「モテたい・・・。」
カチューシャ、コハク、クレハ、リズベット、シリカの女子5人しかいないスコードロンのホームでお茶を飲んでくつろいでいると、
リズがポツリと呟いた。
その言葉に、コハクを除く3人は面倒事に巻き込まれまいと聞かなかった振りをする。
「モテたい・・・。」
(((また言った・・・。)))
カチューシャはクレハとシリカにアイコンタクトを送ると2人は無言で頷きを返した。
カチューシャは小さくため息を吐いてリズに聞く。
「どうしたの?リズ。」
「聞いてくれる?カチューシャ。」
「うん、これ見よがしに呪詛のように繰り返されるよりマシだからね。」
リズはカチューシャに顔を近づけると、真剣な顔で言う。
「私ね・・・モテたいの。」
「それはもう聞いた。」
3度同じことを繰り返したリズにクレハが訪ねる。
「モテたいって言うけどリズさん。
キリトさんのことはいいの?
好きなんでしょ?」
「そうですよ、諦めちゃったんですか?」
「じゃあ聞くけどね!クレハ、シリカ!」
リズは立ち上がって興奮気味に言う。
「普通に考えてアスナに勝てると思う!?
あんな女子力オバケに!」
「それはまぁ・・・」
「難しいでしょうけど・・・」
「でしょ!?だから私は決めたの!
これを機に新しい恋を見つける!
そしてアスナとキリトに負けないくらいラブラブなカップルになってやる!」
リズは握りこぶしを掲げてそう言った。
「そういうことならアトバイスは任せてくださいリズ!」
「なにレイちゃん、自信満々ね。」
「当然です!なんと言っても!」
コハクは胸を張って自慢げに言う。
「マスターは今月、学校で5回も告白されているのです!」
「゙;`;:゙;`(;゚;ж;゚; )ブッ!?」
お茶を飲んでいたカチューシャは勢いよく吹き出し、コハクに詰め寄りほっぺたを引っ張る。
「何を言い出したのかなぁ?この子は。」
「ら・・・らってリズがこまっへるみはいだったはら・・・。」
「だからってそんなこt」
コハクを叱りつけるカチューシャの肩をリズがガシッと掴む。
カチューシャが振り返ると、リズは笑顔で言った。
「カチューシャ・・・友達なら助けてくれるわよね?」
「ちょっ・・・ちょっと待って!
たまたまだよ、偶然が重なっただけで。」
「そんだけ告られといて何言ってんの。」
「わ・・・私も教えて欲しいです!
どうやったらそんなにモテるんですか!」
「シ・・・シリカまで!?
助けてクレハ!」
「そこらへん私も気になるわね。」
「クレハあああああ!」
リズは、どんどんカチューシャに詰め寄る。
「さぁ、観念しなさいカチューシャ!」
「ちょっと待って!
私の話なんて参考にならないってば!」
「なんで!」
「だって・・・5人中3人は女の子だったんだもん!」
カチューシャは顔を真っ赤にしながら叫んだ
「その・・・ごめん。」
「謝らないで!泣きたくなるから」
「元気だしてください!マスター!」
「全部君のせいでしょうがぁぁぁぁ!」
「あうー!ほっへはひっはらはいでくらはいー!」
カチューシャはコハクを解放すると、1度咳払いをする。
「で、話を戻すけど。
モテたいならまず今どきの男の子の好みを理解するべきだと思うよ。」
「たとえば?」
「うーん、そうだなぁ。」
カチューシャは少し考えて。
「・・・○○デレとか?」
「は?何それ。」
「例えばほら、ツンデレとか今どきの男の子好きそうじゃない?」
「ふむ、たしかにそうですね。」
「マスター!私いいことを思いつきました!
ここにいる皆さんで思い思いのツンデレを演じてみるのはどうでしょう。」
「いいわね!演じてみてわかることもあるかもだし。」
「じゃあリズからどうぞ。」
カチューシャに言われて、リズは咳払いする。
「ほ・・・ほら、これあげる。
勘違いしないでよね、別にあんたのために整備したわけじゃないんだから。」
「何その鉄臭そうなツンデレ!?」
「できる女がモテるでしょ?」
「確かにそうかもしれませんけど、
リアルの女の子はお弁当を作る感覚で銃の整備したりしませんから!」
「そう言うならあんたがやってみなさいよシリカ。」
「え!?
えーっと・・・コホン。
お弁当作りすぎちゃったから分けてあげる!
・・・とかですか。」
「かわいいのです!」
「シリかわいい。」
「撫でたい。」
「撫でくりまわしたい。」
「まともな意見がひとつもない!?」
「うーん、シリカの場合はツンよりかわいいが勝っちゃうなぁ。」
「うぅ・・・。」
と、ここでコハクが急に立ち上がる。
「わかりました!リズとシリカのを合わせればいいんですね!」
コハクは自信満々に言う。
「SPBレイピア作りすぎたから分けたげる!
か・・・勘違いしないでよね!別にあんたのために作ったわけじゃないんだから!」
「うん、銃器から離れたら完璧だった。」
「あれ?」
「さて、次はとうとう真打登場よ!
クレハ、お願い。」
「誰が真打よ誰が!
・・・そうね・・・。」
クレハは少し考えてから口を開く。
「お弁当作りすぎちゃったから分けてあげる!
はぁ!?何勘違いしてんの!?
作りすぎたって言ってんでしょ!?
黙って食べなさいよ! 」
「おぉー!」
「やっぱり本家本元は違うわね。」
「誰が本家よ!
ていうかカチューシャはどうなのよ、ただ見てるだけなんて許さないわよ!?」
「私?・・・うーん。」
カチューシャは少し間を開けて答える。
「GGOに名前を刻むのは、この私なんだから!キリッ」
「それはツンデレじゃなくて私のモノマネでしょ!
バカにしてんのあんた!」
「いやぁ、あの時のクレハ子供みたいにすねて可愛かったなぁって。」
「か・・・可愛い言うな!////」
「ごめんごめん。」
掴みかかるクレハをカチューシャが宥める。
「うーん、でもやっぱりツンデレは私には難しいわねぇ。」
「性格的には1番近いんだけどなぁ。」
「となると次は『クーデレ』でしょうか。」
「でもさぁ、シリカさん。
なんとなく敷居高くない?
なんとなく賢い人のイメージがあるし。」
「あら、まさに知性の塊な私にぴったりじゃない。」
「マスター、なぜリズは目を開けたまま寝言を言っているのですか?」
「ちょっとカチューシャ!
アンタの相棒容赦ないんだけど!?」
「あはは。」
「笑って誤魔化した!?」
「まぁリズさんが知的かは置いといて、
要はクールに頭の良さそうなこと言えばクーデレってことでしょ?
またやってみればいいんじゃない?」
「それはいいかもしれないのです!」
「クレハ、コハク、盛り上がってるところ悪いけどその会話自体が頭悪そうに聞こえるよ?」
カチューシャのツッコミはどこ吹く風で、他の女子4人は盛り上がる。
「あ、それならいいアイテムがありますよ!」
そう言ってシリカはストレージからメガネを取り出した。
「これ!これをかけてポーズを決めながらやったらクールじゃないですか!?」
「いいわね!それ!」
「すっごい頭良さそう!」
「クールなのです!」
(おかしい、急に会話のIQが溶けてきてる。)
最初はリズがメガネをかける。
そしてメガネをクイッと上げる。
「三権分立(キリッ」
「おー!」
「リズさんかっこいいです!」
「次!次あたしやりたい!」
クレハはメガネを受け取りかけてポーズを決める。
「実に面白い(低音ボイス)」
「その人知ってる!」
「IQ高さそうなのです。」
「天才って感じがします!」
(なるほど、みんな楽しくなって変なテンションになってるなこれ。)
カチューシャが冷静に分析していると、
次はコハクがメガネをかける。
「四面楚歌。」
「四字熟語!」
「いいじゃない!」
「すごく知的な感じがします!」
続いてシリカ。
「3.141592653589・・・」
「円周率!」
「いいわねリケジョ!」
「かっこいいのです!」
そんな感じでさんざん騒いだ四人は静観していたカチューシャに視線を送る。
「・・・え?もしかして私も?」
「当たり前でしょ。」
「本家本元のクーデレ見せなさいよ。」
反論しても無駄だと察したカチューシャはメガネをかける。
「マスター!すごく似合うのです!」
「やっぱり本物がつけると違うわね。」
「自分が偽物って自覚はあるんだねリズ。」
「ほらカチューシャ、そこで一言。」
「・・・も」
「も?」
カチューシャは恥ずかしそうに頬を染めながら言う。
「モロトフ=リッベンドロップ協定////。」
「おお・・・。」
「これが・・・クーデレ・・・。」
「照れてるところポイント高いわね」
「かわいいのです!マスター!」
恥ずかしくなったのか、カチューシャは乱暴に外してシリカに返す。
「はい、おしまいおしまい!
大体シリカはともかく君達にクーデレなんて無理だって。
クールとは正反対の性格してるんだから。」
「むぅ・・・。」
「それもそうね・・・。」
「難しいのです。」
「じゃああと残ってるのは・・・」
少し間を開けて、クレハが言う。
「ヤンデレ?」
「やめよう。」
ここまで静観の構えだったカチューシャが、ガタッと立ち上がる。
「なに、急にどうしたのよカチューシャ。」
「いやその・・・身に覚えがありすぎるから。」
「あぁ、そう言えばこの間ヤンデレに殺されかけてたわね。」
「ああいうのはアニメとかだから許されると思う。
リアルのヤンデレは怖いだけ。」
「いやいや、もしかしたら好きな人もいるかもしれないでしょ」
「・・・じゃあ試してみる?」
「え?」
カチューシャはクレハの手首を掴むと床に押し倒す。
「ちょ・・・いきなりなにs」
ドン!
クレハが文句を言い終える前に、クレハの顔の横にドンと手をつく。
あまりの迫力に、クレハは黙ってしまう。
「ねぇクレハ、なんで引っ越したりしたの?」
「そ・・・それは仕方なくt」
「私、クレハがいなくちゃダメなんだよ?
なのに・・・なんでどこか行っちゃったの?」
「ご・・・ごめ・・・」
「謝らなくていいよ・・・もうどこにもいかないように、鍵かけてしまっておくだけだから。」
「・・・」
恐怖で黙ったクレハの上からカチューシャはどいて、手を引いて立ち上がらせる。
「どうだった。」
「・・・怖かった。」
「分かればよろしい・・・で。」
カチューシャは他の3人の方を振り向き、
ハイライトの消えた目で言う。
「他の3人も、これ以上この話題続けるなら一人づつ倒すけど・・・どうする?」
「ま・・・待ってカチューシャ!
私達が悪かったわ!」
「やっぱり普通が1番ですよね!」
「なのです!」
青ざめる3人にカチューシャはニッコリと微笑むと、
「分かってくれてよかったよ。」
ほっとするリズに、カチューシャはずっと疑問に思っていた事を言う。
「そもそも、なんで新しい恋を見つける必要があるの?」
「それはその・・・いつまでも引きずってるなんてみっともないでしょ?」
「そう?私はそうは思わないけど。」
「あんたはそうかも知れないけど、他の人がどう思うか。」
「そう思う連中にはそう思わせとけばいいんだよ。」
カチューシャはリズに歩み寄りながら言う。
「いいかい、リズ。
人間はね簡単に吹っ切れるほど綺麗じゃないんだよ。
本気で恋をしていたなら尚更ね。
私も、この間初めて人を好きになったばかりだけどさ、
だからこそ思うんだ、人を好きになるって凄いことだって。
だから、気が済むまで好きでいていいんだよ。」
リズの肩にポンと手を置く。
「私はそういうの、すごくかっこいいと思うよ?。」
「・・・お」
リズはカチューシャの腰に手を回し、勢いよく抱きつく。
「お母さぁぁぁぁぁん!」
「誰がお母さんか!」
リズの反応に驚きながらも、
これでようやく不毛なガールズトークから開放されると思ったカチューシャはホッとする。
・・・が。
「ところで、カチューシャの好きな人って誰。」
「・・・え?」
カチューシャは自分で墓穴を掘ってしまったことに気づき、誤魔化そうとする。
「な・・・ナンノコトカナー」
そんなカチューシャの肩を、シリカとクレハは後ろからガシッと掴む。
「私もそのお話聞きたいですねぇ。」
「私も詳しく聞きたいわねぇ、カチューシャ。」
「私も気になるのです!マスター!」
「え・・・ちょ・・・ちょっとまっ・・・。」
まさか自分が話の
中心になるとはおもっていなかったカチューシャは、その後3時間ほど4人の尋問を受けた。