ミントとリュウギはトリゴの街を駆け抜けていく。いつもは飽きるほどスペルビアの兵士がいるのだが、何故か全く見当たらない。
「さっきの兵士達って全員だったのかな?」
「兵士が居ない隙に狙うってわけか…」
二人はガレグロの丘を越え、基地隣のコアクリスタル保管庫へと向かう。
兵士が管理しているこの保管庫に近づく街人は全く居ない。瀕死の兵士が二人居たとしても、気付かないようだ。
「見て!扉が開いてる…」
焦げた兵士と血まみれの兵士がその扉の横に倒れていた。
それを発見した途端、ミントとリュウギが駆け寄る。
「大丈夫ですかっ…?」
すでに息も切れ切れ。血まみれの兵士は声も出せぬほど苦しんでいた。
リュウギは腕に兵士を抱えている。
「治せる…?」
ミントがリュウギに聞く。しかし、首を横に振る。
「どちらか片方だけしか…。今の俺じゃそれが限界だ。」
血まみれの兵士が震えながら、懐から写真の入ったロケットペンダントを取り出す。
途切れ途切れながら、声を出す。
「私の家族だ―――彼はまだ若い。 ―――――助けられるなら、彼を助けてくれ…」
炎に焼かれ、焦げた兵士を見る。
「―――分かった。ごめんなさい。助けに来るのが遅れて…」
「いいんだ。とにかくあいつにコアクリスタルを奪われてはならない―――」
兵士は切れ切れの息で、苦しそうに声を出す。
「私の家族に、悔いはなかったと伝えてくれ―――」
そういい残し、兵士の息は絶えた。
「リュウギは若い兵士さんを頼む。私は先に行く。」
「相手はドライバーだぞ。ミント一人じゃ勝てない。」
「でも時間稼ぎぐらいにはなれるよ。」
「―――せっかく助けた命、無駄にすんなよ」
ミントは走り出して保管庫の中へと入っていく。
リュウギは胸の金のコアクリスタルを光らせ、焦げた兵士に手をかざす。
鎧に残った焦げ跡こそは消えないが、兵士の体がだんだんと回復していく。
兵士は目を開け、体を支えられながら起こす。
「あなたは…?」
「俺のことはいい。そこの兵士さんを連れて逃げてください。」
「イツガ…」
イツガ、この血まみれの兵士の名だろうか。
「しかし…ショットがこの中に…」
リュウギが首を横に振る。
「それは俺がなんとかしますから、逃げてください。」
「…分かった。すまない。」
兵士は既に息絶えた兵士を連れ、トリゴの街へと向かう。
リュウギは胸に手を当て、拳を握り締めた。
―――私はね、ずっと後悔してるの。
―――どうして?
―――助けられる命を助けられなかった。 だからこそあなたに言いたい。
救える命があるなら、救ってあげて。
頭の中に、母の言葉が鳴り響く。
「そこまでよショット!」
突然後ろから聞こえた声に、ショットが振り返る。
「なんだぁ?騒がないようにしたってのに…」
その顔を見てショットは驚いた。バクエンも体の炎がさらに燃え上がった。
「あん時のサルベージャーのガキ…なんで生きてやがる?」
「まぁ一度死んだけど…でも今は生きてる!よくも私を一回殺してくれたわね!」
「ハッ!生き返ったってわけか?邪魔すんなら…もう一度殺してやるよ!」
ショットはクリスタルをありったけ詰めた袋を置き、
「うぉーっ…煽ったはいいけど殺気がすっごい…」
ミントも短剣に手をかけ、互いに見つめあう。
「いち…にのぉ…さん…ッ!」
ショットが
「ぐっ…やっぱり私一人じゃダメか…」
「なんだ?その程度の覚悟でここまで来たのか?」
ショットが近づく。その
ショットが
「チッ、またお前かよ…」
紅緋色の大剣を持ったリュウギがゆっくりと歩いてくる。大剣の中心には「炎」の字が浮かび上がっている。
少年は悲しげな目でショットを見つめる。
「約束したよなぁ?邪魔された借りはいつか返すと…ッ!」
ショットは
「お前のせいでスペルビア行きの船が止まった…それに…」大剣でショットの
「お前のせいで…母さんの想いを…叶えられなかった…」
「想い?なんだそりゃあ?」
ショットが次々とアーツを繰り出していき、リュウギがそれを受け止めていく。
「誰も死なせないって…!でも今の俺じゃそれができなかった…!」リュウギは強く拳を握る。
「ガキのくせにいっちょ前なこと言いやがって!せいぜい自分の力不足を悔いるんだなぁっ!」
「黙れぇーっ!」
リュウギが剣をはねのけ、ショットへと攻撃を繰り出していくが、ショットも同じようにそれをはらいのけていく。
「所詮ガキだな…あんときと攻撃の仕方がまったく変わってねぇ…」
攻撃を受け止め、次々とカウンターを繰り返し、ついにリュウギの腹を叩く。
「ぐぅっ…」
「アッハッハ!いい気味だなぁ…おとなしく見逃してくれるなら命を助けてやってもいいぜぇ?」
「誰が逃げるか…俺はまだ…」
腹に加えられたダメージは大きい。大剣を支えにしてようやく立ち上がる。
「…ったく、しぶとい奴だなぁ…バクエン!」
ショットがブレイドに剣を投げ渡し、バクエンはあの攻撃を繰り出した。
「フレイムトルネードッ!」
炎の竜巻。コアクリスタルも共に巻きながら立ち上っていく。
「水の力…俺に手を貸してくれ…」
リュウギがそう唱えると、大剣の文字が「水」へと変わった。
そして炎の竜巻とはまったく逆、水の竜巻を繰り出す。
しかし、前よりも高い火力なのか、すぐにその水の竜巻は蒸発し消えてしまった。
「そんな…っ!」
「くたばれぇっ!」
炎の竜巻がリュウギを包み込み、リュウギはその中で悶える。
「リュウギ!」
ミントは走り出すが、床に落ちたコアクリスタルにつまづいて転んでしまう。
炎の竜巻の中から、リュウギが現れた。苦しみ、嗚咽する。
「うっ…ぐぅっ…」
「はぁ…たいしたことねぇ奴だな…」
ショットがリュウギの髪を掴み上げ、その顔に語りかける。
「二つの属性の操るだなんて珍しいブレイドだと思ったが…ハッ、珍しいだけだったなぁ…!」
ショットはその固い拳をリュウギの腹へ入れる。
「ぐぅはぁ…っ」
ミントはそれを拳を握りながら見つめている。
「私が…もっと強かったら…」
ミントが足をつまずいたコアクリスタルに目をやる。
「コアクリスタル…」
コアクリスタル。それは亜種生命体“ブレイド”を生み出す不思議な結晶…
常に青い光を放ち、八面体の形をしている。
生まれながらにして武器を持ち、ブレイドを使役するドライバーに力を供給する。
コアクリスタルから生まれたブレイドは人との絆を大切に想い、それを微かながら記憶し、次の世代へ受け継いでいくという。
ドライバーが死ねば、ブレイドはコアクリスタルに戻る。
今つまづいたこのコアクリスタルにも、かつてドライバーが居て、共に戦ったのだろうか。共に絆を深めたのだろうか。
気付けば、ミントはコアクリスタルを手に取っていた。
「ミント…何やってる…!」
リュウギがショットに腹に蹴りを入れられながら、ミントを見つめていた。
「あぁ?同調しようってのか?」
ショットがミントに気付く。
「やめろ…お前は同調できないんだろう…?」
「同調できない?ハッハッ!血まみれになるところをこれから見るのかぁ…見ものだなぁ?」
ショットがリュウギの腹に足を乗っけ、手を膝に乗せミントを見る。
「確かに私は同調できなかった。―――でも、このままじゃやられるだけ…」
ミントはコアクリスタルを握り、胸に近づける。
同調する時の光、そして衝撃波が発生する。
「お願い。―――私に力を貸して―――」
ショットは黒い笑みを浮かべ、リュウギは苦しむ顔を浮かべている。
「俺はツバキ。これからは俺が君を守る。」