魔法少女リリカルなのは -Crime seeker-   作:鹿丸

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EPILOGUE

「…………」

 

そこは、太い柱と大理石の床だけの空間だった。

 

天井は持ち出したかのような星空で満ちており、周囲は壁が無いと錯覚するくらい虚が永遠と続いている。

 

そんな空間を、ある男がポッケに手を突っ込んだまま歩いていた。

 

 

「――貴様がここに来るとは珍しいな、“第2の実験体”ゾット・モルスリード」

 

「たまには実家が恋しくなる時だってあるさ、“第4の実験体”フーレ・オルトス」

 

星空を仰いでいたハスキーボイスの青年は、歩み寄って来るその男に声を落とした。

 

フーレと呼ばれた青年は燃えるような赤髪に歳にそぐわない葉巻をくわえ、常に狩人のような鋭い瞳をしていた。

 

対してゾットは高そうなスーツを纏い、ヤーさんが着けそうなサングラス。そして銀髪をオールバックと大人の魅力が前面に出された風体だ。

 

「実家か……確かに実家みたいな場所だな、ここは」

 

フーレは水晶のピアスを揺らし、辺りを見渡す。

 

「そうだな、違いない」

 

「ところで貴様はどこをほつき歩いていた? この大事な時期に……」

 

「なぁに、“地球”だよ」

 

「地球?」

 

フーレは首を傾げた。

 

「魔法の無いド田舎さ。だがあそこは酒と音楽と女に関しては群を抜いてる。今度連れていってやるよ」

 

「道楽に更けてた訳か……このリプロード一の遊び人が」

 

フーレは忌ま忌ましそうにゾットを睨みつけた。

 

「まぁそういうな。それより兄弟達は?」

 

兄弟、というワードを耳にした瞬間、フーレは鼻で笑った。

 

「兄弟か……そんな意識、持った事無い」

 

「つれないねぇ……せっかくの家族だ。楽しくいこうぜ」

 

「そんなツマラナイ言葉、貴様が1番似合わないぞ。アプロシアス様ならお休みになられた」

 

ゾットは肩を竦め、サングラスを取った。

 

「ほう、我等がボスはおねむと……リエーラは?」

 

「ドードーと遊んでいる」

 

「虐めてるの間違いじゃないのか、メルクは?」

 

「さっき戻ってきた。どうやら遊び疲れたようだな」

 

「ヤンチャな年頃だからねぇ……ゼクロスは?」

 

「ヤツか……ヤツはアプリスにいる」

 

「アプリス……」

 

聞き慣れない言葉を耳にしたように、ゾットは顎に手を当てる。

 

「貴様は人の話を聞いていないのか?」

 

「すまないね。歳なもんで」

 

「――質量兵器の密輸先だ。ゼクロスが管理している」

 

「へぇ……」

 

ゾットは興味ありげに口元を緩める。

 

「あの楽園にゼクロス一人で……羨ましい事限りなしだ」

 

「ヤツは貴様の様な職務放棄の道楽者とは違う」

 

バカな事を言うゾットに、フーレは厳しい言葉を浴びせる。

 

「――オジサン傷ついたわ。そんで、ジグは?」

 

「ジグか……」

 

フーレは表情を固くし、重い言葉を呟いた。

 

 

「――ヤツなら、死んだ」

 

 

「……あ、やっぱり?」

 

 

ゾットは調子の外れた様に言った。

 

「知っていたのか?」

 

「ああ、さっき聞いた」

 

「誰から?」

 

「マイロード、アプロシアス様」

 

その言葉に、フーレはつい舌打ちを打つ。

 

「……なら、大体は知っているじゃないか」

 

「大体、はね」

 

まばゆい星空を見上げながら、ゾットは透かした様に呟く。

 

「まさか、ジグが死んじゃうなんてねぇ……」

 

「ヤツは所詮“失敗作”だ。成功体の我等とは格が違う」

 

「――その台詞、ドードーの前では言ってくれるなよ」

 

やや凄みの入り混じった声音に、フーレは目線を反らした。

 

「――そこまで無神経じゃないさ」

 

「ならいい」

 

「――で、貴様は結局何しにここに来た?」

 

「よくぞ聞いてくれました」

 

楽しみを迎えられた子供のように、ゾットは声を弾ませる。

 

「……フーレ・オルトス。リエーラ・クラウドの両名は至急アプリスに直行し、ゼクロス・ホークと合流し、“例の計画”を進めよ、との事だ」

 

「――なんだって?」

 

いきなり命令の様な台詞をまくし立てられて、フーレは再度聞き直した。

 

「二度言うのは面倒だから、後はアプロシアス様に聞いてくれ」

 

「……と言うことは、それはアプロシアス様の言葉なんだな」

 

「そりゃモチロン」

 

ゾットは踵を返し、カツカツとブーツを鳴らす。

 

「言いたい事はそれだけだ。兄弟」

 

その場から去ろうとするゾットに、フーレは一度だけ声をかけた。

 

「……貴様は今からどうするんだ?」

 

「なぁに、管理局のジジイ共とお話さ」

 

「先方からは何と?」

 

「嗅ぎ付けられる前に融合兵器の開発を急げ、だとさ」

 

呆れたように言うゾットに、フーレは同調して笑う。

 

「そうか……愚かな連中だな」

 

「その愚かな連中の中に、彼女はいる訳でしょ。確か、フェイ……なんたら」

 

「フェイト・T・ハラオウンだ。いい加減覚えろ」

 

「そうそう、それそれ」

 

指差すゾットは笑い、それにフーレは再三呆れたような表情をする。

 

「ま、その彼女も管理局も、お手柔らかにしてやってな」

 

そう言い、ゾットはふらついた足取りで虚の中へと消えていった。

 

 

後に残されたフーレは、ただ一言呟いた。

 

 

「――お手柔らかに、か……何時だってあの男は、真意の真逆を口にする」

 

 

フーレはただ笑いながらそう漏らし、自身も虚の中に消えていった。

 

 

――後に、不気味な静寂のみが降りた。

 

 

 

 

First chapter:邂逅篇

 

 

――~END~

 

 

Second chapter:アプリス篇

 

――Coming soon……

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