魔法少女リリカルなのは -Crime seeker-   作:鹿丸

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Ⅳ Fight of borrowing dye

――誰か教えてくれ。

 

どうして、こうなった?

 

 

「それじゃあ、ルールは戦闘不可の状態になるか、降参させた方が勝ちって事で」

 

「ああ、問題ない」

 

 

――誰か、教えてくれ。

 

どうして、オレはデバイスを握っている?

 

 

「それにしても任務前なのによくやるな」

 

「二人ともほどほどにね~」

 

 

――誰か教えてくれ。

 

何で目の前に、レヴァンティンを構えたシグナムが、戦闘準備万端みたいなオーラをして立っているんだ?

 

 

「…………」

 

「では、よろしく頼むぞ」

 

 

――な、何故?

 

 

 

 

 

 

 

★☆★

 

 

 

 

 

 

 

事は、数時間前に遡る。

 

オレとフェイトはアプリス潜入任務の為、クロノの艦隊が出港する軍港に来ていた。

 

そこで結団式を行い、乗艦した後、次元空間を飛んだ。

 

向かう先はもちろん、アプリス。

 

時間的に言えば、2時間弱で到着するらしい。

 

それまでに任務の概要を前日に読み込んでいたオレとフェイトは、限りなくヒマだった。

 

 

「ア~……」

 

オレは艦隊の食堂でサンドイッチをほうばりながら、キョロキョロと辺りを見渡していた。

 

今、目の前にフェイトはいない。

 

どうやらクロノ辺りと任務の打ち合わせをしているようだ。

 

「……ヒマだ」

 

執務室での日々に慣れ、寝てる暇すら惜しい仕事量にすっかり身体があてられたようで、ヒマの持て余し方を身体が忘れてしまったらしい。

 

もしここがいつもの執務室ならばグラッツの店に顔でも出しただろうが、生憎ここは次元空間。

 

外に出ようものなら途方もない歪みの餌食だ。

 

 

「…………」

 

 

そこまで考えて、オレは食堂の外をフェイトが歩いているのを見つけた。

 

話しかけるか、否か。

 

それを考えている間に向こうから気がついたようで、軽く手を振りながらこっちにやって来る。

 

「打ち合わせは終わったのか?」

 

「うん。そんなに時間はかからなかったし」

 

打ち合わせと言っても、アプリスで動く際の注意事項のおさらいだろう。

 

向こうは自治でやってる為、どんな法律があるかわかったもんじゃない。

 

執務官試験ではこういうマイナーな部分が出題範囲で出されるんだよ、とフェイトがぼやいていたのを思い出した。

 

「食事は済ませたのか?」

 

「ううん、まだだよ」

 

「そうか」

 

オレはテーブルの隅に置いていた食券を取り、投げてやった。

 

「だろうと思ったよ」

 

「…………」

 

フェイトは寒気がしたように身体をわざとらしく摩った。

 

「どうした?」

 

「……絶対何かある。……きっと後で何かやらされる」

 

「……オイ」

 

オレは青筋を立て、頭を抱えた。

 

「だ、だってそんな、似合わない、から……」

 

「失礼だな。この手口でオレがどれだけの女を引っ掛けた事か」

 

仕事終わりにコレをやれば、疲れきった女など八割方落ちる。

 

「……でも私は簡単には落ちないよ」

 

「わかってるさ。君は頭がいいからな」

 

「……それって褒めてる? それとも皮肉?」

 

「どっちだろうな」

 

オレは笑いながら、引き換える為に立ち上がったフェイトを眺めた。

 

フェイトは恋愛経験など皆無のくせに、やや背伸びする節がある。

 

そこを刺激してやるのが、面白いが。

 

オレはサンドイッチを水で流し、時計を見た。

 

――後一時間ちょいか……

 

時計から目を外すと、いつの間にかトレイを持ってきたフェイトが仏頂面で座っていた。

 

オレはニタニタと笑いながら言ってやった。

 

「……君は見た目に反して、ずいぶん赤いものを食べるんだな」

 

「ドアが、注文、したん、でしょっ!!!!」

 

一つ一つ丁寧に区切って発せられたフェイトの怒声に、オレは手を挙げた。

 

フェイトの持ってきたトレイの上には、まるで地獄を再現したかのように真っ赤なラーメンが乗っていた。

 

「なぁに許せ、君の好みがわからなかったんだ」

 

「……誰も激辛ラーメンが好きなんて言ってないよ……」

 

今度はフェイトが青筋を立てる番だ。

 

しかし青筋を立てながらも、フェイトは律儀に激辛ラーメンを食す。

 

「…………ゴホッ」

 

やはり、むせた。

 

フェイトは麺を切り、水を飲む。

 

しかし、すぐに空になった。

 

「水ならタダだ。持ってきてやろうか?」

 

「ゴホッ、ゴホッ……は、早くッ!!」

 

どうやらガチで苦しそうなので、オレはやや早足でコップに水を入れた。

 

席に戻る途中にフェイトを見てたが、あれだけむせたにも関わらず、果敢にラーメンと戦っていた。

 

全く、律儀なのか、天然なのか……

 

オレはそんなフェイトが微笑ましくなり、口元を緩めたまま席に着いた。

 

「ほれ、水だ」

 

「あ、ありがと……」

 

むせながら水を飲み、またラーメンに挑んでいく。

 

全く、コレではキリがない。

 

そう思った時だった。

 

 

――“ヤツ”が現れたのは。

 

 

「テスタロッサ」

 

「は、はひ……」

 

辛さで回らない舌を動かしながら、フェイトは後ろを振り向いた。

 

そこにはピンクのポニテを垂らし、凛々しい姿の騎士様がいらっしゃった。

 

「し、しぐなむぅ……」

 

「どうした、声が変だか?」

 

事情を知らないシグナムはやや心配そうな表情になり、首を傾げる。

 

「あ、うん、ちょっと……」

 

「……?」

 

「ほっといてやってくれないか。今戦ってる最中なんだ」

 

オレがそういうと、シグナムはこちらを向いた。

 

「あなたは……」

 

「あ、オレはドア・ケリウス。そこでヒーヒー言ってる執務官様の補佐だ」

 

自己紹介すると、シグナムはやや引っ掛かった表情をし、しかしすぐにそれが取れたように顔つきが変わった。

 

「ああ、思い出した。そういえば主から聞いていたな」

 

「ほう、それはさぞかしイイ男だと……」

 

定番の流れだが、まぁ聞いておく。

 

「いい加減で、女たら……」

 

「ああ、いい、もう」

 

しかし、それがロクなものじゃないとわかると同時にオレはシグナムの言葉を切った。

 

全く、少しはロクな評価をしてほしいものだ。

 

「……確かケリウスは剣術を嗜んでいると聞いたが……」

 

「?」

 

突然、前触れなくシグナムが言った。

 

実はもうここで嫌な予感はしていた。

 

「ま、まぁそれが主体だし……」

 

「そうか……」

 

シグナムはフッと笑い、ラーメンと戦っているフェイトの肩を叩いた。

 

「テスタロッサ。すまないが部下を借りるぞ」

 

「……ふ、ふぇ?」

 

「……大丈夫か?」

 

涙目で辛さと戦うフェイトは、何かいつもの殻がない感じだ。

 

何か、こう、素のままというか……

 

 

……まあそれはいい。

 

今なんと言った、この女?

 

部下を借りる?

 

それってオレの事か?

 

 

「……あの、一体何を……」

 

「何……」

 

シグナムは背を向け、肩越しに顔を向けて言った。

 

 

「――暇つぶしさ」

 

 

 

 

 

 

 

★☆★

 

 

 

 

 

 

そんな感じだ。

 

オレが今、デバイスを握って、艦の模擬戦用のトレーニングルームにいるのは。

 

「…………」

 

正直言おう。

 

 

めちゃくちゃ帰りたい。

 

良く考えてみてくれ。相手はかのヴォルケンリッターの一騎当千の騎士、シグナム様だぜ。

 

魔導師ランクS-の怪物騎士に、いいとこランクAA+のぺーぺーがどう戦えと?

 

「……クロノ」

 

オレは念話で監視兼見物に来たクロノに話しかけた。

 

『なんだ、わざわざ念話で?』

 

「……リミッター外してくんない?」

 

『無理だ。わかるだろう。解除には局の申請がいる』

 

「……じゃあ緩くできるか? 三段階目の完全解除はできなくても、緩和するくらいなら……」

 

『それなら緊急時のシークエンスでなんとか……だが、数分しか許可が下りないぞ』

 

「十分。それならギリ戦える」

 

オレは念話を切り、デバイスを握り込んだ。

 

しばらくして、オレの首のネックレスが若干変色し、リミッターが緩和された。

 

全身がやや軽くなり、少しはマシになった。

 

感覚からして……おそらくAAA+にはなったか?

 

これならS-とそんなに差はない。

 

「……準備はいいか?」

 

「ああ」

 

正直、今でも乗り気じゃない。

 

――だが、そのままおいそれと負けるのも、趣味ではない。

 

 

「それじゃあ……始めっ!!!」

 

 

フェイトのアナウンスがルームに響き、ゴングが鳴った。

 

瞬間。

 

 

「――ッ!!?」

 

目の前から、レヴァンティンの一閃が迫った。

 

それこそ、数ミリの間。

 

オレは瞬発で動き、レヴァンティンをウィルネスで弾いた。

 

しかし圧が強すぎた。

 

オレは勢いに負け、背後に吹っ飛んだ。

 

 

「チィ……!!」

 

足で減速をかけ、勢いを殺す。

 

真っ直ぐ地面に足が着いている感覚を確認すると、直ぐさま構えた。

 

 

しかし。

 

 

「――ッ!!?」

 

一瞬で、距離を詰められた。

 

オレは鍔追り合いに持ち込むが……

 

 

「甘いッ!!」

 

シグナムはカートリッジをロードした。

 

んな至近距離で――っ!!

 

 

「はぁあああっ!!!」

 

刹那、シグナムは魔力の篭ったレヴァンティンを振り抜いた。

 

 

ありえないケタの衝撃がオレの両剣を巻き込み、ガードを固める間すら許さない。

 

オレは仕方なく堪えるのを止め、勢いを流した。

 

距離を取り、直ぐさま構える。

 

 

「…………」

 

 

わずか、数秒の追り合い。

 

だがそれだけで、目の前の騎士がどれ程バケモノか嫌と言うほど実感できた。

 

 

何なんだ、あのケタの違うパワーは。

 

しかもスピードはフェイトの次点。

 

守護騎士の名は伊達ではないらしい。

 

 

「……オイオイ、クールなお嬢騎士かと思いきや、とんだ検討違いだな」

 

シグナムはレヴァンティンを構えながら、堂々と闊歩する。

 

 

「――とんでもねぇ、じゃじゃ馬騎士じゃねぇか」

 

オレはストレイジとウィルネスを掲げ、魔力のタガを外す。

 

 

「2ndモード、起動っ!!」

 

両剣に僅かな魔力光が宿る。

 

普段の2段階状態ならギリギリだったが、今は緩和しているから2.5段階と言った所だ。

 

この状態なら、数十分フルに戦える。

 

「――ここからだ」

 

 

「――来いっ!!」

 

 

――互いに覇気を放ち、その刹那、剣戟が鳴った。

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