元放浪者とお嬢様   作:ファー

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プロローグ

 俺がお嬢様に出会ったのは5年前の事だ。

 

 7歳の頃、出来の良い姉と兄に比べ凡愚で非才な俺は虐めを受けていて、兄はそれに加担し姉は気づきもしなかった。

 

 そんな日々に嫌気がさし、家を飛び出したのが8年前。 その後人買いに誘拐されて外国へ連れていかれたが、隙をついて何とか脱出した。

 その後はユーラシア大陸を練り歩き、ロシアンマフィアの怖いお姉さんに追いかけ回されたり、亡国企業とかいうテロ組織の連中と殺し合ったり、昔からの知り合いであるウサ耳をつけた女博士に宇宙へ連れていかれたりした。

 

 その後も旅を続けて何となくイギリスへ行ったは良いが、金が無くなり何やらデカイお屋敷の前で行き倒れた。

 

 

 その後目を覚ますと、暫くは味わったことのない柔らかい感触が体を包んでいた。 そう、お高いベッドに寝かされていたのである。

 そのまま布団に包まれていると、部屋の扉を開けて金髪碧眼の少女とその使用人と思われる赤髪の人が現れた。

 食事を振舞ってくれるというのでご厚意に甘え、3週間ぶりのマトモな飯にありついた。 その後久しぶりの風呂にも入れて貰った。 至れり尽くせりである。

 

 このまま去るのはあまりにも恩知らずだ。 なので俺を救った少女に『何か恩返しができないか?』と聞くと、暫くは流されたが粘り強く聞き続けると『それなら私に一生、全てを尽くして使えなさい』と言われた。 願っても無い返答である。 喜んでOKし、俺は彼女の従者となった。

 

 数年前までは良くやっていた家事もスッカリ衰えていたが、周りの使用人から教わって何とか仕事をこなしていた。

 長い間ヤンチャをしていたこともあり、体はまあまあに出来上がっていたので肉体労働が特に良くできた。

 

 彼女に使える中で何よりも嬉しかったのが、彼女が俺の話を面白がって聞いてくれることだ。

 なので、これまでに体験した色々な話を面白おかしく語って見せると、最初は落ち込んでいる様子だった彼女も少しずつ元気になってきた。

 

 拾われた当初はダウナーな人物なのかと思っていたが、どうやら違ったらしい。

 何やらご両親を列車事故で失って凹んでいた時期に、丁度俺が現れたらしい。 そして俺の話が助けになっている、と言ってくれた。

 大したことはしていないつもりだが、彼女の役に立てたのなら重畳である。

 

 

 ♢

 

 

 (わたくし)が彼に出会ったのは5年前、丁度列車事故で両親を失って自棄になっていた時だ。

 

 

 使用人を伴い家に帰って来た時、門の脇に彼が倒れていたのだ。

 少し肌の黒い東洋人で身長は私よりも低く、顔つきや体格から判断するに同年代だ。

 顔は悪く無いが、薄汚れていて体も臭い。

 

 放浪者が行き倒れているのは、まあ珍しい光景でもない。 しかし場所が問題だ。

 

 私は彼の生存を確認し、空き部屋に運び込むように使用人に命じた。 私の館の前で物乞いを始められては迷惑どころじゃないし、もしもこのまま野垂れ死んだり既に死んでいたりしたら目覚めが悪いからだ。

 

 彼が寝ている間に医学の知識を持つ使用人に確認させたところ、恐らくは栄養失調であると答えた。 なので、彼が起きてから食事を与え、ついでに風呂に入らせるとスッカリ良くなった。

 

 彼が『なにか恩返しができないか?』と聞くので『気まぐれでやったことだから構わない』と答えたが、どれだけ言っても諦めない。

 いい加減に鬱陶しい彼を追い払おうと『それなら私に一生、全てを尽くして使えなさい』と言うと『お安い御用だ』と笑顔で言い放ち、私の従者になってしまった。

 

 最初は全く役に立たなかったが、周りの使用人から習うことで徐々に使い物になるようになってきた。 館に来る前は随分とヤンチャをしていたらしく、身体能力が高く主に肉体労働で才覚を発揮した。

 

 また、そのヤンチャをしていた時の話がとても面白く、偶に時間が空いた時に聞いていた。 『人買いに捕まった』だとか『ロシアンマフィアに追いかけられた』だとか『ユーラシア大陸を歩いて横断した』だとか『テロ組織と喧嘩をした』だとか『ウサ耳をつけた女博士と宇宙へ行った』だとか、信じられないような話を面白おかしく語ってくれる。

 

 そんなお話や彼の存在自体が自棄になっていた私を励まし支えた。 そして彼を拾ってから一年が経ち、当主を失ったことにより不安定になっていた家を立て直した頃には、彼の存在は私の中で欠かせなものとなっていた。

 

 

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