魔法少女リリカルなのは -Crime seeker- 作:鹿丸
「…………」
「ヒューリさん」
ヒューリと呼ばれた厳つい面に眼帯をかけ、サブマシンガンを肩にかけている男に、ニットを被った兵士が声をかけた。
「定時連絡か」
「はい。地下に不信な発砲音が……」
「何?」
ヒューリは眉間にシワを寄せ、報告してくる男を睨む。
「あ、いや、その……」
「ハッキリと言えっ!!」
「は、はぃっ!! 地下で見張っていた奴の一人が気絶させられていて、その……」
「もういい」
ヒューリは男を押しのけ、受付前に固められた人質達の前に立った。
それと同時に、ざわめき立つ人質達。
「…………」
絶望の表情漂う人質を見ながら、ヒューリは懐から拳銃を取り出し、発砲した。
「ああああああっ!!!」
弾丸は人質の一人の耳を撃ち抜き、血だまりが出来る。
悲鳴が沸き立つ中、ヒューリは指示を出した。
「音声を外に流せ」
「はっ!!」
部下達は音声機器を準備し始める。
どうやら人質の悲鳴を聞かせ、外に待機している実動隊の焦燥感を煽ろうとするようだ。
そうすれば、奴らは突入を余儀なくされるだろう。
そうだ、それでいい。
「ヒューリさん、上の連中の準備が終わったようです」
ここで、一人の男が再び報告に入る。
「そうか……」
ヒューリは満足そうに頷き、通信機を取り出した。
「各員に告ぐ。準備が完了した。直ちに避難せよ」
それだけをいい、通信機をその場に放る。
どうせ“使えなくなる物だ”。
「そろそろ突入か……」
ヒューリは足元に置かれた緑のボストンバッグを見つめた。
「ヒューリさん」
「ん?」
「さっきから気になってるんですが……コレ何ですか?」
「ああ、このバックか? コレはな……」
「いや、そうじゃなくて……この光の玉です」
「?」
男の目線の先。
そこには、確かにフワフワと漂う金色の光の玉があった。
さっきまでは、こんな物はなかったが……?
そう疑問に感じた瞬間。玉が弾けた。
「なっ!!!?」
弾けた玉は無数に散らばり、武装している部下達の急所に直撃する。
「ぐぅッ!!?」
「ガッ!!?」
気絶していく部下を見ながら、ヒューリはサブマシンガンを構えた。
「誰だっ!!?」
「武器を下ろしなさいっ!!」
「っ!!?」
右から、若い女の声が届いた。
声のした方を見ると、そこにはバリアジャケットを纏ったフェイトの姿があった。
手には、ハーケンフォームのバルディッシュが握られている。
「ちぃ……管理局かっ!!」
「時空管理局所属、フェイト・T・ハラオウン執務官です。武器を捨て、大人しく投降しな……」
「うるさいっ!!」
有無を言わさず、ヒューリはサブマシンガンの引き金を引いた。
銃口から大量の鉛玉が吐き出され、音速に近いスピードでフェイトに向かう。
しかし弾はフェイト近づくや否や、軌道を反らし、ありえない方向の壁や天井を砕いた。
「なっ!!?」
驚愕と共に、ヒューリは引き金にかける指の力を抜いた。
「電流と磁場の関係って知ってるかな?」
フェイトはバルディッシュを構えながら、物理の授業を始めた。
「ある程度の電流と磁場を作り上げると、力が生まれる」
つまりフェイトは、自身の周りに魔力から変換させた電気を使って電流と磁場を作りだし、絶妙なバランスで向かってくる弾丸に力を加え、軌道を反らしていたのだ。
もちろん、そんな物理学をヒューリが理解できるわけもなく。
「意味のわからない事を言うなっ!!」
ヒューリは再び、サブマシンガンから弾丸を放つ。
しかし、その時にはすでに目の前にフェイトの姿は無かった。
「でもね、その電磁場の物理計算って本当に大変なの」
「っ!!!?」
いつの間にか、背後から諭すような声。
しかし、気づいた時には、もう遅い。
「……カッ……!!」
ヒューリは嫌な違和感を首に受け、意識を飛ばされた。
「――だから、こうした方が簡単かな」
フェイトはバルディッシュを待機状態に戻す前に、気絶させた連中にバインドをかけた。
これで、とりあえずは一件落着だ。
「ふぅ……」
フェイトはその後人質を解放し、外で待機していた局員に連絡を入れた。
――事件は解決した、と。
「…………」
今、フェイトの周りでは様々な調査が行われていた。
事件直後の検証、というやつだ。
他の犯人達も士気が下がった頃合をみて次々と管理局によって捕縛されつつある。
「ご協力、ありがとうございました」
「はい」
フェイトは敬礼する局員に笑顔で返し、2、3報告をした後に自分もその検証に参加した。
もしかしたら、例の組織の情報が転がっているかもしれない。
そんな期待を感じた直後、念話が入った。
相手は――ドアだ。
《……おい、フェイト》
「何、サボりさん? もう事件なら解決しちゃったよ」
《説教なら後で聞く、とにかく確認したい事がある》
「?」
なんだろう、口調にいつもの余裕がない。
それに不思議と心臓が脈打つ。
嫌な、予感がする。
《今、どこにいる?》
「どこって、銀行の受付だけど……」
《直ぐに出ろ。死ぬぞ》
え?
今、なんと言った?
《そこにいる局員連中も連れ出せ。今直ぐにだ》
「え、ちょっと、それってどういう……ていうかドアは今どこに?」
《それは……》
瞬間、脳内にけたたましい銃撃が聞こえた。
「っ!!!?」
しかしそれは念話からだけでなく、しっかりと耳でも捕らえられた。
以外と近い。
そういえばドアは屋上へ向かったハズ。
フェイトは直ぐさま受付を出ようとした。
しかし……
「た、大変だっ!!!」
何処からか、局員の悲鳴が聞こえた。
「?」
何かしらの不安を感じ、フェイトはその局員に寄る。
「どうかしましたか……」
その後の台詞は、驚愕で飲み込まれた。
そりゃあそうだ、とみんなにいってもらいたい。
フェイトの目の前には、チャックの開いた緑のボストンバッグ。
――そして、その中に見えるのは“C4”と書かれた火薬と、それに繋がれたデジタルモニター。
そう、そこには04:02と表示された質量兵器――時限爆弾だった。
★☆★
「ハァ……ハァ……」
全く、困ったものだ。
これ程に最悪な状況は、未だに遭った事はない。
――なんせ今、廊下の上で、前方、背後から同時に銃口を向けられているのだから。
「…………」
オレは息を殺し、状況を整理した。
さて、状況はオレの読み通り、敵はやはり屋上に戦力を集中させていた。
それに至った理由は極単純。地下と受付の見張りがあまりにも手薄だったからだ。
ならば、何故彼らは屋上に兵士を集中させたのか?
それは、彼らの目的が金じゃないからだ。
彼らの目的は……
「撃てええぇぇぇっ!!!」
刹那、前後から銃撃が起こった。
こりゃヤバいわ。
自慢じゃないが、打つ手が無い。
――“一つしか”。
「――起きろ、“ウィルネス”」
――その時、オレの左耳のピアスが光った。
刹那。風が起こった。
それも、強烈な。
「なっ!!?」
兵士達は驚愕し、目を見開く。
「――ったく、リミッターありで“二刀”はきついぜ」
手は、一つしかない。
迫り来る弾丸を、剣一つで捌ききる事は出来ない。
だが、二刀剣なら。
オレのフロートクロスアーツの雛型、この二刀流ならば、捌ける。
オレの右手には、ストレイジ。
左手には、ウィルネス。
そう、オレは二刀剣士の魔導師だ。
自慢じゃないがな。