魔法少女リリカルなのは -Crime seeker- 作:鹿丸
「……涼しいな」
「でも環境は最悪だね」
《そこの角を右です》
「了解」
――現在、フェイトとオレは下水道を通っている。
今回の現場の銀行の突入口は正面、裏口、屋上の三つがあった。
しかし裏口は犯人が張っている可能性があるし、正面は論外。
ならば屋上、という選択肢もあるわけだが、このご時世で航空魔導師の存在を知らない無知者はいない。
という事は向こうからしたら、当然上からの突入も視野に浮かぶ。
――ならば地下はどうだろうか?
地下ならば必ず何処かに繋がっているし、一般的にも使用されない。
盲点があるとすれば、ここなのだ。
その提案をしたところ、フェイトはやや考え、行動に移した。
オレが先程見つけたマンホールから地下に潜り、目的の銀行下まで目指している。
ナビゲーションは念話を使い、局から流してもらっている。
《そのまま真っ直ぐです》
「了解」
しかし下水道であるせいか、当然臭いがキツイ。
「あ~……しばらく臭いとれねぇなコレ」
「髪の毛、結べばよかったな……」
「イザとなったら髪の毛ごと持ち上げてやるよ」
「ナンパ臭い匂いが付いたらヤダからいい」
「厳しいねぇ……」
さすが、腹違いとはいえクロノの妹。
「それよか、アイツらどう思う?」
「……確かに質量兵器を持っていたけど、私達が追っている事件とは規模が違い過ぎる」
考えてみれば、確かに連中は兵器は持っていても、その量はやや心許ない。
「組織の末端じゃねぇのか?」
「それでもそれなりの規模はあったよ。でもどの道見逃せないからね」
見逃せない、か。
《次を左です》
「はい」
それに従い、左に曲がる。
その時、目の前に人影が見えた。
「だ、誰だっ!!?」
瞬間、火薬が爆ぜる音。
「チィッ!!!」
舌打ちをかます間に、跳弾が下水道で暴れる。
どうやら、連中の一人と鉢合わせたようだ。アンラッキー。
オレは物陰に隠れた。フェイトも同様に。
「何人見えた?」
「一人だぜ、執務官殿」
ただ、拳銃を保持しているが。
「オレは射撃は苦手なんで、頼むわ」
「……じゃあ、見ててよっ!!」
「勉強させてもらいます」
フェイトはバルディッシュを起動させずに、手の平から光球を浮かばせる。
誘導制御された光球は真っ直ぐに、銃を構える一味の一人に向かった。
そして、直撃。
「かッ……!!」
犯人は倒れ、銃を手放す。
「勉強させてもらいました」
オレは犯人に近寄り、銃を回収する。
フェイトは気絶しているそいつにバインドをかけ、念話で局に回収にくるよう要請した。
「……どうやら敵さん。新しいオモチャで暴れたがりのガキじゃないみたいだな」
地下からの突入も想定できる判断力を持ち合わせた集団犯罪。
そして厄介なのが、それを実行に移せる程の戦力だ。
どうやら連中の戦力は5人6人に収まるほど小さくはないらしい。
「それよりも、さっきの発砲で場所が割れちゃうよ」
「だな」
モタモタしてたら、シャレにならない鉛玉を相手にしなきゃならない。
だが、同時にそれは戦力を引きずる事もできる。
「なら、もっと派手にいくか」
オレは拾った銃を彼方へ向け、引き金を引きまくった。
「キャッ!!?」
発砲音が下水道内でこだまする。うん、やかましい。
「何してるのっ!!」
「敵をひきずりだす。早くするぞ」
「……もうっ!!」
フェイトは今だに納得してないようだが、今は会話より行動だ。
オレはその場に銃を捨て、下水道を再び移動し始めた。
★☆★
「こっちだ」
「侵入者かっ!?」
「わからない。ただ発砲があった」
「急ぐぞっ!!」
階段から次々と質量兵器で武装した兵士が降りて来る。
その数は、ゆうに10を越える。
それを物陰から見ていたオレとフェイトは声を殺し、奴らが降りてきた階段を上がった。
「やっぱり、シャレになんないな」
「でも、組織との関連が強くなったよ」
「それは生きて出られてから話そうか」
正直、オレは驚いていた。
様子見であの人数……
大雑把に考えても、まずその総戦力は確実に40から50人はいく。
ヘタに突入すれば、どれだけ被害を被るかは目に見えていた。
「ここは?」
《銀行のちょうど下辺り……地下一階です》
「人質は?」
《恐らく、一階の受付に纏められています》
「いいね。わかりやすい」
オレは階段から下水道までの扉をロックした。
「さて、外にいるバカどもが逸る前に終わらすか」
「そうだね」
互いに頷き合い、オレはデバイスを取り出した。
「起きろ、ストレイジ」
右耳のピアスが刀剣に変わり、右手に収まる。
「ドアが前衛、私が後衛でいいね?」
「無論だ」
互いに近接型だが、射撃の腕を考えればそれが当然だ。
オレは前に出て、銀行の廊下を歩き始めた。
まずは階段を見つけなければならない。
「職員達も人質か?」
「多分そうだよ」
「……ふ~ん」
オレはストレイジを構え直し、周囲に目を懲らす。
そういえば質量兵器にばかり目を取られていたが、敵に魔導師がいないとは言い切れない。
むしろ、魔導師と質量兵器というコンビはある意味最悪だ。
そんな中、階段を見つけた。
「あった」
オレは躊躇いなく、足を階段にかけた。
瞬間、鉛がオレの右を掠めた。
「っ!!?」
頭上を見ると、踊り場から銃を構えている兵士が一人。
オレはストレイジを上に振り抜き、上の階の天井を斬った。
「ぐっ……」
上にいた兵士は呻き声を上げ、倒れ込む。
手応えとして、どうやら足を掠めたようだ。
「あっぶね~」
「もうちょっと慎重に行こうね。執務官志望の……」
瞬間、今度はフェイトの眼前に弾丸が通過した。
「っ!!?」
フェイトは弾かれたように反応し、光球を飛ばし、右にいた兵士に手痛い一撃をぶち込んだ。
「ハァ……ハァ……」
「もうちょっと周りを見ようぜ。執務官さん」
「…………」
フェイトは返す言葉がないのか、悔しそうに唇を噛む。
まぁいい、お互い怪我がないのなら。
オレとフェイトは階段を上がり、一階にたどり着く。
一階の踊り場では、予想通り足を斬られてのたうち回る兵士がいたので、バインドをかけた。
まず最優先すべきは、人質の解放だ。
犯人の確保は、その後でも遅くはない。
「人質はどこに?」
《はい、そこを真っ直ぐ行けば受付に出ます》
「真っ直ぐ、ね」
オレとフェイトはさっきの教訓を生かしつつ、周囲を警戒しながら進んだ。
「……手薄だな」
「きっと受付に戦力を集めてるんだよ」
だと、いいが。
にしては、さっきから見張りに会わないのは何故だ?
というかそもそも、なんで受付近くに5人しか人を置かないんだ?
地下に10人送る位だ。受付にもっといたって不思議じゃない。
5人なんて、管理局側からナメられるに決まっている。
そんなんだから突入なんて考えが安易にうか……
「っ!!?」
不意に、一つ仮説が浮かんだ。
オレは立ち止まり、考える。
「…………」
「どうしたの?」
「そういや、屋上の方見たっけ?」
「……見てないよ」
瞬間は、オレは床を蹴った。
「っ!? ちょっとっ!!」
「悪い、屋上見てくる」
オレは走りだした。
階段に向かって。