少年の夢に少女は踊る   作:七海ツヨシ

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1話−4章 展開

時間は少しだけ流れ、ゴールデンウィーク初日。

僕は今、電車に揺られている。

いつもより連休が長いらしく、電車もそれ相応に混んでいる。

ただ僕は精神的に疲弊していた。

連休のウキウキも、疲れに全てを吸収された。

その理由は十分前に遡る。

 

 

お互いの最寄駅集合となっていた。

早めにいかないとまた十分前行動だとか言われそうだったので、

今日は意識して少し早めに出た。

 

信号に引っかからなかったため、十分前には駅に着いてしまった。

むしろそのぐらいでちょうどいいはずだった。

にもかかわらず、彼女は僕を待ちかまえていた。

 

僕を視界にとらえるなり、彼女は

「相変わらずおっそいなー。女の子を待たせるなんてダメだよ。」

と、怪訝そうな顔を見せ僕に牽制を入れた。

しかしそれは僕にとっては、筆でなでられた程度にしか響かない。

 

なぜなら常識から外れているのは、明らかに彼女の方だからだ。

 

「集合時間を破るよりもタチが悪いな。」

「それより急がないと、飛行機行っちゃうよ。」

 

飛行機、とは空を飛ぶあれだ。

「え、ちょま、飛行機?」

どこまで遠くへ行くんだ。

そういえば行先を聞いていていなかったことを思い出した。

 

「うん、そだよ。」

「どこ行くつもりだよ。」

「北海道。」

 

遥か北にある大きな島。

五月の北海道には何があるのだろう。いや待て。

 

「今、北海道って言った?」

「うん。言った。」

 

開いた口がふさがらないとはこのことだ。

そんな遠くに行くなんて、準備はしてきたからいいものの

予想だにしない展開すぎて笑えてきた。

 

「前もって言っとけよ、かなり遠いだろ。」

「君なら大丈夫だって信じてたから。」

 

親指を立てこちらに向かって突き出す。

いかにも信用ならないポーズだった。

 

かくして、空港に向かうために電車に揺られている。

飛行機のチケットは予約済みらしいが、信用していいものだろうか。

 

彼女は楽しそうに旅行のガイド本を読んでいる。

これ食べたいな、これもいいな、ここ行きたいな、なんて

わざと僕に聞こえるように独り言を言っている。

間違いなく自分のための旅行なのだろう。

 

しかし十七歳になる僕らの年齢で、男女でホテルに泊まることはできるのだろうか。

さすがに別々だろう。同じ部屋だったら……。

 

想像するのをやめた。

もう直球で聞いてやろう。

きっと想像を上回るほどの迷惑をしてくるに違いない。

 

「なあ、泊まるとこはどうするんだ。」

「あー、うちの別荘があるから平気だよ。

ちゃんとパパにも許可得てるから全然大丈夫。」

 

別荘という聞きなれないワードに、本日二度目の茫然が訪れた。

さらっと言いのけるあたりに彼女の大物さがうかがえた。

本音を言うと、こちら側的に全然平気ではないのだが。

 

「ご両親には僕のことちゃんと説明してるのか?」

「もちろん!」

 

嫌な予感がした。さらに嫌な予感がしたのは

その予感が的中しそうだということだ。

 

「……どういう風に。」

「私のことを情熱的に愛してくれる人で、一生を共に過ごすつもり。

ってハートマークがつくような話し方で話した。」

 

思わず頭を抱えてしまった。こいつは何を考えているんだ。

「僕が誘ったみたいじゃないか。」

「いいじゃん、パパもお母さんも笑ってたし。

『これで逢沢家の跡取りが決まったな』とかも言ってた。」

「まったく笑えないよ……。」

 

元気出して、と言って彼女は僕の背中をポンとたたく。

まだ旅行初日の朝なのに、二泊三日分疲れた気分だ。

 

僕が彼女の適当さにうなだれているうちに空港に着いた。

面倒くさそうな手続きはすべて彼女が済ませてくれた。

そういうところだけは尊敬できるのだが。

 

飛行機の時間を待っている間、彼女は質問を投げかけた。

「向こうに着いたら、一番最初に何がしたい?」

「一番最初か……。」

 

僕は北海道へ行くのは初めてだった。

遠いこともあって、テレビや映像でしか見たことない上に

それほど行きたいと思う場所でもなかった。

自分の関心のなさのせいで、北海道に関する知識がまるでなかった。

名物も観光名所も知らず、寒いということしか知らなかった。

 

「僕は行くの初めてだし、よくわかんないから君が決めてよ。」

これしかないという答えだっただろうが、彼女はそれが気に食わなかったようだ。

 

むっとした表情を僕に向け、

「君が行きたいところじゃないと意味ないじゃん。」そう言った。

「君が言い出したわけだし、何よりも北海道のこと何も知らないし。

すべてが新鮮だから、君の案内で十分楽しめる。」

 

僕の返答に満足したのか、彼女はにっと笑った。

「じゃあまずはラーメン食べなくちゃね!

「いいね、お腹空いてきたし。」

「珍しい、私の提案に乗り気じゃん。」

「人間じゃなくてもお腹はすくんだよ。」

飛行機に乗り込んだ僕らは、数時間後に北の大地を踏みしめた。

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