魔法少女リリカルなのは -Crime seeker-   作:鹿丸

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Ⅲ Pierce of pair

翌日。

 

俺は、ヘリの中で頭を垂れていた。

 

「……安全運転はできないのか?」

 

「口を慎め」

 

横から監視員が言葉の槍を入れる。

 

俺は今、死刑囚として護送されている。

 

やはりいくら提督とは言え、A級犯罪者をおいそれと監獄から出せるわけではないらしい。

 

そこでクロノが考えたのは、俺の存在を机上で抹消し、別の人間として管理局につく事だ。

 

まず俺は死刑囚として極刑を受け、死ぬ。

 

しかしここで替え玉を用意する。

 

つまり死刑囚のすり替えだ。

 

すり替えられた代わりの死刑囚が死ねば、管理局側にはドア・ラファルトの名に“執行”のハンが押され、俺は存在しない事になる。

 

そこを上手く衝き、情報を改ざんするらしいが……

 

(大丈夫か? ……オイ)

 

今ヘリに乗っているのは、俺を含め監視員4名とパイロット1名。

 

このまま手筈通りに行けば、俺は護送先で見事に肉体と魂の分離に成功してしまう。

 

四方から監視されたこんな状態で、どうやって人一人をすり替えると言うのだろうか?

 

クロノからはただ“そこにいろ”という指示しか受けていない。

 

「…………」

 

しかし、今は待つしかない。

 

失敗したなら、そんときはそんときだ。

 

そんな鬱な思考を働かせていた時だった。

 

 

「…………?」

 

 

となりにいた監視員の気配が、急に沈んだのだ。

 

「…………」

 

どうやら、眠っているようだ。

 

かと思えば、次々と監視員が眠りに落ちていく。

 

「お、オイ……」

 

「や~っと寝てくれましたか」

 

途端、監視員の一人が立ち上がった。

 

 

「っ!!?」

 

そいつは帽子を取り、制服を脱ぐ。

 

現れたのは、管理局の制服を着た若い男だ。

 

「……サークルタイプの結界魔法か」

 

「催眠の術式ですけど……4人にしかけるの苦労しました」

 

男は若々しい仕種で敬礼し、ハッキリと発言した。

 

「申し遅れました。ハラオウン提督直属監査隊副隊長、フレイム・バッシュ二等空尉です」

 

若々しく、いや実際若いのだろう。赤い短髪が今時な感じがする。全然流行とか知らないけど。

 

「まぁ、犯罪者相手にそんな畏まんな」

 

「あ、はい」

 

何と言うか、堅苦しいのは苦手なのだ。

 

「俺の名は聞いてるな」

 

「はい、ドア・ラファルトさん」

 

いい子だ。

 

「……あ、先に預かっていた物を渡します」

 

「?」

 

フレイムは懐から小さなペアの金ピアスを俺に渡してきた。

 

「提督から預かってた物です」

 

「…………」

 

すっかり、破棄されたものと思っていた。

 

 

俺はピアスを両耳につける。

 

「……久しぶりだな、これも」

 

「それは、一体?」

 

「俺のデバイスだ」

 

それだけを言い、俺は周囲を見渡した。

 

それよりも、なんと手際のいいことか。

 

サークルタイプをわざわざ4人も……

 

 

ん?

 

 

4人?

 

 

「…………」

 

 

冷や汗が吹き出た。

 

「どうかしましたか? 顔が青いですよ」

 

今、ここにいるのは6人。

 

てことは……

 

 

グラッ

 

突然、ヘリが揺れた。

 

「? アレ、バランス悪いですね」

 

「そりゃそうだ。お前が眠らしたんだからな」

 

俺はそう吐き捨て、直ぐさま操縦シートに向かった。

 

やっぱりだ。

 

「はは、やってくれたな……」

 

「アレ、何か揺れが酷くないですか?」

 

「まあな。パイロットが寝てる」

 

「あ、そうですか……ってええええええっ!!?」

 

眠らした張本人が張り叫ぶ。

 

叫びたいのはこっちだよ畜生。

 

そんな間にも、揺れは加速し、ヘリは落下する。

 

 

「わあああああっ!! 変な浮遊感っ!!」

 

全くだ。

 

しかし、どうしたものか。

 

2秒くらい考えた結果、これしかないな。

 

「フレイム、俺のリミッターを外せ」

 

「は、はぃ?」

 

「レベル1だけでいい。だから早くしろっ!!」

 

「はい、わか、わかりまっ!!」

 

混乱しているようだが、とりあえず行動に移してもらえた。

 

フレイムは覚束ない手つきで、解除認証の魔法陣を呼び起こし、キーを入れる。

 

どうやらクロノもこの状況を見越して、部下にデバイスと一緒にリミッター解除も託していたようだ。

 

何はともあれ、助かった。

 

「解除……承認っ!!!」

 

「っ!!」

 

瞬間、首のネックレスの一つが弾けた。

 

体中に力がみなぎり、リンカーコアが呼び起こされる。

 

こんな感覚は、6年ぶりだ。

 

俺は直ぐさま、デバイスを起動させた。

 

 

「――起きろ、ストレイジっ!!!」

 

右耳のピアスが弾け、

 

 

瞬間。

 

 

スパッ

 

 

「っ!!!?」

 

 

ヘリが真っ二つに割れた。

 

否、俺が斬ったのだ。

 

右手の、コイツで。

 

「フレイム、監視員を拾えっ!!!」

 

「は、はいぃぃぃっ!!」

 

慌ててはいるが、さすが二等空尉。

 

手際よく眠りこける監視員とパイロットを拾い上げ、救助した。

 

真っ二つになったヘリは飛ぶ術を失い、落下する。

 

運よく海上を飛行していたらしく、残骸は海に沈み、燃料に引火し、爆発した。

 

「…………」

 

俺は宙に浮きながら久々の相棒、ストレイジを見た。

 

どうやら不要な改造はされていないようだ。

 

片直刃の日本刀に近い形をしている剣だが、鍔部分にはしっかりとカートリッジシステムが搭載されている。

 

ベルカ式のアームドデバイスだ。

 

「あわわ……ど、どうしよ~……」

 

となりでフレイムが海での惨事を目の当たりにし、震えている。

 

確かに、ヘリが落ちては護送もすり替えもクソもない。

 

「……まぁ、いいか」

 

「へ?」

 

俺の言葉に、フレイムがこちらを向く。

 

「クロノに何とかしてもらうわ」

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