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ダサい黒髪の青年がショートヘアの幼女へ手刀を叩き込まんとした瞬間、幼女の姿がまるで掻き消えたかの如く見えなくなる。
「――何?」
驚愕する青年。
辺りを見回すと少し離れた位置に、自身と似た年齢の青年が幼女抱えているのを発見した。
「貴様、俺の邪魔をするとは死にたいらしいな」
「お前こそ、こんな小さな子を殺そうとか……外道も此処に極まれりって処か、ラピス!」
「その名を知るとはな……ジジイの元手下か何かか? だったら先ずはてめえから殺してやるぜ!」
怒り心頭な表情となり、構えてくるラピス? と呼ばれた青年。
「ラピスはご不満なのか? なら、今現在の数字で呼んでやるよ……17号」
「殺す!」
最早、許さんとばかりに飛び掛かってきたラピス――17号。
「甘いな……」
「っな!?」
あっさり手刀を止められてしまい、驚愕に目を見開く17号の腹を蹴る。
「ぐはっ!」
吹き飛ぶ17号。
「人造人間17号。嘗てのレッドリボン軍の科学者、Dr.ゲロが人間をベースに造り上げた改造人間に類する存在。本名はラピスで双子のラズリが18号として改造され、普段は行動を共にしている訳だが……」
そうなると名前の関係からラピス――17号が兄、ラズリ――18号が妹という事なのかも知れない。
「元々が札付きの不良だった二人なだけに、人造人間にされた恨みや純粋な人間への辛み、そして殺しへの楽しみを覚えた関係から、大量殺人をしている訳だ」
幼女はそれを聞いて驚愕したらしく、目を見開いて17号の方を見遣る。
「勿論、奴らの仕出かした事がだからといって許される筈も無いな」
勝手に人造人間に改造をされたのは確かに同情するに値するが、それで世間様へと迷惑を掛けて良いなどと免罪符にはならない。
「黙れよ!」
起き上がった17号は、忘れたい過去をほじくり返されたからか、青年に憎悪の目を向けてきた。
最初こそは腹立ち紛れ、だが然しZ戦士とされている連中を殺害し、更に多く手に掛ける内にそれは次第に悦びへと変わる。
殺すのが気持ち良くて、今や趣味で殺害していた。
行き成り滅ぼさないのだって、単純に絶滅させてしまったら楽しめないから。
18号はファッションを楽しむ為にも、絶滅をさせないのかも知れないが……
性別的には女だし。
再び文字通り舞空術っぽく飛び掛かる17号。
実際には空中浮遊システムか何かだろうが、兎にも角にも高速で飛翔しながら襲ってきた。
「危ない!」
幼女が叫ぶ。
「問題は無いなこの程度」
然し、青年は涼しい表情で17号の攻撃を平然と捌いていく。
「くっ、何故だ!? 俺の攻撃を防ぐだと?」
「不思議か?」
「当たり前だ! この星の強者だった連中ですら俺と18号に屈した!」
「強者……ね。年表的にはエイジ七六七年の五月一二日だったか?」
「それが何だ!?」
「本当の強者たる孫悟空は既に亡く、べジータはその所為で超サイヤ人に成れなかった筈。ピッコロも神と融合していないだろうし、純粋な地球人のクリリンとヤムチャは明らかな力不足だし、三つ目人な天津飯もやっぱり力が足りないと。本当の強者なんてあの時には居なかったさ」
「な、何だと!?」
「まあ、良いか」
互いにラッシュしつつ、会話を成立させている。
とはいえ、DBでは当然の行為でしかない。
尚、幼女はエイジ七六七年と聞いて暗くなる。
彼女の父親は人造人間が現れてすぐ、二人に挑んであっさり殺されたから。
世界チャンピオンになってすぐの事だ。
因みに、幼女幼女とされているが実際には小学生の高学年くらい。
立派に少女である。
「お前や18号は確かに強いだろうね。超サイヤ人の孫悟飯もトランクスも敵わない程度には」
とはいえ、トランクスが曰く未来の人造人間というのは一対一ならそこそこには戦える程度だった筈で、強過ぎたりはしない。
実際、青年は17号に対して全く脅威を感じてはいなかった。
「此処でお前を破壊するのがこの世界の為だろうが、もう一つの世界線を有効にするには生かしておかないといけない上に、孫悟飯の死やその他大勢の死だって容認しなければならない。全く、
「かはっ!」
言葉の終わりと共に放った蹴り、そいつが人造人間17号の頬を抉る様に当たって吹き飛ばす。
「じゃあな」
そして直ぐ様、幼女――改め少女を抱えるとその場から消えてしまう。
人造人間17号以外には誰も居なくなった場所……17号は痛む頬を押さえながら忌々しいとばかりの顔で青年が消えた位置を睨み付け……
「チクショーがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
悔しさから真っ青な大空へ向けて絶叫をした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
青年が再び現れた場所、それはもう誰も居なくなった神様の神殿。
ミスターポポという付き人が居る筈の場所だけど、青年が初めて訪れた時には居なくなっていた。
神様が消えた後にこの場を去ったのかも知れない。
カリン塔にカリン様は居たから、青年は仙豆を分けて貰って育て方も聞いた。
随分と特殊な場所とか、育て方だった仙豆ではあるものの、何とかモノにした青年はカリン様に礼を言ってからこの神殿に訪れる。
青年はこの地で暮らし始めていたが、ピッコロ達が死んだ後の時間軸だったから実に退屈。
退屈しのぎに下界を視たら先の場面を発見してしまった為、瞬間移動を用いてあの場所へと跳んだ。
そして今、少女を連れて戻って来た青年は下手なりに料理を作り――家事はしたくない――少女をテーブルに着かせて食事を摂らせつつ、自らも食事を口へと運んでいた。
余り美味しくなかったりするが、贅沢も言えないから二人は黙々と食べる。
水をのんで一服。
「さて、取り敢えず落ち着きたいから食事にしたんだけど、先ずは自己紹介からかな? 僕の名はユート。君の名前は?」
「……ビーデルです」
「ビーデルか。あんな場所に居たのは?」
「故郷のオレンジシティに住んでいたけど、人造人間って奴らが襲ってきて……友達も街の人達も沢山殺されて、私も逃げ出したの」
オレンジシティというと歴史が変わった世界にて、セルを斃したミスターサタンの名に因んでサタンシティと改名された街だ。
尤も、青年――ユートが万が一にも義憤に駆られて人造人間17号と18号を破壊した場合、ブルマによるタイムマシン製作は無くなるだろうし、孫悟飯は死なないだろうがトランクスが超サイヤ人になる切っ掛けも無くなり、更なる未来で某かあって二人が対応をし切れなかった場合には、結局の処で世界は滅ぶ。
事実、ユートの識らない更なる未来で孫悟空に似たブルマ命名ゴクウブラックが出現し、あっという間に世界は壊滅状態に戻った。
それもユートが斃せば? ユートはそもそも世界の守護者ではないし、いつまでもこの世界には居ない。
結局、これも試練であると納得するしかなかった。
だけど……
「私のパパ、世界チャンピオンになったんだけどね。その年に人造人間が現れて……調子に乗って退治に出たけど」
「返り討ちか?」
コクリと頷くビーデル。
無理も無い。
そも、戦闘力が一億ン千万な超サイヤ人でさえ勝てない人造人間、推定戦闘力が六.六六(笑)とか云われるミスターサタンに勝ち目があったなら、ギャグ漫画よりも酷いオチだ。
因みに、普通の農夫さんは弱虫ラディッツ君が計った結果――『戦闘力たったの五か、ゴミめ!』だ。
普通の地球人だと僅かに一.六六の差がデカイという事なのだろう。
スカウターは存在しないけど、人造人間には氣が無いから計り様もないけど、少なくとも彼らの戦闘力は二〜三億くらいは有る筈。
二巡目の世界線では更に強いと言わしめたが……
どちらにせよ、人造人間に氣が無い以上はスカウターでの戦闘力に意味など無いし、考えても仕方がない概念なのだろうが……
「貴方ならひょっとして、勝てたんじゃないですか? あの人造人間との戦いでも余裕そうだったし」
「……極論すれば勝てた。あの程度なら間違いなく」
「っ!? だったらどうして斃さなかったの?」
激昂するのも解る。
父親の……延いては地球人類の仇たる人造人間を、破壊出来たのに破壊しなかったなど、怒りたくもなるのだろうし怒りも間違いではあるまい。
「僕はこの世界の人間って訳じゃない」
「? だから関係が無いって言うの?」
「違う。異邦人であるからにはいつか居なくなる」
「……」
異邦人……確かに旅人か何かならいつまでも留まりはしない。
ビーデルは静かに聴く。
「人造人間と戦うべき戦士はならば、僕みたいな存在ではなくこの世界の人間でなければならない」
「そんな……」
「もっと未来、人造人間より脅威を持つ敵が現れたらどうする?」
「――え?」
「そうなって、異邦人たる僕が居なくなっていたら、戦士が育たなければそれで終わってしまう」
「人造人間以上の脅威なんてある訳無い!」
叫んだビーデルは見た。
恐ろしいまでに強い瞳で自分を見るユート、それはビーデルの言葉をきっぱりと否定するくらいに強い。
息を呑む。
「あ……」
ゾッとする程に怖い。
「昔、ピッコロ大魔王と名乗る存在が現れた」
「ピッコロ大魔王?」
聞いた事が無い名前ではあるが、大魔王とは物騒な二つ名であろう。
「戦闘力は人造人間に比べれば月とスッポン、数値的にも二百か其処らだろう」
公式で二二〇、若返ってパワーが溢れる状態になって二六〇程度だとか?
マジュニアのサイヤ人編での初期値が四〇八らしいから、今現在のインフレをした戦闘力から比べてしまうと弱いと云えた。
まあ、魔貫光殺法を放つ際には一三三〇くらいまで上がっていたけど……
「数値? 誰かが計ったりしたの?」
「いや、ピッコロ大魔王を計った事は無い。だけど、スカウターという戦闘力を数値化が出来る機械が在ってね、それで暫くは戦闘力が数値で表されていた」
「そ、そうなの?」
ツフル人の持つ科学力は成程、大したものだったと云う事である。
「単なるそこら辺の農夫で戦闘力が五」
「五?」
一桁とは余りに低い。
「君の父のミスターサタンだと、推定戦闘力なんだが――六.六六らしい」
「低っ!?」
農夫とは余り変わらない数値に絶句。
「ビーデルなんて五よりも低いと思うぞ?」
「うぐっ! 農夫より低いんだ……」
「で、話を戻すとピッコロ大魔王が二六〇くらい……推定戦闘力だけどね」
「――推定? 二六〇ってパパより四十倍近くも強いって云うの?」
「そうだよ」
暗算で数値を出した辺り勉強は出来るっぽいから、ビーデルは能筋という訳でも無さそうだ。
「この時点でミスターサタンが世界の脅威、ピッコロ大魔王に勝てないレベルだと知れたな?」
「ま、まぁ……貴方の言葉を信じるなら」
ビーデルとしては納得がし難いのだろう。
とはいえ、農夫より強く悪魔の数字たる六六六というのを、二桁を越えない様に設定したに過ぎない数値だったりするのだが……
「そのピッコロ大魔王を、命辛々で斃した者が居る」
「確かに、そうでなかったらとっくに世界は終わってるわよね」
「んで、君の父親が優勝した世界大会。天下一武道会の第二三回大会でピッコロ大魔王の息子、マジュニアと名乗る者が現れた」
「え――息子?」
「戦闘力は四〇〇より低いだろうが、三〇〇より高いと推測されるね。マジュニアもピッコロ大魔王を斃した男が斃している。殺してはいないけど」
「……」
「天下一武道会から五年、新たな脅威として宇宙からサイヤ人が現れた」
「また!?」
それ以前にも世界征服を狙うレッドリボン軍が居た訳だが、此方もピッコロを斃した男――孫悟空が潰していた。
「サイヤ人の名前はラディッツと云い、実はピッコロ大魔王やマジュニアを斃した男の兄だったりする」
「なっ!?」
「彼自身がサイヤ人で侵略の為に送られたらしいが、育ての親が誤って崖から落として記憶を喪ったとか。だからサイヤ人が現れても仲間にはならなかった」
「そ、そうなんだ……」
尚、ユートはラディッツや悟空の母親については、特に情報を持ってない。
父親のバーダックは知っているのだが……
因みに、人造人間17号と18号に関しては細かい設定を忘れていたりして、どちらが上かは覚えていないから単純に号数にて兄妹かな? と判断しており、事実が姉弟だと識らない。
「ラディッツ戦から一年後にベジータとナッパというサイヤ人が襲来、戦って勝ちを拾っているな」
「強かったの?」
「ナッパが戦闘力で四〇〇〇か其処ら、ベジータに至っては一八〇〇〇くらい」
「もう、四百とか勝てないレベルだよねそれ……」
「修業したからマジュニアが三五〇〇? 孫悟空……さっきから言ってる男は、八〇〇〇くらい?」
「何で二十倍近く上がってるのよ!?」
「修業環境が良かった」
界王星は惑星ベジータと同じく、地球の十倍も重力が掛かる星だから。
「その後は地球の危機じゃなかったけど、宇宙の帝王と名乗るフリーザと命懸けで戦って勝っているんだ。因みにフリーザの戦闘力は一億二千万くらいだった」
「行き成りまた巫山戯た程の数値ね、それって」
「まあ、飽く迄も推定戦闘力なんだが……」
何しろ、フリーザは最初の形態で五三〇〇〇〇で、第二形態は百万を越えると自己申告をしているだけ。
第三形態も一千万に届かない筈で、それが最終形態だと一気に飛んで一億越えとなるのだ。
推定戦闘力でしかないのはスカウターが最早、計れないレベルの数値となってしまったからである。
「そして、フリーザ親子の地球襲来と今回の人造人間の襲来だ。はっきり言って敵がどんどんパワーアップしているんだよ。頭がおかしくなるくらいインフレをしてるしね」
「だから人造人間の次がって事なの?」
「そうだよ。それと、戦士はまだ生き残っている」
「そうなの? 人造人間は強者を殺したみたいな事を言っていたけど……」
「エイジ七五七年五月一二日に現れた後、フリーザとすら戦ったZ戦士が挑んだんだが、孫悟空は心臓病で人造人間が現れる前に死亡していて、残された者達で応戦したんだが……最初にピッコロ――マジュニアが死んで、次々とZ戦士達は殺されてしまった。今現在で残ったのはビーデルとは同い年の孫悟飯。孫悟空の息子と、トランクスというベジータの息子。当たり前だけど、十一歳に過ぎない孫悟飯では勝てないレベルの人造人間だ。少なくとも数年間は修業に注ぎ込むしかないだろう。トランクスに至っては二歳か其処らでしかないからね」
昨日の敵が今日の仲間となっていた。
「本当に勝てるの?」
「……一応」
強くなったトランクスが二人を破壊するのは確定、問題は魔人ブウが現れたりした場合だろう。
トランクス一人で勝てるのか? ユートにはそこまでは判らなかった。
実はブウが復活する前に界王神に忠告をされた為、バビディとダーブラを斃しているが、ユートはそれを識らない訳で……
「取り敢えず、今はこの地も安全な筈だから。二人で暮らしていこうか」
孫悟飯は【精神と時の部屋】を識らないだろうし、この神様の神殿にまで来たりはしない。
「安全……か。此処に人間を避難とか?」
「それは無理だ。そもそもが狭いんだから百人すらも受け容れられない。何より此処は神様の神殿なんだ。本来は人間を簡単に入れて良い場所じゃない」
「神様の神殿!?」
「だから、人造人間に関しては最低でも数年単位での我慢が必要だ。実際に奴らをZ戦士が破壊するのは、十年くらい先だろう」
「私は……世界に対しては何も出来ないのね」
哀しみからか涙を溢れさせるビーデル。
「ゴメンな?」
そんな彼女の涙を指で拭いながら謝る。
それから四年が経って、修業をしながら肉体的にも精神的にも成長していき、一五歳になったビーデルはユートと結ばれ、閃姫として今の姿を維持が出来る様になり、孫悟飯の死亡から更に時が経ってトランクスが過去へと向かった際に、新たなる世界線を見たいとユートにおねだり。
ビーデルは語られた歴史を実際に見る事となる。
新しい歴史と共に。
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人造人間は姉弟ですが、ユートはうろ覚えで間違って記憶しています。