魔法少女リリカルなのは -Crime seeker-   作:鹿丸

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Ⅱ Edge of story

某日。

 

今日は異様に寒い一日だった。

 

プラットプリズムは亜寒帯で、年中寒気を感じるが、今日ほど熱が恋しいと思った事はないほどだ。

 

――今になって思えば、この異様な寒気は今日という日を暗示していたのかもしれない。

 

 

「出ろ」

 

「?」

 

獄中で寝ていた俺に、看守が声をかけた。

 

手際よく檻の鍵を外し、開ける。

 

「何、ついに執行?」

 

「違う、面会だ」

 

「面会?」

 

また物珍しい事で。

 

いつもなら鬱陶しいと追い返していたが、ここ数年間気晴らしもないので、気まぐれで俺は檻を出た。

 

――まぁ尤も、相手はかの提督サマだったからどの道拒否はできなかったらしいが……

 

 

まぁそんなのはどうでもいい。

 

俺はそれ以降口を挟む事なく、看守の後に続いた。

 

ちなみに今の俺はとてつもなく弱い。

 

首にかけられたリミッターのおかげで通常の1%の魔力も力も出せない。

 

つまり、今俺がここで良からぬ事をたくらんでも、すぐに取り押さえられて、即日で極刑っつー訳だ。うまい事できてる。

 

そんなこんなで俺は面会室へたどり着いた。

 

鬱陶しい説明を二度に渡り聞かされ、俺は面会室に入った。

 

何ヶ月ぶりかの面会室は、全く変わらなかった。

 

いつも通り、無機質。

 

俺は黙ってテーブルについた。

 

「…………」

 

 

――しばらくすると、部屋に誰かが入ってきた。

 

それは懐かしく、そして忌ま忌ましい面をした親友だった。

 

「……クロノか」

 

 

オレはとりあえず言葉を発した。

 

それからクロノと他愛もない話をし、それから本題に入った。

 

正直、さっさと済ませたかった。

 

可愛い姉ちゃんが来るならまだしも、むさい男二人で狭い部屋にいるのは、俺の性に合わない。

 

しかし、クロノのある一言で、それは一変した。

 

 

「――釈放だ」

 

 

 

――は?

 

 

こいつ、今なんて言った?

 

釈放?

 

「ついにボケたかクロノ?」

 

「話の腰を折るな」

 

「折りたくもなる。6年もクソまずい飯食わされてきたこっちとしてはな」

 

極刑を待つ死刑囚相手にそんな言葉を言えば、嫌でも相手にしてしまう。

 

 

「もう少し詳しく言おう」

 

「…………」

 

一体、なんだってんだ?

 

「一週間前、我々の監査隊がとある情報を掴んだ」

 

監査隊……クロノの私兵部隊っつったとこか。

 

「とある大量の質量兵器が、ミッドに密輸されているという情報だ」

 

質量兵器……局にいる人間ならわかる通り、その存在は御法度中の御法度だ。局の連中もずいぶん痛いドジかましたもんだな。

 

「それ以降も調査を進めているが、何分情報が少ない」

 

「それで……俺に何の関係がある?」

 

「関係はない。ただ親友として頼みたい事がある」

 

「?」

 

親友、か。

 

「その調査に、僕の妹も関わっているんだ」

 

妹?

 

「……なんだっけ、執務官やってるとか言った……」

 

いつぞやに聞いた事ある。

 

名前まではわからないが、記憶の端々にその存在がちらついていた気がする。

 

「そうだ。彼女には単独で調査に当たらしてはいるが、何分今回のヤマは危険が多い」

 

確かに質量兵器絡みの事件は、ただでさえ死が付き纏う。

 

規模にもよるが、クロノも相当骨を折っているのは確かなようだ。

 

「そこでだ、君には彼女の副官として護衛を頼みたい」

 

しかし、ここで飛び出したのは聞き捨てならない一言だった。

 

護衛?

 

俺が?

 

何で?

 

「お前、気は確かか?」

 

「だからボケてないと言ってるだろう」

 

「違う。何で犯罪者に執務官を守らせるんだって話だよ。そんなに水と油が弾けるところが見たいのか?」

 

立場的にも、執務官と犯罪者は追う者と追われる者。

 

その二つが手を組むなんて、聞いた事ない。

 

「異例中の異例だという事は百も承知だ。しかし人がいないんだ」

 

「犯罪者に手を借りなきゃならんほど、管理局の人材は手薄なのか。冗談じゃねぇ」

 

意味の無い問答を続ける気は起きず、オレは早々に椅子から立ち上がった。

 

しかしクロノはやれやれといった表情で、机を指で小突いた。

 

「……まぁ、そう言うと思ったよ」

 

 

 

そう言うと思った?

 

随分先を見越して話をしているな。

 

再びオレは体重を椅子に戻す。

 

するとクロノは懐から一枚の紙を渡してきた。

 

「…………これは?」

 

「僕の妹の身辺データだ」

 

「…………」

 

――フェイト・テスタロッサ・ハラオウン。

 

俺は、その名前に多大な衝撃を受けていた。

 

「テスタロッサって……」

 

「そうだ。僕の妹はあのプレシア・テスタロッサの実子、アリシア・テスタロッサのクローンだ」

 

「っ!!!」

 

俺は冷静を装いながら、食い入るようにそのデータを読み込んだ。

 

フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官。

 

顔はそれほどクロノに似ていない。

 

どうやら養子としてハラオウンの名をもらったらしい。

 

しかし、経歴はさほど重要ではない。

 

俺にとっては、“テスタロッサ”の名こそが重要なのだ。

 

「どうだ、やる気になってくれたか?」

 

「…………」

 

クロノはわかりきったような表情でこちらを見る。

 

ちくしょう。相変わらず忌ま忌ましい。

 

だが、コイツの予想通り、答えはもう出ていた。

 

ここで死を待つのもアリかと思ったが……

 

 

「……ふっ……はは、お前もここ数年でずいぶん腹を黒く染めたな」

 

肚はすでに決まっている。

 

「……お前の妹、口説きに行ってやるよ」

 

 

――やるべき事が、また見つかったからだ。

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