白い太陽   作:なぁのいも

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はじめまして。今回は導入ですね


おやすみ

 この人生はお前だけのものだ。

 

 昔、両親が僕にそう言い聞かせた事をよく覚えてる。

 

 うん。確かにその通りだろう。

 

 人の生き方と言うのは、その人次第で変わるものだというのは、ある程度大きくなればわかる物だろう。

 

 でも、本当にそうだろうか?

 

 僕の人生を振り返ってみても、自分が選択した事なんて殆どない。

 

 習い事は自分の意志でやったのか、塾は自分から行きたいと言ったのか、高校も本当に自分の行きたいと思った事を選んだのか。

 

 この三つの問いかけは、全部自分の意志とは言い切れないと答えてしまうだろう。

 

 やった方が良い、こうした方が良い、ここに行った方が良い。そう言われてやって来たに過ぎないと答えてしまうだろう。

 

 あの時の僕はまだ幼かったから、意志表示の仕方なんか『はい』か『いいえ』位しか無かったのかも知れない。両親のしつけが厳しかったから、両親が怖かったから『はい』と言い続けるしか無かったのかもしれない。

 

 導かれるままに『はい』と答えた結果がこれだ。僕の意志が籠って無い空返事を繰り返した結果がこれだ。

 

 空っぽのままで自ら選択する事の満ちる喜びを忘れてしまった割れ物注意な僕の心で悲鳴をあげている。

 

 大学選びだけは自分の意志でと思ったけど、結局は両親と進路担当の担任の先生の圧力に負けて、自分でもよくわからない所を選んでしまった。

 

 ――よく、選んでくれたな

 

 大人と言う存在が怖くて本当は震えていた僕にかけられた大人の言葉。

 

 僕を決められたレールから外そうとしなかった、僕の意志を殺した大人たちの言葉。

 

『この人生はお前だけのものだ』

 

 これは――僕が選択したと胸を張って言えるだろうか?

 

 これは、誰が選択したんだろうか?

 

『この人生はお前だけのものだ』 

 

 あぁ、この言葉は、僕にかけられた呪いの様な物なのだろう。

 

 体中に張り付いて締め付ける僕の戒め。

 

『この人生はお前だけのものだ』

 

 止めてくれ

 

『この人生はお前だけのものだ』

 

 その言葉は誰の為にかけられた言葉なのか

 

『この人生はお前だけのものだ』

 

 僕は――

 

『この人生はお前だけのものだ』

 

 誰なのだろう――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分の肌を拒絶するようなざらついた触感と布ごしに感じる硬い反発感がが彼を眠りの世界から呼び起こす。

 

「う、ううぅ……」

 

 寝相が悪かったのか、彼の背中には筋肉痛の様な痛みが走る。その痛みは脊椎反射のが走ったかのように即座に脳まで伝わり、彼の覚醒を促進させる。

 

「いてて……」

 

 まだ眠っていたいと光を取り入れる事を拒絶してくる瞼を無理矢理持ち上げる。現状を視認する前に彼の網膜が取り入れた情報は、哀愁漂う燈色の光に染め上げられた一面の空と光に糺されるように陰った雲たち。

 

 顔の覚醒に連動させるように、彼は右肘を肘を立てて上半身を起き上がらせようとするが、

 

「うわぁ!」

 

 肘はそれを覆うようなざらついた感触のする何かに飲み込まれ、軽く起き上がった状態で体を止まってしまう。

 

 今まで、堅いスプリングのベッドの上で仮眠をとっていた彼にはあり得ない感触。

 

 彼の全感覚は今体験することの無い異常な感覚を認知し、彼が何処にいるのかを確かめるべく反射的に顔を背後に向けさせる。

 

 彼の視界の端に写るのは、塗装された道とレンガ造りの建物達。自分の下には、燈色の光を吸収した砂浜。

 

「なっ……」

 

 見覚えの無い景色たちに、彼は小さく声を漏らす。

 

 彼は大学が終わった後に一人暮らしのアパートに帰宅し、ベッドで仮眠をとっていた。少なくとも、彼の記憶はベッドで眠った所で途絶えている。

 

 だから、あり得ないのだ。彼の様な一般人が、通常なら立ち入る事が出来ず、立ち入りが憚られるような施設の中にいる事が。

 

「な、なんだこれ?!」

 

 彼が正面に振り返ると、夕日が沈みゆく大海原の景色が広がっていて、ますます彼の頭の中をかき乱す。

 

 「これは、夢でも見ているのか?」

 

 砂が指と指の間にある気持ちの悪い感触、自分の首筋を伝う冷や汗、目に焼き付く夕焼けの眩しさ。その全てを脳が感じているのに対し、彼の精神はこの全てを否定しようと、夢と言う形で結論づけようと試みる。

 

 が、その結論を付ける事は許さないと、何かが干渉するかのように、

 

「やあ、目は覚めたかな?」

 

 透き通るような少女の声が彼の鼓膜を震わせる。

 

 その声が聞こえた方向に顔を向ける。

 

 視線の先に居るのは、今どき見ないような白いセーラー服を着た白髪の少女。

 

 その少女は顔を向けた彼から目を離さないように、じっと視線を合わせている。

 

「君は――」

 

 誰だ?それとも、ここが何処かわかるのか?

 

 この先に繋ぐ言葉は決まってはいないが、誰か人がいたと言う安心感からか自然と彼の口が開く。

 

 だが、少女は彼と目を合わせる事を止めると、海へと目を向ける。

 

「目が覚めた所で悪いね。突然の事だけど」

 

 少女が一点を指差す。その先にあるのは、日の光を無機質に反射する鋼鉄と怪しげに煌めく光を持つ何かが一つ。

 

「ここがバレてしまったようだ」

 

 鋼鉄の塊は浮上し始めると、白濁の歯のような物をこちらに向けながら飛び上がり、

 

「―――――!!!!」

 

 彼の頭では理解できない音を、方向をあげた。

 

「ひっ!!!」

 

 生きてる?!あれは生きてるのか?!あれはなんなんだ?!僕をどうしようとしているんだ?!

 

 彼の本能は鉄の塊が敵であることを察知し、敵がどんなものかを判断しようとしているが、今まで経験したことの無い未曽有の恐怖に身体は震え、腰は砕けてしまった。

 

「だから――」

 

 恐怖に震える彼と違い、少女の声には変化が無い。

 

 そして、再び少年に目を向け、

 

「君には、私に交戦許可を下して欲しい」

 

 抑揚のない声で、少女は彼に求めた。

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