【魔を滅する転生○】シリーズ外伝噺集   作:月乃杜

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 『遥けき彼方の物語シリーズ』は、噺はある程度だけど作ったものの、連載してはいないモノを序章っぽく書いたり一部のみを抜粋したり試しに書いたりしたものを、ちょっとだけ形にした短編集? です。

 第一段はスーパーロボット大戦OGsから。

 ヒロインっぽく三人の媛として、クスハと彼方側のラトゥーニとミズホを出してみました。





遥けき彼方の物語1『勧誘される機神の媛達』

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 新西暦の時代。

 

 西暦が二〇一四年頃を境に終わり、既に百数十年が経つこの世界。

 

 ある種の人間ならばこう呼ぶ──【スーパーロボット大戦OG】の世界と。

 

 その中でもこの世界は、所謂処のシャドウミラーと云う組織が地球連邦を離反して、テロリストとしての──というか革命戦争を起こした世界である。

 

 ヘリオス・オリンパスによるテスラ・ライヒ研究所での転移実験、アーチボルト・グリムズによるエルピス事件の顛末の差違など、本来の舞台となるであろう世界とは多少ながら異なる結果を残していた。

 

 特に異星人の襲撃に関しては、彼方側に現れたのがエアロゲイターだというかバルマーだが、此方側では監査官(インスペクター)と名乗る者達。

 

 そんな世界に降り立ち、ユートは未だにインスペクター事件の傷痕が癒えない時期を利用し、軽く財団法人【OGATA】を設立すると、【超技術(チャオ・テクノス)】をいつも通りに置いて色々と開発などを行っている。

 

「機体開発に有望な人間を捜さないと……な」

 

 ユーキを喚べないから、取り敢えず葉加瀬聡美やら超 鈴音──緒方鈴音──を喚んで開発をさせてはいるものの、やはり圧倒的に手が足りていない。

 

 新しい財団故に信の置ける者は少なく、新たな人材の発掘に余念はなかった。

 

 そんなある日、見付けたのが一人の少女である。

 

 極めて赤み掛かっているピンクの髪の毛、菫色の瞳に帽子とゴーグルを身に付けてツナギを着て技術者ですと主張する姿。

 

 ユートは知っている。

 

 ユートは識っている。

 

 少女の名前はミズホ・サイキと云い、とある理由からレスキューマシンの開発をしたがっていた。

 

 然し現実は甘くなかったのか、自分の理想を果たす職場を得られてはいないらしく溜息を吐き、世の無情を嘆いていたのだ。

 

 これはハッキリ言ってしまうとラッキー、ミズホに接触をするには充分な理由となる。

 

 原作通りに為れば最終的にエクサランス・ライトニングフレームや、エクサランス・エターナルフレームを造り上げているだけに、彼女の有能さは理解が出来ているのだから。

 

 日本人? らしく名前は斉木瑞穂と書くが、OGな世界では普通にミズホ・サイキとなっている。

 

 だからユートも緒方優斗ではなく、ユート・オガタとなる訳だ。

 

「やあ、初めまして」

 

「──は、い?」

 

 行き成り話し掛けられて驚いたのか、ちょっと間抜けな返しになるミズホ。

 

 ナンパにしか見えないし聞こえないユートの語り、当然ながら引っ込み思案な気があるミズホは若干引いており、窺う様な風情で見つめてきている。

 

「さっき君は彼処のビルから出てきたけど、就活か何かをしているのかな?」

 

「えっと、そうですが……それが何か?」

 

「あの会社は簡単な人型の機動兵器を造ってたかな。そういうものに興味があるのかな?」

 

「ち、違います! 私が造りたいのはレスキューマシンなんです!」

 

「ほう、レスキューマシンをねぇ……」

 

 インスペクター事件も終わったが、ビアン・ゾルダーク博士が提唱した異星人による脅威が現実となった以上、敵を斃せないマシンなぞ開発はさせてくれはしないだろう。

 

 で、あるからには兵器を開発する会社で『レスキューマシンを造りたいです』と言って採用はされない。

 

 会社の是に従えないなら要らないという訳だ。

 

 当たり前の話であるが、ミズホとしてはやはり納得がいかないのだ。

 

「造りたいならウチで造らせて上げるけど?」

 

「ウチ……?」

 

 童顔で隠れきょぬーでもあるミズホ、そんな彼女が小首を傾げる仕草は割かしクるものがある。

 

「ああ、此方側のオーダーさえきちんと熟してくれるのなら、レスキューマシンを造ろうがどうしようが、自由にしてくれても良い。勿論、必要なら資金や資材は用意もする」

 

「オーダーですか?」

 

「当然、機動兵器を造るというものになる。だけど、さっきも言ったレスキューマシンの製作にも最大限に配慮をする」

 

「……」

 

 成程、聞くだけなら確かに美味しい話。

 

 とはいえ、ミズホもバカではないのだから行き成り降って沸いたこの話に飛び付いたりはしない。

 

「貴方は何処かのメーカーと関係が? 見た感じ私と大して変わらない年齢に見えるのですが……」

 

「財団法人【OGATA】の代表取締役。トップだと思ってくれて構わない」

 

「……はい?」

 

 それはミズホもよく知る財閥、インスペクター事件の混乱の最中に頭角を顕してきた所だ。

 

 その財閥のトップだと名乗るのが、なんと自分とは殆んど年齢が違わないであろう青年。

 

 驚くしかない。

 

「だからこそ、僕は君へとそんな環境を用意する事が出来るんだ」

 

「……わ、私は!」

 

 幾ら何でも即断即決という訳にもいかず、ミズホは顔を上げて叫びそうになるものの、困った表情となって固まってしまう。

 

 だけど、ユートが見る限りでは後一押しで考えが固まりそうな雰囲気を持ち、故に最後の言葉を告げた。

 

「僕は君(の腕)が欲しい。だからミズホの全てを僕(の会社)に捧げてくれたら嬉しいな」

 

 ピシリッ!

 

「あ、あう……あう?」

 

 少し慌てた事もあって、〝ちょっと〟言葉が不足しているきらいはあったが、ユートは間違いなく嘘偽りの無い口説き文句を言う。

 

 途端に真っ赤になって狼狽えるミズホ、しどろもどろになりつつも最終的には『は、はい……こんな私で良ければ宜しくお願いします』と返事をして、翌日には【超技術(チャオ・テクノス)】の技術顧問である緒方鈴音と技術部長を務めている葉加瀬聡美に引き合わされ、正式に【OGATA】へと参入をした。

 

 ミズホは機動兵器を造る傍らで、ユートとの契約通りレスキューマシンの設計にも力を入れ、試作をしたそれらを民生品として販売を開始し、その後に腕を見込まれてユートが懇意にしていたとある研究所に出向をしてその結果、暫くの間はユートと離れる事になってしまう。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 新西暦191年

 

 巨大な人型が倒れる。

 

 それは人型機動兵器と呼ばれるカテゴリーであり、その中でもPT──パーソナルトルーパー──に属する機体だった。

 

 機体名はSRX。

 

 【究極汎用戦闘一撃必殺型パーソナルトルーパー】──正式名称は【Super Robot X-Type】、普段はPTとして所謂処のリアル系の機体として活動をするが、必要だとあらば合体(ヴァリアブル・フォーメーション)してスーパー系の機体となるという、欲張りなコンセプトの元に製作をされた試作機である。

 

 試作機とはいえ、異星人の侵略に対して牙無き者の牙として、力無き者の盾となり戦い抜いた機体だ。

 

 それがアッサリとズタボロにされ、パイロットは叫ぶ事しか出来なかった。

 

「何でだ、何でこんな事をするんだ!? こんな破壊になんの意味がある!」

 

 それは味方の筈の敵。

 

 同じ地球連邦軍に所属しており、部隊こそ違っても決して殺し合う相手ではなかった者だ。

 

 連邦軍特殊鎮圧部隊【ベーオウルブズ】……

 

 ゲシュペンストMk−Ⅲを隊長機として、量産型のゲシュペンストMk−Ⅱが付き従う、味方すらも巻き込んで後には破壊しか残らない部隊である。

 

 そのゲシュペンストMk−Ⅲの右腕に仕込んだ杭打ち機、リボルビング・ブレイカーがSRXのコクピットを貫く。

 

 パイロットのリュウセイ・ダテは死亡して、世界は大きな混沌に包まれた。

 

 然れどこれは歴史通り、何者の介入も存在しない。

 

 起こるべくして起きた、謂わば必然の破滅。

 

 そんな戦場跡に降り立つ蒼い機体。

 

「これは……噺では知っていたけど凄まじいな」

 

 黒い機体のパイロットらしき少年は、鉄と油塗れの大地に降りて生存者が居ないか捜す。

 

「こりゃ、完全に全滅しているみたいだね」

 

 助けられる生命が残っていないなら、こんな場所に用事など有りはしない。

 

「彼方側に跳ぶしかない。まあ、ゲートは彼方側にも在るから移動は可能か」

 

 踵を返して立ち去ろうとした矢先、少年はふと気になって振り返ると……

 

「これは、人の気配?」

 

 確かな生命の波動を感知していた。

 

 白い簡素なパーソナルトルーパー、ビルトラプターと呼ばれる機体。

 

 コクピットハッチを叩き壊し、ビルトラプターの中を覗くと、僅かに胸を上下させている緑のパイロットスーツの少女が気絶をしていた。

 

「この子、ラトゥーニ? ジャーダ・べネルディ達に拾われていたのか?」

 

 彼方側との差異として、此方側では死んでいるものだとばかり思っていた。

 

「う……」

 

 呻き声を上げるからには間違いなく生きている。

 

 少年はラトゥーニを担ぎ上げると、直ぐにも自分の機体へと戻る。

 

 機体には湾曲技術で創った生活空間が在って、居住エリアが設置されていた。

 

 まずは治療に邪魔となるパイロットスーツを脱がせてしまい、それから光を手から発し傷の治療を行う。

 

「聖なる癒しの御手よ 母なる大地の息吹よ 願わくば我が前に横たわりしこの者を その大いなる慈悲にて救いたまえ」

 

 魔法、治癒力を引き上げるものでしかないが間違いなく普通より早く治る。

 

治癒(リカバリィ)

 

 温かな快復の為の光が、ラトゥーニの傷付いている小さな身体を癒した。

 

 こびり着いた血を洗い流すべく風呂へ入れてやり、綺麗にしてやる。

 

 まあ、その際に白い肌も極々小さな胸も未だに男を受け容れた事の無い秘部にせよ、全てを視てしまった訳だけど役得としてスルーをしてしまう。

 

 ラトゥーニをベッドに寝かせて、自分も軽く眠りに就くと次の行動に関しての思考を同時に行った。

 

 取り敢えず、彼方側への転移は必須であろう。

 

 既にこの地は舞台として相応しくないし、何よりも本来の舞台は彼方側だ。

 

 〝奴〟も彼方側で暗躍をしているだろうし……

 

 既に鈴音や葉加瀬は送還しているし、既に【OGATA】の全ても引き揚げ、ミズホは原作通りになるのは確定している。

 

 原作では此方側のその後など描かれてない訳だし、ユートにとっても通過点に過ぎない世界だ。

 

 それに最早、救う事など不可能だとも考えている。

 

 アインストに侵食され、様々なモノが壊れてしまった世界であるが故に。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「う、此処は?」

 

 ラトゥーニが目を覚ますと其処は見知らぬ場所。

 

 掛けられていた毛布が剥がれ落ち、あられもない姿が露わとなってしまった。

 

「え? どうして裸?」

 

 思い出すと、ゲシュペンストMk−Ⅲに撃墜されてから以降、記憶が無い。

 

「ああ、起きた?」

 

「ヒッ!」

 

 おかしい、感情が抑制されていないみたいだ。

 

 いつもは裸など視られても平然としていた筈だが、この格好で男の声を聞いただけで顔が熱くなり、視られているのが恥ずかしいと感じている。

 

 すぐに毛布でその小さな肢体を隠した。

 

 とはいえ今の自分は裸なのだし、声の主が自分を寝かせた本人なら、既に全身を隈無く視られているのであろうが……

 

「若しかして貴方が助けてくれたの?」

 

 部屋に入ってきた少年を見遣り、ラトゥーニは疑問を解消するべく訊ねた。

 

「まあね、死に掛けていたけど君だけは助かった」

 

「つまり、他に生き残りは居ない?」

 

「残念ながら……ね」

 

「……そう。それじゃあ、私の感情が抑制されていないのは何故?」

 

「解毒したから消えたんじゃないかな?」

 

「解毒?」

 

 別段、毒物を容れていた訳ではない筈だ。

 

「正常な肉体には存在しない物質を毒物と認識して、弾いた結果だろうね」

 

 ラトゥーニは様々な薬品を投与されて、身体能力の向上だけでなく感情の抑制やら何やらを受けており、兵士として使い潰されてしまう予定だった。

 

 DC(ディバイン・クルセイダーズ)が崩壊して、連邦に捕らわれた後もこうして戦っていたのもその為である。

 

「さて、此方も質問だが……僕の名前はユート・オガタという。君の名前は?」

 

「……ラトゥーニ11」

 

 ユートの質問に対して、ラトゥーニは答えた。

 

 【スクール】で与えられたコードネームで、連邦軍でも同じく呼ばれる名前。

 

真鍮(ラトゥーニ)に11って、随分な名前だね」

 

「……私は何処に行っても実験体に過ぎないから」

 

 【スクール】ではアギラ・セトメの、連邦軍に囚われてからもやはり実験体、それでも優しくしてくれた人物は居たが、彼らも死んでしまったらしい。

 

 感情が甦ったからからこそ理解出来る、ラトゥーニはそれを悲しいと感じているのだと。

 

「名前が無いなら此方で付けてしまうか」

 

「……え?」

 

「というか、そうだな……ラトだろうかね」

 

「ラト?」

 

「漢字で羅兎。緒方羅兎、まあ形式はラト・オガタって事になるのかな?」

 

 そういえば随分と昔に、自分は姉達にそんな風に呼ばれていたと思い出した。

 

 ユートはラトゥーニ──ラト──に色々と教える。

 

 この世界はいずれアインストにより崩壊し、破滅に向かう可能性が高い。

 

 今はまだ、影響を受けているのが直接的に干渉を受けたベーオウルフのみではあるが、その内に対抗手段を喪った地球は呑み込まれてしまいかねない。

 

 よって、転移で平行世界へと跳ぶ事になる。

 

 折角、助けた生命。

 

 一緒に行くか、此方側に残って再び実験体としての生を続けるか、それは正に二者択一。

 

「行きます!」

 

 最早、この世界に未練などまるで無いラトにとってみれば、捨てるのに躊躇いなど覚えなかった。

 

 彼方側に行くに当たり、簡単なレクチャーをしたら転移の為に移動を開始。

 

「ラトが乗っていた機体、ビルトラプターは回収しておいたから、退職金代わりに貰って行こう」

 

 とんでもない事を言い出すユートに、ラトはちょっぴり大粒の汗を流す。

 

 治療や洗浄の為とはいっても、全裸を視られた事に代わりないラトとしては、やはりまだ少し恥ずかしいと感じたが、実験体としてではない遣り取りがとても新鮮で、ユートにちょっとずつ慣れていった。

 

 新しい機体という訳でもなかったが、ビルトラプター改修機【リヒトフィー】を与えられ、ラトは毎日をシミュレーションに励む。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 その後、ゲートを使っての転移予定だったのだが、途中に水色な髭ロボットが蒼いロボットと戦わんとしている場面に出逢う。

 

 ラトの怯え方からと原作の知識から理解した。

 

 ソウルゲインとゲシュペンストMk−Ⅲの対決。

 

「丁度良い、リュケイオスを使わせて貰うか」

 

 この侭ではゲートまで少し遠いし、リュケイオスならこの場での転移も可能。

 

「リュケイオス?」

 

「時空間転移装置ってのが言い得て妙かな? 誤解を覚悟で云うなら平行世界に跳ぶシステムだよ」

 

「っ!? 平行世界って、選択肢の毎に拡がるという世界の事?」

 

「まあ、その解釈で概ねは間違いじゃない」

 

 平行世界──可能性分岐世界であり、人の選択の数だけ世界が分岐していくとも云われている。

 

 実際には其処まで簡単なモノでもないが、概ねとかある意味とかの注釈を付ければ間違いではない。

 

 そもそも、ユートが転生や転移で巡る世界こそが、平行世界なのだ。

 

 その総数は無限−1。

 

 無限に近いが確実に有限であり、然して果てを見据えられない者達からすればそれは正に無限に等しい。

 

「ベーオウルブズ、否さ……ゲシュペンストMk−Ⅲ……俺は……俺達はこの世界と決別する……! 行き掛けの駄賃だ。貰っていくぞ……!」

 

『各機……展開』

 

 水色の特機のパイロットが吠える。

 

「貴様の首級をだ、キョウスケ・ナンブ……ッ!」

 

『……噛み砕け……っ!』

 

 水色の特機──ソウルゲインとベーオウルブズが、互いにぶつかり合う。

 

「ハァァァァァァァアッ! 玄武剛弾っ!!」

 

 ソウルゲインの気合いが篭った一撃が量産型ゲシュペンストMk−Ⅱに突き刺さり、動力であるプラズマジェネレータが暴発し機体が爆発して散った。

 

「取り巻きの雑魚に用は無いんだこれがな、次ぃ!」

 

 少し離れた位置に三機のゲシュペンストMk−Ⅱ、それがソウルゲインに向かって来ている。

 

 アクセルは両掌を上下に併せ、蒼い光線を発した。

 

「吹き飛べ、青龍鱗!」

 

 極太の蒼き光に呑み込まれて、一気に砕け散る三機のゲシュペンストMk−Ⅱが爆散。

 

『左右に……展開……』

 

 ベーオウルフの命令に従って、左右へと分かれると一気に詰め寄って来た。

 

「チィッ! その程度でぇぇぇぇっっっ!」

 

 両腕を拡げ拳を握った状態で撃ち放つ。

 

 右は顔面(メインカメラ)をぶち抜き、左は腹部(コックピット)をぶち抜いた。

 

 どちらも不具合を起こして停止をしてしまう。

 

「ハッ! こんなものか?  連邦最強の部隊の実力ってのは? これだったら、〝さっきの連中〟の方が……まだ歯応えがあったぞ? これがなぁ!」

 

 一気呵成とばかりに近付くと、一機を肘のブレードで斬り裂いて墜とし更には必殺技で次の一機を砕く。

 

「白虎咬っ!」

 

 遂に最後の一機となったゲシュペンストMk−Ⅲ、透かさず迷う事無く向かうソウルゲイン。

 

「残るは貴様だけだぁ!」

 

『アクセル・アルマー!』

 

「待たせたな、直ぐに部下の所へ送ってやる!」

 

『部下……? また創ればいい……』

 

「リュケイオス、転移シーケンス……」

 

 蒼い装甲を持つMk−Ⅲに向かって、ソウルゲインが掛けた。

 

『望まれない……世界を創る……お前達は……方舟と共に……墜ちろ』

 

「寝言は其処までだぁ!」

 

 ソウルゲインの放つ拳とゲシュペンストMk−Ⅲの拳がぶつかり合い、火花を散らせながら中央で押し合うものの、徐々にではあるがソウルゲインの方が押され始めていた。

 

「舐めるなぁっ! パワーならソウルゲインが上だぁぁぁぁぁぁぁぁああっ!」

 

『圧せよ、Mk−Ⅲィィィィィィィッッッ!』

 

 徐々に圧し返されていくソウルゲイン。

 

「なにぃ? ならばっ……青龍鱗!」

 

 蒼い閃光でゲシュペンストMk−Ⅲの右腕を破壊、逆に押し返してやる。

 

『グァァァアッ!?』

 

 ベーオウルフはまるで、自分の腕が破壊されたかの様に苦しむ。

 

 爆発の勢いで後ろへと下がり、ソウルゲインは態勢を立て直した。

 

「先ずは右腕を一本、頂いたぞ!」

 

 

 然し喜んだのも束の間、破壊されたMk−Ⅲの右腕から木の蔓の様なモノが絡み合いながら伸び、それが欠損を埋めて右腕となる。

 

 更に機体色が灼熱化し、巨大化するゲシュペンストMk−Ⅲ。

 

「なっ!?  まさかとは思ったが、狼と云うよりは外道に過ぎるぞ……ベーオウルフ!」

 

『どんな……装甲だろうと……ただ……撃ち貫く……のみだ!」

 

 修復された右腕を引くとそれを突き出した。

 

 それがソウルゲインの左肩にヒットした瞬間、装備された杭打ち機に弾丸を発した振動をぶつける。

 

『リボルビング……ブレイカー……貫け!』

 

「ガァァァァァァァア!」

 

 その衝撃を受け機体と共に悲鳴を上げる。

 

『吠えろ……シールドクレイモア……!』

 

「グァァァァァッ?!!」

 

 Mk−Ⅲの左腕にマウントをされたシールドから、ベアリング弾を連射されてソウルゲインは装甲に穴を空けられてしまう。

 

「舐める……なと、言ったぞぉぉぉお! ベーオ……ウルフゥゥゥゥゥッ!」

 

 ソウルゲインで間合いに詰め寄ると、連続の攻撃をゲシュペンストMk−Ⅲに叩き混んでいった。

 

『ぐ、ぐ……』

 

「翔べよ、舞朱雀っ!」

 

『グガァァァァァァァアアアアアッッッッ!』

 

 ゲシュペンストMk−Ⅲの両肩が開いて、そこから放たれる無数の弾丸。

 

「しまっ?!」

 

『砕け……散れ……レイヤード……クレイモア!

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 幾つものベアリング弾により、ズタズタにソウルゲインの装甲が引き裂かれてボロボロになる。

 

「ガハッ! く、くそ……この程度……」

 

 計器がMk−Ⅲの胸部に高エネルギー反応を感知。

 

「なにぃ!?」

 

 エネルギーが放たれる。

 

「くっ!」

 

 咄嗟に機体を動かして、直撃こそ避けたがソウルゲインの装甲を掠めた。

 

 エネルギーはソウルゲインの背後をぶち抜く。

 

「搬入口が? くそ、擦っただけで、なんて威力だ」

 

 ソウルゲインも小爆発をしている。

 

「この侭、リュケイオスの転移シーケンスを停止しても奴に破壊されたら何にも成らん! リュケイオスを護り、尚且つ奴を倒す為には……っ」

 

 コンソールを高速で操作していく。

 

「認証コードOK、起動時間セット! タイムラグは五秒……ただの博打だな、こいつは!」

 

 自嘲しながら呟くと……

 

「分の悪い賭けは嫌いじゃない……とか?」

 

 声が聞こえてきた。

 

「何? 誰だ!?」

 

 振り向いた先には漆黒の闇色とも云うべき装甲で、ちょっと正義の味方には見えないロボットが佇む。

 

「シャドウミラーのアクセル・アルマーだな? 僕はユート・オガタ、手伝うからちょっと相乗りを頼みたくてね」

 

「相乗り……だと? 貴様は此処に在るのが何なのか知っているのか?」

 

「リュケイオスだろう? 次元転移装置の」

 

「っ!?」

 

 ソウルゲインのパイロットであるアクセル・アルマーは、ユートの言葉に最大限の警戒をする。

 

「折角だから僕も彼方側に行きたくてね、だからこそアクセル・アルマーを手伝うんだよ。呉越同舟っていうんだろうね」

 

「はっ、呉越同舟なら本来は敵という事だろうが……これがな!」

 

 構えるソウルゲイン。

 

「僕とベーオウルフの両方を相手に出来るのか?」

 

「っ、チィ!」

 

 アクセルはすぐに頭の中で思案した。

 

 確かに、ベーオウルフと相対しながら別の敵を相手にしたくはない。

 

 ならば呉越同舟も已む無しと考えた。

 

「良いだろう、少しばかり手を貸して貰うぞ……これがな!」

 

 再びゲシュペンストMk−Ⅲに向き直り、警戒をしながらも共闘に賛成した。

 

 その後、ゲシュペンストMk−Ⅲを何とかぶちのめした二人は、約束通りリュケイオスで転移をする。

 

 ソウルゲインは原典と同じ時間軸、オペレーションSRWの直後に跳んでいてマスタッシュマンという、渾名が付けられた。

 

 そしてユートの機体は、原典のディバイン・ウォーズより少し前に跳ぶ。

 

 ラトと共に原典へ介入をする準備を整え、リュウセイ・ダテが出場する大会の観戦へと向かう。

 

 殆んどがユートの知っている通りに進み、決勝戦はリュウセイVSテンザンというカード。

 

 最後の大会と意気込んでいたリュウセイは敗北を喫してしまい、大会の後にはメギロートに幼馴染みであるクスハ・ミズハと共に襲われてしまった。

 

 クスハは崩れ落ちた天井の下敷きになり、リュウセイは行き成り目の前に現れた白いゲシュペンストへと搭乗し、クスハを護るべくメギロートと戦う。

 

 だが然し、此処で原典には無い出来事が起きた。

 

 新たな瓦礫がクスハを襲ったのである。

 

「キャァァァァッ!」

 

「クスハァァァッ!」

 

 ほんの一瞬の出来事で、リュウセイはクスハを救えずに茫然自失となり……

 

「うわぁぁぁぁぁっ!」

 

 怒りと哀しみで目覚めた念動力が、念動兵器を完全に使い熟す程の迸りを魅せてメギロートを撃退。

 

 すぐにもクスハを押し潰した瓦礫を退けたものの、血痕こそ有ったがクスハは見付けられなかった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「う、ん……?」

 

 柔らかなベッドの上で、クスハはその目を開く。

 

「あれ? あれって夢……だったのかな?」

 

 自分は悪夢を視ていて、やっと目を覚ましたばかりなのか?

 

「違う……」

 

 だけどすぐに否定する。

 

 あんな強烈にしてリアルな痛み、夢なんかでは有り得ないと首を振った。

 

「だとしたら、此処って……若しかして病院?」

 

 痛かったけど、生きていたならまだ良かったと考え直し、自分の置かれている状況を推察し始める。

 

 それと敢えて目を逸らしているベッドの下、正確には自分の下半身の状態。

 

 出来れば見たくないが、見ない事には始まらない。

 

 クスハはソッと掛け布団を捲ると……

 

「はは、ははは……やっぱり……なんだ……」

 

 泣き出したくなった。

 

 無いのだ、有るべき場所に有るべきモノ──両脚の太股から下の部位が無くなっているのだ。

 

 恐らく二度目の天井崩落の際、両脚は潰されてしまったのだろうが、だからこそ切り落とすしかなかったのかも知れない。

 

 この新西暦の時代なら、上手くすれば質の良い義足も在るだろうが、両脚義足の女と結婚をしようなんて男が何人居るか?

 

 女としてこの疵は余りにも痛いし、質の良い義足が手に入らなければ看護師の夢も遠退くだろう。

 

 今この時を限定にすれば夢も女の幸せも諦めるしかなく、クスハにとって未来は暗闇でしかなかった。

 

 コンコン……

 

 そんな時に聞こえたのはノックの音。

 

「は、はい!?」

 

 此処が病院なら先生が来たのかと、クスハは思わず返事をしてしまう。

 

「起きてたみたいだね」

 

「──へ?」

 

 入ってきたのは同い年くらいの少年、白衣を着ている訳でもないから研修医ですらないのではないか?

 

「えっと、貴方は?」

 

「僕はユート・オガタ……有り体に云うと君を瓦礫から助け出して、治療を行った者って処かな?」

 

「貴方が治療を? なら、お医者様なんですか?」

 

「いや? 医師免状は持ってるけど、別に医者という訳じゃないな。医師免状はこういう時の為に取得していただけだしね」

 

「は、はぁ……取り敢えず貴方が命の恩人という事でしょうか?」

 

「まあ、そうなるね」

 

「その、両脚は……」

 

 気になったクスハはおずおずと訊ねる。

 

「ゴメンけど、僕が助けた時には間に合わなくてね。両脚は切るしかなかった」

 

「……そうですか」

 

 ユートからしても痛恨時というべきか、原典を下手に知るが故にクスハが安全だと思い込み、気付いた時にはクロックアップしてもギリギリだった。

 

 尚、権能の【刻の支配者(ハイパークロックアップ)】はクロックアップを使った時点で使えず、使うにしても聖句を詠む必要性などから使うに至らない。

 

 何よりも、元より能力のオリジナルたる仮面ライダーカブトの機械仕掛けとは異なり、ユートの【刻の支配者】は忌々しい存在から簒奪した権能だからか? 嘗ては姫島朱乃や塔城小猫に忌々しいと感じる能力を受け容れろとは言ったが、やはり中々に難しいという事も理解していた。

 

 まあ、割と暴走するから使い難いというのも理由だから、ユートの心の問題だけでも無かったが……

 

「さてと、君にはこれから幾つか選択肢を提示する」

 

「選択肢?」

 

「そう、君のこれから……人生に関わるであろう重要な選択肢だから、よく考える事をお勧めするよ」

 

 クスハは真剣な表情となりコクリと首肯をする。

 

「一つ目はこの侭で治療もしない。メリットはニートでも赦される。君を救えなかった事もあるから生活の面倒は僕が見よう」

 

「そ、それは流石にちょっとアレかな……と思うよ。それにそれだと、私は結婚すら出来ないし」

 

「子供なら僕が仕込むし、結婚は出来なくても女としては満足させよう」

 

「こっ!? というか……脚に疵がある私を抱けるんですか?」

 

 真っ赤になりながら質問をするクスハだったけど、やはり弱気になっているからだろうか? 窺う様な、縋る様な眼差しだ。

 

「何なら今から抱いて見せようか? 確かに君は両脚を喪ってるが、可愛いらしい顔に揉み心地の好い胸、スタイルも良いからそんなのは気にならないよ」

 

「……は、恥ずかしい事を言わない……で……って、待って!」

 

「何かな?」

 

「揉み心地の好い胸って、何で既に揉んだみたいな話になってるの!?」

 

「着替えさせる時にブラジャーを外したし、その前に全身を濡れタオルで汚れや汗を拭いたから。勿論だけどその大きな胸だって図らずも揉みしだいた」

 

「っっっ!!」

 

 先程より更に顔を真っ赤に染め、両腕で胸元を隠さんと自らを抱き締める。

 

「おや、抱けるか試したくないのかな?」

 

 ツツーッと顎を人差し指で撫でると、顔を背けながら目を閉じて『んっ!』と色っぽく艶声を出す。

 

「先に選択肢を提示しようかな? 二番目はサイボーグ化をする。謂わば義足を使うという選択だね」

 

「義足……ですか……」

 

「メリットは自分の身体を一番目よりも動かせるし、何より夢を追う事も普通に努力をすれば叶う。デメリットはメンテナンスフリーとはいかないし、どうしても僕に技術依存する事だ。何しろ、現時点での義体の技術ではウチが一番だろうからね」

 

「そうなの!?」

 

「そう」

 

 【超技術(チャオ・テクノス)】は伊達ではなく、西暦二〇〇二年の時点にて魔法込みとはいえ、ガイノイドを完成させていたあの二人や、ユーキの様な天災レベルが造った技術とは、この時代でも先駆者であったりする。

 

「三つ目の選択肢だけど、メリットは事件前と変わらない身体を持てる」

 

「──え?」

 

 ポカンとなるクスハ。

 

「デメリットは……それをやると君を僕から、僕らの組織から出す訳にはいかなくなる。夢を追う事は邪魔しないけど、君自信を完全解放は出来ない。それに、対価はサイボーグ化よりも高くなるから、君の望まない事もして貰うだろうね」

 

「……エッチな事とか?」

 

「いや、ジョークを言ってるんじゃないんだが?」

 

「それなりに本気なんですけど……」

 

 女の子としては、男からそんな言い方をされてしまうと考えざるを得ないし、先程は脚が無くても充分に魅力的だと言われたから、どうしてもえちぃ妄想とかが先行してしまう。

 

「三つ目ってどんな選択肢なんですか?」

 

「君がどの選択肢を選ぶか判らないけど、聞いた場合は後で忘れて貰う可能性もあるんだが……聞く?」

 

「う、うん」

 

 可成りの機密なのかも知れないと、未だに高校生の身であるクスハをして緊張する声色だった。

 

「判った。世界には不可思議な能力やアイテムが存在している事がある」

 

「不可思議……ですか? 魔法みたいなファンタジーだったり?」

 

「その通りだ」

 

「ふえっ!?」

 

 それこそジョークの心算だったが、ユートが真面目に頷いたから吃驚する。

 

「その中には聖書の神が創った神器(セイクリッド・ギア)なるモノが存在し、それは光の矢を放つ程度も在れば、それこそ奇跡レベルの事象すら起こすモノも存在している」

 

「は、はぁ……」

 

 とは言われてもクスハも簡単に信じられないのか、困った表情になって曖昧な返答をした。

 

 無理も無いが……

 

「君の脚の……膝から下がグチャグチャで死んだ状態でなければ、生きてさえいたら回復が可能な【聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)】でも良かった。それこそ知らない間に治しておけば良いしね。だけど流石に僕のアレを使うなら君の許可は必要だろうし、何より対価は支払って貰わないといけない。慈善事業をしてる訳じゃないしね」

 

 話に着いていこうと必死に耳を傾けるクスハだが、そろそろ脳が自分の中に在る常識と喧嘩し始める。

 

 まあ、対価に関してなら納得も出来ていた。

 

 渡る世間は鬼ばかり也、だけど地獄の沙汰も何とやらとも云うし、霞を食らって生きている仙人ではあるまいに、無償で何かをして貰うのは無理がある。

 

 クスハが目指す看護師にしても、無償で患者を看ている訳ではないのだから。

 

「だからこその僕のアレを使う。まあ、元から僕の物じゃなくて敵から奪ったんだけどね」

 

「敵から奪った……」

 

 余り良い話にはなりそうにないと考える。

 

 実際、割と子供なレオナルドから奪ったのだから、クスハには愉しくない話にしかなるまい。

 

 ユートもその話は中断、すぐに本筋に戻す。

 

「神器──【魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)】という。今の僕なら肉体の一部を拒絶反応無しで繋げる事も出来るから、単純に肉体的な話をするなら一番のお薦めだろうね」

 

 本来は魔獣を創造する為の神器だが、ユートは使い続ける内に様々な出来事に対応をしていった。

 

 中には、喪われた肉体の一部を創造して健康を取り戻した……なんて事も既に何度かやっている。

 

 全身に関してなら何度もやっていたし、神器が担い手の心に応えるならやれると考えての事だ。

 

「……私は」

 

 後に【龍の媛】と称されるクスハ・ミズハ、その答えはユートの考えに沿い、差し出された手を拒む事は無かったと云う。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 それから暫くの時間が経って……

 

 アイドネウス島──DCの拠点を攻め落とすべく、スペースノア級万能戦闘母艦の弐番艦ハガネの格納庫から機体が出撃をする為、ジェネレータを起動。

 

 順次、出撃していく。

 

「ユート・オガタ、ジェミナ……出る!」

 

「ラト・オガタ、リヒト・フィー……出ます!」

 

「クスハ・ミズハ、龍姫人──発進します!」

 

 秘密にしていた二人の顔も晒して、各員を驚かせた後の出撃である。

 

 リュウセイ・ダテは当然ながら、クスハの生存など訊きたい事も言いたい事も色々と有ったろう。

 

 既に明かしていたラトゥーニは兎も角、同じ顔をしたラトにジャーダやガーネットやカイはやはり訊きたい事が有った筈だ。

 

 だが然し今は……

 

 赤き巨大な機神──究極ロボと名高いヴァルシオンを延いては、DCの総帥たるビアン・ゾルダークを斃してからの事。

 

 ディバイン・ウォーズの最終決戦が幕を開けた。

 

 

.




 予定が立たない……


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