北沢少年と俺   作:パンド

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プロローグとライバル

「なぁ北沢さん。こういうのを世間一般では、余計なお世話って言うんだろうけどさ」

「黒山さん、余計なお世話です」

「せめて内容を確認してから言ってほしいなぁ!!」

 

 

 取りつく島もないとは正にこの事だ。

 鍾乳石も真っ青なとっかかりの無さである。

 むしろ、この少女に出会った当初──そう、去年の7月半ば頃の方が、まだ俺の話にマジメに真摯に、耳を傾けてくれていた気がする。

 あの頃の彼女は、きちんとした礼節を重んじる、公平な人物であった。俺はそうであると信頼していた。

 だが、信頼とは裏切られても構わないという信用の上に成り立つのであって、俺は物の見事に裏切られたのである。

 

 総じて猫のような少女だと、俺は思った。

 最初は警戒を怠らず、礼儀正しく決して隙を見せない。

 しかし、それが徐々に薄れていくと。

 

「そりゃあ、こうして貰っている身で言うのも烏滸がましいし、身勝手だとも思うけど──」

「黒山さん」

「……はい」

「身勝手な上に、烏滸がましいです」

「言うと思ったよチクショウ!!」

 

 自由気ままで、短気で、容赦のカケラもない本性を露わにする。

 そうなった猫は、無遠慮で、不躾で、理不尽な存在だ。

 出会ってしまったのが運の尽きというか、なんというか。

 俺はこの先も、無遠慮で、不躾で、理不尽な目に合うに違いない。

 だが、それはそれとして。

 言わなきゃならないことは、言わなきゃならない。

 本当は言いたくなくても、言っておかなきゃならない。

 

「別に、無理して寄って貰わなくても大丈夫だよ」

「別に、無理はしていませんよ」

「本当に?」

「……本当に、です」

 

 人のことを言えた義理じゃあないけども、この少女の本音というのは顔よりも会話に出てくる、と思う。

 少なくとも、俺は勝手にそう思ってる。

 多分、向こうも勝手にそう思ってる。

 だからこそ、俺は自分の推測を信頼していた。

 

「私は、言うなれば弟の代理ですからね」

「そんなことは、思ってないけど」

「本当ですか?」

「……半分くらいは」

 

 呆れ返った顔をして、少女は俺を見下ろしながら見つめ返す。

 黒猫のような少女だと、俺は考えを改めた。

 

「黒山さん、黒山由人さん」

「なんだい北沢志保さん」

「こういうのを、世間一般では余計なお世話と言うのでしょうが」

「うん」

 

 少女は、黒猫は、北沢さんは、俺の最大の好敵手(ライバル)は、この時間を締めくくるようにこう言った。

 

 

「りっくんは私の弟です。いくら弟が大好きでも、あなたは血の繋がった兄弟に決してなれません」

「わかっとるわ!! ホントに余計なお世話だよっ!!」

 

 

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