魔法少女リリカルなのは -Crime seeker-   作:鹿丸

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Ⅷ Two swords

右手には、日本刀式のアームドデバイス。

 

名は、ストレイジ。

 

左手にはカットラスタイプのアームドデバイス。

 

名は、ウィルネス。

 

オレが得意として、専売特許としている戦術は、我流のフロートクロスアーツだ。

 

このフロートクロスアーツは基本的に剣術に備わっている“型”というものが無い。

 

実戦中に独自で戦闘プレーを想像し、リアルタイムで構築しなければならない。

 

いわゆるサッカーのように、ゲーム中に閃きと想像力でプレーを構築するように。

 

その為か、必然的に双剣の理が必要となってくる。

 

想像と閃きに頼る戦闘ならば、手数が多いに越した事は無い。

 

まぁ現代の魔導師の中でも、オレみたいなタイプの奴はほとんどいない。

 

オレの戦術は基本、対1戦闘しか真価を発揮できない。

 

ところが現代ではそんな弾丸野郎よりも、対多の出来る遠距離戦術に長けた奴が必要となっている。

 

例を出すなら、かの“エース・オブ・エース”がそうであるように、だ。

 

だからオレのランクSSなんていう肩書きも、実際にはなんの意味もない。

 

 

――話を戻そう。

 

 

結果、オレの戦術は接近オンリーであるってだけだ。

 

射撃などの技術は一切無い。

 

だが、逆に言えば……

 

 

――オレに対1で勝てる奴もいない、という事だ。

 

「そりゃ」

 

「ガッ!!?」

 

オレはストレイジを振り抜き、目の前の兵士どもを斬り飛ばす。

 

もちろん、後からフェイトにどやされないように、峰でやってる。

 

全く、殺さないように戦うってのは案外難しい。

 

オレはとにかく前に進んだ。

 

一応フェイトには、銀行から脱出するように一言入れてある。

 

ああ見えてやや頑固な部分があるから、少し怪しいが……

 

と、考えている間に、目の前から弾丸が。

 

オレはひらりと避け、道を右に曲がる。

 

しかしその先にも、武装した兵士。

 

しかも3人。

 

「撃てぇっ!!!」

 

当然、撃ってきやがる。

 

オレは両手の剣で弾丸を受け流すように捌き、目の前の兵士達に峰でたたき付けた。

 

兵士達は吹っ飛び、オレは進む。

 

「…………」

 

さて、再び状況の整理だ。

 

もし奴らの目的がそうなら、屋上にこそそのキモがある。

 

そいつを握り潰さねば。

 

――ここで運よく階段が。ラッキー。

 

オレは一気に駆け上がり、屋上を目指す。

 

「ハァ……ハァ……」

 

結構駆け上がった頃に、ようやく屋上への扉が。

 

オレは勢いに任せ、扉を叩き斬った。

 

 

「――……っ!!?」

 

 

……さ~て。

 

どうしますかね?

 

オレは屋上に飛び込んだ矢先、肩の力を抜いた。

 

 

――そうしなきゃ、オレの周りにいる武装した野郎どもに風穴増やさせそうだったからだ。

 

迂闊だった。

 

屋上に兵力が集中しているということは、その分危険も増すという事。

 

絶賛大ピンチ中だな。シャレになってない。

 

「…………」

 

「大層、暴れてくれたな」

 

ふと視線をくれてやると、バリアジャケットらしきマントを着た、スキンヘッドの魔導師が立っていた。

 

やっぱし魔導師も絡んでたか。畜生。

 

そのスキンヘッドの魔導師の腰には、予想通り拳銃が差してある。

 

「よく屋上に来る気になったな。根拠を知りたいよ、管理局」

 

「なぁに、根拠なんてもんはねぇよ」

 

確かに、根拠は無い。

 

だからこそ、フェイトを連れて来なかった。

 

「ただ単なる強盗にしちゃ不自然が多かった」

 

「ほう、聞きたいな」

 

ニヤリと笑うスキンヘッド。

 

その余裕かました面がムカつく。

 

「まずはアンタらの戦力だ。単なる金目当てにしちゃ、投入する戦力が不釣り合いすぎる」

 

「万全を期したいだけ、とは違うかな」

 

「じゃあ逃げる時どうすんだ? こんな団体客が逃走するにゃ、ヘリが何基いると思ってんだ?」

 

まず最初の疑問点はそこだ。

 

もしコイツらが本気で逃げる気なら、ヘリなんて要求せず、地下から逃げりゃいい。

 

「つまり、ヘリの要求はハリボテ。本当の目的を隠すためのな」

 

「…………」

 

相手は微動だにせず、ただ話を聞く。

 

「第二の疑問は、受付の兵力の手薄さだ。あれじゃ、いつでも突入してくれと言っているようなもんだからな」

 

「そうか。それは困ったな」

 

「ヘタクソな演技だな」

 

「これでも昔は役者志望だったんだがな」

 

「鏡見て言えや」

 

まぁそんなのはいい。無駄な事だ。

 

「そんでオレは一つの仮説を思い付いた」

 

そう、コレがキモだ。

 

「もしかしたらお前らの目的は強盗ではなく、“テロ”なんじゃないかってな」

 

 

「どういう事かな?」

 

「まず手薄な兵力で管理局のバカどもを銀行内に呼び寄せ、そこから一気に屋上から兵力を投下させて、叩く」

 

「…………」

 

「あるんだろ、時限爆弾か何かが下に」

 

「……御名答」

 

その言葉に、オレは内心舌打ちした。

 

恐らく、もう下の方には管理局がタップリ溜まっている。

 

ここで爆弾なんてもんに出張られたら、パニックになるに決まっている。

 

最善の手は、オレがここでコイツら全員をぶったたく事だが……

 

「さて、名推理を広げてもらったところで、名探偵殿には殉職してもらいますかな」

 

「…………」

 

スキンヘッドの野郎が拳銃を抜き、同時に周囲の連中も抜く。

 

もういつオレが天国に召されてもおかしくない位だ。

 

「……名探偵、か」

 

「?」

 

「オレには似合わないな」

 

「……どういう事かな?」

 

「だってオレ……」

 

 

――今だっ!!

 

 

「――っ!!?」

 

「犯罪者だもん」

 

瞬間、屋上の天空に、金色の閃光が現れた。

 

そして神懸かったスピードで兵士達を蹴散らし、混乱を誘う。

 

「なっ!!?」

 

「こっち見ろ」

 

オレはその隙をつき、スキンヘッド野郎の顎に峰でストレイジを振り抜いた。

 

顎が砕けた手応えを感じ、スキンヘッドは地に伏す。

 

いつの間にか、屋上にいた兵力は全滅していた。

 

 

「――ごくろうさん、フェイト」

 

「お疲れ様」

 

フェイトは屋上に降り、バルディッシュを待機状態に戻す。

 

「カ……何故だ……」

 

スキンヘッド野郎は呻きながら、何か言ってる。

 

「下には、爆弾が……」

 

「んなもん、もうバラしたよ。なぁ」

 

「ドキドキしたけどね」

 

「なっ!!?」

 

スキンヘッド野郎は悲痛と驚愕でツラを満たす。

 

「オレが何の為に名推理をわざわざ時間かけて聞かせたと思ってんだ、ハゲ魔導師」

 

「……まさか、念話かっ!!?」

 

「御名答」

 

そう、まさに念話だ。

 

オレは屋上で名推理を繰り広げている間に、念話でフェイトに指示を送っていた。

 

それは、時限爆弾の解体方法。

 

まぁ解体なんて上品なものではなく、もっと粗末なものだ。

 

C4というプラスチック爆弾は、瞬間的に冷却してやれば、解体に近い状態に持って行ける。

 

すぐさま冷却処理に必要な装備が用意できるかが不安であったが、幸いなのがあの場にいた魔導師に凍結の変換資質を持っていた奴がいたことだ。

 

それを指示した後、屋上に援軍に来るように伝えたのだ。

 

「そういうこった」

 

「く、そ……」

 

顎が砕けて上手く喋れないのだろう。

 

まあいいや、どうでもいい。

 

「じゃ、執務官殿、バインド頼んます」

 

「……少しは自分でやりなさい」

 

「さ、せるか……」

 

 

次の瞬間、何かが抜ける音がした。

 

 

「?」

 

オレはふと、スキンヘッド野郎を見る。

 

そいつの右手には、ピンが抜かれた手榴弾が握られていた。

 

「げっ……」

 

しかもそいつを、投げてきやがった。

 

 

あろう事か、フェイトに。

 

「っ!!?」

 

フェイトは勘づくが、やや遅い。

 

オレは手榴弾が破裂する前に、フェイトを抱き抱え、地面に伏せた。

 

おっと、やらしい意味は無いぜ。と自分に言い訳している間に、手榴弾は破裂した。

 

「キャっ!!?」

 

「グッ……」

 

 

爆炎と破片がオレの背中を焼き、二人もろとも吹っ飛んだ。

 

痛いなコラ、なんて思考する間もなく、激痛が全身に回る。

 

「くっ……」

 

やがて静寂が降り、フェイトは立ち上がった。

 

「――っ!! ドアっ!! 大丈夫っ!!?」

 

「みりゃ……わかんだろ……」

 

ここで減らず口の一つでも叩いてやりゃ、フェイトは安心するだろうが、残念ながらリミッターのかけられたこの体じゃ、そんな余裕もない。

 

フェイトは直ぐさま医療班を手配し、オレを抱える。

 

「……へへ、ちったぁコレで勤務態度、良くなるよな」

 

「ならないよっ!!」

 

「けっ、なら損したな……」

 

「損だよ、全く……ホントに……」

 

そう悪態をつきながらも、フェイトの表情は不安で一杯だ。

 

全く、執務官のくせに感情豊かな奴だな……

 

――“アイツ”みたいに。

 

「……やっぱし、似てんな」

 

「え?」

 

「あ、いや、こっちの話……」

 

たくよぉ、ズキズキするなぁ……

 

 

 

 

――こうして、アメトリス銀行の事件はこれで幕を閉じた。

 

しかし、終わりではなかった。

 

この事件は、まだただの"引き金"に過ぎなかった。

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