ただ今、下校時間。とある集団たちが言い争っていた。
(と言うか、僕たちなんだけどね)
原因は深雪が兄である達也と帰りたいのだが、プライド高い一科生の数名が達也たちに食って掛かっていた。
(昼休みは穏便に済んだけど、これはちょっと無理かな)
ヒートアップしている目の前の事態に頭がいたくなってきた。
「いい加減に諦めたらどうなんですか?深雪さんは、お兄さんと一緒に帰ると言っているんです。他人が口を挿むことじゃないでしょう」
美月の正論にさらに食って掛かっている。この場には既に良心が逃げ出してしまったようだ。
「ど、どうしよう」
「ほのか、落ち着いて。私たちは深雪から直接誘われているから大丈夫」
「そうだけど、このままヒートアップしたらヤバイかもね」
現に凄い言い争いになってるしね。
「別に深雪さんはあなたたちを邪魔者扱いなんてしていないじゃないですか。一緒に帰りたかったら、ついてくればいいんです。何の権利があって二人の仲を引き裂こうとするんですか」
意外な人物が熱くなっていた。
(美月さんが意外と熱くなってるよ)
だが、更に目を引いたのは後ろで夫婦漫才をしている兄妹だった。
「引き裂くとかいわれてもなぁ……」
「み、美月は何を勘違いしているのでしょうね?」
「深雪……何故お前が焦る?」
「えっ?いえ、焦ってなどおりませんよ?」
「そして何故に疑問形?」
(あ、うん。あそこだけ空気がピンク色だよ)
一部だけ空気が違うことに気づいたのはコノハだけで、他の一科生は反論しかしていない。
(どれも穴だらけの反論で論破されるものばかりだ。これじゃあ勝ち目はないね)
だけども、両者とも更にヒートアップするだけだった。
「うるさい!他のクラス、ましてやウィードごときが僕たちブルームに口出しするな!」
禁止用語を使った彼があのグループの中心みたいな人だとコノハは思った。
(彼は確か……同じクラスの森崎駿だったけ?森崎って確かクイックドロウが有名だね)
彼の家のものが一度魔法を使ったところを見たことがあるために分かったことだ。
「同じ新入生じゃないですか。あなたたちブルームが、今の時点で一体どれだけ優れているというですかっ?」
このときコノハは嫌な予感がした。何か危険なことが起きると。
(森崎くんは男性。なら、あれを使うか)
僕は持っていたバックの中を探すフリをして投影魔術を使ってあるものを投影した。
「
それは自身が英霊となって終わったはずの三度目の■■■■がまだ終わっていないときに出会った腹黒
「どれだけ優れているか、知りたいなら教えてやるぞ」
怒気を孕んだその声を圧し殺すように話している森崎。コノハは投影した布をバックから取り出す。
「コノハ君、それ何?」
「これ?まあ、見てのお楽しみだよ」
「コノハ、無茶しちゃダメだよ」
二人の心配そうな顔を見て、笑顔で平気と答える。
「ハッ、おもしれぇ!是非とも教えてもらおうじゃねぇか」
この言葉を引き金に森崎は行動に移した。
「だったら教えてやる!」
森崎が取り出したのは銃の形をした特化型CADだった。起動式も展開直前だ。
「
コノハが言葉を紡ぐとまるでその布は意思があるかのように動き出して、森崎を簀巻きにした。
「な、なんだこれ!」
「そこまでだよ。自衛目的以外での魔法の使用は犯罪だよ」
「き、貴様ぁ」
簀巻き状態になっている森崎は魔法を使って拘束を解除しようとするが……。
「魔法が、発動しないだと!」
「無駄だよ。これに巻き付かれている間男性は魔法はおろか異能の力すら扱うことをはできない」
「なっ!」
コノハが投影したのはマグダラの聖骸布。その概念は男性に対する絶対的な拘束力だ。
「そこまでだ。君たちが報告にあった一年A組と一年E組の生徒ね。事情を聞きます。ついて来なさい」
現れたのは生徒会長七草真由美ともう一人の女子生徒だった。
「すみません、悪ふざけが過ぎました」
「悪ふざけ?」
達也の突然の行動に驚きはしたが、何をするつもりなのかは何となくわかった。
(誤魔化すつもりだね、達也くん)
「森崎一門のクイックドロウは有名ですから、後学のために見せてもらうつもりだったんですが、彼は自衛目的以外の魔法の使用を許さなかったみたいで、彼を止めたんです」
森崎は驚いた表情で達也をみていた。
「では、そこの一年生が彼を簀巻きにしたのはそれが理由だと言うことでいいんだな」
「はい、流石に校則違反の前に犯罪行為ですから止めたんです」
「その横にいた彼女も魔法を発動しようとしていたようだがそれについてはどうなんだ」
横にいる彼女とはどうやらほのかのようだった。
「彼女は恐らく彼が失敗したときの為に準備していたのでしょう。展開していたのも光の閃光魔法で威力も随分抑えられていました。集中を削ぐための目的だったのでしょう」
「ほぅ……どうやら君は展開された起動式を読み取ることができるようだな」
(起動式を読み取った?あれって結構魔力の消費が激しいと思ったんだけど)
自分も解析魔術で起動式を読み取れるが魔力の消費が激しくてあまり使うことはなかった。
「実技は苦手ですが、分析は得意です」
達也は何てことが無いように話していた。
「誤魔化すのも得意なようだ」
そんな達也を睨んでいる真由美のとなりにいる女子。
「兄の申した通り、本当に、ちょっとした行き違いだったんです。先輩方のお手を煩わせてしまい、申し訳ありせんでした」
「僕の勘違いでもあるんです。本当にすいませんでした」
深雪の後に続くようにコノハも謝罪した。
「摩利、もういいじゃない。達也くんとコノハくん、本当にただの見学だったのよね?」
達也とコノハにことの真相を確認する真由美。
(あれ、いつのまにか僕と達也くんが名前読みになってる?)
達也を見てみると特に気にしていないのでコノハも習って気にすることしなかった。真由美の顔をみると悪いことを考えている顔をしていた。
「生徒同士で教え合うことが禁止されているわけではありませんが、魔法の行使には起動するだけでも細かな制限があります。この事は一学期内で授業で教わる内容です。魔法の発動を伴う自習活動は、それまで控えた方がいいでしょうね」
真由美の言葉を聞いて隣にいる摩利が形式的な言葉を述べた。
「……会長がこう仰られることであるし、今回は不問にします。以後このようなことの無いように」
その場にいた全員が示し会わせたかのように綺麗にお辞儀するが摩利はそれを見向きもしなかったが踵を返してきた。
「君と君の名前は?」
「一年E組、司波達也です」
「一年A組の影宮コノハです」
「そうか、覚えておこう。それと影宮は明日の放課後生徒会室に来い。風紀委員について説明する」
そう言って二人は去っていった。
二人が去った後、コノハは森崎の拘束を解いた。
「……借りだなんて思わないからな」
「貸してやるなんて思ってないから安心しろよ」
「僕も思ってないから。でも、今度またあんなことをしているのを見つけたら、委員会の仕事として取り押さえるから」
コノハの言葉に苦しい顔をする。
「僕はお前とお前を認めないぞ、司波達也と影宮コノハ。司波さんは僕たちと一緒にいるべきだし、二科生の肩をもったお前を認めないからな!」
そのまま森崎は二人の前から去っていった。
「いきなりフルネームで呼び捨てか」
(流石にいきなり呼び捨ては失礼じゃないかな)
そんなことを考えていると話し声が聞こえてきた。
「あの達也さん。先程はありがとうございました」
「何、気にしないでくれ」
「コノハもお疲れさま」
「あはは、僕は特に凄いことはしてないよ」
「ううん、コノハ君も凄かったよ!」
誉められるのって悪くはないけど二人とも距離が近いように感じる。
「それにしてもあんたが使ったあの布凄いわね」
「ああ、いきなり蛇みたいに巻き付いたんだもんな」
「はい、あれも魔法なんですか?」
「いや、コノハが起動式を展開した様子はなかった」
「お兄様、それでは何故あの布は巻き付いたんですか?」
「た、確かに…」
「不思議」
皆、興味津々のようだ。
(どうしよう。話した方がいいのかな?流石に投影魔術で作り出したなんてのは除いて)
「あはは、話すからここじゃない何処かでいいかな?」
「それじゃあ、昨日いったケーキ屋さんではなしてね」
こうして僕たちはケーキ屋さんへと向かうことになった。