魔法少女リリカルなのは -Crime seeker-   作:鹿丸

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Ⅸ Trigger

アメトリス銀行事件の翌日。

 

オレとフェイトは事件後の報告書を作成していた。

 

報告書といっても、執務官とその副官が行ったのは犯人の確保のみだ。

 

事件概要の全体を報告書に記す必要はない。

 

ただ、面倒なのが……

 

「……これで18人目か……」

 

「口動かす前に手を動かす」

 

「……へぃ」

 

そう、連中の人数だ。

 

オレ達がするべき報告は犯人の身辺、外形、動機などの容疑者の調査。

 

しかし今回の事件の容疑者は40人を越える集団犯罪。

 

必然と、調べなければならない人数も増える訳だ。

 

それを朝から夕方にかけてずっとモニター前でキーボードをカタカタやってりゃ、誰だって鬱になる。

 

「……あ~……」

 

マジで、監獄に戻りたい気がしてきた。

 

背中にデカイ火傷を負って、なお仕事を押し付ける上司を、オレならば“悪魔”と呼ぶだろう。白くねーけど。

 

とにかく、オレは、今膨大な事後処理に負われていた。

 

「…………」

 

カタカタ

 

「…………」

 

カタカタ

 

「…………」

 

カタカタ

 

 

――それにしても、さっきからキーボードを叩く音しか聞こえない。

 

「――ふぅ……」

 

ここで、やっとフェイトが息をついた。

 

「終わったのか?」

 

「うん。まだ別の事件の報告書が残ってるけどね」

 

そう言って、フェイトはキッチンに向かい、コーヒーを煎れる。

 

全く、執務官ってやつは多忙だな。

 

そんなもんになりたいのか、ケリウスくん。

 

ラファルトであるオレはゴメンだが。

 

 

「……そろそろ夜だね」

 

「ディナーにする事を希望する」

 

もう朝からロクなものを食べていない。

 

それに一度フェイトの目を離れて、やらなきゃならん事もある。

 

「そうだね……残りの仕事は私がやるから、休んでていいよ」

 

そいつはありがたい。じっくりとあの野郎に文句が吐けるってもんだ。

 

返事をした後、オレはジャケットをハンガーから取り去り、袖に通す。

 

「8時位には戻る」

 

「う~ん……」

 

「どうした?」

 

「……その時はお風呂に入ってるかも」

 

「安心しろ。この傷で乗り込んだりはしねぇから」

 

「……もし元気だったら覗くの?」

 

「そこまで命知らずじゃない」

 

リミッター付きのAとS+とじゃ、どっちがケシ墨になるのは明白だ。

 

オレは執務室を出て、エレベーターに乗り、局の食堂に入った。

 

そういえば6年間監獄ではロクなものを口にしていなかったな。今のシャバの食い物に少し興味が沸く。

 

オレはカウンターに行き、取り合えず目についたサンドイッチを注文した。

 

札を受け取り、待つこと数分。

 

オレはテーブルに着き、一人でサンドイッチをムシャムシャと口にしていた。

 

うん、美味い。

 

水を流し込み、オレは懐からクロノに渡された通信用のデバイスを取り出し、テーブルに置く。

 

ナンバーからクロノを選び、通信を飛ばす。

 

この時間帯なら奴は1番忙しい時だが、構うもんか。

 

数回コールした後、モニターに面倒そうなクロノの顔が映った。

 

「グッドイブニング、クロノ。ハッピーか?」

 

「君の顔を見て、アンハッピーだよ」

 

「奇遇だな、オレもだ」

 

だが顔を合わせねばリアクションが見れない。

 

「言いたい事が二、三ある。まずオレの経歴についてだ」

 

「素晴らしい経歴だっただろう」

 

「そうだな。素晴らしすぎて思わずお前の妹にお前の姓感帯を滑らしてしまうところだった」

 

瞬間、クロノにしまったという意が表情に浮かんだ。

 

ザマミロ。

 

「二つ目。リミッターの二段階目を解除してほしい」

 

オレのリミッターの権限は、確かクロノだったハズだ。

 

「なぜだ? 今の君はAランク相当の力を持っている。経験をプラスすれば局の実動隊よりも遥かに実力は上だ」

 

「おかげでこっちは背中に一生消えない傷を負うとこだったんだ。Aでは心許ねぇよ」

 

「…………わかった、考えておく」

 

てことは、解除する気はないって事だな。

 

「ダメだ、今決めろ」

 

「じゃあ決めた。ムリだ」

 

即答だな、畜生。

 

「今回はまだ火傷で済んだが、今度の捕縛ん時にバズーカ級の弾丸が背中に当たったらどうしてくれるんだコラ」

 

「そういう問題じゃないんだ。リミッターの解除には本局の申請がいる。それに君は表向きはAAA+になってるんだ。二段階目を解除すれば、どうなる?」

 

確かに二段階目を解除すれば、オレのランクはAA+相当になる。

 

残り二つのリミッターと兼ねても、バランスが合わない。

 

「……まぁいい。さほど考えてはいないからな」

 

駄目元で頼んだ事だ。どっちにしろどっちでもいい。

 

「三つ目だが……これが1番重要だ」

 

「なんだ?」

 

「――フェイトって、スリーサイズいくつ?」

 

瞬間、ブチっと荒っぽく通信を切られた。

 

 

 

 

 

 

★☆★

 

 

 

 

 

 

オレはサンドイッチを食した後、自販機前のベンチでコーヒー片手に落ち着いていた。

 

 

「ふ~……」

 

缶コーヒーを傾け、喉を潤す。

 

やっぱりこの味は、監獄では味わえない。

 

しかし第二の人生という割には、オレ自身はあまり変わっていないな……

 

缶コーヒーの好みだって6年前と同じでブラックだし、サンドイッチに入っていたトマトも、今でも食べられない。

 

「…………」

 

オレはふと時計を見た。

 

7時47分か……

 

今頃、フェイトはバスルームで全身を清めているだろう。

 

今執務室に帰っても、文句を垂れられるかもしれない。

 

なら、暇つぶしに行くか。

 

オレは空の缶コーヒーをダストボックスに投げ、見事に外れる。

 

「…………」

 

やはり、オレに射撃の才能は無いな。

 

 

 

 

 

 

★☆★

 

 

 

 

 

 

数分かけてオレが辿り着いたのは、資料室。

 

ここには、時空管理局が生まれてからの様々な資料が置かれている。

 

無限書庫には遥かに劣るが、それなりの情報がここにはある。

 

オレはパソコン前の椅子に腰を下ろし、データベースを立ち上げる。

 

そしてオレは検索の欄に“機動六課”と打ち込んだ。

 

すると、ズラリと情報が現れる。

 

オレは一つずつ情報を開き、読んでいく。

 

 

六課発足の歴史……

 

部隊員は八神はやてを筆頭に高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、ヴォルケンリッター……

 

後ろ盾として、聖王教会……

 

 

「素晴らしいね、オイ」

 

まるで、化け物集団だ。

 

あからかに一つの部隊で持てる戦力値をオーバーしている。

 

しかもその仕組みも巧妙だ。

 

フォワードメンバーも、今では各地で活躍している局員ばかりだ。

 

ただ地上本部とは仲が悪かったようだ。

 

まぁ当然だろうな。

 

オレは次々と情報を読み込み、やがてとある項目にヒットした。

 

「……戦闘機人」

 

それに関連するのは、ジェイル・スカリエッティ……

 

オレはその情報をこと細かに閲覧していく。

 

どうやら、答えはすぐ近くにあったらしい。

 

「戦闘機人、ね……」

 

通りで“あの時”、片腕が飛んでも生きてた訳だ。

 

 

――オレはその後、機動六課についての情報を読み込み、気づいた時には10時を回っていた。

 

 

 

 

 

 

★☆★

 

 

 

 

 

 

「ただいま~」

 

執務室の扉を開け、あっけらかんとオレは言う。

 

部屋に入ると、フェイトがモニターに向かって仕事をしていた。

 

どうやら風呂上がりらしく、僅かに髪の毛が艶っぽい。

 

「あ、おかえり」

 

「お仕事、ごくろうさん」

 

オレはキーボードの隣に、パックに入ったサンドイッチを置いてやった。

 

「え?」

 

「どうせ何も食ってねーんだろ。ガリガリになんぞ」

 

さっき食堂でテイクアウトしてきたものだ。

 

「あ、ありがと……」

 

「どういたしまして」

 

オレはジャケットをクローゼットにかけ、棚からバスタオルを取り出す。

 

「風呂入ってくるわ」

 

「うん、どうぞ」

 

「覗くなよ」

 

「ドアじゃあるまいし」

 

「言ってくれるな、オイ」

 

お互い、減らず口らしい。

 

オレはその後風呂でモニター熱でかいた汗を流し、全身を泡で清め、風呂を出た。

 

その後、やはり仕事の全てをフェイトにやらせるのは副官としてアレなんで、少し仕事を手伝った後、忙しい執務官殿は就寝した。聞くところによると明日は4時起きらしい。全く、忙しいね。

 

やっぱりラファルトは、執務官は向かないようだ。

 

オレは歯を磨き、背中に軟膏を塗ってから湿布をし、自室に入った。

 

荷物が届いているようで、整理しなければならない。

 

まぁ大方、クロノが送ってきた生活必需品だろうが。

 

まぁ様々あったね。

 

テーブルやらデスクやらカーテンやら……

 

オレは一時間かけて部屋を整理し、また風呂に入らなきゃならないくらい汗をかいた。

 

「……風呂入ろう」

 

オレはクロノが送ってきたクマ柄のバスタオルを持って、再びバスルームへと入った。

 

 

――クロノ。センス無いとかって嫁に言われないか?

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