魔法少女リリカルなのは -Crime seeker-   作:鹿丸

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ⅩⅩⅢ Face where it played

オレは、顔は“人間性の入口”だと思っている。

 

人は初対面の時必ず顔を見るし、相手の感情だって大方表情で判断する。

 

男も女もまず顔から惚れるパターンが普通だし、そこから内面が感化される事だってある。

 

顔は当てにならない、だって?

 

断言してやる。顔は当てになる。

 

だから、オレはまず内面を見てもらう前に外見を見てもらおうと顔を磨いた。

 

モテる為に、ひたすらカッコイイ言い回しも考えた。

 

それがオレの楽しみであり、生き甲斐だったからだ。

 

 

――まぁ何が言いたいかと言うと、オレは顔を見て内面を想像するということだ。

 

断定はしない。ただ想像するだけ。

 

だからオレは、ジグがどんな顔かを見て、その人間性を想像してやろうかと思った。

 

けど、甘かった。

 

“プロトクルス”ってヤツは、どうやらオレの人知を遥かに越えた連中らしい――

 

 

 

「――ッ!!?」

 

「……フフ、ドウダ?」

 

オレはヘルムから現れたジグの顔を見た瞬間、背中がゾワッと震えたのを感じた。

 

なんせそれは、とても“顔”とは言い難いものだった。

 

やたら張り巡らされた、継ぎ接ぎ。

 

歪んだ虹色に変色した皮膚。

 

更にはニキビとも言い難い、不気味な吹き出物。

 

そして全体的に凸凹した、顔のパーツ。

 

それはまさしく、化け物。

 

そんな、顔だった。

 

「…………」

 

「フフ、言葉も出ないか……」

 

ジグは腫れまくった口を小さく動かす。

 

「後悔、シタカ?」

 

「――何で、そんな面白いツラ……してんだ?」

 

オレから精一杯捻り出した言葉は、それだった。

 

「言ったダロウ、“失敗作”ダトナ」

 

ジグは「コレを見ろ」と言い、やたら脈打つ首筋を指差した。

 

そこには、“Ⅵ”と描かれたプレートが埋め込まれていた。

 

「――コレ、どっかで……」

 

そう、オレはコレを何処かで見覚えがあった。

 

「ヤハリ知っていたカ……我々の秘密ヲ」

 

「秘密?」

 

そういや最初会った時、秘密を知ったからどうとか言ってたな。

 

そんな時、不意に思い出した。

 

「ッ!! ……ア~、あのプレートか」

 

そう、原子炉が爆発したあの事件。

 

あの研究施設の中に、この“Ⅵ”と描かれたプレートを見たんだ。

 

まさか……コレがソレ?

 

「このプレートは、プロトクルスの情報を管理するチップ……言わば、“第二な脳”ダ」

 

「第二の、脳……」

 

だから、秘密か。

 

あの研究所にあったチップに、情報が詰まっていたかもしれないから。

 

「プロトクルスにも、序列がアッテナ……」

 

「?」

 

「“6番目の実験体”と呼ばれてはイルガ、ソレは開発サレタ順番デハナク、単純ニ能力の序列を表してイルノダ」

 

「……能力の序列」

 

オレは嫌な唾を飲み込んだ。

 

ジグの話が正しけりゃ、“Ⅵ”というナンバーはプロトクルス7人の序列で言えばビリ2だ。

 

つまり、後少なくとも5人のジグより強いプロトクルスがいる事になる。

 

……いや、まだもう一人いたな。

 

「答えろ、ジグ。リプロードを統べているヤツは誰だ?」

 

「…………」

 

ジグは真顔になり、何処か虚空を見つめだした。

 

そう、プロトクルス7人を統べている、王。

 

そいつが、今回の事件の主犯だ。

 

「…………」

 

「答えろ」

 

オレが冷たく放つと同時に、ジグは短く息を吐いた。

 

「リプロードの王……我らが王の名ハ……アプロシアス・レルエッシュ」

 

 

――アプロシアス・レルエッシュ。

 

「それが、王の名か?」

 

「アア、世界を再生し、ソシテ……」

 

「…………」

 

 

「――管理局を、再生する為にウマレタ、王ダ」

 

「ッ!!?」

 

 

オレは嘆息に、息を飲んだ。

 

次から次へと、とんでもない事を吹き込まれる。

 

プロトクルス――

 

ナンバーの序列――

 

アプロシアス・レルエッシュ――

 

 

有益な情報は、十分に得た。

 

だが最後に、一つ残っている。

 

オレにとっては、コレが1番最重要項目だ。

 

 

「最後に聞きたい……」

 

 

「…………」

 

まだ何か、という表情のジグに、オレは重く言い放った。

 

「――“13年前の遺産”ってのは、何なんだ?」

 

 

13年前の遺産。

 

コレの謎を、知りたい。

 

コレが、何を意味しているのか……?

 

 

「……フフ、ハハ」

 

途端に、ジグは息を引き攣らせた。

 

そして、それは高らかな笑いに変わる。

 

 

「ハハハハハハハハッ!! ハハ、ハハッ!!」

 

 

「何が可笑しいんだ?」

 

 

「ハハ……いや何、キサマが面白い事を聞くカラナ……」

 

そしてまた途端に、ジグは笑いを殺した。

 

不気味な静けさが残り、オレは元から悪かった居心地が更に悪くなる。

 

――刹那、ジグが口を開いた。

 

 

 

「――物語は、スデに始まったノダ」

 

 

「……?」

 

 

“ジグがそれを言った、瞬間だった”

 

 

「大魔導師、プレシア・テスタロッサガ……」

 

 

“この物語が……”

 

 

「十数年前ニ……」

 

 

“不穏な音を立てて”

 

 

「――フェイト・テスタロッサを生み出した、瞬間ニナ」

 

 

「――ッ!!!?」

 

 

 

“ゆっくりと、動き出した”

 

 

 

「――お前、それはどういう事だっ!!!?」

 

言葉の意味を飲み込めた時、オレはジグの胸倉を強く掴んでいた。

 

何故だか、わからない。

 

だがそれを聞いた瞬間、動悸が激しくなり、頭が熱くなる。

 

いつものクールなオレはもう何処かへ飛び、オレはジグからひたすらに答えを引き出そうとした。

 

しかしジグら聞こえるのは、渇いた笑いだけ。

 

「……ジグッ!!!」

 

「ハハハ……ハハ……」

 

ふと、ジグの表情が固くなる。

 

「……我ハ、駒ダ」

 

「――駒?」

 

 

「アプロシアス様が楽シムゲーム台の上で動く……タダの駒」

 

 

ジグの声が段々と小さく、生気の無いものへと変わる。

 

「――そしてアプロシアス様ハ、我を動かシタ」

 

オレはジグの胸倉から力を抜いた。

 

その拍子だった。

 

 

――ジグの首筋が、あらわにになり……

 

 

「――“捨て駒”とシテナ」

 

 

「ッ!!?」

 

 

ジグの首筋には、赤いニードルが深々と刺さっていた。

 

まさか――コイツッ!!!

 

 

「ハナっから、死ぬ気だったのか……?」

 

「…………」

 

「クラナガンに来た時から、死ぬ気で……」

 

ジグは答えない。

 

いや、答えられないのだ。

 

既にニードルは首の深くまで刺さっていて、抜いたとしても毒は既に全身に回っているハズだ。

 

もう、口を動かす事すら――

 

 

「……物語ハ」

 

 

「――ッ!?」

 

しかしジグは、声を絞った。

 

全身が麻痺し、心臓が止まりかけているにも関わらず、口を動かす。

 

 

「……物語、ハ……既に、動き出しテ、イル……」

 

「…………」

 

「アプロシアス、様……ソシテ、13年前の……遺産……」

 

「…………」

 

「キサマに、ソレを護れルカ、ナ……?」

 

「…………」

 

 

――コレは、挑戦状か。

 

ヤツからオレへの、挑戦状。

 

覚悟を試しているのだろう。

 

オレが物語とやらに加わり、アプロシアスを止められるかどうか……

 

そして、13年前の遺産を護れるか、どうか……

 

 

――オレは、殺人犯だ。

 

今更、何かを護るなんて、可笑しい話だ。

 

だが、そんなオレでも、護れるものがあるなら……

 

 

「――護るさ……死ぬまで」

 

 

「…………」

 

 

「あの世で吠え面かくなよな、陰キャラ野郎」

 

「……ハハ、ッ」

 

 

ジグは一瞬笑い、一瞬の内に目を閉じた。

 

――そして、その鼓動は止んだ。

 

 

「…………」

 

ふと意識すると、自分の心臓の鼓動がうるさく感じられた。

 

 

久々に、見たな。

 

 

これが――“死”か。

 

“死”を見ると、自分の“生”を嫌でも意識してしまう。

 

オレは、ヤツの言った言葉を頭の中で繰り返した。

 

 

『――フェイト・テスタロッサを生み出した瞬間ニナ』

 

 

「…………」

 

オレは、思い違いをしてたのかもしれない。

 

今までオレは、“13年前の遺産”とは、“あいつら”と関係があるものだと思っていた。

 

しかし、もしかしたら――

 

 

――13年前の遺産ってヤツは、フェイトと繋がってるんじゃないのか?

 

 

 

 

 

 

 

★☆★

 

 

 

 

 

 

 

それからは、慌ただしかった。

 

クロノの部下達がジグの遺体を回収し、艦は無事に本局にたどり着いた。

 

そこでジグにうめこまれていたチップを解析し、情報を割り出すようだ。

 

結局、メルクは捕らえられず逃がしてしまったが、チップの事を考えればお釣りが出るらしい。

 

なのはは一通り治療を受けた後、通常業務通りに戦技教導官としての仕事に戻った。

 

オレとフェイトは本局の病院に3日間ぐらい入院するハメになった。

 

オレが新しく受けたダメージにシャマルがぷんすかぷんすか言っていたが、まぁ例の如くスルーさせてもらった。

 

――そして、オレとフェイトは通常通り執務官とその補佐の生活に戻った。

 

 

 

「――邪魔するぞ」

 

退院してから2日経ったある日、オレは仕事の合間に病院に来ていた。

 

オレは部屋番号を確認した後、ノックをせずに扉を開ける。

 

なぜなら、立派な病室のベッドで寝ているソイツは、オレの舎弟だからだ。

 

「――うわっ!!? ドアさんっ!!」

 

 

――フレイムは驚いたような反応をし、つい畏まる。

 

病人服を着たフレイムの右腕には、痛々しい包帯が巻かれ、数々のチューブが繋がれている。

 

「お見舞いに来てやったぞ」

 

「お、お見舞い?」

 

怪訝そうな顔をしてやがる。

 

「感謝した方がいいぞ。オレが男の見舞いにやって来るなんてのは滅多にないからな」

 

「は、はぁ……」

 

それでもまだ何やら怪しそうなツラをしていたので、オレはその頭を叩いてやった。

 

「痛ッ!!」

 

「痛いのは生きてる証拠だ」

 

オレは備え付けの椅子に座り、姿勢を楽にする。

 

「――腕は、痛むのか?」

 

オレは包帯に巻かれた短すぎる腕に視線を寄越した。

 

「……はい」

 

「あのガキの毒にやられたんだって?」

 

「……はい」

 

オレはため息をつく。

 

フレイムは肘から先のない腕を左手で抱え、笑顔で答える。

 

「……提督があの時こうしてくれなかったら、今頃僕は死んでました……」

 

 

その話はクロノから聞いた。

 

メルクの猛毒を食らったフレイムが動かないのを見て、クロノが神経毒でやられた拙い頭で考えた結果らしい。

 

肘から毒を流されたのなら、それが心臓に至るまでにその道を切ってやればいい。

 

クロノは断腸の思いで、魔力刃でフレイムの腕を斬ったのだ。

 

フレイムを、生かす為に。

 

分の悪い賭けではあったが、なんとかフレイムは生きられた。

 

だが失ったものは、魔導師にとっては大きなものだった。

 

フレイムはもう、十分に戦う事ができない。

 

その事について、クロノはひたすらフレイムに頭を下げたそうだ。

 

自分がフレイムの命を救った、のにも関わらず。

 

提督という立場にいる癖に、妙な所で真面目なのだ、あいつは。

 

「――新しく腕はフックにしたらどうだ? キャプテンになれるぞ」

 

「あ、僕ディズニーならアラジン派です……」

 

「ならランプでも括り付けろ」

 

その途端、ポッケの通信機が久々にベルを鳴らした。

 

オレは通信機をテーブルに置き、モニターに表示された相手の名前を見てため息をつき、フレイムの方を向いた。

 

「――やっぱりこの通信機を付けたらどうだ? いつでも金髪の魔神を呼び出せるぞ」

 

「……ドアさん。もう通信入ってます」

 

引き攣ったフレイムの言葉を聞くと同時に、オレはモニターに顔を向ける。

 

 

「――ふ~ん……、私は通信機の魔神様なんだ~……」

 

そこには、ジト目でこちらを睨みつける我が麗しの上司様がいた。

 

「失敬、女神と言うべきだったな。ミッドチルダで1番美しい至高の女神様……」

 

「そうやってたくさんの女の子をたぶらかしてきたんでしょ」

 

「たぶッ……」

 

オレが口を詰まらせたのを見て、フレイムが笑いを堪えているのが見なくてもわかった。

 

「――それより、いつまで仕事をサボる気なのかなっ!!?」

 

フェイトは眉間をつまみながら声を張り上げる。

 

「君は部下に友達の見舞いにも行かしてくれないのかい?」

 

「あ、いや、そんな事はないけど……って昨日もそう言って確かパブにいたよね……」

 

「あそこも病院だ。オレの仕事でやつれた心を癒してくれる」

 

そこまで言った所で、フェイトの体からバチバチッと電気が起こる。どうやらふざけが過ぎたようだ。

 

「わかった、15分で戻る」

 

「ちゃんと戻らなかったら、ドアの相棒のギター黒焦げにするからね」

 

どうやら、我が麗しのレスポールを人質に取られたらしい。

 

「肝に免じとくよ」

 

「それじゃ、フレイムくんにもよろしくね」

 

そう言って通信が切れ、オレは肩を竦めてみせた。

 

「どう思うよ、あの悪魔?」

 

「あ、いや、綺麗な人だなぁ……と」

 

やれやれ、どうやら彼には足りないものがあるらしい。それは“歳”だ

 

フレイムが後10ばかり歳をとっていたら、そんな純粋な考えは腐り落ちるだろう。

 

「――それじゃ、邪魔したな」

 

「あ、お疲れ様です」

 

職場じゃないのに敬礼するフレイムに対し、オレは手を振りながら病室を出た。

 

「――さて、と」

 

オレは病院の廊下を歩き、とある病室を探した。

 

今日ここに来たのは、二つの用事があったからだ。

 

一つはたった今済んだ。

 

 

そして、もう一つは……

 

 

「――あったあった」

 

オレはとある病室の前にたどり着いた。

 

――部屋の札には、ジャン・エイムス。

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