それはそれでなんか悲しいですね。
◇◇◇◇◇◇
フォンス・マイムへの道中はなかなかに大変なものだった。10人で歩くとなるとそれだけ道幅を歩くのも大きくなり、モンスターにも襲われ続けた。
「どうしてイオンさんは傭兵雇ってあんなところに居たんだも?」
「あそこまでいかないとインクロナナフシって虫が見つからないから。劇場で働いてて、そこのオーナーさんが必要だっていうから」
「イオンさん劇場で働いてるんだ」ミントが言った。
「幼い頃からそこの劇場の人にお世話になっててね。今はその人亡くなっちゃったけど・・・大事な劇場なんだ」
「俺も昔何回か見たことがあるな。なかなか面白かったぞ」リリオが言った。
「アニマ傭兵団ってフォンスマイムにあるのか?」リュウギが聞いた。
「ああ。ドライバーになってどうしようか迷っててな。すぐにアニマのナルマさんからスカウトされたんだ」
「だというのに数ヶ月も居なくなるなんてな」リクスが横で言った。
「だから色々と事情があってさ・・・」
インヴィディアの幻想的な風景など目もくれず、ただただ岩の道を進んでいく。すると階段が目の前に現れた。
「ここから先がインヴィディアの首都、フォンス・マイムだ。」リリオが足を止めて言った。
たくさんの農産物がとれるセースロア水田を抜け、正門を抜けると、そこにはお店が立ち並び、人々が夕飯のために買い物をしている。
「さて。リリオ行くぞ」
リクスはリリオの耳を引っ張り、歩き出した。
「いてて・・・そんな乱暴にすんなよ」
「じゃ、リリオばいばーい」ミントが手を振った。
「じゃ、また今度ね」クロヒョウがそう言って、リリオの後についていき人々の中へと消えていった。
「ここまで連れてきてくれてありがとう。これはお礼ね。」
イオンがポケットから劇場のチケットを渡した。
「一枚で10人分なの。もしも他のところに行くことがあったら、最後でもいいから見に来てね。」
「そんな、お礼だなんて・・・」
「せっかく助けてくれたんだから・・・ね?じゃあ私はここで。見に来てね!」
そう言うと、イオンは待ちの奥へと走っていった。
「行っちゃった・・・」
「しかし、結構人がいるなぁ・・・」リュウギがあたりを見回して行った。
「あっ、お母さん探すんだったね。じゃあまずは情報収集だね。」
「その前にまず宿を探すも。疲れて歩けないも!」
「なんだぁウマ?あの程度でもうへこたれたのか?」ツバキが言った。
「ノポンはブレイドと違って疲れやすいんだも!」
「どうするリュウギ?」ミントが聞いた。
「宿を探してから。その後に情報収集だな」
◇◇◇◇◇◇
「フフフ・・・とうとうできたぞ!!今回のは最高傑作だッッッ!!!!」
暗い部屋で机に向かいながら一人の男が叫んだ。
「ツナヨシさん。インクロナナフシ持ってきましたよ」イオンが扉を開けて入ってきた。
「ありがたいが・・・少し一人にさせてもらえないか?僕はこれまでにないぐらい最高の脚本が書けた・・・!コールさんもきっと天国でこれを見て感動して涙をちょちょぎれさせていることだろうなぁ!!あーっ!僕の才能は素晴らしいッッ!!」
「ここ。置いておきますよ」イオンがインクロナナフシの入った袋を机の上に置いた。
「脇役どもめ・・・僕のことをつまらないだと?ふざけるなァァ!!だがこれはつまらなくなんてない・・・最高の・・・最高のストーリーだァァァ!!!」
イオンは叫ぶツナヨシを横目に見ながら扉を閉めた。
「全く。うるさい脚本家だよな」男がイオンに話しかけた。
「でも、あの人のおかげでこの劇場は続けてこれたし・・・」
「でも、あんたもそろそろ限界じゃないのか?」
「えぇ・・・でも・・・」
「これは劇場でやるにはもったいない・・・そうだ。カラムの遺跡・・・」
「ねぇねぇ!また新しい物語ができたのォ?」奥から一体のブレイドが現れた。
「あぁカムイ。今度のは最ッ高・・・傑作だよ。」
「僕達の時代が、すぐそこに・・・!」
◇◇◇◇◇◇
「うーん・・・」
リュウギが宿屋のソファに座り、テーブルとにらめっこをしている。
そこにミントが現れ、リュウギの隣に座った。
「宿屋の人たちに一通り聞いてみたけど、お母さんらしき人は見かけてないってさ」
「そうか・・・」
リュウギは目をつむり、少し考えた後に口を開いた。
「やっぱり、お母さんはもうインヴィディアには居ないのかな」
「どうだろうね・・・そもそも、まずその人を見かけたことが無いって人が多くて」
「・・・そもそも、ここフォンス・マイムに来てない?」
「まさか、ここまで来る間にモンスターにやられたとかも!?」
「まさか。お母さんはモンスターに襲われて死ぬような人じゃない。」
リュウギはきっぱりと言った。
「となると、別のところへ行ったとか・・・」アスカが言った。
「目的を元に戻そ。世界樹まで行く方法、探そう」ミントが言った。
「・・・そうだな。」リュウギが言った。
「ま、一応明日も探して、居なかったら世界樹への行き方を調べよう」
「世界樹への行き方・・・」リュウギがうつむいた。
「こっそり船に乗るとか?」
「さすがにスペルビアに手配されてる上にそれはリスク大きくないか?」
「あー・・・確かに」
「明日のことは明日のことだも!そんなことよりお腹空いたも!」
「そうだね。じゃあ今日の料理当番は私!」ミントが胸を叩いて言った。
「ウマは遠慮するも・・・」
「ウマは勘違いしてるって!今日こそ本当に私が料理上手なこと教えてあげるから!」
「俺達はミントみたいに胃強くないからさ。腐ったのだけだけはやめろよ?」
「まったく軟弱な男達・・・」ミントは深いため息を吐いた。
◇◇◇◇◇◇
夜も明け、インヴィディアの巨神獣に朝がやってきた。しかし早朝は人の数も少ない。
うっすらと朝の霧がかかっている。
リュウギは早く目が覚め、ふと外を散歩しようと思い立ち宿屋の外へと足を進めた。
「なんか不思議・・・だなぁ」
意味も無く、人気のないフォンス・マイムをただただ歩いていた。
しかし、しばらく歩くと男達の声が聞こえてきた。
建物の裏でトレーニングにはげんでいた。おそらく傭兵だろうか。
「アニマ・・・いや違うか」
インヴィディアはもともと巨神獣の中の国だからか、アルスト大陸が生まれる前とは大きく変わっていないのだという。しかし、アルスト大陸と地続きになったからなのか、以前よりも人の数は多いらしい。
「っていうけど・・・本当なのか?」
しばらく歩いていると、男の怒鳴り声が突然響いた。
「どういうことやねん!金払われんて!」
「せやで!ウチら古毛布にくるまれながらも旅人待っとんたんやで!」
先ほどのアルスト最強のドライバーが一人の男と口論をしている。
「そんなこと言われてもなぁ・・・あんたたちがそこで旅人を待ってる間、こっちの商売が十分潤ったんだ。もう仕事はない。」
「なんやと!?このジーク・B・
「やめなって!腰治ったばっかでそれ持ったら・・・」
ジークが大剣を持った瞬間に崩れ落ちた。
「ア、アカン・・・まだダメや・・・」
「ま、他のバイト探しなー?」
男はそう言って去っていった。
「あいつも大変なんだな・・・」リュウギは横目に見ながら歩き去った。
その後、フォンスマイムの掲示板に足を進めた。そこに一つ、気になる貼り紙がされていた。
「天の聖杯の伝説!アルスト再生物語!」