魔法少女リリカルなのは -Crime seeker-   作:鹿丸

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Ⅳ Weak roaring

数日後……

 

「……やってくれたね」

 

「…………」

 

「…………」

 

クロノの自室。

 

そこには青筋が浮かぶクロノと、青い顔をしているフレイムと、なんの反省の色のないドアがいた。

 

「まさか、こんな簡単な任務でこんな面倒な騒ぎになるとはね……」

 

「す、すみませんっ!!」

 

フレイムは直立したまま頭を下げ、謝罪を繰り返す。

 

「…………」

 

「聞いてるのか、ドアっ!!」

 

「ああ、いい部屋だな~って」

 

「聞いてないじゃないかっ!!」

 

息を荒げながら、詰め寄るクロノ。ドアは相変わらずどこ吹く風。

 

「というかオレは関係なくないか? ミスしたのアイツだし……」

 

「だからってヘリを叩き割る理由にはならないだろっ!!」

 

「どのみち海の藻屑になるもんブチ割ってなんか不都合あるのか? ヘリにやる気が足りなかったんだよそもそも」

 

「関係あるかっ!!!」

 

言い合う端で、フレイム未だにおどおどと反応を伺っている。全く小動物かお前は。

 

「……まぁいい。おかげで手順を省けた」

 

クロノは息を整える、再び席につく。

 

「君はあの事故で死亡した事にしておいた。君が勝手に招いた事故だとね。よかったよ。不要に死刑囚を使わずにすんで」

 

「そ、そうですね……」

 

これで、ドア・ラファルトという世間から忌ま忌ましがられていた犯罪者は消え去った訳だ。

 

まぁ面倒な手続きは別にして、少なくとももうあの監獄に戻る事はなさそうだ。

 

「さて……では今から君は別の人間になるわけだが……」

 

「どうせならカッコイイのにしろよな」

 

「まぁ黙って聞け。君の名は今日からドア・ケリウスだ」

 

「名前が変わってねーぞ」

 

「心配ない、表記がかわっている。doorからdoarにな」

 

「細かいな」

 

黙ってろと言われた手前、そんなんで大丈夫か? とは聞かなかった。

 

「君は元機動四課の実動部隊隊長だったが、執務官希望だったため僕の推薦を受け、ハラオウン執務官の副官として着任する……ここまではいいか?」

 

「ああ」

 

ガッチガチの嘘で固められた経歴を頭に叩き込む。

 

「魔導士ランクは総合AAA+。普段は首のネックレスでリミッターをつけていて、権限は僕。これはいつも通りだ」

 

「まぁな」

 

ちなみに俺の実際のランクは総合SSだ。若干空戦寄りではあるが。

 

獄中時代にはリミッターは四段階だったが、釈放にあたって一段階解除された。

 

今の状態では、いいとこがAランクだろう。

 

「そしてここが厄介だが……君の戦闘スタイルは近接型の格闘、我流のフロートクロスアーツと言ったか?」

 

「ああ」

 

雲の様に流れる剣筋から、そう名付けた。空戦で剣術というのもおかしな話だが。

 

「君は経歴上、執務官志望となってる。確か近接戦闘も重要だが、執務官は遠距離の射撃魔法の方がウェイトが高い。つまり……」

 

「射撃魔法をある程度使えるようになれ、と?」

 

「そういう事だ」

 

「……勘弁してくれよ」

 

正直、射撃魔法なんて物、生まれてこの方うまくいった試しがない。

 

おそらくそこいらの研修生に負ける自信すらある。

 

「だから厄介だと言ったんだ。君の力は昔から見てきているからな」

 

お互いに承知済みってわけか。

 

「そうかい……で、着任はいつ?」

 

「明日だ」

 

歩いてもないのに、思わずこけそうになった。獄中上がりのオレには早すぎる。

 

「……マジかよ」

 

「ああ、すでに妹には君の事を伝えてある」

 

「なんて?」

 

「今言った経歴、をだ」

 

つまり向こうは俺を単なる執務官志望の局員だと思っているわけだ。

 

こんな血にまみれ、嘘にもまみれ、人殺し以外に自分を名乗る術がない、オレを。

 

「心が痛むねぇ……」

 

「一番痛んでるのは僕だ。わかってると思うがくれぐれも正体を明かすなよ」

 

「わかっているよ」

 

そんないたいけな子供を傷つけるようなヘマを犯すつもりはない。

 

「そんで、これが終わったらどうすんだ?」

 

「自由にしてくれて構わない。プラットプリズムに戻りたかったら、そう計らってやるが」

 

「考えとく」

 

まぁせっかくもらった第二の人生だ。

 

キッチリと楽しませて貰おう。

 

「それじゃ、お前の妹口説きに行ってくるよ」

 

「ああ、行ってこい。それで感電死してこい」

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆

 

 

 

 

 

 

よく眠れた翌日。

 

俺は久方ぶりのシャバの空気を満喫しつつ、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンの執務室があるという局の建物に向かった。

 

軽い足取りで建物に入り、受付嬢と軽い挨拶と身分証明書(偽造)を見せ用件をいい、行き先を聞いた。

 

俺はエレベーターに乗り込み、13のボタンを押す。どうやら俺は13という数字に縁があるようだ。

 

自身を押し上げる鉄の箱が目的階につき、エレベーターを出る。

 

「さて、と……」

 

確かエレベーターを降りて、真っ直ぐ……そんで右……

 

そうなこんなで、俺はフェイト・T・ハラオウンの札が掲げられた執務室の扉の前にたどり着いた。

 

「さて、と……」

 

二度呟き、ノブに手をかける。

 

どうやって開けようか。

 

向こうは俺を知っているなら、さほど警戒する必要もないハズ。

 

……いやいや、ノブを握る前にノックを忘れるところだった。

 

俺は扉を叩こうと額前辺りに拳を掲げた、直後だった。

 

ガツッ

 

「ヅっ!!?」

 

扉が急に開き、拳を挟んで俺の額に大きめの衝撃を与えた。

 

「あれ、何かな……?」

 

呑気な声だな、畜生。なんて思いながら、俺は廊下の絨毯の上に倒れた。

 

痛みは広がり、涙が出てきそうだ。

 

「だ、大丈夫ですかっ!!?」

 

そんな矢先、扉から出てきた金髪の女性が駆け寄ってきた。

 

「ああ、痛い。痛すぎるぞ畜生」

 

「た、立てますか?」

 

「何とか……」

 

俺は痛みをこらえ、自力で立ち上がった。

 

涙で滲む眼球を凝らし、目の前の人物を見た。

 

「……あれ、ハラオウン執務官?」

 

「……もしかして、ケリウスさんですか?」

 

「ケリ……ああ」

 

そういや俺はケリウスだったな。ラファルトじゃなくて。

 

それよりも、やはり聞かされていたらしい。

 

目の前の綺麗な美人さんは制服を払い、ルビーのような瞳でこちらを捉えた。

 

「兄からよくお話は聞いてますよ」

 

「ほう、それはさぞかしイイ男だと……」

 

「いい加減で、無鉄砲で、直ぐに女性を口説きたがって、何よりそれはそれは素晴らしい職務態度だとか……」

 

「…………」

 

皮肉としかとれないその台詞に、俺は今頃自室で紅茶でも嗜んでいるであろうクソ野郎を一生かけて呪った。

 

嘘の経歴にするなら、人柄くらい改ざんしてもいいじゃねぇかよ。畜生。

 

「あ、挨拶が遅れました。私はフェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官です。話は中でしましょう」

 

そういって彼女は扉を開け、入るよう促した。

 

何だろう。心なしか値踏みするような目で見られた気が……

 

まぁ、どうでもいいや。

 

多分自分が若いからといって、ナメられたくないのだろう。

 

それならそれで、こっちもやりやすい。

 

下手に気を使われるよりか、100倍いい。

 

まぁ尤も、あのクロノの妹がそんなタマではない事ぐらい、承知済みだがな。

 

とりあえず、今度あの馬鹿兄貴に会ったら、グーの一発くらい見舞ってやろう。

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