うさ耳ファラお尻と行く聖杯戦争。   作:神の筍

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今回はいつもより一〇〇〇字少ないです。
申し訳ねぇ……


ファラお尻の知らない心

 

 

「——ねぇ、衛宮君。最近間桐さんはどう?」

 

「桜のことか……? そう云えば最近来てないな」

 

「そ。一応明日間桐のとこに行くわよ」

 

「っ、わかった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し開きはありますか? 変態」

 

「——ない」

 

 マスター(同盟者)は清々しくのたまった。

 不埒な一件から、邪竜娘はとばっちり——ではないが——そそくさと退散してしまい、ベッドルームでは私とマスター(同盟者)の二人だった。

 

「黙っらしゃい。少し反省というものをしてはどうですか?」

 

「反省もなにも、あれはニトちゃんが見てきたような……」

 

「見てきたもなにも、私が帰ってくると知りながらあのようなことをした倫理観に物申しているんです! あなたと邪竜娘の関係はいまいちわからないですが今日を境にな、なんとなくわかったつもりです。——ええ、本当に誠遺憾ながら。しかし! マスター(同盟者)がいくらそ、そそのようなことをなさろうと、せめて聖杯戦争中……いやっ、私のいないところで……」

 

「ごめんよ。でもあれは——」

 

「——いえ。 マスター(同盟者)があのようなことをしたいならば一言……いや、 マスター(同盟者)は私を求め呼んだわけで、なおかつ願いは私を受肉させること……初めてあったときも ()が欲しかったと云っていましたから——」

 

「ニトちゃん……?」

 

「そうです。ただでさえマスター(同盟者)はダメ人間なんですから邪竜娘ではなく私のような心身支えるような存在が必要です。これから先マスター(同盟者)が気ままに過ごせるような生活を、私が身の回りを管理することで……」

 

「大丈夫か?」

 

「——すべてはマスター(同盟者)のためなのです。杖の一件も、鞄の一件も、どうみてもマスター(同盟者)は一人でやっていくには少し腑抜けすぎです……やはりファラオたる私が……でもファラオである私が一人の人間に? ——しかしファラオとしての誇りは消えませぬが多くの民を率いたのは生前の話。かのマネス様も死後は向こう側の世界で生前愛したただ一人の女性と仲睦まじく過ごしたと云われています……」

 

「……」

 

「死とは生まれ変わり。この聖杯戦争で得られる聖杯を黄金に、私も——」

 

 長考する。

 座へと赴くとき、聖杯は私に提案した——生前の憂いを果たすも良し、生前の果たせない思いを成すのも良し。つまり、二度目の生を得て謳歌するのも構わないと。

 

「——マスター(同盟者)、私は少し考えることができました。ですので今回は不問とします。しかし次もあのような場面を私が目撃すれば容赦無く杖を振りかざすつもりなので、そのつもりで」

 

「わ、わかった……」

 

「いいですね?」

 

「……はい」

 

 ——なんか勘違いしてるが……まあいいか

 

 この一件、あっていないようであっているという結果は同じでも過程はすれ違いが起きている。

 邪竜娘——聖杯から落とされた彼女は半ば隔離された世界で過ごしている今は聖杯からのバックアップを受けておらず、魔力補給をされていない状況にある。

 あの神秘が内包された世界で過ごすならば、空気中に含まれた魔力で供給分を確保することができるが、それは濃密な魔力(神代)に適した場合である。この魔力は神代に近い者、もしくは竜の心臓など根本的に人から乖離した生物のみが取り込むことができ、中世の英雄である彼女は時代差からうまく適合せず、この世に駐留するだけの最低限の魔力しか保持していなかった。

 そのため、なんらかの方法で魔力供給をする必要があり、空気中の魔力ではうまく適合しなかったため最終案として同盟者()というフィルターを通すことによって補給していたのだ。実に八年間この方法をとっている。

 それに加えて先日のライダー襲撃にて、礼装と戦闘に限られた魔力を使ってしまったためやろうとしたのだ。

 根本は変わらないが、決して精神的、肉体的欲求からのモノではない。()は。

 

「……ふむ、いささか禍根は残りますが今夜はこれでよかったでしょう」

 

 マスター(同盟者)はすでに隣の部屋へと行った。

 少し騒がしい声が聞こえてくるため、私が買ってきた座卓遊戯でも触っているのだろう。

 

「私が……死後を考えるようになるとは……」

 

 生前では考えも寄らなかったことだ。

 

 故郷(エジプト)では死んだときに持っていた黄金(ざいさん)を通貨に、死後どう過ごすことになるか別たれる。日本では''地獄の沙汰は金次第''というが、それと似たものだ。

 もちろん多ければ選択肢は増え、最上のものは''来世''を得られることだ。

 しかし死ぬ直前、私は全てを棄てた。——全てを無くすために、全てを棄てたのだ。

 黄金(かね)も、黄金(とも)も、黄金(みかた)も、黄金(かぞく)も——黄金(あい)と、黄金(わたし)自身も。

 川の冷たさに曝され、最後は燃えて炭と化した。残ったのは割れた鏡のみ。肉体が消え、魂が流された私は門を通ることはできず永遠に彷徨うことになった。

 そのときだった、目の前に黄金(せいはい)が現れたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その夜は——夢を見た。

 

 願望、過去、未来……夢とは人体のどの器官で投影されたのかはわからないが、私が見ているのは間違いなく‘‘過去’’だ。

 

『——大丈夫か? お前はまだ脚が弱いんだ。あんまりやんちゃするものじゃないぞ』

 

 手慣れた手つきで巻かれていく白い布は、包帯と呼ぶにはあまりにもきめ細やかだ。おそらく包帯ではなく、衣服から破いた布なのだろう。

 

 ——っ

 

 布を巻かれた黒猫がひと鳴きした。

 ありがたいと云ってる反面、その眼は傷が痛いと訴えかけているように見える。

 

『自業自得。これに懲りたら身の丈を考えて生きろ……ほら、行っていいぞ。布は完治できるころには勝手に取れるからな』

 

 またひと鳴き。

 珍しい鍵尻尾をふわりと振ると「ありがとう」と云った気がする。

 

 ——場面が変わる/私は丘に立っていた

 

 空があった。

 高く、高く、高く——。

 初めて夢を見た日の空とは違い、どこまでも高い蒼穹な——空。

 翼がなくとも、坂道から下れば、小さく跳べば、どこまでも飛べそうな、吸い込まれそうな大空だ。

 

 ——!

 

 私が立っていた場所に大きな影が翳る。

 背後から突風が吹き、脇腹を撫でながら虚空へと消え去った。

 

 思わず空を見上げる。

 

「——!!」

 

 金色の体躯。

 一つ一つの小さな鱗が風を掴んでいるのか戦慄いているのが見えた。

 

  —— — —— —!

 

 鼓膜が震えた。

 金色が吼えた。

 存在が明確に塗り付けられる。

 その偉大さと、眩しい赤い太陽の光に目を瞑り、手を仰ぐように翳してしまう。

 その隙間、あらゆる宝よりも価値のある瞳が私を見た気がした。

 

 ——場面が変わる/私はオリーブの木の下に座っていた

 

 見慣れた横顔があった。

 口元に笑みを浮かべ、いつものように喉でくつくつと笑っている。

 慈しむような眼差しは三匹で騒ぎ合う子狼を見ていた。優しい手付きで撫でられる猪は目を細めていた。肩には白い鳩が二匹、毛づくろいをしている。オリーブの木で囲まれた泉では黒毛の馬が馬足を鳴らしながら遊んでいる。

 穏やかな景色に、頬が緩みくすりと声が漏れた。

 

 ——私を見ていた

 

 楽しそうにしていた動物たちが、全て。

 十は容易く越えた目に見られている恐怖よりも、場が凍ったように続く沈黙よりも、私に気付いた疑問よりも——私は納得した。

 

 ここは聖域だと。

 

『——大丈夫だ』

   

 一声、それで全てが戻った。

 子狼は騒ぎ、猪は目を細め、鳩は紡ぎ合い、馬は遊んでいる。

 

『ここにいるのはいいけど、そろそろ起きる時間じゃないか?』

 

 聞き慣れた声音でそう云われ、意識が反転するのを感じた。

 

 

「 バー……サーカー?」

 

「クカカカ。悪く思うなよアインツベルンの聖杯。此度の聖杯戦争、もとより道を歩く気は無いわ」

 

「どうして……どうしてサーヴァントが 三体(・・)もいるのよ!」

 

「ふむ、疑問に思うのも仕方なきことよ。二体は狙ったものじゃが、セイバーを取りに行く途中思わぬ拾い物をしてな。幸運じゃったわい」

 

「く——人でなしとはお前のようなことを云うのね」

 

「カカカッ、とうに人間は辞めておる。さて、ぬしの中の聖杯——いただくぞ」

 

 

 




・主人公【???】

夢を介して少しずつ過去が垣間見えてくる。


・ニトクリス【夢をみた】

主人公の夢をみた。
彼は誰なんだろうと疑問に思いつつ、死後のことを考える。……あれ、病んでるのか……

・邪竜娘【テレビなう】

ある意味元凶だがどこ吹く風。
「私、魔力補給しようとしただけだもーん」

・アインツベルン一族史上最高のホムンクルス

「バーサーカーは最強なんだから!」

・マキリ

死体あさり中。桜は何処へ……




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