魔法少女リリカルなのは -Crime seeker-   作:鹿丸

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ⅩⅥ Groovy4

「……ウィルネス、“2ndモード”」

 

オレは掲げたウィルネスをヤツに突きだし、右手のストレイジは待機状態に戻した。

 

こっちの方が、速く動ける。

 

 

「――イグナイトモードっ!!」

 

起動した瞬間、ウィルネスの刀身に僅かな薄緑の魔力光が宿った。

 

オレは両手で構える。

 

「……特に変わった事はナイようダガ?」

 

「直ぐにわかる」

 

ジリッと足を滑らし、踏み込みの準備をする。

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

一歩。

 

 

「グハッ!!?」

 

 

飛び上がる、鮮血。

 

 

そしてまた、一歩。

 

 

「ガッ!!?」

 

 

オレは高速で動き、剣を振るう。

 

そして一歩踏み込むごとにヤツとすれ違い、斬撃を加えていく。

 

 

(は、早過ギルっ!!!)

 

ヤツは斬られた傷を確かめながら、オレを捕らえようとする。

 

だが、それは無理だ。

 

オレはまた更に、ウィルネスを振るう。

 

そして再び、ハッキリした手応え。

 

「ぐぅッ!!」

 

オレは一旦減速し、床に急ブレーキをかける。

 

「キサマ……なんだそのスピードハっ!!?」

 

ヤツは初めて、声を荒げた。ざまあみろだ。

 

「……簡単な話だ。ウィルネスの2ndモードは、オレのスピードを特化する。ストレイジが“力の剣”ならば……」

 

オレはウィルネスを掲げた。

 

「ウィルネスは“疾さの剣”だ」

 

「……フッ」

 

ヤツは短く笑い、ボロボロの身体をひきづる。

 

「ソイツはまた、面倒ダナ」

 

「そうだろう」

 

 

オレは再び踏み込んだ。

 

ヤツは必死に反応しようとするが、

 

 

「遅い」

 

 

オレはウィルネスを振り抜き、ヤツの残り一本の腕を斬り落とした。

 

ガチャリと腕は床に落ち、既に鉄臭いこの場に更に鮮血が流れる。

 

 

「――勝負アリだ」

 

 

 

 

 

 

★☆★

 

 

 

 

 

 

一方、クラナガンの空。

 

「左っ!!」

 

「うん」

 

フェイトからの指示を受け、左に旋回するなのは。

 

前方からは、やたらめったらに直射魔法をぶっ放すメルク。

 

「それぇっ!!」

 

「くっ……!!」

 

以上な数の弾幕に、フェイトはビルを使って姿をくらました。

 

(あんなにたくさんの砲撃……なのに魔力が尽きないなんて)

 

さっきから反撃のチャンスをなのはと一緒に狙ってはいるが、放たれる砲撃が収まる気配がないのだ。

 

もしかしたら、無尽蔵に魔力を生成する何かが……

 

「フェイトちゃんっ!!」

 

「?」

 

突然呼ばれ、反応するフェイト。

 

何かと思い右を振り向くと。

 

「――ッ!!?」

 

砲撃が――曲がったっ!!

 

撃たれた緑の直射魔法が、なんと孤を描いてこちらに向かってきたのだ。

 

フェイトは直ぐさまバリアを張るが、やや遅い。

 

「あぁッ!!」

 

バリアごと砲撃に圧され、無理矢理彼方へと飛ばされる。

 

(まさか……あんな複雑な制御までできるなんて……!!)

 

もはや、子供にできる攻撃ではない。

 

フェイトは姿勢を取り直し、メルクの姿を確認する。

 

「アッハッハ~、当たった当たった♪」

 

幼い歓喜を振り撒きながら、ポイズンシードをこちらに構える。

 

 

――もう、相手が子供だの何だの言ってられない。

 

「なのはっ!!」

 

「――うんっ!!」

 

二人は一斉に空を駆け出した。

 

複雑な滑空を見せ、メルクの視野を撹乱する。

 

「それぇっ!!」

 

バスターを撃ちまくるが、それを上手くかわす。

 

「サンダーレイジーッ!!!」

 

「ディバインバスターッ!!!」

 

フェイトから雷光が放たれ、その直ぐ後ろから桜色の魔力が直射される。

 

 

「む~」

 

メルクは小さな右手を突きだし、バリアを張る。

 

しかし……

 

「あれ?」

 

 

二人の放った攻撃は、そんなチャチなバリアでは防げなかった。

 

メルクはバリアごと吹っ飛び、空中で数回回転した後、無造作にポイズンシードを構える。

 

「痛いな、もうっ!!!」

 

乱射される、砲撃。

 

しかしフェイトとなのははそれを難無くかわす。

 

「当たれ~っ!!!」

 

メルクは一気に勝負を詰めるため、数秒チャージをかけた後、集束砲を放った。

 

バカデカイまがまがしい緑が、クラナガンの空に走る。

 

「だりゃあ~~っ!!!」

 

メルクは集束砲をバーストしたまま回転し、周囲を薙ぎ払う。

 

 

「…………やったかな?」

 

メルクはようやく砲撃を止め、肩から息を崩す。

 

しかしそれは、油断に繋がった。

 

「ディバイン・バスターっ!!!」

 

「ッ!!?」

 

背後から迫る桜色の砲撃に、やや反応が遅れた。

 

回避行動を取るが、間に合わない。

 

メルクはディバインバスターをモロに食らい、一瞬息が出来なくなる位の衝撃を受けた。

 

「カッ……!!」

 

メルクの小さな身体は撃ち上げられ、ビルの壁にたたき付けられた。

 

 

「……大丈夫かな?」

 

レイジングハートを構えるなのはは、少しだけ不安の表情を浮かべた。

 

敵とはいえ、彼はどう見たって年端もいかない子供なのだ。無理もない。

 

「非殺傷設定なら気絶するだけだよ」

 

隣に並ぶフェイトが諭すように言った。

 

「うん、だけど……」

 

気持ちはわからないでもない、しかし相手は明らかにデバイスを物理破壊設定にしていたのだ。

 

子供だからと油断すれば、負けるだけではすまないのだ。

 

「……ねぇ、ドアは?」

 

「あ、まだ戦ってるかもっ!!」

 

なのはは今気づいたように、口元に手を当てる。

 

ドアの実力は確かだが、こんなデタラメな子供も連れてる奴らだ。

 

早く援護に行かなければ……!!

 

「それじゃ、なのははあの子を連れていって。私はドアのところに……」

 

「――痛いなぁ」

 

 

その瞬間、子供の低い声が重く響いた。

 

「ッ!!?」

 

フェイトとなのはは弾かれたようにデバイスを構える。

 

「痛くて、痛くて……泣きそうだよ」

 

吹っ飛ばしたビルの先から、メルクがデバイスを握りながらゆっくりとこちらへ迫る。

 

「お姉ちゃん達……せっかく粉々にしてあげよーとしたのに……」

 

その時、メルクは俯かせていた顔を上げた。

 

 

――その目は、もう無邪気な子供のものでは無かった。

 

 

「……ッ」

 

まるで深淵なる闇を間近で見てるような感覚に、二人の背筋が凍る。

 

 

「もーいいや、お姉ちゃん達……」

 

 

メルクはポイズンシードのトリガーを二回短く引き、天に掲げた。

 

 

「――おふたり仲良く毒殺してあげるから★」

 

 

瞬間、ポイズンシードが可変した。

 

 

大仰なバズーカ式から、徐々にコンパクトなシルエットが見えて来る。

 

「…………フェイトちゃん」

 

「うん、わかってる」

 

 

やがて可変が終了し、メルクはそれを両手で構えた。

 

 

「――2ndモード、ミクスチャーモード」

 

 

――可変されたポイズンシードの概要は、一言で言えばライフル銃だった。

 

そしてメルクのバリアジャケットは、白衣のようなそれに変わっている。

 

 

「もうお姉ちゃん達、ダメだよ」

 

 

「?」

 

 

メルクはライフル銃と化したポイズンシードのスコープを覗きながら、言い放つ。

 

 

「――直ぐに、もがき苦しむ“激痛”<ペイン>をあげるから」

 

 

 

 

 

 

☆★☆

 

 

 

 

 

 

「調合師、だぁ?」

 

「アア、そうダ」

 

廃ビル、元立体駐車場。

 

オレはそこで身体についた血を落としていた。

 

もう自分な血なのか、ヤツの血なのかわからない位の量だったから、拭くのにかなり苦労したがな。

 

「メルクは魔力ヲ様々な薬品に換えらレル、非常に特異ナ変換資質の持ち主ダ」

 

ヤツは今、腕の無い状態で壁に寄り掛かっている。

 

両腕を斬り落とされ、戦意を喪失しているようだ。

 

 

「こと毒殺にかケテ、ヤツに敵うモノはイナイ」

 

「…………」

 

 

毒殺、か。

 

 

それは確かにやっかいそうだな。

 

大丈夫か、なのは?

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆

 

 

 

 

 

 

「しゅーと★」

 

メルクはライフルのトリガーを絞り、ニードル状の弾丸を射出した。

 

「ッ!!!」

 

なのはは回避を取ろうとしたが、肩に違和感を感じた。

 

――放たれたニードルが、バリアジャケットを貫通して肩に刺さっていたのだ。

 

 

(――速いっ!!!)

 

フェイトは戦慄した。

 

弾速が、ケタ違いに上がっている。

 

 

「何、コレ……?」

 

なのはは刺さったニードルを抜こうとするが、どれだけ力を加えても抜けない。

 

 

「――早く抜いた方がいいよ」

 

メルクは他人事のように呟く。

 

 

「それ、中に入ってるの塩酸だから」

 

 

「ッ!!?」

 

 

瞬間、なのはの肩から肉の焼ける黒煙が立ち上る。

 

そして遅れてくる、激痛。

 

 

「あ、ああああああああッ!!!」

 

「なのはっ!!!」

 

急に隣で苦しみ出したなのはに、フェイトは駆け寄る。

 

「い、痛いッ……フェイト、ちゃ……」

 

「なのはっ!!」

 

フェイトは直ぐさま、肩に刺さっているニードルに手をかけ、力任せに引っこ抜いた。

 

引っこ抜いたニードルからは薬品が滴り、それを直ぐに捨てる。

 

「なのは、大丈夫っ!!?」

 

「……うん、なんとか……あぁッ!!!」

 

再び、肩を抑えながら激痛に苦しむなのは。

 

「――このッ!!」

 

フェイトは振り向き、勢い様にプラズマスマッシャーを放つ。

 

しかしそんな雷速の攻撃を、メルクは難無くよける。

 

(――2ndモードを起動してから、身体能力も上がっている……)

 

フェイトはなのはを抱え、とにかく距離を取った。

 

自分でさえ見えなかった毒の弾丸を、とにかく回避しなくてはならない。

 

「……しょーがないな~」

 

メルクはスコープを覗き、高速移動をするフェイトに向けて撃つ。

 

「しゅーと★」

 

ニードルは正確に真っすぐ進み、フェイトの頬を掠る。

 

「ッ!!!」

 

 

驚く程精密な射撃に、フェイトは更にスピードを上げる。

 

「フェイト、ちゃん……?」

 

「なのは、待ってね。直ぐに医療班のところへ……」

 

しかしなのはは、フェイトの腕を掴んだ。

 

「……なのは?」

 

「いいよフェイトちゃん。直ぐに、反撃しなきゃ……」

 

「何言ってるのなのはっ!!!」

 

そんななのはに対し、フェイトは力強く激励した。

 

「そんな無茶ばっかりして、なのははいつもだよっ!!!」

 

「……フェイトちゃん」

 

 

もうなのはの身体はJS事件の時の無理が祟り、見えなくともそのツケは身体に蓄積されているハズなのだ。

 

そしてそれはいつ、なのはから魔法という力を奪ってもおかしくはない程に……

 

 

「もう、あんな目には合わせないっ!! 私が、絶対にっ!!!」

 

力強く言うと、フェイトは更にスピードを上げた。

 

自然となのはを抱える腕に力が篭る。

 

 

「……見つけた」

 

フェイトは地上で待機している医療班の車両をみつけた。

 

「なのは、直ぐに連れて……」

 

 

刹那。

 

 

「ッ!!?」

 

 

フェイトは、足に違和感を覚えた。

 

それは奇しくも、なのはが感じたものと同じ違和感。

 

 

「…………ほぅら」

 

 

――フェイトの足に、ニードルがヒットしていた。

 

 

「――逃がさないよ♪」

 

 

スコープを覗くメルクの目は、これ以上ない程に爛々と輝いていた。

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