◇◇◇◇◇
スペルビア新帝国、第二コアクリスタル輸送船――――――
「侵入者発見!炎を操るドライバーであることを確認!現在、コアクリスタル保管室に向かっている!!
総員、コアクリスタル保管室を死守せよ!」
輸送船の中の共同寝室に鳴り響いた。スペルビア兵の隊長だろうか。野太い声を聞き、寝ていた兵士達は飛び起き、武器を構えて寝室から出て行く。
「やらせるかよ!」
通路を塞ぐ数人のスペルビア兵。煙式の機関銃を構え、目の前にいるドライバーを狙う。
「今すぐその武器を捨て、降伏しろ!すれば発砲はしない!」
ドライバーの男は舌打ちをし、剣を構える。
「もう一度警告する。武器を捨てろ!」
「ったく…雑魚共が図に乗るなよォッ!」
ドライバーは剣から炎の衝撃を出し、それを食らったスペルビア兵が数人倒れた。
「発砲許可!放てぇ!」
兵士達が銃を放つ。銃弾は恐ろしいほどのスピード。常人であれば避けることはできない。
だが、相手はドライバー。その銃弾をかわし、懐へ潜り込む。
「ぐあぁぁ!」
次々と倒れていく兵士。しかし、兵士はどれほど倒しても次から次へと出てくる。
「もっとおとなしくやれないのかショット?さすがに複数人相手は辛いだろ?」
「雑魚がいくら固まったところで敵じゃねぇよ。フンッ!」
ショットの放った斬撃が、次々と兵士を倒れさせていく。
「そろそろ保管庫だな。」
“コアクリスタル保管庫”と書かれた扉に高温となった剣を突き刺す。瞬く間に扉はどろどろに溶けていく。
「ほぅ、想像以上にコアクリスタルだらけじゃねぇか…」
船体の半分はあるかというほどの広い部屋。大量のコアクリスタルが綺麗に整列されている。
「さてと、持てる分だけいくか。バクエン、お前もやるんだぞ?」
「あいあい、分かったよ。」
二人は背中から大きな袋を取り出し、コアクリスタルを掴んで袋の中へ入れていく。
コアクリスタル特有の青い光。他に光源となるものもない。この部屋からコアクリスタルがなくなれば、真っ暗になるだろう。
そんなことを考えながら二人は入れ続け、段々とパンパンになっていく。
「こんなところだな。よし、とっとと帰るぞ―――」
袋にそっとバクエンの袋に目を向けると、袋が下から燃え始めていた。
「おっ、おいバクエン!燃えてるぞ!」
「なん…!?」
その炎はただの赤い炎ではない…青い炎だ。
「蒼炎…!?まさかぁ…」
ショットが保管庫の入り口を見ると、そこには女性が立っていた。
「堂々と忍び込み―――奪うとはな。貴様らが暴れたおかげで我が兵士は医務室送りだ。」
その人物は両手にサーベルを持つ麗人。横には“帝国の宝珠”と呼ばれるブレイド―――
「炎の輝公子様直々に来るとはなぁ…ちと暴れすぎたか?」
「メレフ様、この者…手配犯です。」
メレフ…男装の麗人の名前だ。横のブレイドがメレフへそれを伝える。
「ショット―――ペルフィキオの者か。炎を操るブレイド、バクエンを連れてコアクリスタルを狙う…
噂には聞いていたが、まさかこれほど大胆とはな。」
メレフは両手のサーベルをしならせ、蒼炎を放つ。
「行くぞ、カグツチ!」
炎の輝公子メレフ、そして帝国の宝珠がショットに向かって走り出す。
「やれるもんならやってみなぁ!バクエン!」
ショットが剣をバクエンを投渡し、バクエンがそれを受け取り、炎を繰り出す。
メレフはその炎をサーベルで切り裂き、進んでいく。
「蒼炎剣!弐の型!明王!」
そのアーツが放たれ、バクエンは大きく後退し、ショットに剣を投げ渡す。
「さすが炎の輝公子様だなァ!」
剣をメレフへと突き、繰り返す。
「その強さ…伊達じゃねぇ」
「貴様も私の想像以上だな…!」
ショットの攻撃をサーベルで受け止め、かわしていく。
「行け!カグツチ!」
メレフがカグツチへとサーベルを渡す。
「分かりました!燐火!」
カグツチの攻撃に膝を突くショット。
「観念しなさい…この罪は決して軽くはないでしょうね…」
カグツチがサーベルをショットに向ける。
「悪いが仕事なんでねぇ…!」
バクエンが横からカグツチへ火球を投げ、それを受けてサーベルを投げ落としてしまう。
「カグツチ!」
メレフが落ちたサーベルを拾い、カグツチのほうへと向かう。
「俺達は帰らせてもらうぜ…?ったく、お前らのせいで十分なクリスタルが手に入らなかったじゃねぇか。」
ショットは剣を高温にさせ、壁を貫く。
大きく開いた外への穴へと飛び出す。
「待てぇッ!」
メレフが走り出したがすでに遅かった。ショットとバクエンの姿はもう見えない。
「申し訳ありませんメレフ様―――私があの攻撃を避けていれば。」
「いや、私がしっかりとサポートしなかったせいでもある―――」
互いに顔を見合わせ、メレフは開いた大きな穴に目をやる。
「明日の出航は取りやめだな…」
◇◇◇◇◇
カンカンカンッ!
カンカンカンッ!
頭が痛くなるような音。目を開けるとミントがフライパンとおたまを持って二つを叩いていた。
「もう10時半!起きてぇぇぇ!」
「起きてる…起きてるって…!だからもう…やめろ!」
金属の音と共に目が醒めるのは心地よいものではない。酒を飲んだわけでもないのに頭がガンガンする。
「10時までに起きてって言ったのに…全く。もうご飯出来てるから。早く食べちゃって!」
しぶしぶ寝室を出て、しぶしぶ朝食が並べられている机へ向かう。
「アンカーテールのグリルかぁ…」
「あんたが起きないからできてもう30分経ってる。せっかくあんたのために良いの買って作ったのにさ…」
「ご、ごめん…食べる食べる。」
フォークとスプーンを持って料理に手をつけようとしたとき、ミントが冷たい目でリュウギを見つめる。
「え…ああっ、いただきます…」
手を合わせていただきますの挨拶をする。そしてフォークで突き刺し、口へ運ぶ。
「うぬっ…うっ、旨い…本当に30分冷やしたのか…?」
「褒めたって機嫌は治らないからね。食べて片付けたら出発する準備して。リストさんが手続きしてくれるっていうから。」
そう言ってミントは部屋へと戻っていく。
申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、そんな気持ちを忘れさせるほど美味しいこの料理…
「タルタリ焼きに負けず劣らず…旨いっ…」
食べ終え、皿を厨房へと持っていく。皿を置いたら、急いで部屋へと戻る。既にミントは準備を終えていた。
「旨かったよ…朝からいいもん食えたって感じだ…」
「それもう聞いたって。―――分かったよ。早く準備しなさい。」
ミントは薄ら笑顔を浮かべ、リュウギの肩を叩く。少し機嫌が良くなったのだろうか。
リュウギの持ち物といえば、少し大きめのポーチと大剣くらいだ。
ポーチの中にミントが作ってくれたアンカーテールのグリルを入れる。もちろんそのままではなく、袋に入れて。
大剣を背中に持ち、準備は終了。宿屋の主に礼のあいさつをし、外に出る。
もう朝の11時。グーラの人々は家を出て、買出しへと出かけだしている。トリゴリウトの弾き語りも既に
この時間から始まっているようだ。
「おーい!リュウギくーん!」
風車の下にサルベージャーの一団がいた。もちろんミントもその中にいた。近くで買ったのだろうか、チュロスを食べていた。
「あ、意外と早かったね準備。」
「ああ、荷物も対して持ってないしな…」
ミントは持っていたチュロスを二つに折る。
「リュウギも食べる?」
「え…」
ミントがリュウギに差し出したのは今ミントが食いかけていた部分。ミントは気付くと慌てて反対のチュロスを突き出す。
「えへへ…」
リュウギはチュロスを受け取って口に入れる。二人とも同じぐらいのスピードで食べ進める。
「そろそろ受付終わっててもいいと思うんですけどねぇ…」
サルベージャーの一人が口を開ける。
「確かに。リストさん行ってから2時間だしね…手間かかっちゃってるのかな。」
ミントがそっと池と海の間の橋の向こう、主なグーラ人の居住区のあるほうを見る。
すると、リストが歩いてこっちに向かってきている。なんだか悲しげな顔をしていた。
「リストさん?どうかしたんですか?」
ようやくこちらへやってきたリスト。
「残念だが、今日はスペルビアに行けない。」
「ええっ!?どうして!?」
ミントが驚いて声を出す。
サルベージャーの一団とリュウギがトリゴの港へと行くと、たくさんの人々が受付の前にたむろしていた。
見てみると、どうやら受付が営業していない。
「どうして…?」
「それは基地まで行けば分かる。」
ガレグロの丘を越えて、スペルビアのトリゴ基地へと向かうと、これまたたくさんの人々がいる。基地の中では
何十人ものスペルビア兵が現場検証をしているようだ。人々はいわゆる野次馬。野次馬の侵入を抑えるために
何人もの兵士が道を塞いでいた。
ミントも何をしているのだろうと背伸びをして見ようとする。
「どうしたんだろう…」
「何か事件でも起きたのか?」
リュウギがミントを見ながら言う。
「どうやら、昨日輸送船に侵入者が現れたらしい。」
「侵入者?」
リストが手を組んで説明を始める。
「ああ。昨日の夜中のことだ。随分強かったらしくてな、兵士に死傷者も出たらしい。港が封鎖してるのは、
犯人がグーラから逃げ出さないようにするためだ。」
「でも、グーラはアルスト大陸の一つになってるよね?港を封鎖しても陸続きに逃走できるんじゃ…」
「グーラはスペルビアやインヴィディアと違って、アルスト大陸と繋がっている部分が高所にある。
アルスト大陸に行くにも、大きな壁を乗り越えなきゃいけないわけだ。がんばりパワーがいくらあったって登りきれないぐらいの高さだしな。」
「だから港を封鎖するだけで犯人をグーラに追い込めるってわけか…」
リュウギが腕であごを支えるように考える。
「そういうことだ。だからとうぶんはスペルビア行きの船は出航しない。」
「ええーっ!?いくらなんでも困るよそれじゃあ…」
ミントが肩を落としてがっくりする。
そんな話をしていると、基地の中から誰かが出てくる。
「あの人って…」
腰にサーベルを携えた男装の麗人。メレ…
「メレフ様だぁ~!」
突然ミントの目の色が変わる。
「うおっ、どうしたんだよミント…」
「知らないの?炎の輝公子!メレフ様!スペルビア新帝国の特別執権官で現在42歳!でもその年齢を感じさせないほどの美しい肌!声!髪の毛ッッ!」
「おっ、おう…」
「ほら見て!」
ミントがポケットから何かを取り出す。炎の輝公子の写真だ。
「美しいでしょう~!全ての女性の憧れの的だよ!私も大きくなったらああなりたいぃ~」
さっきまで不機嫌だったとは思えないほど上機嫌になったミント。その勢いについていけないリュウギ。
だんだんと炎の輝公子様、メレフとそのブレイド、カグツチがミント達へと近づいてくる。
1m1m…近づくたびミントの瞳の中のハートが大きくなっていく。
「…すまない、そこをどいてくれないか?」
メレフがミント達、つまりサルベージャーの一団に話しかけた。
「あぁ、すみません…」
リュウギがミントの右腕を引っ張ってどかす。サルベージャー達も横へとどく。
「すまないな。」
メレフがミントを気にも留めず、歩いていく。
「メレフ様…あの少女、メレフ様のファンみたいでしたが…」カグツチがメレフに話しかける。
「中にはああいう者も居る。まぁ、悪い気分ではないな…」
「ねぇ!リュウギ!今見た!?私に…メレフ様が私に話しかけてくれたよぉ~!あぁ~!もう死んでも良い!」
「いや死ぬなよ!またやらなきゃいけなくなるだろ!」