◇◇◇◇◇
「パクス様、メレフ特別執権官が帰還しました。」
「やっと戻ってきたか…」
パクスは重い腰を上げた。
トリゴ基地で起きた給水塔破壊事件。現場検証を共にグーラの領主、パクスは行っていた。
メレフが小さな
「給水塔が破壊されたというのは本当か?それにペルフィキオの…」
「まずは現場を見ていただけたほうが早いかと。」
パクスはメレフを事件の現場へと案内した。
倒れた給水塔のタンクの中には少しながら水が残っており、こぼれたはずの水はすでに蒸発。
あたりの草は全て燃え尽きて灰となっている。
事件現場は野次馬が侵入できないよう封鎖され、数人のスペルビア兵達が調査を行っている。
「ずいぶんと悲惨な状況だな。これでは作物を育てる水が足りなくなる…」
「今の時期、雨はなかなか降らないし…」
メレフのブレイド、カグツチが倒れた給水塔を見る。
「しかし、随分と懐かしい風景だな。」
「ええ。昔も、まったく同じものを見ましたね。」
「ああ。だが明らかに違う点が一つ。」
メレフは給水塔の前に倒れている男性に目を向ける。
「レックスはここまでしなかった。」
顔は白く、既に息絶えているショット。その横には輝きを失ったコアクリスタルが一つ。
「盗難事件の犯人、ショットは死亡。横のコアクリスタルはおそらくバクエンのものかと。」
パクスが調査書を受け取り、読み上げている。
「それで、犯人の目撃情報は?」
「給水塔が破壊された直後、銀髪に赤い大剣を持った少年、そしてコモンブレイドを連れたサルベージャーの少女がここから逃走するのを数人が目撃しています。
その者達による犯行の可能性が高いかと。」
「なるほど…分かった。すぐに捜索を願おう。」
メレフがパクスに指示を出すと、一礼を行い、数人の固まった兵士の下へ走り寄る。
それを見届けた後、メレフは再び
「はぁ…はぁ…走った走った…」
トリゴの街から遠く離れたところまで走ってきたリュウギ一行。
すでに日は落ち、夜も近い。
「なんとかショットは倒したけどさ…給水塔壊しちゃったし…」
「あー。こりゃ戻れないなぁ…」
リュウギが深くため息をつく。
「戻っても逮捕されるのがオチね。これじゃスペルビアまで行けないよ…」
「随分と無計画に行動するもんだなぁお前ら。」
ツバキが二人を見ながら言う。
「最初に給水塔見つけたのはお前だろ?」
「ま、打開策を見つけたという点では褒めて欲しいけどな。」
「勢いでやっちゃったけどさぁ…どうする?」
ミントがナックルクローをがちがちとこすりながら言う。
「どうするったって…」
「なんだ?随分困ってるみたいだな。」
大きな黒猫のようなブレイドを連れた一人のグーラ人がこちらへと向かってくる。
「リリオ…」
「よっ。トリゴでスペルビアの奴らが徘徊しまわっててさ。どうも落ち着かないもんだから散歩してたんだ。」
「は、はぁ…」
リリオがミントの手を見つめ、その後後ろのブレイドに目を向けた。
「ブレイド…ミント、お前もしかして…?」
「ツバキだ。よろしくな。」
ツバキがリリオとそのブレイド、クロヒョウに握手を出す。
「コモンブレイドなのね。私みたいなレアブレイドじゃなくて。」
「別にコモンブレイドだからって悪いわけじゃないだろ?」
「あら、別に差別して言ったんじゃないわよ?」
ツバキは手を引っ込み、クロヒョウに小さな怒りの眼差しを向ける。
「事件のせいでとうぶんは船が出ないみたいだな。これじゃリュウギくんとの約束果たせないな。」
「うん…」ミントがうつむく。
「合法とは言えないが…スペルビアへの船を出すことならできる。」
リリオがそう言うと、リュウギは顔を挙げ、嬉しそうな顔でリリオを見つめる。
「えっ…!?本当!?」
「あ、ああ…知り合いに造船所持ってる人が居てな…」
「良かったぁ…最初からそれ言ってくれれば良かったのにぃ!」
ミントがナックルクローで少し強めにリリオの腕を殴る。
「痛ッ!…だって合法じゃないんだし?そうそう簡単に出せるもんでもないからさ。」
「ありがとうリリオさん!」
リュウギはリリオの手を掴み、思いっきり振る。
「よぉし来い!ウモンさんの造船所まで案内してやる!」
リリオは自信たっぷりに胸を張り、グーラの奥へと歩いていく。
リュウギとミントは顔を見合わせ、笑いあいながらリリオへついていく。
ミントのブレイドとなったツバキはそんな二人を見つめ、無言でついていく。
第2話 「コアクリスタル盗難事件」