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ところどころが崩れているここはカラムの遺跡。数百年、いや数千年前からあったとされるこの場所はとても迫力のあるものだった。
しかしそれには目もくれず、リュウギたちは前へと足を進める。
「ツナヨシ・・・どうして!?」イオンは信じられないという目をしながらツナヨシを見つめる。
「すまないなイオン。 コールさんに送る―――最高の物語のためなんだ」ツナヨシは腕を縄で縛られたイオンの顎をクイッと持って言った。
「大事な大事な登場人物・・・だよね♪」ツナヨシのブレイド、カムイが馬鹿にするように言った。
「大丈夫さ。君の役目はこれだけ。なんと言っても僕の、大事な大事な昔からの知り合いだからね・・・」ツナヨシはニヤリと笑いながら言った。
カラムの遺跡の奥にあるカラム劇場。かつての戦闘によりその広い劇場は半分ほどの大きさになっていた。
「それでツナヨシ、本当に"あの女"は来るの?」ツナヨシの横で何本もの腕を持つブレイドを横に据える女、アリアが言った。
「リサーチ済みさ。彼女はこの町にいる・・・下ではあれほどの騒ぎさ。イオンのことを忘れていなければ必ず来るはずだ」
「あの女って・・・誰?」イオンが聞いた。
「そう焦らなくてもいいよイオン。見れば必ずわかるはずさ」
石を蹴り走る音が聞こえてきた。
「どうやら"あの女"が来たらしい。丁重にお迎えしようじゃないか!」ツナヨシは両手を大きく広げた。
「イオンさん!大丈夫!?」
「ミントちゃん!?」イオンが叫んだ。
「お、お前はさっき僕の劇場を批判した!?」ツナヨシは目を丸くして驚いた。
「ミントちゃんが言ってた"あの女"・・・?」イオンが聞いた。
「違うっての。どういうことツナヨシ?」アリアが聞いた。
「まさか違う人が来るとは・・・これは計算外でした・・・」
「イオンさんは返してもらうぞ!」リュウギが大剣の文字を「炎」に変え、炎の塊をツナヨシの方へと放った。
「ふん・・・まぁいいでしょう・・・!私の最高の物語を批判した罪を味あわせてやる!」ツナヨシが腰に据えていた双剣を構えた。
「ねぇツナヨシ・・・」アリアが声をかけた。
「こいつらを殺せばコアクリスタルが手に入る。ついでに僕のストレス発散もできる。一石二鳥だろう!?」
「はいはい分かった分かった・・・やってやろうじゃない!」アリアは自らのブレイドからエーテルキャノンを受け取り、リュウギたちへ放った。
「イオンさんは下がってて!」ミントがイオンを後ろへと下げ、ナックルクローを取り出した。
「所詮ワンカットしか出ない脇役がでしゃばりやがって!」ツナヨシが目には見えないスピードでミントに近寄り、双剣による連撃を繰り出す。
「悪いけどこっちからしたらあんたの方が脇役だっての!」ミントは攻撃をかわし続けた。
「アスカ!脚本野郎に一発お見舞いしてやれも!」ウマがツインガンをアスカに渡した。
「了解です!」
「あらあら、隙ありね?」アリアが溜めていたエネルギーをアスカに向けて放つ。
「しまった!」アスカは防ぎきれずにもろに喰らい吹き飛ばされた。
「アスカ!」ウマが駆け寄る。
「クソォッ!」リュウギが大剣をアリアに向けて振り下ろした。
アリアは舌打ちをしてキャノンで攻撃を受け止めるが後退した。
「バーニングソード!」
リュウギは大剣に力を込め、アリアとツナヨシに対し思い切り振り下ろした。
「ぐあぁっ!?」ツナヨシとアリアは吹き飛ばされた。
「なぁんだ。案外大したことないじゃん?」ミントが笑って飛ばす。
「舐めやがって・・・!」アリアがつばを吐いた。
「まさか・・・主役にピンチはつきものですよ?ここからが本番だ!カムイ!」ツナヨシは双剣をカムイに投げ渡した。
「イヒヒッ!最終章・・・かにゃ?」カムイが双剣を手に持ち、剣の先からエネルギーを出し赤いフィールドを展開した。
「…なんも起きないも」ウマが言った。
「そんなハッタリ攻撃!・・・」
ミントが走り出しツナヨシに攻撃を加えようとするが、突然ナックルクローの青く輝く刃が消えた。
「ウソッ!?なんで・・・」そう言った途端、ミントはツナヨシに捕まり、腹に思い切りの蹴りを入れられた。
「ハァッ・・・うっ・・・」
「お前・・・何したんだ!?」リュウギも走り出し、ツナヨシに攻撃しようとするが、途中で力尽きる。
「なんだこれ・・・力が上手く出ない・・・!?」
「これがカムイの持つブレイドに対する能力・・・!」ツナヨシが手を広げて言った。
「ダメだミント・・・!力が送れない・・・!」ツバキも苦しそうにしている。
「いいですか?ドライバーの使う武器はブレイドからエーテルエネルギーを送り込まれることによってその力を発揮する―――」
「そしてカムイはそのエーテルの流れを操ることができる!こちらへより多く送り込むことも、そして流れを断ち切ることも!」
「何だと・・・!?」ツバキが言った。
「アスカ!ツインガンを渡すも!」
「ダメですウマ・・・エーテルの流れが完全に断ち切られてます!エーテルの弾丸は発射できません!」
「そんな・・・どうしろって言うんだも!」
「どうしろもこうもないでしょう?あなた達の負け・・・とっとと死んでコアクリスタルを私達に謙譲しなさい?」アリアは小馬鹿にして言った。
「そんな・・・」ミントは力の送られていないナックルクローを地面に突きつけた。
「ミントちゃん・・・」
「私達は大丈夫です・・・イオンさんはもう逃げてください!」ミントが叫んだ。
「でも・・・」
「まったく、とんだ時間の無駄だった・・・さぁ、茶番はここで終わりとしましょう!」
ツナヨシはミントに向かい双剣を振りかざした。
ガキンッ!という音がした。ミントは力の送られていない武器で必死に攻撃を抑えていた。しかし15歳の少女と大人の男性では力はまったく違っていた。
「無理に抗わないほうが身のためですよ・・・?」
「やめろぉ!」リュウギは息をぜぇぜぇはぁはぁと切らしながら大剣に必死に力を送り込み、ツナヨシに一発の炎を喰らわせた。
「くっ・・・それほど衰弱しているのに・・・無駄なことを!」
「俺達はこんなところで立ち止まれないんだ・・・!こんなところで死ぬわけにもいかない・・・!」
「悪いけど私達にも目的ってもんがあるの。邪魔しないでくれる?」
「目的・・・?」リュウギは首をかしげた。
「その遂行のためには・・・あなた達は邪魔なの」
「そういえばツナヨシィ?こいつらもしかしてガーンやアルジェント達の邪魔したっていう・・・?」
「確かに!何度も何度も邪魔してきたのは君たちかぁ!」
「まさかお前達、ペルフィキオの連中か!?」リュウギは驚いた。
「その通り!だとすると話は早い・・・ここで死ねぇ!」ツナヨシは更に力を込めてミントを押す。
「ウマ、さっきからどうも不思議なんです・・・」
「どうしたんだも!?アスカ!」
「ここにいるブレイドは私にツバキ、リュウギさんに奴らを加えて5体のはず・・・しかし8体居る気配がするのです・・・」
「まだ3体居るのかも!?」
「―――どういうこと?」アリアがツナヨシに言った。
「知らないねぇ!今はこいつらを殺すほうが先だ・・・ァ!」
彼らの戦いを、物陰からひっそりと誰かが見ていた。
「駄目です!今出てしまってはペルフィキオの思うつぼ・・・」
「でもこのままじゃ・・・!もう見ているだけなのは―――」
「しかし、"あの時"と同じ状況・・・今出たとしても・・・」
「だけどこのままじゃリュウギが・・・もう迷わないってそう決めたんだ!」
「しかしお嬢様・・・!」
物陰から見ていた女性は腰のツインリングに手をかけた。
「今度は大階段のほうから二体のブレイドの気配がします!」
「何だと?」ツナヨシが言った。
「しかしどちらも普通のブレイドとは違う・・・欠けた気配が・・・」アスカが悩ませながら言った。
「誰かが来てる・・・?」リュウギが呟いた。
「うおおおおおーっ!!!」
野太い声が大階段を貫きカラムの遺跡へと響かせた。
「この声は・・・」
女性はツインリングから手を離した。
「任せたよ、亀ちゃん」