竜の使い魔   作:超高校級の切望

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邪竜は微熱と神の盾に出会う

 タバサの後に付いていき、扉を開けると中々な生活感のある部屋だった。本棚とベッドと机、そして絨毯だけ。本棚には多くの本が入っている。読書家なのだろうか?

 

「読んでも良いか?」

「本、好きなの……?」

「好きか嫌いかで言えば、好きな部類にはいると思う。前は知識程度に色々知っていたが読む機会はなかったしな……英雄譚はないか?」

「これ………」

 

 タバサはそう言って一冊の本を渡してくる。受け取ったジークは表紙を見る。

 見たことがない文字だ。

 

「……すまない、どうやらここらの文字は俺の知る文字じゃないらしい。文字を教えてくれないか?」

「構わない」

「ありがとう」

 

 嬉しそうに笑うジークを見て、タバサは僅かに微笑む。子供のようだと思った。

 ジークを隣に座らせ文字を教えていくタバサ。

 ジーク自身読みたいと言っていた英雄譚で、タバサも好きな内容の本だからか教えるのも覚えるのも早い。二人仲良く隣に座り本を読み合う二人を見て、ジャンヌはむぅ、とむくれる。

 

「タバサさん!私にも文字を教えてください!昔、文字が読めなくて苦労したこともありますから……」

 

 内容の解らない書類にサインしてしまったりとか……。

 ジークの横に座り本を見つめるジャンヌ。

 

「構わないけど……その位置だと手を伸ばさなくてはならない。私に本を渡して、真ん中に移動して教える」

「え……あ、いや……はい」

「……?」

 

 ジャンヌは何故か動揺して、しかし口実を覆す事が出来ず大人しくジークの隣からタバサの隣に座り直した。

 

「そろそろ寝る」

「ああ、解った。助かった……」

 

 タバサは欠伸をするとベッドに寝転がった。ジークはお礼を言うと部屋の外に出る。

 

「何処に行くの?」

「俺はまだ眠くないからな。月明かりで読んでくる」

「あまり遅くならないで」

「解った……ジャンヌはどうする?」

 

 ジークの言葉にジャンヌはタバサとジークを交互に見つめる。

 

「ご一緒して良いですか?」

「ああ」

 

 

 青と赤の月を眺めながらここが本当に異世界なのだと改めて理解する。

 

「ジーク君、その本は気に入りました?」

「ああ。あの人と同じ、邪竜を倒すストーリーだからな」

「そうですか……」

 

 ジークの隣に腰を下ろすジャンヌ。楽しそうに本を読むジークを見て微笑ましげに笑う。

 

「そういえばジャンヌ、一つ聞きたいことがあるんだが………」

「はい、何でしょう?」

「あの時、ジャンヌは俺に伝えたいことがあると言っていたよな?あれって、何だ?」

「へあ……!?」

 

 ジークの言葉にボッ!と赤くなるジャンヌ。

 

「そ、それ……このタイミングで聞きますか……!」

「?すまない、聞かせたくないことだったか?」

「いえ、聞かせたくはあるんです……あるんですけど、覚悟が無くなってしまったというか……」

 

 顔を赤くして俯くジャンヌにジークは首を傾げた。まっすぐ見つめられさらに恥ずかしくなる。あの時は言う気満々だったのに、二人きりだったあの場所と違い他人が居るこの世界では言いたくても言えない……。

 

「良く解らないが、言いたくなかったらすまない。そろそろ戻ろう」

「は、はい……」

 

 

 

「そういえば、どうやって寝る?」

「毛布が用意されてますね………一枚だけ」

 

 元々使い魔というのは1人一体が原則だ。実際タバサの使い魔なのはジークだけだし。前日から用意はしてくれていたのだろう。今日は色々あって用意できなかったのかもしれない。

 

「私はサーヴァントです。今回は依り代もない完全な……寝る必要はないので、ジーク君がどうぞ」

「それを言うなら、俺だって龍種だ。何万年も寝ていたし、数ヶ月は眠らなくても問題ない。ジャンヌが寝てくれ」

「いえジーク君が」

「ここは女性のジャンヌが」

「ですが……」

「だけど……」

「………うるさい」

 

 互いに譲らず寝る権利を譲り合っているとタバサが上体を起こして苛立った声で二人を睨む。眠そうに細められた目には非難の色が浮かんでいる。

 

「どうしたの……?」

「あ、ああ……その、毛布が一枚しかなくて。どちらが使うか揉めてしまって。起こしてしまったようだな、すまない……」

「………ジャンヌ、来て」

「あ、はい………」

「ジークはこっち……」

 

 そう言ってタバサはベッドの左右を手でぽんぽん叩く。タバサのベッドは貴族だけあってかなり広い。後二人なら余裕で眠れるだろう。

 

「仲良く………」

「ああ、解った」

「えっと、お邪魔します………」

 

 ジークは割と躊躇いなく、ジャンヌは躊躇しながらもベッドに入る。

 ジャンヌは元々農民だし、寒い日は家族と温め合った経験から、ジークはその辺の感覚があまり発達してないからだろう。

 

 

 

 

「…………」

 

 タバサが目を覚ますと少し狭さを感じた。見れば男女が自分を挟むように寝ていた。

 

「?………ああ」

 

 そう言えば昨日召喚した使い魔と、巻き込まれたらしい使い魔の友人だ。起こさないようにそっとベッドから降りると着替え始めるタバサ。着替え終わるとコツンと杖でジークの頭を叩く。

 

「ん、朝か……?」

「………おはよう」

「おはよう、マスター」

「…………タバサで良い。朝ご飯、食べる?」

「ああ、頂こう」

 

 

 部屋から出ると何やら楽しそうに鼻歌を歌う赤毛褐色肌の少女と出会した。

 

「あらタバサ、おはよう」

「おはようキュルケ」

「その人がアナタの使い魔よね?ヴァリエールのよりいい男じゃない」

 

 そう言ってジークの顔を眺める。完璧に近い人間として作られるだけあり、ホムンクルスであるジークの顔はなるほど確かにそこらの貴族より整っている。

 まとう雰囲気も貴族達が放つ傲慢や虚栄心に溢れた気配とは違い、新鮮なタイプに恋多き少女、キュルケは熱の籠もりかけた瞳をジークに送る。

 

「この辺りではあまり見ない顔立ちね………ねえ、貴方のこともっと知りたいわ。今晩、私の部屋に来てくださる?」

「せっかくの誘いだが、俺は話しても楽しい男ではないよ」

「あら謙遜を、異国の方というだけで話をする価値は十分にありますわ……」

 

 と、そこまで言ったキュルケはふと足にすり寄る自身の使い魔に気づく。

 怯えるようにクルルルと鳴きキュルケをジークから離そうとしているようにも見える。それに気付いたジークはしゃがみこみキュルケの使い魔と視線を合わせた。

 

「怯えさせてしまってすまない。安心してくれ、俺は君の主人をどうこうする気はない……」

「…………キュルル」

「本当だとも」

 

 その言葉に納得したのか赤い大きな蜥蜴はキュルケの足から離れた。

 

「フレイムが怯える?貴方を……?」

「ああ。俺はどうやら、邪気を放ってしまっているようでね。この子は頭が良かったから大丈夫だったが、ひょっとしたら他の使い魔達に迷惑をかけてまうかもしれない」

「邪気?でも、ふぅん……危ない男にも興味……おっと……」

 

 と、そこでキュルケは此方をジトッと睨んでくるジャンヌに気づいた。

 

「うふふ。どうやら野暮のようね……それでは最後にお名前を」

「ジークだ」

「またねジーク。昼に紅茶を飲みながらでも良いから、何時か貴方の話を聞かせてくれると嬉しいわ」

 

 パタパタ手を振りながら去っていくキュルケ。ジークは機会があったらな、とその背中に声をかけた。

 

「………綺麗な人でしたね」

「ジャンヌ?」

「それに胸も大きくて……ジーク君はああ言った方が好みなのですか?」

「?人となりは好ましいと思う。突然現れた怪しさだらけの俺に、ああして話しかけてくれたしな」

「そういうことではなく………はぁ」

「?」

 

 ため息を吐くジャンヌと首を傾げるジーク。タバサはそんな二人をしばらく眺め、歩き出した。二人は慌ててその後を追った。

 

 

 

「ここでご飯を貰って」

「ここは?」

「厨房。話は付けてある」

 

 何時の間に、と思ったがおそらく教師の方で対応してくれたのだろう。食堂に向かっていくタバサを見送り厨房を開ける。すると──

 

「うまい!うまい!昨日の昼から何も食ってなかったんだよな~!」

 

 東洋系の顔立ちの少年がガツガツ飯を食べていた。その隣では東洋系の血を引いてそうな黒髪のメイドが笑っていた。

 

「ん?おお、アンタらがタバサの嬢ちゃんが召喚した方の連中か。話は聞いてるぜ、席に座んな」

 

 大柄のコックが親指で席を指す。コックの話を聞いたからか、黒髪の少年も顔を上げる。

 

「なあ、アンタらも召喚されたのか!?あ、俺は才人、平賀才人だ。よろしく」

「ああ、タバサの使い魔ジークだ。君もか?」

「ああ!ルイズの使い魔だ………いやぁ、アンタらにあったら礼を言っときたかったんだよ。何でもアンタ等とアンタ等のご主人様のやりとりのおかげで俺の対応が良くなったんだって。ハゲたおっさんが言ってた」

 

 逆に言えばタバサの対応がなければ扱いも違ったという事。何処の国とも知れぬ者を家族から引き離しておいて平然と僕のように扱う。それが当たり前と思われているのがこの世界の貴族至上社会なのだ。

 

「お礼ならタバサに言ってくれ。俺を人扱いしてくれたのはタバサが先だ」

「そっか……お互い良く知らない土地で大変だろうけど、よろしくな!」

 

 才人はそう言って聞き手を差し出してくる。ジークはその手を握り握手をした。

 

「所で、そっちの可愛いこってぶっちゃけジークとどういう関係なんだ?」

「ジャンヌは、俺の大切な人だよ」

「かー!羨ましいなおい!そっか、ジャンヌっていうのか……よろしくなジャンヌさん!」

 

 才人が笑顔で挨拶するがジャンヌは顔を赤くして固まっていた。




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