魔法少女リリカルなのは -Crime seeker-   作:鹿丸

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ⅩⅩⅠ Spider string2

オレは目の前で突っ立っているジグを見据えつつ、ストレイジの峰で肩を叩いた。

 

「あ~……ガキは一緒じゃないのか」

 

「メルクか……今頃外デ空を走ってるダロウ」

 

逃がした、って事か……

 

まぁいいや。予想してたし。

 

「ヨク、我がココに来ルとわカったナ」

 

「なぁに。珍しく勘が働いたのさ」

 

実際、半分は勘みたいなものだ。

 

「そうカ……だが、根拠がアルハズダ」

 

「…………」

 

「――ドコで気づいタ?」

 

 

オレはストレイジを下ろし、ウィルネスで左肩を解す。

 

 

「――思えば、アメトリスん時から引っ掛かってた」

 

アメトリス銀行……オレとフェイトで解決した強盗事件だ。

 

「あの時の連中の目的はテロだった。けど、その真意が見えなかったんだよ。なんで連中はテロを計画したのか? それを考えてる時に、あの原子炉ドッカーンだ」

 

オレが危うく骨も残らない目に遭うところだった、あの事件。

 

「あれの目的は見えてた。多分、クロノの実動隊の戦力を削る事。それ以外にあるとすれば、あの施設の処理か……いや、それはついでか」

 

「ついで、トハ侵害ダナ。あの施設ハ我々が長年実験に使ってイタ言わば実家ミタイナものダ」

 

「だから、ケリをつけた、と」

 

「――サァナ」

 

まぁいい、続きだ。

 

「アメトリス……原子炉……この二つの事件がオレの中で繋がったのは、お前がここに現れた瞬間だった」

 

「……ホゥ」

 

ジグは面白そうに笑う。

 

「オレとお前がクラナガンで戦っていた時。お前は明らかに手加減……いや、完全に負ける気だった。そうしなきゃ、お前の目的が果たせないからだ」

 

「……デハ聞こウ、その目的とヤラハ?」

 

挑発するような声色で、ジグは答えを誘う。

 

 

「――お前、言ったよな? ”クラナガンは優秀な魔導師が巣くう場所だ”って。つまりそれはお前らリプロードにとって、邪魔な魔導師がうろちょろしてるという裏返しの意味がある事になる」

 

「…………」

 

「アメトリスん時も、原子炉ん時も、アレはクラナガンにいる邪魔な魔導師を消すのが目的……今回だってそうだ」

 

いよいよ、核心だ。

 

 

「――お前は邪魔なクロノの部隊を潰す為に、この艦に捕まりに来たんだろ」

 

「――ホゥ、面白イ。続きヲ聞きタイものダナ」

 

お望みなら、いくらでも聞かしてくれる。

 

「アメトリスの事件はさしずめ、原子炉を使った事件の実験……爆弾といい目的といい酷似しすぎているからな。しかしアメトリスも原子炉も失敗……だから今度は艦を狙った。艦に入っちまえば後は簡単だ。艦にいるスパイに拘束を解いてもらい、艦を落とすだけ」

 

オレはウィルネスの刃先で背後の機関部を差した。

 

「その為には、機関室が手っ取り早いだろ。なんせ機関室の半分を吹っ飛ばせば簡単に艦の推力は落ちて、直ぐに墜落だ」

 

クロノの艦はそれなりのデカさだが、推力を担う機関部はマシな魔導師なら直ぐに潰せる。

 

つまりジグは、ハナから艦を潰す為にクラナガンを訪れたのだ。

 

「なんであのガキまで連れてきたのかはわからんがな」

 

「――フフ、ハハハ……」

 

途端にジグは身を引き攣らせ、低く笑い出した。

 

 

「――80点ダナ」

 

「何?」

 

「その答えでは80点ダ。確かに我ハこの艦を落とス為に捕マッタ。ダガ、決してワザト負けたワケではナイ」

 

だろうと思った。

 

「管理局に捕まるコトなど、キサマを殺してからデモ造作もナイコト……それニ、メルクまで捕まるコトは予想外ダッタ……」

 

「エースオブエース様をナメすぎだ」

 

「ダガ、メルクにはイイ教訓にナッタダロウ」

 

ハタ迷惑な事限りなしだがな。

 

さて、名探偵ドアの名推理は以上だ。

 

他にも聞きたい事はあるが――それはこの陰キャラ野郎を潰してからだ。

 

「――さぁて、名推理の後のアクションタイムだ。観念しろ」

 

「ハハハ、そうダナ……」

 

ジグは少し首を動かし、甲冑に隠れてたであろうペンダントを垂らす。

 

「……ようヤク、コイツを使う時ガ来たヨウダ」

 

「…………」

 

オレは剣を握る手に緊張を走らせた。

 

ついに、来るぞ。

 

ジグのデバイスが。

 

 

「――タラントレント、セットアップ」

 

 

 

刹那、ジグのペンダントが強烈な光を放った。

 

目に光が入り、オレはつい目をつむる。

 

「くっ……」

 

徐々に薄目を開けていくと、そこには人のシルエット。

 

――いや、完全な人のシルエットだった。

 

 

「――立派な腕が生えたな、オイ」

 

視界が完全に戻った時に見えたジグの姿は、今までとそう変わらなかった。

 

変わったとすれば腕が再生し、その手に長い鎗が握られている事くらい。

 

しかしそんな普通に近い姿でさえ、オイは戦慄した。

 

普通、腕が生えるかオイ? イモリじゃねぇんだぞ?

 

「――驚いたカ?」

 

「そりゃ、ね。普通腕なんて生えないだろうが」

 

「我は、普通の人間とは違うからな」

 

「そりゃ織り込みずみ」

 

腕をぶった斬られて、ヘラヘラできるヤツをオレは人間とは呼ばない。

 

「――我々ハ、“プロトクルス”」

 

「プロトクルス?」

 

聞かない名前だ。

 

「人造魔導師トモ、戦闘機人トモ違う、全く新しい種の人工生命体――リプロードの王以外の主要メンバーは全員プロトクルスで構成サレテイル」

 

人造魔導師とも、戦闘機人とも違う存在――?

 

そんなモンが出来上がってたのか――!?

 

「並外れた魔力量、生命力を生まれながらに持ち、不老不死の如く力を授かる」

 

オレの脳裏に、ジグの腕を斬り飛ばした時の光景が浮かぶ。

 

「我はその“6番目の実験体”。被験体名“ヘキサプロト”ダ」

 

「――参ったね、ドギモ抜かれたよ」

 

つまりその王ってヤツを除けば、リプロードにはコイツとメルクを含めて後7人もプロトクルスという化け物がいる事になる。

 

オイオイ勘弁してくれよ。そんなモンが事実なら……

 

いや、もう事実だとか嘘だとかの議論は無意味だ。

 

既にオレは……この目で見ている。

 

だとしたら、これは質量兵器よりタチが悪い。

 

なんて面倒臭い事になったもんだ。こういうのはクロノの仕事だってのに。

 

「――化け物じみてるとは思ってたが、まさか現実に化け物だとはな」

 

「……そうカ、ダガ我から見れバ、キサマも十分にプロトクルスのようだゾ?」

 

「――ハァ?」

 

「メルクの毒をモノともシナイその肉体――実にプロトクルスのヨウダ」

 

それはそれは、光栄だが不名誉だか……

 

だがオレが毒をものともしないのには、“別の理由”がある。

 

プロトクルスなんてものは、一切関係していない。

 

「――サテ、能書きをタレルのはこのクライだな」

 

ジグはそう言い鎗型デバイス、タラントレントを構えた。

 

何が能書きだ。冗談じゃない。

 

――どうやらオレは、一生に一度起きるかどうかわからないやる気の使い所を間違えたようだ。

 

 

「――イクゾッ!!」

 

瞬間、ジグは猪の如く突進し、鎗を突き立てた。

 

オレはそれをウィルネスでいなし、臨戦体制に入る。

 

「ウィルネス、2ndモード」

 

ウィルネスから魔力光が放たれ、モードが起動する。

 

「――イグナイトモードっ!!」

 

「フン、スピード強化カ……」

 

オレは強化された脚力でジグに剣を振るう。

 

しかし、それは寸出で防がれる。

 

スピードを生かした斬撃を加えるが、鎗で防がれ、あわよくば反撃までくる。

 

「チッ……」

 

オレは一旦距離を取った。

 

どうやらデバイスの力は相当なモノらしい。

 

「確かニ速いガ……止められないワケではナイ」

 

そんなのはわかっている。

 

野郎、完全に見切ってきやがるのだ。

 

 

オレはその場で双剣を振るった。

 

「牙蓮砲ッ!!」

 

衝撃波を得た斬撃が真っ直ぐにジグに向かう。

 

しかしそれは力強い鎗の振りで消し飛ばされた。

 

「――参ったね、どーも」

 

オレは口を滑らせながら、ジグに突きを放つ。

 

そこから追り合いに持ち込み、力比べだ。

 

「ハハッ、随分苦しそうダナ」

 

「病み上がりなもんでっ!!」

 

互いに弾け、再度ぶつかり合う。

 

正直、イングラムで撃たれた部分はまだ完全には治っていないのだ。

 

無理をすれば血が滲み、弱点を曝すようなものだ。

 

オレは地味にくる痛みをこらえながら、ひたすらに斬撃を加えた。

 

左に転がり、勢いでストレイジの突きを撃つ。

 

それをいなされたと同時に、今度はウィルネスで連撃を与える。

 

 

(……やはり、厄介な剣ダナ、コイツ……)

 

ジグは絶え間無く放たれる攻撃の数々に舌を巻いていた。

 

ドアの剣術は本来なくてはならないハズの“型”というものがない。

 

それゆえに、対応が効きづらいのだ。

 

その証拠に、先ほどからジグからの攻撃はほとんどない。

 

今は精一杯防いではいるが、いつこの均衡が崩れるかわからない。

 

 

(……勝負ヲ、決めるカ)

 

 

「だりゃあっ!!!」

 

ストレイジの力の斬撃が鎗を払い、ウィルネスの突きが甲冑を掠る。

 

「ムゥッ……」

 

「ハァ……ハァ……」

 

 

あんだけ速く動いて……ようやく掠るぐらいか……

 

どうやらプロトクルスってヤツらはガチで化け物らしい。

 

オレは二刀を横に構え、ステップを踏んだ。

 

また追り合いに持ち込み、互いに押し合う。

 

「……突っ込むシカ能がナイナ」

 

「そうでも、ないぜ」

 

 

瞬間、オレは地面を蹴った。

 

「ッ!!?」

 

オレの体は高く飛び、真下にジグが見える。

 

オレは振り落とすように両剣を構え、重力と体重と魔力を込めて、一気に振るった。

 

 

「――墜蓮砲ッ!!!」

 

 

振り下ろされた“落ちる斬撃”は、鎗を構えるジグに真っ直ぐヒットした。

 

「グァッ!!?」

 

 

鎗で受けきれなかった斬撃がジグの五体を吹っ飛ばし、地面を引きずる。

 

オレはスタッ、と着地し、上がった息を整える。

 

「――フフッ、ハハハ」

 

ジグは起き上がり、鎗を地に立てた。

 

甲冑には、若干ながらのヒビが入っていた。

 

どうやら直撃させないと、ダメージが入らないらしい。

 

「ヤハリ……キサマも人間デハないナ。プロトクルス相手に、ここまでヤルのダカラ……」

 

ジグは鎗を横に翳し、魔力を集中させた。

 

「――ダガ、本気になったプロトクルスにハ、敵うマイ」

 

「――ッ!!?」

 

 

刹那、異様な殺気を感じた。

 

まるでピリピリとした空気を送り込んだような……

 

 

「――タラントレント、2ndモード」

 

鎗が魔力光でうめつくされ、ジグの体すらを覆う。

 

 

「――スパイダーモードッ!!!」

 

 

瞬間、魔力が弾けた。

 

 

――怒れた蜘蛛の、反撃が始まる。

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