リンサマーX   作:梵葉豪豪豪

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 気の迷いで書きました。後ぶっちゃけ下品です。



01

 ときに東京には怪獣がよく出現する。というか今まさにした。

 直立し両腕と腹に刃物が付いているまさにベタを絵に描いたような怪獣が、渋谷を襲う。ビルを袈裟懸けに真っ二つに斬り落とし、足元の人や車を蹴飛ばし、街道を進撃する。

 

 たまたま渋谷に遊びに来ていた一夏と鈴音も怪獣騒ぎに巻き込まれ、瓦礫を避けながら、手を繋いで逃げていた。

 

 

 一方、都内にある防衛隊「IS学園」本部では、状況が逐一モニターされ続けていた。更識楯無本部長は、頭を抱えつつ、つい呪いの言葉を吐く。

 

「何でこう、毎回毎回東京にばっかりもう」

 

 それでも仕事なのでしっかり指揮を執る。

 

「機動兵器IS、発進!」

 

 

「IS、全機撃墜確認!」

 

 怪獣に向かっていた人型迎撃機一個小隊は、怪獣が口から放った横薙ぎのビーム一閃でいともあっさり全滅した。渋谷の上空で横一直線に爆炎が拡がる。攻撃する暇すらなく終わってしまった。

 

「……駄目ジャン」

 

 思わずスカシ目で突っ込んでしまった鈴音である。一夏は肩を竦める。実のところ毎度のことだった。

 

 などとやっている間にも怪獣は爆走を続け、盛大に地面を蹴り飛ばした。瓦礫や車とともに、人、いや自分たちの友人が飛ばされていくのを二人は目撃した。

 

「あぁっ弾―――――!」

 

 ここにきて二人は怪獣を見据えた。睨み付けた。果敢にも対決しようと決意したのだ。

 

 突然、一夏の左腕に着けた派手な装飾のブレスレットが光り、手のひらサイズの2頭身になる女性が現れた。

 

「あ、千冬姉」

「一夏! 鈴! 今こそ合大(がったい)だ!」

 

 魔法のブレスレットに宿った存在が戦う手段を促す。一夏、鈴音はお互い頷くと、手を掲げ、二人の手が合わさった。

 

『合大(マブフラッシュクロス)!』

 

 ブレスレットを中心に二人の体が光り、融合し巨大化した。

 

 

「鈴ちゃんキーック!」

 

 巨大化した鈴音の飛び蹴りが怪獣の背後、延髄を直撃した。怪獣はひっくり返り盛大に地響きと砂埃を立てて街道を滑っていく。鈴音はその勢いのまま轟音を立てて地面に着地した。足元の車やら砂塵が派手に飛び上がった。

 そしてその彼女の姿を見た通行人は、

 

「裸の巨人だ!」

「裸の巨人!」

「裸の巨人!」

 

 巨大な全裸の鈴ちゃんに俄然注目が集まった。尚一夏成分として鎖骨の中心に等身大の頭が埋まっている。

 周囲はスマホやデジカメを取り出し一斉に撮影した。あろうことか真下まで突貫する剛の者までいる。

 

「あ、また撮影会が」

「毎度やん、ほっとけっつーの!」

 

 とりあえず一夏の冷静な現状把握は脇に置き、鈴音はダッシュを敢行した。一部通行人が跳ね上がったが些細な問題である。前方にいる怪獣は起き上がった直後なので、反撃の前に速攻で潰す算段で迫った。

 

「鈴ちゃんナックル!」

 

 勢いづいた鈴音渾身の右手が怪獣を襲う。慌てた怪獣が両腕の鎌をクロスさせて防御するが、その鎌をもぶち抜いて怪獣の喉に一撃を食らわせた。しかし鎌の折れた怪獣は左腕を変化させて拳と化し、鈴音の右頬を殴り返す。後出しのクロスカウンターとなった。

 ギロッと睨み返した鈴ちゃん。今度は怪獣の頭を抑え、胸元に膝蹴りを食らわせた。怪獣と言えどもレバーは痛い。余りの痛さに体液と悲鳴を漏らした怪獣。鈴音は速攻で距離を取ったため体液を浴びずに済んだ。

 

 一夏の口から光の矢が生成され、鈴音がそれを掴んだ。十字型の光の槍である。

 

「鈴ちゃんアロー!」

 

 その光の槍を投擲された怪獣は、頭部と胸部を粉砕され、後方に大量の血液をぶちまけて倒れた。しかる後に自らの細胞の制御が維持できず、爆発した。

 

「とりあえず渋谷の平和は守ったわね」

「渋谷駅前まで血がびっしり続いてるけどな」

「はいはい細かいことは気にしな……い!?」

 

 どこに隠れていたのか多数の作業車からワイヤーが投擲され、雁字搦めにされた巨大鈴ちゃんは数機のヘリに牽引されお持ち帰りされた。

 

 

「はーい私、都立防衛隊IS学園の統括本部長・更識楯無。あなたたちがあの裸の巨人の正体だったとはねぇ知ってたけど。経緯……はどうでもいいからうちのIS学園に所属してくれないかしら?」

 

 都立防衛隊IS学園庁舎の一室にて、IS学園によって捕獲されていた一夏と鈴音が床にへたり込んでいた。ただし両腕は天井の滑車に吊り下げられている。作業場でもないのに滑車を設置している部屋なんてどう考えてもろくな場所じゃない。

 そしてこの組織の華麗な女本部長サマによって説得が始まろうとしていた。

 

「速攻ぶっちゃけてんなぁ、説得ってさ、双方利益になるよう持ってくもんじゃね?」

「IS学園てろくに怪獣倒せてない金食い虫の税金ドロボーじゃないの。つか何で都の防衛隊に学園なんてネーミング付けてんのよ? 紛らわしいじゃない? 馬鹿なの?」

 

 二人の怒涛の突っ込みに、楯無が涙目になりつつ鈴音の体を揺さぶって更に説得を試みる。ネーミングについては聞かなかったことにした。

 

「そーなのよーうち実績ほぼゼロだから来年度から予算削られそうなのよ! お願い入って! 都民と行政と主に私たちの未来のために!」

 

 このヤケクソのような空間の中にあって、鈴音と一夏はきっぱりと答えた。

 

「やだ」

「全くもって俺もやだ」

「何て今時の若者は非協力的な」

「何でもかんでも世代で括るもんじゃないぜ?」

 

 この非協力的な今時の若者たちに対して、楯無は別角度で斬り込んでみることにした。

 

「そもそもねぇ胸も薄いおぼこ臭い子が公衆に全裸晒して恥ずかしくないものかしらぁ? うちに来れば巨大サイズのビキニかスク水くらいは用意させるわよ?」

「余計なお世話よ! こちとら一夏と週3回ヒ○の奥まで知り合っとるわい! 今更マッパくらいでオタつくか!」

 

 貞操観念なんて人それぞれである。藪蛇ウーマンの楯無はパイプ椅子に倒れるように座り頭を抱えだした。

 

「あ、あの人ヘコんでる」

「今時の10代って……私だって……私だっていつか彼氏さえ出来ればしっぽりがっつりなワールドに……結婚だって……」

 

 更識楯無(25歳・本名:刀奈)の栄光に満ちた出世街道が一瞬にして色褪せて見えてしまった瞬間は当人にしか認識できないものだろう。そんな破壊された大人を見た鈴音と一夏は顔を見合わせて訝しんだ。

 

「私何かおかしなこと言った?」

「さぁ……?」

 

 自覚のないのが罪であるかは人による。

 ともかくも楯無は誤魔化すように改めて強く言い放った

 

「とにかく! あなたたちはIS学園に所属すること! いいわね!?」

『へーい』

 

 もうめんどくさくなったので長い物に巻かれることにした二人である。

 

 

「……なーんてあったけど結局めんどくさいわね」

 

 日が変わり、藍越学園は放課後になり生徒が続々下校する。その帰り道に鈴音と一夏がいた。鈴音は後ろ頭に腕を組んで鞄を持って歩いている。一方隣の真面目君一夏は鈴音のボヤキに答えていた。

 

「まぁ後ろ盾があるに越したこたないと思うぞ」

「それもそうかー」

 

 そこへポニーテールで袴を着た女子生徒が一夏の前を遮った。竹刀を持ち歩くいかにもテンプレな剣道少女である。

 

「一夏!」

 

 その少女、箒は竹刀を肩口に構えつつ、一夏を睨む。決して憎んでいるワケではなく寧ろ逆である。対する一夏は漂々として平常心そのものだった。

 

「その、だな! 今日こそ剣道部に入ってこら何するお前ら!」

 

 箒を背後から羽交い絞めにしたのは、セシリア、シャルロット、ラウラの留学生トリオである。

 

「ハイハイ箒さん野暮なことしない。ではお二人ともお達者で」

「ごめんねーお二人さんー」

「元気でな、嫁! 鈴!」

「もがー!」

 

 固まった4人が猛烈な勢いで撤退していくのを二人はぼーっと眺めていた。いつものことである。

 

「あいつら元気だなー」

 

 一夏の微妙なスットボケとこの状況に、敢えてノーコメントを貫く鈴ちゃんだった。下手な突っ込みが藪蛇になる気がした。

 

 唐突に、IS学園から連絡用にと支給された二人のブレスレットに着信音が鳴り響いた。開くと両方に楯無の声が響いた。器用な仕様である。

 

『あなたたち! 出撃よ! 浅草方面に怪獣が出たわ!』

 

「はーいじゃとっとと行きますか」

「どっか合大に適した場所は、と」

 

 そこへ楯無がいらん注文を付ける。

 

『そこはポーズ取ってラジャーでしょ!』

「公衆の面前でやるか馬鹿!」

『あんなのに変身する人に公衆モラルを語って欲しくないわねぇ!?』

 

 

「……これはまた珍妙な」

「怪獣の側も捻ってきてるわね」

 

 いざ合大して現場に到着してみると、怪獣は何もせずただ漂っていた。その怪獣の外見は、巨大な銀色の球体に羽が生えていた代物だった。

 一応本部からの連絡では、銀の福音と呼称することに決めたらしい。

 

「とりあえず鈴ちゃんキーック!」

 

 速攻で飛び蹴りをかまし、炸裂したかに思えたが、相手は瞬時に避けてあちこち飛び回った。大人しく怪獣プロレスの定石を踏むつもりはないらしい。

 

「おぉっ!?」

 

 デタラメに飛び回っているかと思ったら、いつの間にか鈴音を中心に半球状のフィールドが形成され、その内周を怪獣が縦横無尽に高速で飛び回っている。

 更にあらゆる角度からビームが放たれて、鈴音は避けるのに必死である。

 

「フィールド、光学的な視認以外観測不能!」

「何? 誰か説明して!」

 

 突飛な事態に慌てた楯無が、そこら辺に突っ立っている白衣のメガネっ子をキッと睨む。

 

「簪ちゃん!? 説明お願い!」

 

 実妹に色々ぶん投げた。

 

「異なる複数のタンホイザー・ゲートをワームホールによって円環状に物理接続し3480兆8200億ジュールの爆縮によりタグマイヤヌス効果を発生させクヌート現象を抽出・球状に形成、ルクテリウムを含んだ荷電粒子の塗膜によりフィールドを維持、更に……」

「ごめん、私が悪かった」

 

 楯無は怒涛の説明に手で遮って降参のジェスチャーを取った。ちなみに説明内容は嘘である。

 

『そういうワケでこちらでできることは何もないからあなたたちで頑張って!』

 

 作業車に設置されたスピーカーから流された楯無からの指示は、実にいい加減かつ無責任なものだった。鈴音と一夏は呆れる他ない。

 

「そういうワケって何だよ。ま、結局そーだろーとは思ったさ」

「所詮お役所業務よね」

 

 もう現場レベルに関してはIS学園を当てにしないことにした。

 

 怪獣の放つビームが鈴音の頭を掠め、リボンがバラけた。ツインテールの髪型が解ける。

 

『あ、本体が!』

「本体ゆーな!」

 

 よくある定番のネタだが実際言われると腹が立つ。だがそんなことを考える余裕もなくビームが身体にバスバス当たってきた。致命傷には至らないが正直痛い。

 

「ともかく次の手を打とう! 俺がやってみる!」

「よし来た!」

 

 鈴音の胸に納まっている一夏の提案で、一夏が主導権を握って対処してみることとなった。

 

『解除!』

 

 鈴音の全身が光になって解け、二つの光が螺旋状に飛ぶ。

 

『合大(マブフラッシュ)!』

 

 再度合大したその姿は、巨大な鎧姿の一夏だった。左腰には日本刀が差されている。

 

「リンサマーXサムライモード!」

 

 一夏が腰から日本刀を鞘から抜く。その刀の鍔には、先のモードとは逆に等身大鈴音の頭が据えられていた。日本刀を正眼に構え、鈴音ともども目を瞑り心身統一する一夏。

 

「……そこか!」

 

 カッと目を見開き、空間の一点に突きを入れた。切先にはしっかりと怪獣が突き刺さっていた。軌道を捉えて先読みしたのだ。

 

「我が雪片弐型の錆となるが良い。零落白夜!」

 

 鈴音の口から光が伸び、刀身を覆う。怪獣は刺された箇所を中心に亀裂が走った。更に刀身が伸びたことにより貫通しフィールドを破壊し、銀の怪獣は真っ二つになって爆発した。

 尚伸び続けた刀身は隅田川を超え、スーパードライホールの例の黄金のオブジェにさくっと切先が刺さってしまった。ごめんなさい。

 

 

 現場検証やら事後処理やらを放っておいて一夏と鈴音はとっとと帰ることにした。幸い電車は通常運行していた。関西の私鉄並みの逞しさである。

 

「あ、今日の夕飯どうすっかなー。何かリクエストある? 中華限定だけど」

「冷蔵庫に鳥の胸肉あるから油淋鶏がいいな俺」

「ほほぅビールによく合う料理だな。期待してるぞ」

「千冬さん何食ってもビールに合うって言ってません?」

「そうなのか? 流石にビールとチョコの食い合わせはキツかった位だがそうかもしれん」

「千冬姉いつの間に」

 

 先人はのたまった。思い人を掴むには最終的に胃袋を掴め。尚言ったのは千冬である。

 

 

 つづかないかもしれない。

 




・ミカるんX
 ある意味説明に困る漫画。

・鈴音×一夏
 殆ど語呂でコンビを決めた。仲については、だらけたトークといいまぁそういうものである。後書いてる内に鈴ちゃんの喋りに何故か段々何某ラングレー分が混ざっていったが些細な問題だろう。

・○ダの奥まで~
 山本直樹作品から台詞を拝借。

・ビール
 高校生がどうやって買ってきてるんでしょうね。
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