ゼノブレイド2.5   作:ナマリ

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今月中にはあと1,2本更新出来たらいいなぁと思ってます。やる気が出てきました。


"サイオク村"

 

◇◇◇◇◇

 

場所はスペルビア新帝国、皇宮。今から各国による首脳会談が始まるようだ。参加するのは開催国であるスペルビア、そしてインヴィディア、ルクスリア。公正を期すためにインヴィディア領アヴァリティア商会、そしてイヤサキ村などを含むスペルビア領リベラリタス自治区の代表も参加するという。

 

突然の首脳会談に何より驚いたのはスペルビア帝国民だ。港に見慣れない巨神獣船が大量に停泊している様子を見て、様々な憶測を飛ばした。

 

「戦争でも始めるんじゃないか?」

「スペルビアはなにかまずい事でもしたのか?」

「ルクスリアまで来てるのを見ると、ペルフィキオに関わることじゃないのか?」

 

ペルフィキオに関わること……それは正解だった。首脳会談の議題はペルフィキオの目的がハーフブレイドを手に入れること、そしてそのハーフブレイドというのがニアとレックスの息子であるリュウギであるということが明らかになった今、各国はどのような動きをするのか……ということ。

ネフェル、メレフを中心にインヴィディアからラゲルト女王、ルクスリアからはゼーリッヒ。リベラリタスの代表に呼ばれたのはイヤサキ村の村長、ブラットという初老の男性だった。全員が席に座ったと確認し、ネフェルは口を開いた。

 

「突然の首脳会談の申し入れ、受けてくださりありがとうございます。」

「いきなりスペルビアの皇帝が変わったと聞いたときは驚きましたが…まさかあなただったとは。てっきりすでに死んでしまったものだと」

「皇帝の座を追われ、この立場に戻るまで長い年月がかかりました。一度死んだとされた人間が声をあげるのはとても難しい事でしたから」

 

ラゲルトの驚きに対し、ネフェルは淡々と説明を行った。

その横に座っていたメレフが事の次第を話し始めた。

カルマが実はペルフィキオのボスであったということ。ネフェルを追いやったクーデターは彼らが起こしたものだということを。

 

「カルマがペルフィキオの・・・?つまり私たちはヤツに騙されていたということですか!?スペルビアはいったいどのように責任を取るつもりで・・・」

 

事の次第を聞き、激情したブラット。メレフはペルフィキオのメンバーを全員逮捕することこそが我々に課された責任だということを話した。

 

「……それで、そのペルフィキオの連中がどこにいるのかということはすでに分かっているのか?」

「いいえ。つい先ほどペルフィキオの捜索隊を派遣したところです。スペルビアの今持っている情報網の限りを尽くして捜索しています」

「なるほど……しかし必然とはいえ皇帝を突然変えるとはな。国民の混乱も大きくなるだろう」

「それについての心配はない。この事件が収束するまでネフェルが新皇帝に即位したということは国民には隠し通すつもりだ。騙すのは気が引けるが、混乱に乗じてペルフィキオの連中が動き出したら我々にとっては不利だからな」

「ほう…」

 

メレフとブラットがにらみ合う。その間に入ってきたのはゼーリッヒだった。

 

「その捜索隊にはハーフブレイドの少年、リュウギとその一行を捜索する命は出しているのか?」

「もちろんです。ジーク王子のことも……」

「いやはや、とんだ身侭な息子で申し訳ない」

「ペルフィキオの捜索、並びに逮捕。そしてハーフブレイドの少年、リュウギの保護を第一の目的として我々は動きたいと思っている。各国の力添えをいただきたい」

「構わないが……そのハーフブレイドの少年は天の聖杯のドライバーの息子だと聞いた。ならば楽園陥落の事件のことを……」

「楽園陥落…?」

 

メレフはその言葉を聞いて目を丸くした。楽園に関連する事件は前にカルマとラゲルト女王の話の中で聞いた。そのことだろうか。

 

「各国首脳のみ知っている楽園での事件のことですね…噂には聞いたことがあります。スペルビアの皇帝となった私として聞きたいと思っています」

「首脳のみというのなら、私は退席いたします」

「いえ、メレフ執権官、あなたも聞くべきだと思います。私よりも長くいたのですから、あなたにも知る義務があると私は思います」

 

ネフェルの言葉を聞き、「分かりました」と答えメレフは座る。ネフェルが口を開こうとした途端、ラゲルト女王が咳払いをして声をあげる。

 

「ところで、アヴァリティア商会代表として来るはずのニルニーはどうしたのです?」

「ああ、彼ならかなりのご多忙ということで今回は来られないとのことで……」

「多忙のため来れない?まるで私たちが暇を持て余しているみたいじゃないか!」

 

ブラットが声を荒げる。

 

「落ち着いてください。彼は特別にこちらの通信器具で顔と声だけの形で参加することになっています」

 

そう言うと、奥からアヴァリティアのニルニー直属のノポンが二人、画面のついた通信器具を台車のようなもので運んできた。バッテリーのようなものを機械に差し込むと、画面にニルニーの顔が表示された。

 

「これは…まさかモルスの地の技術で?」

「いいえ、前からアルストにあった技術でスペルビアのものです。もっとも高価なため他の国にはほとんど出回りませんでしたが…」

 

画面の奥のニルニーが咳ばらいをしてこちらを向いた。

 

「これはこれはみなさんお揃いで嬉しいですも。とりあえず大事な用件だけ伝えてほしいですも。ここ数週間分の書類を一気に片付けている途中で手も足も耳も離せないんですも」

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「ここがアヴァリティア商会じゃ」

 

セイリュウに頼み、リュウギ達はアヴぁリティア商会へとやってきた。手形を発行する最後のチャンス。ここを逃したらあとは諦めるか強行突破か……

 

「……私の知ってるアヴァリティアとは違うみたいなんだけど……こんなに自然、豊かだったっけ?」

 

辺りには直径10メートルはあるような大木が何本も生えており、木と木の間には橋がかけられ、木の中には街灯のようにランプが埋め込まれている。あたりにはノポン族が数匹……数人歩いている。

 

「ここはアヴァリティアはアヴァリティアでも中央港ではないみたいやな」

「この辺りはサイオク村と呼ばれるノポン族の住処ですね。中央交易場や港で働くノポン達が多いと聞きます」

「でもなんで中央港じゃなくてサイオク村に?ひょっとしてひいじいちゃん間違えた?」

「間違えるわけがないじゃろ。年はいってもボケとらん。お前らはスペルビアから逃げてきたんじゃろ?ならお尋ね者になっていてもおかしくはない。いきなり港に現れるのはリスクがありすぎるからのぉ」

「へー。意外と頭良いんだね」

「なんじゃ、おぬしはわしのことを馬鹿にしとるのか!?」

 

ミントの発言にすこし憤るセイリュウ。アスカとリリオがまぁまぁとなだめる。

 

「どうしてサイオク村なんだも!中央港に行ってほしいも!」

「それは今説明したやろ……」

「このまま中央港に行っても見つかるだろうし…どうしよっか…」

「それなら、ウチに服とかあるからそれで変装していけば?」

「じゃ、そうしていくか」

 

セイリュウをなだめながらリリオが賛同する。リュウギ達は家へと戻り、タンスなどから使えそうな衣服を持ち出してきた。

ジークとサイカはフードがあるので平気と言い張って、頑なに着ようとはしなかった。

ミントはサルベージャースーツでは目立つのでリュウギの服を借りた。その姿は少年っぽく見える。リュウギはなぜか耳付きポンチョを着ることに。

 

「なんで俺が…母さんが着ればいいのに」

「いいじゃんいいじゃん!似合ってるよ!」

 

各々服を着替えてセイリュウに一抹の別れを告げてアヴァリティア商会中央港へ向かい歩き出した。

 

「恥ずかしいなぁこれ…」

「まさかこんなの着てるとは思われないだろうし、いいんじゃない?」

「ミントは男みたいだな」

「そりゃあ男の服だし」

 

ウマはアスカに抱えられて進む。アスカがダボダボな服をきてその中に入っている。「脚でも怪我したのか?」とリリオに聞かれたが、すぐに適当な言い訳を作って言い逃れた。ウマにとってサイオク村はなるべく来たくない場所なのだ。その理由は―――――

 

「ウマ!見つけたも!」

「ももっ!?」

 

リュウギ達がサイオク村を半ばまで進んだ時、突然後ろから声がかかった。

 

「ん?ウマの知り合い……」

「な、なんで分かったんだも!?見えないはずだも!?」

「ウマからは独特のニオイがするんだも!このクマの鼻はごまかせないも!」

「んなこと聞いたことないも!姉ちゃん嘘つきだも!」

「言ってなかっただけだも!アスカ!ウマ連れてこっち来るんだも!」

「は、はいぃ……」

 

アスカはウマを連れてクマと名乗った赤いノポンのもとへと歩み寄る。

が、その途中でウマは服の中から飛び出て逃げ出す。

 

「こ、こんなところで捕まるわけには行かないんだも!」

「逃がさないも!」

 

クマがそう言うと、どこからともなく数匹の小さいノポン達が現れ、すぐにウマを囲んだ。

 

「もももっ!リュウにアオにキツネに……」

 

およそ10人ほどもいるノポンの名前を読み上げていくウマだったが、全員の名を呼び終わる前に彼らに捕まってまるで胴上げのように連れていかれた。

 

「ああーっ、ちょっとウマをどこに…」

「ウマには少々お灸をすえなければならないんですも!悪いけどウマはお借りしますも!」

「えーっ!?でも…」

「ウ、ウマとアスカのことはいいからリュウギ達は先行っててほしいも!」

 

心配するリュウギとミントをよそに、ウマとアスカはノポン達に連れ去られていく。

 

「…で、どうするんだ?」

「ま、まぁウマの知り合いみたいだったし…大丈夫だろ」

 

ツバキが連れ去れていくウマを見ながらリュウギに問いた。しかし連れていかれてしまったので、どうしようもないので、このままサイオク村を抜けてアヴァリティア中央交易港を目指すことに。

まさかウマがアヴァリティアに行くのに乗り気じゃなかったのはこのことか…ということはみんな頭の中で考えていた。

 


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