◇◇◇◇◇
古ぼけた屋敷の中、大きな声が響き渡る。
「ももーっ!これだけあればボスも大喜びだも!」
黒い毛のノポン、ガーンが大量のコアクリスタルを見ながら手をあげて喜ぶ。
「炎の輝公子に邪魔されなきゃもう少し取れて来れたんだがなぁ。」
ショットが腕を組みながら皮肉そうに言う。
「やっぱ良い仕事してくれるも!ほら、給料だも!」
そう言ってガーンは袋を取り出し、ショットに手渡す。
「ひぃ、ふぅ、みぃ…おい、たったの30万Gかよ?」
ショットが袋を手から落とした。
「この数ならそれが妥当だも。もっと欲しいならもーっと持ってこいも!」
「はぁ、おいバクエン、このクソ上司を焼き払え。」
「了解だ、覚悟しろガーン。」
バクエンが剣に手を伸ばす。
「ひいぃ!それが上司に対する態度かも!金払っただけありがたいと思えも!」
ガーンがコアクリスタルの入った袋を盾にする。
「そういえばここまで来る途中で兵士が頑なに守ってた倉庫を見つけたな…」
ショットが思い出すと、バクエンがガーンに向けた剣を下げる。
「ああ、確かにな…あれほど厳重に守っている倉庫ということは…」
「コアクリスタル保管庫…だろうな。」
「おおっ!じゃあ早速そこに行ってたくさん盗んでこいも!」
「ショット、あんまり堂々とするのは好ましくない。」
「分かってる。今度は隠密行動で行こうぜ?」
バクエンがショットに剣を渡し、腰に携える。
「成功したら倍の倍は払ってやるから待ってるもー!」
「あいあい、その言葉忘れてなきゃいいが…」
ショットが屋敷の扉を開け、外へ出る。
「しっかし、ガーンもいい隠れ家を見つけたなぁ…」
古ぼけた屋敷の周りには燃え尽きた木製の家々。まだ昼だというのに木々に覆われたこの場所は真っ暗だ。
ガーンが今住んでいるこの屋敷も半ば壊れかけ。ところどころに焦げた跡が存在する。
しかし、屋敷の周りには住めそうな家はもはや存在していない。
―――ここはかつて村だったのだろうか。まだ使えそうな井戸が中心と思われる場所に存在している。
その井戸の周りには他の場所から持ち寄られたのだろうか、こんな場所には咲かないような綺麗な花が献花してある。
「こんな辺鄙な場所に…俺達以外も来てんだなぁ。」
ショットはその花を踏みつけた。花はつぶれ、バラバラになる。
それを見て軽い笑いをこぼし、ショットとバクエンは去っていく。
「ずいぶんと遠いところまで来たなぁ…」
リュウギが額の汗をぬぐいながら、足を進める。
「あぁ…跡がここまでしかないや…」
ミントが足元を見る。ここまで続いた草の焦げ跡がここで断ち切れていた。
「マッ、マジで?」
「大丈夫。こっから先はサルベージャーの勘でなんとかなるって。」
「勘って…本当に大丈夫かよ…」
グーラのかなり奥のところまで来てしまったらしい。ゴルドア大平原に比べると湿気も高く、体中に水が常に纏わりついているかのよう。明かりもほとんど入らず、ほぼ真っ暗である。
ミントがサルベージャーの勘に頼りながら、前へと進んでいく。リュウギは不安そうな顔をしながらミントについていく。
すると、少し開けた場所に出た。崩れた建物、壊れかけの看板…かすかに「イラーダ」と書かれていることが分かる。
「イラーダ…リリオの村の…」
ミントが看板を見つめた。古ぼけた文字である。
「あのドライバーさんの村をショットが隠れ家にしてるのか?」
門だったのだろうか、壊れかけのアーチをくぐり、村の中へと入る。
中心には井戸が、そしてその手前には新しい花が添えられている。しかし、それは踏み潰されている。
「しかし、村全体を隠れ家にしてる…ってわけじゃなさそうだな。どこかの建物を使ってるか…」
見渡すと、かすかに明かりが漏れている屋敷を見つける。
「あそこね。よぉーし…気付かれないようにそーっと近づこう。」
二人は忍び足で屋敷へと向かう。近づくほど、変な笑い声が聞こえてくる。
「もーっもっもっも!この報告さえできれば、このガーン様はいっきに昇格だも!もうあんな部下従えなくて
済むんだも!」
「ノポン…?ショットじゃないのか?」
リュウギが首をかしげる。
「ノポンでガーンと言えば指名手配犯だよ。ペルフィキオの一員の…」
「じゃあそいつがショットの仲間ってわけか…よし、乗り込むぞ」
ボロボロの扉を勢いよく開き、大剣を構える。
「ももっ!?お前達は誰だも!?」
予想の通りガーンは驚く。
「あんたがペルフィキオのガーンね!持ってるコアクリスタルを渡しなさい!あと、ショットはどこ?」
「むむぅ、お前らはスペルビアの奴らかも!?…でも、なんでガキんちょなんだも?」
「俺達はスペルビアじゃない。お前らの悪行のせいで船が出航しなくなった。責任とってもらうぞ!」
リュウギが大剣から炎を出す。それをガーンが避ける。
「こんなボロい家で火をおこすなも!火事になったらどうするんだも!…ん?」
ガーンがリュウギの頭を見つめる。
「銀の髪色…炎…お前、もしかしてぇ!?」
「は?俺がどうかしたのか?」
ガーンがにやりと口角を上げる。
「ももももーっ!これでガーン様は昇格間違いなしだも!天国のじいちゃんも喜んでるはずだもー!」
そう言ってガーンはコアクリスタルの入った袋を持ち、ボロいソファに腰をかける。
「ショットはトリゴのコアクリスタル保管庫に行ったも!あんな部下は煮るなり焼くなり好きにしていいも!」
ガーンはそう言うと、ソファの横のボタンを押す。
「あっ、おい待てっ!」
ミントとリュウギはガーンのところへ走り出すが、突然ソファの下から炎が噴き出し、空へと舞い上がっていってしまった。「もーもっもっもっも!」という笑い声と共に。
「あーっ!逃げられたーっ!」
ミントが頭を抱えてその場にしゃがんだ。
「もうっ!あと一歩だったのにぃ!」
「でもショットの居場所は掴めた。あいつを捕まえるだけで十分。」
「コアクリスタル保管庫に行ったって言ってたよね?―――既にショット達が出発してるなら、すぐに追いかけないと!」
「…そうだな、急ごう。」
二人は扉をくぐり、イラーダの村を抜けて来た道を戻っていく。すでにショットがトリゴに到着したかもしれない―――
だが、リュウギの頭の中は別のことでいっぱいになっていた。
『銀の髪色…炎…お前、もしかしてぇ!?』
「なぁミント、あのガーンって奴、俺を見て変なこと言ってたよな?」
「あー、ショットがあんたの事を話したんじゃないの?」
「でもさ、“もしかして”っていうのはどういう意味だろ、って…」
「そんな深く考えることじゃないと思うよ。今は街に急がないと!
ここでキャラクター紹介
〈ガーン〉
ペルフィキオの一員のノポン。黒い毛が特徴。
部下のショットとバクエンを利用し、戦力増強のためにコアクリスタルを集めている。
“ボス”とやらには頭が上がらない様子だが、昇格を狙っている節もある。