少年の夢に少女は踊る   作:七海ツヨシ

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はじめまして、七海ツヨシです。
小説なんてものは初めて書きます。
心優しい目で見ていただければ幸いです。
自分の原案にすこーーーしだけ加筆修正しました。
これから不定期に更新していきますのでよろしくお願いします。


プロローグ

四月の暖かい風が優しく肌を撫でる。

雲ひとつない空から注ぐ白くて柔らかい光は町全体を照らし、

今いる桜並木に散る桜の一つひとつに影を加える。

少し型崩れした制服に身を包んで歩く僕は、まだ高校生だった。

結構長く生きてきたつもりだったが、つもりに過ぎなかった。

高校生活はせわしなく、風のように通り過ぎると思っていたが、

僕にとっては雲のようになだらかに流れていた。

二度目の満開の桜並木も、退屈さを増すだけだった。

 

次の日、夜のうちに雨が降ったせいで桜は無残に散っていた。

白い花びらで敷き詰められた道を歩けば、少しばかり罪悪感が湧いてきた。

並木を抜け小さい橋に突き当たると、同じ学校の生徒がちらほら見え出し、

そこから道なりに五分ほどで学校に着く。そして教室に入り、自席に座る。

引き出しに入れておいた小説を取り出し、しおりを挟んだページから再び

読み始める。このペースだとあと三日で読み終わるだろう。

 

劣化で取っ手の黒ずんだドアが開き、不自然に顔の白い担任が入ってきた。

「席について、朝礼始めるよ〜」

間抜けた声を彼女は放つ。それを聞くと僕はいつも間抜けた飼い主に

飼われた鳥のような気分になる。

鳥籠の中で制限され、自由に飛ぶこともできない。

来年には受験に制限され、また自由は遠ざかる。

きっと、本当の意味での自由などこの世には存在し得ないのであろう。

そんな制約された自由の中にある稀な刺激は、いつだって神の気まぐれだ。

まるで釈放待ちの囚人みたいなこと考えてるな、とおかしく思った。

 

「あ、そうだ。みんなにビッグニュースがあるぞ」

担任の一言に教室がざわめいた。皆が皆、憶測を口々にしている。

 

ー神の気まぐれだ

 

ちょっと待ってろ、と言い残し担任は教室の外に消えた。

ざわめきは留まるところを知らない。

僕には皆、飼い主が与える甘い餌に踊らされてるようにしか見えない。

踊らされる奴らを見ると虫唾が走る。

 

これは完全に余談だが、人間とは実に滑稽だと思う。

何か事件事故が起これば野次馬根性で見に来るし、少しでも奇妙なものや

常識から逸脱したものには批判を浴びせかける。

その反面、倫理観には厳しかったりする。

非常に利己的で狡猾で滑稽な生き物である。僕は嫌いだ。

 

きしむ音と共にドアがガラッと開いた。

 

その瞬間、さっきまでのざわめきが嘘のように静まった。

それは怖い先生が来たからでも、授業の開始でもない。

猫背気味の担任の後ろについて女の子が教室に入って来た。

 

ーー綺麗な制服に身を包んだのは、転校生だ

 

転校生というものはとかく注目され、勝手に美人かイケメンか

想像され、勝手にハードルを上げられがちなものだろう。

慣れない状況への不安も表情から見て取れることが多い。

しかしその子は鎖骨ほどまで伸びた髪を揺らし、堂々とした姿で歩いている。

ひざの少し上まであるスカートから健康的な足が伸び、

すらっとした印象を与え、実際の身長よりも高く見える。

 

しかし、その場にいる者の目を奪ったのは

彼女のスタイルの良さでも、整った顔でも透き通るような白い肌でも、

艶を帯びた黒い髪でもない。

 

「はじめまして、逢沢ましろです。」

 

そう名乗った少女の瞳が赤かったことだ。

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