少年の夢に少女は踊る   作:七海ツヨシ

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閑話 こおりのまじょ

今よりとおいむかし、とある王国がありました。

 

その国はかしこい王さまとうつくしい王女さまが

おさめていました。

王さまも国民も、みんなしあわせにくらしていました。

 

東のはずれの森に、いっけんのいえがありました。

そこにはこの国いちばんのまほう使いがいました。

まほう使いは人が苦手だったので、

森のおくにひそんでせいかつしていました。

 

ある日、王さまがまほう使いのもとをおとずれました。

王さまはまほう使いに

「あなたのまほうのちからで、

となりの国とのたたかいにかたせてほしい。」

と、おねがいをしました。

「わかりました。」

まほう使いは王さまにそういいました。

 

でもまほう使いはしょうしんものでした。

王さまからのおしごとをことわるわけにもいかず、

わかりました。といってしまったのですが、

たたかいにかてるまほうはそんざいしなかったのです。

でも王さまのために、まけるわけにはいかないのです。

 

そしてたたかいの日がきました。

どちらの国もいっぽもひかず、はげしいたたかいでした。

まほう使いはてきぐんの足元に

こおりをつくりだすまほうを使いました。

てきぐんはツルツルとすべって、こけてしまいました。

「いまだ、かかれー!」

王さまのかけごえでいっせいにこうげきがはじまりました。

てきぐんには、こうげきをうけたひとや

こけてけがをしたひとがたくさんでました。

てきぐんの王さまは、たまらずたいさんしました。

 

たたかいにしょうりしたので、

王国ではみっかみばんおまつりさわぎでした。

まほう使いもばんさんかいにしょうたいされました。

ごうかなしょくじがよういされていました。

そしてまほう使いは王さまから、

王国ちょくぞくのまほう使いとしてしめいされました。

 

たたかいからしばらくたったある日、

まほう使いのやくそうつみからのかえりみちに

小さな子どもがけがをしてたおれていました。

きをうしなっている子どもをいえにつれてかえりました。

子どもはあしをひどくけがしていました。

まほう使いはまほうを使って、

その子のあしをなおしてあげました。

 

その子が目をさましたとき

「いえはどこにあるの?」

と、まほう使いがたずねたら

「わからない」と、子どもは答えました。

まほう使いは

「だったら、こんやはわたしのいえにお泊り。

あしたにはおうちにかえしてあげるわ。」

まほう使いと子どもは、

おいしいごはんをたべ、あたたかいふとんでねました。

 

つぎのあさ。

めがさめて、さんぽにでかけようとそとに出ると

いえのまわりをぐんたいがかこんでいました。

 

まほう使いはびっくりしてうごけなくなりました。

ぐんたいのたいちょうがまえにでてきて

「こくおうさまより、たいほのめいれいがでている。」

よくみると、たいちょうのうしろには

こどものははおやとちちおやらしきひとがいる。

 

子どももそとに出てきて、ははおやのもとへかけた。

「うちのこをさらうなんて、ひどいじゃない。

あなたはただのまじょよ。この国からでていけ。」

ははおやはまほう使いにそう言いました。

 

まほう使いはぜつぼうしました。

たすけたひとにうらぎられました。

たすけた国にうらぎられました。

かなしみでなみだがとまりませんでした。

 

まほう使いはおこりました。

たすけたひとにおこりました。

たすけた国におこりました。

いかりにまかせてまほうをはなちました。

そのまほうは、ふかい森をこえて

国ぜんたいをこおらせてしまいました。

 

めのまえにいたぐんたいも、

きのうたすけた子どもまでも、

こおりでできたぞうのようにしてしまいました。

かなしみでながしたなみだも、

こおりのつぶとなっておちました。

 

こころまですっかりとざしたまほう使いには、

ともだちもかぞくもだれもいません。

まほう使いはまだ、こおりでとざされたままの

国でひとりさびしくいきています。

 

このうわさはせかいじゅうにひろがり、

いつしかまほう使いは

「こおりのまじょ」と呼ばれ、

せかいでいちばんおそれられています。

 

まほう使いのほんとうのすがたをしっているのは

こおりになってしまった子どもだけでした。

 

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