うさ耳ファラお尻と行く聖杯戦争。   作:神の筍

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True courage is about knowing not when to take a life but when to spare one.
真の勇気とは、いつ命を奪うかではなくいつそれを救うべきかを知ることだ。

——花火好きな灰色の魔術師

これは色んなアニメでも見かけますが、やはり灰色の魔術師が言ってる場面が個人的に最高です。


ファラお尻のホテルハプニング

 

 

 

「——7泊8日でお願いします」

 

「かしこまりました。料金のほうはこのようになっていますが……」

 

「宿泊が延びるかもしれないので、先にお金を渡しておいて必要なければ返金という形にしておけますか?」

 

「その場合キャンセル料が取られますがよろしいでしょうか?」

 

「大丈夫です。それとベッドメイキングや食事の手配はこちらからフロントに連絡した場合のみお願いします」

 

「かしこまりました。では——」

 

 路地裏での一件から一時間も経たないうちに、ここ冬木で一番大きいホテルへと部屋を取りに来た。二人は悪ふざけか例のホテルへ行こうとしていたが、なんとか阻止してここまで連れて来た。

 

「——マスター(同盟者)と邪竜娘。一番大きいお部屋を取れましたよ」

 

「よし、ナイスよ!」

 

 おかげで私が手配を任せられ、マスター(同盟者)からは纏めたお金を渡された。そのマスター(同盟者)は従業員に荷物は自分で運ぶと伝えている。

 邪竜娘も軽鎧——籠手や関節防具のみ——から下の私服へと着替え、旗も具現化させていない。

 

「お風呂も大きかったら最高ね」

 

「名前の違う三人だと勘違いされたのか少し訝しげに見られました」

 

「見た目的に大学生の旅行に思われてるかも」

 

「いや、外国人観光客じゃないか?」

 

 マスター(同盟者)は黒髪で日本人っぽいが日本人にしては鼻が高い。邪竜娘もフランスだと聞いたことがあり、私はエジプト人だ。確かに外国人観光客だ。

 

「……あ、ここですね」

 

 最上階に着き、部屋番号を見つける。ルームキーを翳して開けると、まず最初に大きな窓ガラスが目に入った。

 

「うわ、すごい。うちのよりテレビ大きくない?!」

 

 邪竜娘は早速テレビを付けて騒いでいる。テレビや普段過ごす部屋はここで、隣にはベッドルームがあるみたいだ。

 マスター(同盟者)は景観を楽しもうとしているが、あいにく外は雨が続いているので唸っている。

 

マスター(同盟者)、先に認識阻害をかけていたほうが良いのでは?」

 

「む、確かにそうだな」

 

 先ほどのフロントでも、私たち以外が立ち入らないように軽い暗示魔術を使っている。あまりしたくないことではあったが、神秘がなにも知らない一般人に及ぼす影響を考えれば仕方のないことだ。

とは云え、マスター(同盟者)は基本あっちの世界で魔術関連は済ませているので仮に入って来たとしても危険なことはないだろう。

邪竜娘が、自分のテリトリーに見知らぬ人物を入れることを嫌ったために施した術なのだ。

 

「認識阻害と気配察知、警報機能。一応三人以外が入ってきたときに扉を開けてもこちらには来れないようにしよう」

 

「半ば異界化ですね」

 

「まあここまでしなくても大丈夫だと思うが。まさかホテルごと爆発するような奴はいないだろう」

 

「それもそうですが……念には念を、ですよマスター(同盟者)

 

「わかっているよ」

 

 なにがあるかわからない。

 それが聖杯戦争だ。現に間桐のサーヴァントなり(くだん)の虚数魔術など例外が発生している。

 残る正統なサーヴァントはマスター(同盟者)が助けたセイバー、まだ見ぬ弓兵(アーチャー)にランサー、あのバーサーカーの私を含めた五人。今のところ順調に情報を集め、進んでいるとはいえマスターはともかく強力なサーヴァント一人で戦況は容易く変わる。

 

「——ニトちゃん、先に風呂に入ってきたらどうだ?」

 

「いえ、マスター(同盟者)から……」

 

「俺はあとでいいよ。スペアの鞄を見ていたら汚れるからな」

 

「あ、私も入るわ。広いから一緒でいいわよね?」

 

 もちろん私も負ける気はない。

 聖杯に願う——兄弟たちのあちら側での幸せ。そしてマスター(同盟者)の願い。

 だからこそ私は、勝ち残る。

 

「——マスター(同盟者)、絶対に勝ちましょう」

 

 私のその言葉に、マスター(同盟者)は目を丸くしている。きっと突然で驚いたのだろう。

 数秒見つめ合ったあと、いつものような揶揄う笑みを浮かべた。

 

「——初めから勝つことしか考えてないよ。(ニトクリス)もいるんだ、負けようがないさ」

 

マスター(同盟者)……」

 

「——ほら、なにしてんのよ。はやく入るわよ」

 

「ああ、はい。待ってください——!」

 

 後ろにいた邪竜娘に慌ててついて行く。

 

「あ、下着とか出してない。まあいいっか、二人だし」

 

「なっ、いいわけないですよっ。マスター(同盟者)!」

 

「あら、バレたか」

 

「——もうっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「——特にすることがないな」

 

 そう呟いたのはマスター(同盟者)だ。

 時刻は二十二時を回っており、窓の外を見ると日中より弱くなった雨がしとしと降っている。十九時過ぎに見た天気予報では今日から明後日にかけては雨が続き、外出には不向きと云っていた。

 雨が降っているから聖杯戦争は中断だな、と抜かしていたマスター(同盟者)はとりあえず絞めておいた。昼間の意気込みはなんだったのかとぼやきたくなる。

 

「次の映画はザ・クリムゾンだって」

 

 ホテルに兼ね備えていた映画チャンネルを見ていたが、それでも何時間も観ていると飽きが来る。

 生前は娯楽があまり無かった私にとって現代の映画はすべて面白く、まだまだ見れるが二人は飽きてしまったようだ。

 マスター(同盟者)はあちらの世界での幻想種たちの世話は一通り終わっており、一目している生物にはなにかあった場合に害のない呼び出し魔術をかけているらしく、基本的に介入することなく伸び伸びと暮らしている。

 幻想種の飼育・保護をしていると云っていたが、生態系を崩さないように自分から接することのほうが少ないらしい。

 

「下の売店になにかあったっけ?」

 

「トランプとか座卓遊戯ならあった気がするな」

 

「行きなさいニトクリス!」

 

「どうしてですか、あなたが行けばいいじゃないですか……ファラオたる私をこき使おうとはいい度胸ですね」

 

「ふん、なら勝負よ」

 

「——ほぅ。挑まれた勝負は逃げないのがファラオの定め。なんでも(・・・・)かかってくるといいでしょう」

 

 

 

 

 

 

 

「——4,362円になります」

 

「5,000円でお願いします。……あ、2円あります」

 

 売店と呼ばれるホテル一階の店にてお釣をもらう。

 

「ありがとうございましたっ」

 

 新人だろうか? 思ったより若い女性が店員をやっている。

 エレベーターのボタンを押し、降りてくるのを待つ。どうやらちょうど上に行ったらしい。

 

「くっ、まさか''げーむ''を持ってくるとは……」

 

 ファラオとしての誇りを持って臨んだ私だが、誰にも云えないくらいそれはそれは負けた。

 なんでもかかってこい、とは云ったがすぐさま相手が苦手なものを持ってくるだろうか。普通お互いに実力差が無さそうなものを持ってくるんじゃないだろうか。

 

「しかし前にチェスのゲームをしたとき、操作に慣れていなかったとはいえ私が負けましたからね……。意外と頭もいいんでしょうか?」

 

 仮にもサーヴァント、戦力だけで座に至ることは不可能。

 知力は無くとも知恵はあり、賢者でなくとも戦略は出る。

 

「こうなればセネトを用意して……しかしファラオである私がそんなせこい真似を……」

 

 やってきたエレベーターに乗る。

 初エレベーターだったりし、最初に三人で乗ったときに浮遊魔術と違った感覚に少し浮き足立ったのは内緒だ。

 

「もしかすると彼女は生前、前に出て戦うのではなく戦場を見極める目、智慧を駆使して勝利に導いた英雄だったのでしょうか……?」

 

 それならば''旗''を持っていた説明ができる。

 戦に必要なものは古来より——蛮勇な戦士、猛り立てる音楽、そして誇りを示す''軍旗''だ。先の鎧も、守りを重視したものとは思えない。

 

「……女性、旗を持ち味方を鼓舞した英雄」

 

 そうなれば対象者はかなり絞られる。その中でも英雄にまで召される人物。

 

「まさか……」

 

 ちん、と目的階に着いた合図が鳴る。歩きながらも思案にくれ、その考えから早歩きになる。

 

「しかし……彼女が? もしそうだとしても……」

 

 怠惰な様子からそれはありえないと自らの考えを一掃する。

 だがしかし、彼女(・・)以外に当てはまる人物はいるだろうか?

 

「聞いてみる必要がありますね」

 

 ポケットに入れていたルームキーで扉を開ける。

 先ほどの考えを聞いてもらう、

 

「——あれ?」

 

 二人がいない。

 テレビは付けっ放しになっており、ザ・クリムゾンが放映されている。佳境に入ったのか主人公と思わしき者が崖っぷちで殴り合っている。

 

『ねぇ——』

 

『——ってるよ』

 

「む……」

 

 どうやら二人して隣の部屋に移ったらしい。

 私にお使いを頼んで放ったらかしとはなかなか肝の座った者どもだ。

 

『—って、——りだから』

 

『——たら——ょ—しようか』

 

『それは——しい—ね』

 

 半ば大股になりながら歩み、隣に通ずる扉を音を立てながら開ける。

 

『——こぶかしら?』

 

『—ら、はやく』

 

「——二人とも! 私に買い物を任せて放ったらかしとはなんたる不敬! さすがの私でもこんな仕打ちは怒りますよ! 特に最近はそういうのが…………」

 

「……」

 

「……」

 

 二人が見ている。こちらを。

 

「…………」

 

「……」

 

「……」

 

 マスター(同盟者)はいつものコートを脱ぎ、ボタンシャツでベッドに寝転がっている。

 

「…………」

 

「……」

 

「……」

 

 邪竜娘はいつもの邪竜Tシャツに、下は黒の下着姿だ。マスター《同盟者》に跨って顔を合わせている。

 

「…………」

 

「……」

 

「……」

 

 景色が目まぐるしく回っている気がする。落ちつけ私、落ちつけファりゃお。

 

「…………」

 

「……」

 

「……」

 

「——うっ、わあぁぁぁ!」

 

「……マスター(同盟者)?」

 

「落ちつけ引きこもり! いくらお前が吸血鬼(・・・)だとしても今は血を吸うんじゃない!」

 

「——ううううるさいっ! よ、よよよこしなさい血を!」

 

「聖杯戦争中だ!」

 

「し、知らないし! じゅ、じゅるじゅる吸ってやるわ!」

 

「うわぁぁぁ!」

 

「…………」

 

「……」

 

「……」

 

「…………」

 

「……」

 

「……」

 

「——だ」

 

「「だ……?」」

 

「——騙されるかぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 二人に二撃、ホテルが揺れた。

 

 

 

 

 




・主人公【???】

なにしようとしてたんですかねぇ……

・ニトクリス【だ、騙されるかぁぁぁ】

超純真ピュアホワイト褐色ファラお尻。
手を繋いだだけで顔が真っ赤になり蒸発する。

・邪竜娘【魔力補給】

なぜこの方法を選んだのか。
原作でもソレ以外の方法あっただろ! おい! 真相は次回!

・最後に……

来週は一話になるかもしれません。

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