やっぱハナは強化するもんですね。虎虎はけっこうきついですが。
リュウギはしぶしぶミントの言うことに従った。二人はとりあえず、トリゴの街の店で出発の準備を整え、ゴルドア大平原へと向かう。
「おーいお二人さん。すぐそこでおいしそうなおむすびもらったんだ。一緒に食べ…」
リストがカフェ・サヴィーで腰をかけていたミントとリュウギに話しかけた…が、二人はそこには居なかった。
「…おーい、ミント?」
◇◇◇◇◇
「しっかし、ショットを探すったってどうすんだよ?」
「足跡を探すとか?」
「足跡?さすがにこれほど時間経ってたらもう消えてるだろ。」
「あぁ…確かに。」
ミントがうなずく。
「そういえば、ショットのブレイドって炎属性だったよね?」
「ああ、そういえばそうだったな…」
「それじゃあ、逃げ道が焦げてたりとか…」
ミントがそっと足元を見ると、草が少し黒く焦げている。
「ほぉーら!私の言う通りだ!」
ミントが焦げた草を指差し、飛び上がって喜んでいる。
「そんなに喜ぶなんてガキかっての。」
「いいじゃん、ガキなんだし!」
焦げた草は足跡のように続いている。それを目で追っていると、目の前から誰かが歩いてくる。
「おい!だから俺はコアクリスタルなんて盗んでないって…痛ッ!」
「リリオ!何やってんの!?」
リリオ、そしてそのブレイドのクロヒョウがスペルビア兵に捕まり、連行されている最中だった。
「おぅ…ミント!良かったぁ…なぁ、こいつらに説明してくれよ!俺はコアクリスタルなんで盗んでないって…」
「そうそう!第一、私の属性火じゃなくて土だし!」
クロヒョウが必死にスペルビア兵に抵抗する。
「やめろ!抵抗するなぁ!」
「痛ッ!」
二人のスペルビア兵の一人が倒れこむ。
「おのれぇ!ペルフィキオォ!公務執行妨害で逮捕だぞォ!?」
「うるさいわねぇ…だから私たちは!コアクリスタルなんて盗んでないって言ってるでしょ!」
「ぐあああーっ!腕の傷が痛むゥー!」
それを見てミントもリュウギも呆れかえる。
「この人達が、輸送船に乗り込みそうに見えますか?」
ミントが倒れこんでいる兵士を覗き込む。
「あぁ。いかにもコアクリスタルを盗みそうだ!悪人面!」
「おんっ…言わせておけばこのクソ兵士…」
リリオが腰のツインリングに手をかける。
「じゃ、この人達がメレフ様を出し抜けると思いますか?」
「うーん…確かにそう言われると微妙だな…」
兵士は立ち上がった。
「たしかに悪人面だが、どちらかというと小物っぽいな。とてもメレフ執権官を出し抜けるとは思えない。」
「でしょ?分かったらとっとと離してやって。」
立ち上がった兵士はもうひとりの兵士を見つめる。もう一人の兵士はやれやれといった感じで二人を解放する。
「まったく…人間違いだなんて失礼な奴らだな。」
二人の兵士はすぐにその場を立ち去る。兵士は言い争いをしながらトリゴの街へ帰っていく。
「まったく。お前が早とちりだからいけないんだ!」
「なんだとォ!?ドライバーが犯人だといわれたら真っ先に疑うだろう!?」
「メレフ執権官の話によれば、犯人は炎を扱うドライバーだと言っていただろう!あのドライバーは土属性であったのに…」
「お前だってノリノリで拘束してたじゃないか!人に責任全部なすりつけるな!」
「なんだと!?」
「それに、炎と土…二つの属性を操っているかもしれんぞ!?」
「二つの属性を操る?ハッ、居るなら見てみたいね!そんなヘンテコブレイド!」
そんな言い争いをする兵士を、軽蔑のまなざしでリュウギは見つめる。
「すまないなミント。また助けてもらって…」
「いいんだって。イラーダ村に行ってきたの?」
「ああ。もはや何も無くなってた…でも、使ってた井戸だけは健在だったな。まぁ、これほどの時間が経っているしな…」
リリオがうつむく。ミントはそれを見て頬をかく。
「ん?君は…あぁ」
リリオが顔をあげ、リュウギのほうを向いた。
「野盗から助けてくれた少年か。あのときはすまない。俺が傭兵としてしっかりしていたら巻き込まなくて済んだのに…」
リリオが申し訳なさそうにリュウギの方を向く。
「い、いいんですって。おかげで俺の目的も達成できそうだし…」
「目的…って?」リリオが聞く。
「楽園に行くんです。ミントがそこまでの案内してくれるって言うから…」
「助けてもらったんだし、恩返しってこと。」
「へぇ…ミント、本当に連れて行けるのか?」
「心配いらないって!世界樹の下ぐらいまでは行ったことあるし!」
「そ、そうか…?」
リリオが不安そうな顔をする。
「せっかく助けてくれたけれど、今はお礼ができそうにないんだ。すまない…」
「大丈夫です。もうリストさん達に結構なお礼してもらったし…」
「お礼は必ずどこかでする。今は感謝だけさせてくれ。」
そう言ってリリオはリュウギの肩を叩き、クロヒョウと共にトリゴの街へと向かう。
「…忘れてた。ショット追わないとね!」
ミントは再び足元を見て、焦げた草を追っていく。
その焦げた跡を追っていく途中、数体ものモンスターが立ちはだかる。リュウギはミントを守るようにして戦う。
ミントも負けじと短剣で応戦する。
「お前は出なくていいって!」襲い掛かるモンスターを退けながら言う。
「私も戦うって言ったじゃん!」
ミントは短剣を振り回すが、モンスターをかする程度。
リュウギが大きく剣を振り回し、モンスター達は去っていく。
「なぁ、しろって言ってるわけじゃないけどさ…」
リュウギが大剣を布で拭きながら話しかける。
モンスターを倒した二人は休憩がてら、丸太の上に腰をかけていた。
「ん?何?」
「ミントって、ブレイドと同調したことないの?」
「んー…あるっちゃあるかな。」
「へぇ、あるんだ。―――ってことは、同調できなかったってことか?」
「そうだねぇ。サルベージャーになる前、同調できるかと思ってコアクリスタル触ったことあってさ。
―――あの時は大変だったよ。血が体中から噴き出して生と死の間を3日間もさまよってたとか。」
「マジか…そりゃ大変だったなぁ…」リュウギが心配そうな目つきでミントを見る。
「いやぁ、あんなんなったらもう二度と同調したくなくなるって。」
ミントが立ち上がりながら言った。
「さぁ行こ。焦げた跡がなくなっちゃうかも。」
二人は再び歩き出し、焦げた草を辿っていく。
「トリゴの街かぁ。懐かしいな…」
トリゴのアーチにもたれかけ、リリオが呟く。
「私はこの前初めて来たけどねぇ。」
クロヒョウが言う。
「まぁ傭兵としてここに来るのは初めてだしなぁ。この前港に着いた時はじっくりする暇もなくすぐ出発しちまったからなぁ。」
二人が会話を交わしていると、奥から坊主頭のサルベージャーが歩いてくる。リストだ。
「おう、リリオ…ミントとリュウギくん見てないか?」
「リュウギ…あの少年か。二人なら平原で通りすがったが…?」
「あの二人、何も言わず出かけていったんだ。何考えてるんだか…」
リストが同じ場所を行ったり来たりしながら頭を抱えている。