ガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグ。
タカミチ・T・高畑の師匠であり、憧れの人の一人で
タカミチは、彼に師事し、そして…彼と死に別れて尚修行を積み、今の強さを得る事が出来た。
その彼…ガトウが、タカミチの前に立っていた。
「そんな…」
「…久しぶりだな、タカミチ」
タカミチは、自分が目にしている光景に唖然としていた。
死に別れた筈の師が生きて自分の前に立っているのだ、無理も無いだろう。
「色々話したい事も有るんだが…まずは…」
「此所の責任者に会わせてもらいたい」
弟子の成長ぶりに眼を細めるガトウの言葉を遮り、隣に立っていた少年が口を開いた。
「会って…どうするつもりですか?」
少年の言葉を聞き、先ほどから黙っていた刹那が口を開く。
その言葉にタカミチも我に返り、改めて二人を警戒する様子を見せた。
「…どのみち、俺たちに対して尋問なりする心算なのだろう?なら、直接責任者の前で話した方が手間も省ける」
二人の様子を見た少年は、小さく嘆息しながら言葉を紡ぐ。
「先に言っておくが、俺達二人はお前達と争う気はない。此処に来たのは、ある事を調べる為なのだから」
「…ふむ」
麻帆良学園学園長…近衛近右衛門は小さく唸った。
彼は、事のすべてを遠見の魔法を使って監視していたのだ。
それこそ、少年とガトウが学園に入ってきてから今に至るまでの全てを。
それはつまり、少年が魔法を使うところを視ていたという事になる。
だが…そこに引っかかる物を、近右衛門は感じていた。
従来、西洋魔術師は己の魔力を消費し、呪文を唱える事で魔法を扱っている。
それには、杖やそれに準ずる魔法の発動媒体が必要となるし、それが無いときの代替として魔法薬を触媒とする事もある。
しかし、少年の姿を確認したところ、発動媒体となるような杖や指輪を持っている様子は無かった。
それどころか、触媒として扱っていたものも魔法薬などではなく、花や白い骨片と言ったもの。
明らかに、西洋魔術の触媒として扱われる物ではない物ばかりだ。
だからこそ、近右衛門は頭を悩ませた。
「のぉ、エヴァ」
「なんだ、ジジイ」
考えに考え…結果、思い出せなかった近右衛門は、近くに居た少女に声を掛けた。
急に名を呼ばれた年の頃は10程度であろう、腰まで伸びた金髪に澄んだ蒼い瞳を持った少女は、訝しげな様子で近右衛門を見る。
彼女の名はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。
姿は少女のそれだが、嘗て「
「発動体を使わず、草木や骨片などを触媒とした魔法…何処かで聞いた事はないかの?」
「はぁ?そんな魔法あるわけ…」
近右衛門の急な質問に、エヴァンジェリンは呆れながら言葉を返そうとしたが、途中で口を噤んだ。
永い時を生きた、という事は言い換えれば、それだけの経験や知識を持っているという事になる。
「草木等を触媒に…いや……魔法は魔力を…………!」
近右衛門の耳に、ブツブツと呟くエヴァンジェリンの声が届く。
やがて、一つの答えに至ったのだろう。エヴァンジェリンは近右衛門を見た。
「ある…一つだけ、そのような系統を持つ魔法が」
「…本当かの?」
「あぁ…古の魔法だ」
エヴァンジェリンの言葉に、近右衛門は眼を見開いた。
古の魔法。
それは、動植物の一部を供物に捧げ、その内に秘めた力を引き出し神秘を起こす。
代償となるものであれば、供物に際限はない。
それこそ、自分や他人の命ですら、魔法を使う為の供物に捧げられる。
代償と犠牲に塗れた魔の法律。
「最後に見たのは200年前だったが…そうか、末裔が居たのか」
「儂としては、今代にそのような魔法を使っておる事に驚きを隠せんがの…」
小さくほくそ笑むエヴァンジェリンに対して、近右衛門は顔を顰めた。
古の魔法を知っている人間は現在、誰一人として居ない。
誰かを犠牲にする事も無く魔法を使える西洋魔術が誕生して以降廃れていったのだ。
改めて、近右衛門は手元に置かれた水晶を眺める。
そこに写されているのは、タカミチ達に先導されて此方に向かっている件の魔法使い。
彼が、此の地に如何様な影響を及ぼすのか…。
それは、此の場の誰もが想像出来なかった。