ゼノブレイド2.5   作:ナマリ

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タルタリ焼きってどんな料理なんでしょうね。この中では想像を含めて書いています。
あと合体したアルス達がどんな形だとかはエンディングを少し無視してしまうかもしれません。


“タルタリ焼き”

「はあっ!?」

 

リュウギが目覚めると、そこは既に誰かの家の中だった。

 

「ようやく目が覚めたんだ…心配したよ。殴られたまんまずっと起きなかったんだもん。死んだかと…」

 

「俺も死んだかと思った…花畑というか、楽園が見えたというか…」

 

「ふふっ…ま、生きててよかった。死んだ人に礼なんて弔辞しかないし。」

 

二人は思わず笑い出してしまった。

 

「良かったぁ!やっぱ死んだんじゃなかったんですねぇ!」

 

 突然、扉が叩くように開いた。サルベージャースーツを着た数人の男性が部屋へ駆け込んでくる。

 

「ちょっと!リュウギは人見知りなんだからそんな風に接したら驚いちゃうでしょ!?」

 

「俺は猫かっての…」

 

リュウギがため息をつく。

 

「君がリュウギくんかい?」

 

サルベージャーの中の一人、坊主頭の男性、リストがリュウギに声を掛ける。

 

「は、はい…そうですけど…」

 

「ありがとう。君のおかげで俺達は野盗達に殺されなくて済んだ…心から感謝する。」

 

「は、はぁ…そりゃあどうも…」

 

あまりこういうことに慣れていないのか、リュウギはつい顔が赤くなる。

 

「そんなに照れなくていいのに。こういう時は「当然ですよ!困った人を見たら助けたくなる性分でございまして!ハッハッハッハ!」とか言うもんだよ?」

 

「別に困った人を助けたくなるような性分じゃないって。オルゴール取り返す為に、まぁ嫌々従ったというか…」

 

「あのオルゴールは君のだったのかい?」

 

「え、ええまぁ…ミントに助けにいかなきゃ返さないって脅されまして…」

 

 ミントはへへへ…と言ってそっと顔を下に向ける。

 

「ミントのせいですまない。いつも変に勝気でサバサバしてるもんでね…」

 

「そ、そんなこと言わなくても良いでしょ!?」

 

 ミントが顔を赤く火照らす。

 

「ハハッ。しかし、グーラの子守唄か…君はもしかしてグーラ出身かい?グーラ人特有の耳は見当たらないが…」

 

「いや、グーラの出身ではないです。」

 

 リュウギがオルゴールを取り出して言った。

 

「お母さんがよく歌ってくれてたんです…たまにホームシックになるときは聞いてて。」

 

「ほう…」

 

「数年家に帰ってないんだってね?やっぱりホームシックってなるんだ?」

 

「ああ。お母さんは優しい人でね…たまに厳しいことも言うけど、本当に俺のことを想ってくれてる。」

 

 

「お母さん…か。うらやましいな―――」

 

 ミントが下を向いた。リュウギが見ると、それは悲しそうな顔をしていた。

母の話で、少し微笑ましいような、どんよりしたような不思議な空気になった。

それを切り裂くようにサルベージャーの一人が手を叩いた。

 

「…さぁて!せっかく命を助けくれたリュウギくんもいますし、ちょっとしたパーティでもします?」

 

「そりゃいいな!ミント、いつもの頼めるか?」

 

うつむいていたミントが顔を上げた。

 

「え?…えぇ!もちろん!今日も張り切って作りまーす!」

 

 ミントが腕をまくって部屋の外へと駆け出す。

それを見てリュウギはきょとんとしていた。

 

「あのー…ここって誰の家なんです?」

 

「ここは家じゃない、宿屋だよ。ゴルトムントに帰るまで俺達はここに居るんだ。」

 

「へぇ…宿屋…でも料理って?」

 

「すぐそこの店が厨房を貸してくれるって言うんだ。ミントの料理は旨いぞ~。食べたらほっぺた落ちるくらいにな。」

 

「ミントは料理が得意なのか…」

 

「得意っちゃ得意だが、皿洗いは苦手なようでな。皿洗いは俺達の仕事だ。」

 

 そう言ってリストは部屋から出て行った。リュウギも追うように部屋から出ていこうとする。

 

「あ、俺の剣は…」

 

 部屋を見渡すと、すぐ頭の上にリュウギ愛用の緋紅色の大剣があった。

 

「良かった良かった…っと。」

 

 それを確認すると、リュウギは部屋から出て行く。

宿屋のすぐ外はトリゴの街の広場だった。既に夜だというのに、街は活気で溢れていた。

頭の上に猫のような耳を持つグーラ人がラコント噴水の前でトリゴリウトを弾いていた。

グーラ人の街ということもありグーラ人が多いが、リスト達のように外からの人々も少なからず街を歩いていた。

 

 

「トアミ・フィッシュにいらっしゃい!魚料理ならうちだよ!」

 

「ティモー楽器でしかトリゴリウトは売ってないよぉ!どうだい!そこの兄ちゃん!」

 

「お母さーん!今日はあまあまういんな食べたーい!」

 

「やっぱりネウロミネンの織物は最高ねぇ…」

 

「おーい!こっちだこっちー!早く来いよー!」

 

 たくさんの人々がそれぞれの会話を交わしている。かつてこのトリゴの街は今より活気がなかったという。

しかし、雲海がなくなり、国同士の隔たりもなくなってからあらゆる国、あらゆる街が栄えたのだ。

このトリゴの街もそんな余波を受けたのだろう。夜であるというのに、昼と変わらないほどの人々の明るさ…

いや、むしろ昼よりも明るいのかもしれない。

 

「やっぱトリゴはいいよなぁ…」

 

 リュウギがそっと独り言をつぶやく。

しかし、木製の家々には似つかないような大きな船が遠くに停泊していた。

 

「スペルビアの船か…」

 

 

 

 

 雲海がなくなってから20年。今もなおこのグーラはスペルビアの支配下にある。

遠くにはスペルビア領主館も見える。グーラの建築方式で建てられているその館だが、その前にはスペルビアの兵士が

突っ立っている。領主の家を守る門番だろうか。

 

 ここからでも見える大きなスペルビアの船は金属でできていて、巨神獣を覆うように作られている。

その大きさ…形から見て輸送船だろうか。中身は食料かコアクリスタルか…

 

「このトリゴにはコアクリスタル保管庫があってな。」

 

「うおっ!?」

 

 突然後ろからリストが現れる。

 

「すまんすまん、驚かせちゃったかな?」

 

「いや、別に大丈夫です…」

 

「定期的にスペルビアがコアクリスタルをこのトリゴに運んでくるんだ。見れば分かると思うが、保管庫はスペルビアの建物で出来ている。つまり金属ってわけだ。」

 

「どうしてスペルビアは本国に保管庫を作らないん…ですか?」

 

「色々と事情があるんだろう。厳重な警備もされてるし、安全ではあるけどな。」

 

「ほぉー…」

 

 リュウギが感心していると、何か良い匂いがしてくる。

 

「くんくん…この匂いってもしかしてェッ!?」

 

 リュウギの顔色が変わる。何かに気付いた顔だ。

 

「ミントの得意料理、タルタリ焼きだ。」

 

「タルタリ焼き…!?」

 

 

「みんなー!出来たよー!」

 

エプロンを着たミントが、すぐ右後ろの扉から出てくる。

サルベージャー一団とリュウギはカフェ・サヴィーの飲食スペースへと向かい、椅子の上へ座る。

どうやら、宿屋とこのカフェは共同で運営しているようだ。

 

「お待ちかねのタルタリ焼き!どうぞ!」

 

リュウギの前にタルタリソースのかかった焼き魚…つまり、タルタリ焼きが置かれた。

 

「うおおっ…これはッ…」

 

「ではみなさん!」

 

立っているミントが手を合わせている。

 

「いっただき…」

 

ミントが言い終わる前に気付いた。リュウギがあいさつもせずに既に食べている。

 

「ちょっとリュウギ!?ちゃんといただきますって言わないとダメでしょ!?」

 

「へぇっ…?あっ、ごめんごめん!腹減ってたもんでつい…」

 

リュウギが口にタルタリ焼きをつめこんだまま手を合わせる。

 

「いただきますっ!」

 

そう言うと再びタルタリ焼きに手を伸ばす。

 

「はぁー…まったく―――いただきまーす。」

 

ミントがあきれ返るような声でいただきますの挨拶をする。その後サルベージャー達もいただきますと合唱した。

ミントはエプロンを脱いで机の上に置き、リュウギと同じ席に座る。

 

「少しはマナーってもん守りなさいよー。みんなでいただきますっていうほどおいしくなる魔法はないんだよ?」

 

「俺、タルタリ焼き大好きなんだよ!母さんの料理が一番だと思ってたけどランキング逆転するなぁこれは…」

 

「…話聞いてる?」

 

「ん…あぁ。マナーっておいしいもんなのか?あと…ミントって魔法使えんの!?」

 

「絶対聞いてないでしょ…」

 

ミントがタルタリ焼きに手を伸ばす。ちょっとした怒りも収まるほどの美味である。

 

「ん~!自分で言うのもなんだけどやっぱ私の手料理はおいしいわぁ…」

 

「俺も同じ気持ち!」

 

リュウギが綺麗に食べ終わった皿をミントに突き出す。

 

「おかわり!」

 

「…えっ!?もう!?早くない!?」

 

 

 

 

楽しい夕食も束の間。男のサルベージャー達は厨房で食べ終わった皿を洗っていた。

リュウギとミントは椅子に腰をかけ、机に体をだらんとさせていた。

 

「あぁ…美味しかった!ミントって前職は料理人か何かか?」

 

「それ、褒めてるの?貶してんの?」

 

「褒めてんだ。いやぁ、朝食が楽しみだ…」

 

「さすがに明日はタルタリ焼きじゃないよ?美味しいまた別の料理!」

 

「マジかぁ!これは早く寝たくなるなぁ!」

 

リュウギが笑顔をミントに向ける。その笑顔を見て、ミントもまた笑顔になる。

 

「しっかし、あんた大食いだねぇ。追加のタルタリ焼き3枚も作っちゃったよ。」

 

「へへっ…ごめんな。近頃草とかしか食ってなくてさ…」

 

「草って…ブフッ」

 

ミントがつい吹きだした。

 

「だってお金ないしさぁ…それに買い物ってのも好きじゃないだよな…知らない人と話すっていうのがつらくて。」

 

「さすが人見知り。リストさんとの会話もなんだかぎこちなかったし?」

 

「仕方ないだろ。あんまり人と話したことなくてさ。」

 

「そのくせ私とはよく喋るじゃん。」

 

「まぁ…ミントは別かな。お母さんに似てるというか…」

 

「それは褒めてるのか…貶してるのか…」

 

「どっちでもないって。」

 

 

「どうした?二人仲良くしちゃって。」

 

「あ、リストさん…」

 

リストが二人に近づく。

 

「しっかし、リュウギくんのせいで洗う皿が増えちゃったよ。もう腕がくたくただ。」

 

「そっ、それはごめんなさい…」

 

「違う違う。たくさん食べるのは良いことだって言いたかったんだ。まわりくどくてすまんな。」

 

「ところでリストさん。」

 

ミントがリストに話しかける。

 

「リリオとクロヒョウの二人はどこ行っちゃったんですか?」

 

「ああ。あいつらは故郷の村に帰ってくるとか言って、グーラの反対側に行っちまったよ。」

 

「故郷…イラーダ村か。」

 

「イラーダ村?」

 

リュウギがミントに聞く。

 

「あんたが助けたあの傭兵。リリオっていうの。20数年前に滅びたこのグーラのイラーダ村ってとこ出身なんだって。」

 

「久々にグーラに来れたし、立ち寄ったってわけか…」

 

「ま、朝には戻ってくるでしょ。まぁ戻ってきてもあんまり役立たない傭兵なんだけどねぇ…」

 

「役立たない傭兵か…なら心配になるな。」

 

「どうして?」

 

「縄張りバルバロッサがうろついてるだろ。襲われないかどうか…」

 

「大丈夫だって。自分の身を自分で守ることぐらい、できるはずだしね。」

 

ミントが一蹴した。

 

「まぁ、そうだな…」

 

 

 

 

そんなたわいのない話をしている間、街はだんだんと静かになっていく。

活気のあった数時間前がウソのように。家々から漏れる光もだんだんと少なくなってきた。

 

「そろそろ寝る時間かぁ…」

 

「随分と大変な一日だったね。」

 

ミントがリュウギの肩を叩く。

 

「さ、二人とも部屋に入って寝るんだ。まぁ、朝早いってわけじゃないが…」

 

リストに言われ、二人は宿屋の部屋へと戻る。

 

「まだ聞いてなかったけどさ、楽園ってどうやって行くんだ?」

 

「ん?…まず、スペルビアに行って…手続きして…それで楽園に向かうんだよ。」

 

ミントが荷物を整理しながら返事をする。

 

「楽園ってそんな簡単に行けたのか…知らなかった…」

 

「昔は誰も行ったことがなかったんだってね。でも雲海が無くなってからは自由に行けるとこになった…ずいぶん不思議な話だよね。私は世界樹登ったことないけど。」ミントが微笑む。

 

「あ、そうそう。スペルビア行きの船は明日のお昼ごろに出発するんだって。だからゆっくり寝てていいよ。

…とは言っても、10時前には起きててね。せめて。」

 

「おう。そんじゃ、おやすみー。」

 

「おやすみー。」

 

リュウギが布団を首までかけて横になる。既に時間は11時…明日の朝食はどんなものだろうと、そんな期待を胸に込めて眠りに入る。

 

 

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