグレイモンとメタルガルルモンの二体が合体したオメガモンを見ている。
尚、オメガモンは唯の合体と称される訳だが、ユートの認識ではジョグレス進化と成っていた。
オメガモンが登場したのが【デジモンアドベンチャー02】の前で、建前上ではジョグレス進化が未登場だったからに他ならないのだろう。
当時のデジモンあるあるだ。
デジモン同士の合体でオメガモンの誕生からのジョグレス進化、デジモンとテイマーの融合進化からのスピリットエボリューションなど。
「兎に角、成長期のXデジモンならテイルモンでも斃せるだろうけど。元よりテイルモンは闇のデジモンには兎も角としても、通常の相手にはちょっと非力だからな。流石に成熟期には敵うまいよ。君が超進化を出来れば良いんだけどな」
テイルモンを見ながら言う。
「……そうね」
俯くテイルモンは、ちょっと困った表情に成ってしまった。
「そういえば、優斗さんのデジヴァイスは私達のとは違うみたい」
「これか?」
「あ、はい」
黒いというか闇翠のデジヴァイスを取り出す。
「これは“デジヴァイスic”だ」
「デジヴァイスic?」
コテンと小首を傾げるヒカリ。
「人類が造ったデジヴァイスでね、通常のデジヴァイスやDー3とは違って、人間の電子科学力で造られているんだ。ああ、正確にはデジヴァイスバーストに進化してるけどな」
デジヴァイスicがフルチャージを越えたオーバードライブは元より、デジソウルバーストにも耐え得る為に使い手のデジソウルで進化した。
それがデジヴァイスバーストだ。
「ひょっとして、優斗君のデジソウルというモノを使えば進化が出来るの? 私のはDー3なんだけれど」
「いや~、Dー3ならデジメンタルアップの要領で可能かもだが、ヒカリがデジソウルを持たないからな。残念ながら、デジソウルチャージも出来ないんだろうから」
「そ、そうですね」
「まぁ、与える事は可能だけど。それはちょっとアレだからな」
「……?」
ユートはヒカリの額に人差し指をちょんと当ててやる。
ビクリッと肩を震わせると、忽ち顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「え、あれ? あ、あんな事を……? はうう」
プシュ~ッ! 瞬間湯沸し器の如く湯気を出したヒカリ、モジモジと内股に成りながら擦り付けユートの方をチラチラと見遣った。
幻朧拳――伝説の魔拳たる幻朧魔皇拳の謂わば下位互換、これは単に幻覚を視せるだけの技でしかない。
似た技に鳳凰幻魔拳が在るけど、これは相手の精神をズタズタにする奥義で、だいたいはトラウマに成りそうな事象を視せ付けるモノ。
幻朧拳の上位互換の幻朧魔皇拳は相手の精神を揺さぶり、半催眠状態にして命令を下す事によって操作してしまう秘奥技に相当する業。
どちらかと云えば、
ユートが先程、ヒカリに対して行ったのは可成り手加減した幻朧拳、ヒカリがデジソウルを獲るのに必要な行いを脳裏に映し出したのみ。
未だ未通なヒカリからしたなら、刺激が強過ぎる映像であった様だ。
勿論、視せたのは
「もう一つ有るな」
「もう一つですか?」
「Xプログラムに感染し、Xー抗体を使う事で
「Xー進化を?」
何故かXー進化していないけど、Xー進化すれば間違いなく同じ世代の中でも強くなれる筈だ。
「でも確かXプログラムはデジモンを削除する為のモノよね?」
「そうだが? テイルモン」
「感染したら私が消えてしまわないのかしら?」
「所詮はウィルスみたいなもんだ、その可能性は有るだろうな」
「そうよね」
一応、パートナー持ちのデジモンは内部構造が強いからか、Xプログラムに感染をしていない。
だけどそれが逆にXー抗体を生み出す素地を獲られておらず、結果的に同世代の筈のXデジモンに敗けるというジレンマを懐く事になった。
「……優斗君」
「どうした?」
「あ、あんな話をしたって事は、私の事をそういう風に視てるの?」
「まぁ、君がテイマーじゃないか。パートナーに成った頃なら食指も動かんけどな。今の君であれば普通にそういう目で視れると思うぞ?」
「そ、そうなんだ……」
嘗て、初めてデジタルワールドからの干渉が起きた冒険譚、その時に八神ヒカリはデジタルワールドに喚ばれ損なっていたが、リアルワールドに戻った際にテイルモンとの出逢いからデジヴァイスの取得、それによりパートナーと成っている。
そしてパートナーデジモンと成ったテイルモンは超進化し、エンジェウーモンという完全体にまで成れてはいたけれど、この冒険の最中では究極体には進化が出来なかった。
まぁ、【デジモンアドベンチャー02】に於ける劇場版でホーリードラモンに進化しているけど。
進化が出来るというのは強い個体であるという事であり、それが巡り巡ってXー進化が出来ないという結果に繋がるのだから皮肉なものだ。
「優斗君……今晩、貴方のお部屋にお邪魔をしても良いですか?」
「ヒ、ヒカリ!?」
「大丈夫だよ、テイルモン」
驚きに慌てふためき、猫目を見開きながら叫ぶテイルモンに、ヒカリは苦笑いを浮かべている。
「僕は嬉しいから構わないけどな。本当に構わないのか? 割りと遠慮なんかはしないと思うぞ」
「は、はいっ!」
息を呑んで真っ赤に成った。
「あ、あ、あのっ! 御風呂を戴いても良いでしょうか?」
「良いよ。着替えは茶々三号にでも借りてくれ。今着ている服は此方側で洗濯をしておくからさ」
「わ、判りました!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
一時間後、ユートが自室で自らのデジヴァイスicとDーアークを取り出して磨いており、ヒカリが勇気を持って部屋に入ってくるまで待つ。
こう見えてユートは遥かに遥かな大昔の前々世の時ならいざ知らず、今なら少しだけにせよ異性の考えが
暫く待つとコンコンとノック音。
「入って良いぞ」
「し、失礼します」
ガチャッと扉が開いて入ってきたのはヒカリ、着ているのは超が付く程に薄いネグリジェだ。
しかもその薄さは肌の色すら見えてしまう程、スケスケでそれこそ股座の毛の色や薄い胸のピンクの突起すらも、寧ろ裸よりも恥ずかしい。
「お、お願いします……」
ヒカリは、モジモジしながら消え入る様に言葉を呟いた。
三時間後、布団に包まったヒカリがユートの腕に頭を乗せている。
真っ白なシーツには点々と赤黒い染みが落ちており、更にはベッドの上で暴れたかの如く乱れていた。
それから朝に成って二人は起き出して朝餉を摂る事にする、そんな最中にも余程に恥ずかしかったのか、頬を真っ赤に染めつつ俯いている。
「昨夜の遅くにガジモンが偵察から帰ってきた」
「えっ!?」
「どうやら今の処は暗黒デジモンの介入は認められていない。それとXデジモンは単純に彼方側、詰まりはデジタルワールドの心算で動いているみたいだ。誰かに操られている訳でも無さそうで、無意味に殺害するのも違うかも知れんね」
「そ、そうなんだね」
【デジモンアドベンチャー02】で当初はデジモンカイザーに操られたデジモン、それを倒す為には本体を殺すのでは決して無くて、付けられていたイービルリングやイービルスパイラルを破壊する事で行い、デジモンカイザー撃破後はダークタワーデジモンを討ち果たすだけだった。
デジタルワールドから迷い出ただけのデジモンの場合、デジタルゲートを開いて向こうへと送り返すという作業を行っていたものである。
詰まり、余り殺してはいない。
ヒカリとしても別にデジモンが憎くて憎くて仕方が無く、『絶対デジモン殺すマン』に成りたいという訳でも無い、だから死なせずに済むのならそれに越した事は無いのだ。
「一応だけどチンロンモンにも確認したらしい、ひょっとしたらスーツェーモンがやらかしたのかもって。話した結果、四聖獣も違ったな」
彼方側のチンロンモンと此方側のチンロンモンは別の個体、世界が違うのだから当たり前なのだけれど、それでも世界が近いからかチンロンモン同士で話し合えるらしく、それを以ての伝手としてチンロンモンに連絡をしてみたのだとか。
「暗黒デジモンの関わりは見られなかったとは言ったが、デジタルワールドのホストコンピューターでも四聖獣でも無い。或いは別の超越デジモンの可能性も有るが、三大天使デジモンはテイルモンやパタモンが究極進化したセラフィモンとオファニモンと、それにロップモンが究極進化をしたケルビモンだからな。他にはオリンポス一二神なんてのも在るが、この世界では未確認なんだよ」
ユートのパートナーデジモンたるガジモンも、オリンポス一二神に近しい神人型に進化をする。
ガジモンX→ドーベルモンX→ケルベロモンX→アヌビモンXがデジヴァイスicでのルートで、ガジモン→ドーベルモン→ケルベロモン・ジンロウモード→プルートモンがDーアークのルート。
【デジモンテイマーズ】の世界、先ずデジモンカードゲームで遊んでいたが、デジモンがリアルワールドにという流れは全く同じものだった。
デジタルワールドでは、パートナーが居なかったユートは普通に素手で闘ったり、自らが進化をして闘ったりしていた訳だが、ドーベルモンが送り込まれた際に契約し、デジタル・グライド化して消滅する筈だった彼をパートナーに。
その世界の仕事も終わって暫く、牧野瑠姫とも仲好くしていた上で、ドーベルモン関係でアリス・マッコイとも仲好くして暮らしていたが、新たに【デジモンセイバーズ】の世界へと航る事になる。
そちらではDATSに藤枝芳乃と接触して彼女を通じて協力、時空間移動でDーアークが壊れてしまった為にデジヴァイスicを手にし、ガジモンをデジソウルチャージで進化させて闘っていった。
尚、最終的にはDーアークも修復が完了して、この頃にはガジモンとのパートナーシップも充分に成り、究極進化をしてプルートモンに。
更に【デジモンフロンティア】の世界を始め、幾つかデジモンの世界に航ったユートはこうして【デジモンアドベンチャー】の世界に来た。
まぁ、原典の時間軸では無かった訳なのだが。
「さて、行こうか」
「うん」
ユートとヒカリはそれぞれガジモンとテイルモンを連れ、腰には己れのデジヴァイスを装着してアニマアニムスを出て、真夏で真冬な銀世界へと駆け出すのであったと云う。
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