ゼノブレイド2.5   作:ナマリ

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ついに書きたかったところまで来ました。しかし思ったように書けず・・・
いずれ本作全てをリメイクしてみたいですね。


"母"

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

王都テオスアウレ。フードを深くかぶった女性と、獣のブレイドがエーテルのほのかな光で照らされている閑散とした街を歩く。

さきほどの騒動で、街の者はみな怯えて屋内に避難してしまっていた。流れた噂では「ペルフィキオが襲撃してきた」とのこと。あながち間違ってはいないが・・・

そんな中、落ち着いたことに気づいた一つの商店が「CLOSED」の看板を「OPEN」に変更した。

店主は店頭に急いで商品を並べ、一息つくと椅子に腰かけた。それを見てすぐさま、フードの女性と獣のブレイドが近づいてきた。

 

「あぁ~…久々に動いて肩凝った。早く別の国に逃げないとなぁ」

「しかしお嬢様、とうぶんは外への船は出ないはずです。それまでどこに隠れましょうか?」

「あー、確かに・・・」

 

女性は頭を抱えながら、店に並べられた商品をまじまじと見つめる。そのうちの赤い果物に指をさし、「これ下さい」と店主に言った。

店主は「あいよ。120Gだ」と口を動かしながら果物に手を伸ばし、布で出来た袋の中に入れて女性に渡した。

女性は「ありがと」と呟いてその店に背を向けた。

 

「ま、ともかく下層に移動してどこかあったかい場所見つけて、数日はそこで暮らすしか・・・」

 

閑散とした街に目を戻すと、そこには一人の少年が彼女を見ながら突っ立っていた。

紅緋色の剣を片手に彼女のことを涙目で見つめている。少年が―――リュウギが、小さく呟いた。

 

「母さん・・・」

 

剣を腰にしまい、少年が走り出す。

女性は向かってくる少年から逃げようとはしなかった。涙目の瞳はだんだんと大粒の涙を流していく。その顔にはかすかな笑みが浮かぶ。やがて少年は彼女の胸の中にバンッと勢いよく飛び込んでくる。

ぐすりぐすりとあふれる涙。泣くあまりヒクッとひきつる声を押し殺して声をあげた。

 

「俺・・・俺ずっと母さんと会いたくて・・・寂しくて・・・」

 

涙の粒はだんだん大きくなり、その頬を落ちていく。飛び込まれた女性―――“母”と呼ばれたその人は優しい顔でゆっくりとその頭を撫でる。

 

「そんなに泣くなよリュウギ・・・ごめんね。寂しい思いさせて」

「家に帰っても居なかったから・・・ひいじいちゃんが母さんは用事があるから数か月は帰ってこないって・・・俺、ずっと・・・ずっと・・・」

 

リュウギは胸でわんわんと声を上げて泣く。ずっと寂しかった想いを発散していく。

そんな彼に再び声をかけたのは、隣の獣ブレイドだった。

 

「お坊ちゃま・・・元気そうですね」

「ビャッコ!相変わらず毛並みいいな!」

「ええ。お嬢様がいつもクシで整えてくれますから」

 

ビャッコと呼ばれた獣のブレイドは彼に対しほほえみを浮かべた。

女性がリュウギの頭を撫でながらそっとつぶやいた。

 

「さて、どうしようかな・・・」

 

そんな二人と一匹の後ろから、数人が駆け寄る音が静かなこの王都に響いた。

それぞれが不思議なまなざしで見つめる中、そのうちの二人だけは怪しいまなざしを光らせていた。

 

「ニア」

 

その声の主はメレフ。リュウギの頭を撫でるフードを被った女性に向けられてものだった。

「うっ・・・」“ニア”と呼ばれた女性はバツが悪いという顔をして小さく唸る。

リュウギはそれに気づかないのか、ミント達に大声で声をかける。

 

「みんな・・・ごめんいきなり走り出しちゃって・・・・・・でもでも!ようやく母さん見つけたんだよ!」

 

リュウギが“母”と呼んだその人物をまるでみんなに自慢するかのように紹介した。

 

「その人がリュウギのお母さん?確かに似てるかも・・・」

 

メレフの後ろから現れたミントがリュウギの母親を見つめる。

しかし母はだんだん後ろに下がっていく。

それを制止するかのようにメレフが母に問いかける。

 

「やはり、私の推測は間違っていなかったようだな」

「ええ。ニア、あなたにはいろいろと聞きたいことがあるの…」

 

カグツチが言い終わる前に、遅れてジークがサイカと共に現れた。

 

「いきなり走り出すなって!ただでさえ結構疲れてんのに・・・」

「あれ?リュウギなんでニアと・・・」

 

リュウギがその母と共に一緒にいるのを不思議に思っているようだ。リュウギもそれに対して疑問を浮かべる。

どうしてメレフにジークが母のことを知っているのか?

 

「母さん、メレフのこと・・・知ってるの?」

「うん、懐かしい仲、だからね…」

 

その視線は一つのところに集められている。リュウギとその女性のもとに。

リュウギの母は視線を彼らのもとには向けず、ただ下をうつむき続けていた。

 

「ジーク、あの少年と共にいて何も気づかなかったのか?」

 

メレフがジークに語り掛ける。メレフの横のカグツチもまたそれに便乗する。

 

「どうしてあの少年、リュウギが炎と水、そして光の力が使えるのか、考えたことはない?それにさっき彼が使ったあの技・・・」

「え?そりゃあそういうブレイドやから・・・」

「違う。―――なぜその力なのか…それはリュウギがニアとレックスの子供であり、ハーフブレイドだからだ」

 

その一言にその場が凍り付いた。

 

「え・・・」

 

 

 

「「えええええええええええええええーーーっっっ!?!?!?!?」」

 

一番わかりやすい反応をしたのはジークとサイカだった。

リュウギの母・・・ニアはそれを聞いて悲しみの表情を浮かべた。

 

「いやいやいや!ありえへん!ありえへんて!」

「せやせや!だってレックスはホムラにヒカリと一緒に・・・」

「だからこそ、だ。ニアからは聞きださないといけないことが山ほどある。なぜレックスとの間に子供がいる?」

「それは・・・」

 

ニアは答えに迷った。リュウギはその状況を呑み込めていないようだった。

 

「どういうことだよ?俺が母さんと父さんの子供で何が悪いんだよ」

「そうだもそうだも!そもそもレックスって誰も?」

「ウマ知らないの?天の聖杯のドライバーで、楽園に行って世界を救ったっていうあの英雄の・・・」

 

ミントがちんぷんかんぷんというウマに説明をしてあげた。ウマは「うーん、なんか知ってる気がするも」と答えた後、ミントとウマは顔を合わせた後、リュウギのほうを再び向き「ええーっ!?」とジークとサイカほどではないにしても驚いた。

 

「リュウギが・・・天の聖杯のドライバーの子供!?」

「それってつまり・・・お父さんすごい人だってことだも!ウマのパパなんて花粉玉吸いすぎて死んだのにも!」

「レックス・・・まさかお前あいつの息子・・・!?」

 

リリオも目を丸くして驚いているようだ。クロヒョウとアスカも驚いていたが、ツバキはまだ誕生したばかりなのでよくわからないようだ。

そんな驚きの中、メレフとカグツチの言葉が空気を裂いた。

 

「人間とマンイーターの間で交配した存在、ハーフブレイドの前例はたった一つしかない。かつ、その前例ではハーフブレイドが巨神獣を一つ墜としたとある」

「ここまで言えばわかるわね?ハーフブレイドは危険な存在なの。だから・・・」

「我々の手で保護させてもらうぞ、少年」

 

メレフはその腰からサーベルを取り出し、リュウギと地面を見つめるニアに向かえて構えた。

メレフにとって、ニアとレックスの息子・・・すなわち、マンイーターと天の聖杯のドライバーの息子。ただの子供でもなければ、ブレイドではないことは明白であった。

 

「・・・させない」

 

黙っていたニアの口が動く。その腰にぶらさげたツインリングを手に構え、すぐさまリュウギの目の前に飛び出す。その手のツインリングはメレフに向けられている。

 

「母さん・・・?」

「私にとっては唯一の、そして大事な息子なの…!たとえメレフでも、手出しだけは絶対にさせない!」

 

ニアとビャッコはメレフを前に勇ましく構える。メレフは「はぁー…」とため息をつきながらも、足を止めない。

 

「保護するだけだ。乱暴なことは一切しない」

「ウソ!最近のスペルビアの乱暴っぷり、知ってるよ」

「あれはカルマが・・・言ってもわからないようだな。ともかく、少年は保護させてもらう。邪魔をするなら・・・」

 

メレフがサーベルを振るうと、メレフとニアの間で火花散る戦いが始まった。

メレフが振るったサーベルは蛇腹のごとく蒼い炎をまといながらしなる。ニアの持つツインリングはそれをはじき返すが、サーベルの先端が右腕をかすった。

すぐさまメレフは次の攻撃に入る。今度は二つのサーベルを高く舞い上げ、思いきり地面にたたきつけた。蒼炎の壁が現れ、それがニアの左右に巻きあがる。

ニアはツインリングの一つをメレフのほうへ投げる。空いた片手でニアは花や葉のようなものを纏った青い曲剣を生み出し、その剣の先からあふれ出た水が蒼炎を打ち消す。

メレフは放たれたツインリングを避け、すぐさま曲剣を持つニアへと走り出す。向かってくるメレフに対し、ニアはその曲剣で攻撃を受け止め、鍔迫り合いとなる。

 

「さすが特別執権官様…!腕が鈍るどころか、前よりも強くなってる」

「当たり前だ。20年という長い月日の中でずっと鍛錬を怠っていたとでも?」

「まさか、こっちだってなんもしてないわけじゃないから!」

「ちょ、ちょちょちょお二人さん待ちぃや!」

 

二人の間に大剣を持つジークが入り込んできた。

 

「まぁまぁ、そんないきなり剣立てて戦うなって!せっかく久々に会えたんやないか!お茶でも一杯飲みながら・・・」

「邪魔をするな」

「亀ちゃんは黙ってて!」

 

二人が思いきりジークを蹴り飛ばす。そのまますぐに二人は戦いを再開。

 

「メレフ!大体もうカルマ居なくなったんやしリュウギを保護する理由なんてないやろ!どうしてそこまで・・・」

「さっきも言ったはずだ、ハーフブレイドは危険だと。カルマの目的とこれとは関係ない。さっきまで共闘していたのはカルマにハーフブレイドが渡らないようにするため・・・奴らに奪われないためにも、なんだぞ」

「そうやってリュウギを閉じ込めるつもり・・・なんでしょ!?」

 

ニアが曲剣で思いきりメレフのサーベルを破る。メレフは意にも介さず態勢を立て直す。

 

「それは保護した後にどのような行動を取るかによる。まずはそのためにも…」

「一体これは何の騒ぎですか?」

 

王宮の方からネフェルとワダツミ、そして数人のスペルビア兵たちが現れた。

 

「ワダツミ、少年を保護する。手を貸してくれるか?」

「ああ、もちろんだ」

 

ワダツミが返事をし、右手をあげて兵士に行けと命令をする。

 

「ワダツミ、何をするつもりですか!?」

「陛下、心配は要りません。これは我が国、いやアルスト全体のため。説明はまた後で致します」

 

ワダツミが刀を手に迫り始める。

横から唖然として見ていたミント達は呆然と座っているリュウギに向かってそっと耳打ちする。

 

「ね、ねぇリュウギ!なんか狙われてるみたいだけどどうする・・・!?」

「俺は保護なんて受けないさ。こんなところで立ち止まるわけにはいかない・・・」

「じゃあ・・・」

「逃げるも!」

 

ウマが言った途端、リュウギ達は向かってくるスペルビア軍とは反対の方向へ逃げ始める。ジークとサイカは「えーっ、ちょちょ・・・あーもうしょうがねぇわ!」

と言いながらリュウギ達についていく。

 

「母さん!母さんも一緒に!」

 

リュウギがニアに声をかける。ニアはいまだメレフと交戦中。攻撃を受け止め続けるだけで、一切攻撃をする隙がない。

そこにビャッコが落ちていたツインリングを口に咥えてメレフのサーベルを落とす。

ニアはそこに反撃・・・はしなかった。逃げるリュウギ達の後に追い付こうとビャッコからツインリングを受け取り走り出した。

 

「待て!」

 

メレフが再び蒼炎の壁を生み出し、それでニアを囲もうとするが、リュウギの剣から放たれた水流がそれを打ち消した。

リュウギはその剣をメレフへと向ける。

 

「逃げるつもりか少年」

「ああ。俺は母さんとの約束を守る。楽園に行って・・・父さんを見つける。それまでは絶対に立ち止まらない」

「その願いのために、この世界が危機に見舞われてもいいのか?」

「俺がハーフブレイドだかなんだか知らないけど、俺は絶対にそんなことはしない。それも母さんとの約束だからだ」

 

水を纏っていた剣の姿が変わる。中心の文字は「光」となり、まばゆい光が剣から発され、メレフら兵士をすべて包み込んだ。

包み込む閃光はやがて消えた。光に麻痺する瞳を凝らし、リュウギ達が立っていたところを見るが、そこにはもはや誰も居なかった。

 

「また逃げられたか・・・」

「従姉さん!一体どうして彼らを襲って・・・」

 

メレフが深く息をつく。

 

「ハーフブレイド。あの少年こそがそれだったのだ。天の聖杯を凌駕する力を得るのに一番近い存在・・・」

「ハーフ、ブレイド・・・?」

 

ネフェルはその言葉を反復した。ブレイドにそんな種類がいたとは・・・

 

「底知れぬ危険性を持った存在など、野放しにはできないだろう?」

「ですが・・・」

「本国に戻ったらすぐに捜索隊を派遣する。―――その前に、ネフェル。首脳会談の準備をしておいてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

第5話 母




なんと壮大なレクニアだったのです。
といっても伏線は結構単純なのでみなさん分かっていたかもしれませんが・・・
次回からは第6話。次話は早く終わるといいなぁ(
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