魔法少女リリカルなのは -Crime seeker-   作:鹿丸

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ⅩⅤ Groovy3

オレは銃弾で傷ついた身体を無理矢理立ち上がらせ、距離を取った。

 

この隙に、どこかに隠れてしまおう。

 

なのはの援護をしてやりたいのは山々だが、こんな役立たず状態のオレでは足手まといもいいとこ。

 

せめて、クロノがリミッターを解除してから……

 

「……フン」

 

その時、ヤツが立ち上がった。

 

甲冑についた埃やら煤やらを落とし、窓の先のなのはを見つめた。

 

「……援軍カ、コザカシイ」

 

舌打ち混じりにそいつは言い、今度はこちらを向く。

 

「キサマも、中々やってクレル」

 

それが皮肉だとわかるのに、時間はかからなかった。

 

「いいのか? グロッキー状態のオレなんて見てて? まだ全力全開食らうぞ」

 

まぁ尤も、今のは威嚇に近いだろうが。

 

「フン。管理局のエースの全力ガ、この程度なワケがナイ」

 

「それはそれは、よくご存知で」

 

ヤツは足元に落ちてたイングラムを拾い、しかし魔法を撃たれた衝撃で銃口がイカレている事を知ると、その場に捨てた。

 

「ダガ、お前タチも見落としているナ」

 

「…………」

 

オレは砂でジャリジャリする唾を吐いた。

 

「優秀な魔導師が巣くうクラナガンに、我がタッタ一人で乗り込むカ?」

 

 

 

 

 

 

★☆★

 

 

 

 

 

 

 

「立ち上がったっ!!」

 

なのははレイジングハートを構え、放つ準備をする。

 

まさか、何のダメージもなく……?

 

もしかしたら、あの甲冑に何か秘密が?

 

とにかく、もう一発……

 

 

しかし、それは憚れた。

 

背後に、嫌な気配を感じたからだ。

 

「っ!!?」

 

なのはは直ぐに距離を取り、ソイツを見た。

 

「――感づいたんだ~……ハハ」

 

「…………」

 

レイジングハートを構える手に、力が篭る。

 

 

オレンジの短髪のソイツは背中に巨大なバズーカ砲を背負い、ラフな服装をしていた。

 

「誰っ!!?」

 

「僕? 僕はメルク。メルク・アロ・ガローン」

 

メルクと名乗ったそいつは自己紹介すると、なつっこい表情をした。

 

「いや~、まさかジグに着いていくがてらに、こんなキレイなお姉ちゃんに会えるなんて。ラッキー☆」

 

「……あなたは、何者?」

 

その敵意を感じさせない雰囲気からも、なのはは決して気を許しはしなかった。

 

何かが危ないのだ。この少年は。

 

「だ~か~ら~、言ったでしょ~。僕はメルク・アロ・ガローンだよ。牡羊座のA型☆」

 

それでは、答えになっていない。

 

これ以上追求してもあまりいい答えは返ってきそうになさそうだ。

 

「そう。メルクくんって言ったね?」

 

「うんっ!! うんっ!!」

 

満面の笑みで頷く。

 

「あなたは、何をしにここにいるの?」

 

なのはがそう聞いた瞬間、メルクはニンマリと口元を緩めた。

 

「よくぞ聞いてくれましたっ!! そうそう、僕はね~」

 

 

瞬間。

 

 

「――お姉ちゃんを殺しに来たんだよ♪」

 

「っ!!?」

 

メルクの拳が、眼前まで迫っていた。

 

なのはは瞬時にレイジングハートでガードしたが、勢いまでは殺せない。

 

子供とは思えない力で吹っ飛ばされ、ビルにたたき付けられる。

 

「あぁっ……!!」

 

苦痛に表情が歪むなのは。

 

「アハハ。だ~いじょ~ぶ?」

 

メルクは宙を浮ながらはしゃいだ様子で聞いてくる。

 

油断してちゃダメだっ!!

 

なのははレイジングハートを構え、魔砲を放つ。

 

「――ディバイン・バスターっ!!」

 

刹那、桃色の魔力がメルクに向けて放たれた。

 

それに対し、メルクは……

 

「え~と……そ~れっ!!」

 

メルクは背負っていたバズーカ砲を小さな手で構え、引き金を絞る。

 

「しゅーと☆」

 

バズーカ砲から緑色のまがまがしい魔力が放たれ、ディバイン・バスターと相殺される。

 

「くっ……」

 

「アッハッハ~」

 

メルクはバズーカ砲を振り回しながら、子供がするようにポーズを決めた。

 

「――僕のポイズンシードに、殺せないものはないっ!!!」

 

キラっとウィンクするメルクに、なのははどこか苦々しい表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

★☆★

 

 

 

 

 

 

「はぁっ!!!」

 

ストレイジを横に一閃。

 

しかし、弾かれる。

 

「フン」

 

ヤツは拳を引き絞り、正拳を放つ。

 

ギリギリで避け、今度はウィルネスで斬りかかる。

 

しかし、またしても甲冑に弾かれる。

 

「クソッ!!」

 

オレは一旦距離を取り、二刀を交差させて構える。

 

「ハァ……ハァ……」

 

息も荒い。

 

やはり一段階だけでは、どうしても無理がたかる。

 

クロノ……早くしろっ!!

 

「フン、急いでいるヨウダナ」

 

ヤツは拳を鳴らしながら言った。

 

「ああ。早いとこアンタ潰して、エース様の援護しなきゃならんからな」

 

なのはなら多分、あんなガキ一人に遅れをとる事はないだろうが、ヤツの事だ。もう一人か二人仲間を隠していても不思議じゃない。

 

「メルクカ……奴なら心配するナ。直に終わル」

 

直に終わる?

 

「け……随分な自信だな。あんなガキに、管理局のエースの相手が務まるとも?」

 

「メルクの性格を知れバ、その考えも即座に間違いだとキヅクだろう……」

 

「?」

 

「奴の性の悪さハ、“再生団”<リプロード>の中でもヒケをトラナイからナ」

 

「……あっそ」

 

オレは両の剣を一気にヤツに叩き込んだ。

 

しかし、手応えは同じ。

 

「何度ヤッテモ同じダッ!!」

 

「ぐはッ!!」

 

腹に拳を入れられ、オレの身体はキレイに飛び、壁に叩きつけられる。

 

「ちくしょ……」

 

「シツコイナ」

 

とうとうヤツはオレをなぶるのに飽きたのか、オレの首を掴み、持ち上げる。

 

「かッ……」

 

「実力の差ハ歴然ダ。もう諦めロ」

 

首を掴む手に、力が篭る。

 

「がッ……ああ……!!」

 

苦しい。

 

息が詰まりそうだ。

 

オレは必死でもがき、暴れる。

 

しかし徐々に頭に酸素がいかなくなり、力が入らなくなる。

 

「くっ……そ……」

 

デバイスを離しそうになった、その時だった。

 

 

《……ドア》

 

 

念話が飛んできた。

 

 

クロノだ。

 

受け答えしようにもそんな余裕はない。

 

《――神が来てやったぞ》

 

 

その一言を聞いた瞬間、オレの首のネックレスが一つ弾け飛んだ。

 

「?」

 

ヤツはそれを怪訝そうに見る。

 

全く、やっとかよ。

 

神様って奴は、余程時間にルーズらしい。

 

「オイ」

 

「?」

 

 

ズバッ

 

 

オレは軽々と動く右手を動かし、ヤツの右足を甲冑ごと斬り裂いた。

 

「ナッ……!!?」

 

ヤツは突然のダメージに驚き、手を離す。

 

 

「クソッ……いったいナン……」

 

 

 

刹那。

 

 

 

「ダ……」

 

 

オレは瞬足のステップで踏み込み、ヤツの右腕を斬り飛ばした。

 

身体が、動く。

 

いつもよりも、軽快に。

 

ヤツは斬り飛ばされた右腕を眺めながら、距離を取った。

 

ボタボタと赤い血が流れ、一気に鉄臭くなる。

 

「血、赤いんだな」

 

「我を何だと思ってイル? 人間ダ」

 

「そうみたいだな。勘違いしてたよ」

 

全身に魔力がみなぎり、力が沸く。

 

撃ち抜かれた腕や肩の痛みも、今では楽になっていた。

 

いける。これなら。

 

「さぁて、こっからが本番だ、陰キャラ野郎」

 

 

オレはウィルネスを掲げ、リンカーコアにエンジンをかけた。

 

 

「――ウィルネス、“2ndモード”」

 

 

 

 

 

 

★☆★

 

 

 

 

 

 

「それ、それ、それぇっ!!!」

 

メルクはじゃれる少年のように、ポイズンシードから魔力の弾丸を放つ。

 

「くっ……」

 

なのははそれらを避け、構える。

 

「ディバイン……」

 

魔力が収束され、放つ。

 

「バスターーーッ!!!」

 

太い魔力砲がメルクに直進し、空気を薙ぐ。

 

しかし、メルクも撃ち返す。

 

「スケィル・バスターッ!!!」

 

まがまがしい緑の魔力が撃たれ、なのはのディバイン・バスターと相殺される。

 

なのははそれを確認した後、必要以上に距離を取った。

 

どうみても、子供が撃てる魔力じゃない。

 

少なく見積もってもあの少年はAA……いや、AAAランク級の力を持っている。

 

私一人じゃ、街の上空で戦うには厳し過ぎる。

 

「とにかく……離れなきゃ」

 

「さ~せない」

 

「っ!!?」

 

瞬きした瞬間、目の前にポイズンシードを構えたメルクが現れた。

 

「粉々になるまで、帰さないよ☆」

 

爛々たる、笑顔。

 

なのははその笑みに、鳥肌が立った。

 

年端もいかない子供も笑顔のはずなのに、煽られる恐怖。

 

なのははさっきから、恐ろしいのだ。

 

この子供の、無邪気な笑顔が。

 

 

「しゅーと☆」

 

 

刹那、まがまがしい緑色の魔力がなのはを包んだ。

 

「アハハ、アハハハハハっ!!!」

 

延々とバーストする魔力。

 

やがて魔力が晴れると、メルクは首を傾げた。

 

「アレアレ~? 形も残らないくらい粉々になっちゃったかな~?」

 

そう、そこにいたはずのなのはがいないのだ。

 

「どこいっちゃ……」

 

「動かないで」

 

メルクが進もうとした、その時だった。

 

首筋に、金色の刃が当てられた。

 

 

「――誰?」

 

 

メルクは笑顔を引っ込めず、微動だにしないで言った。

 

メルクの背後にはなのはを右手で担いだ、ドアの上司が金色の鎌を構えながら、そこにいた。

 

 

「――フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官です。おとなしく投降しなさい、僕?」

 

フェイトはまさに子供に諭すように言った。

 

「しつむかん……?」

 

メルクは首を傾げた。

 

その際に首筋に近づけていたバルディッシュの刃が首に食い込んだ。

 

「っ!!?」

 

当然、吹き出す大量の血。

 

「あ」

 

しかしメルクは気にも止めず、ただ首筋に触れた。

 

「……やっちゃった☆」

 

顔を血で濡らしながら、メルクは笑う。

 

その笑顔にフェイトは戦慄し、本能的に距離を取った。

 

この子……何かが危ない。

 

「フェイト……ちゃん」

 

その時、なのはがようやく言葉を発した。

 

「大丈夫、なのは?」

 

「ありがとう、フェイトちゃん」

 

なのはは一人で飛べるから、と言い、レイジングハートを構える。

 

「なのは、あの子は?」

 

「わからないの、どこの子かも……でも」

 

「うん、わかってる……」

 

フェイトは指についた血をご機嫌な様子で舐めるメルクに目を遣り、気を引き締める。

 

――絶対に、油断してはいけない。

 

 

「アハハ~、またキレイなお姉ちゃんが増えた~」

 

メルクは右手でポイズンシードを振り回し、ぷらんと浮く。

 

「こりゃ、バラバラのしがいがあるぞ~♪」

 

構え、引き金を引く。

 

「スケィル・バスターっ!!!」

 

 

緑色の魔力が、フェイト達めがけて直進する。

 

「なのは、援護お願いっ!!」

 

「うん、フェイトちゃんっ!!」

 

 

互いの合図の後、二人は各方向に散開した。

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