うさ耳ファラお尻と行く聖杯戦争。   作:神の筍

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おまたせしました。


【久しぶりな人のための大雑把な説明】

主人公???⇨虚数魔術を追いかけて、マキリの屋敷に潜入中
ニトクリス(アサシン枠)⇨同じく。

散策中、二人は外から気配を感じた。


ファラお尻の赤い悪魔と同盟者の

 

 

 

 ——Gandr(ガンド)

 

 古代スカンディヴィアにて、多数の魔術を表すものだ。

始まりのガンドは全てを含めた効果を秘めていたと云われるが、現在では離別化され使用者によってその効果は違う。

 精霊を呼ぶ者、準魔法級とされる大魔術・転移魔術の呪文に組む者もいれば——呪いを込め簡易攻撃魔術にする者もいる。

遠坂家が長女——天才と称される遠坂 凛は圧倒的後者だった。祖シュバインオーグから受け継いだ宝石魔術を長女とする遠坂家は魔術の殆どを宝石を媒介とし使用する。故にその出費は計り知れず、親族、後ろ盾共に——神父がいるが——頼りない凛にとって普段から連発できるものではなかった。

 だからこそ、目につけたのは己の魔力一つで柔軟が効くガンドだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「——ガンドっ!」

 

 黒い呪いが指先より出された。

 速さは銃弾に近く、されど無音のままに発射。速さと、それに伴う突発性により一般人ならば反応できないモノにアサシン——ニトクリスはローブを翻すことにより完全防御した。

 

「っち、アーチャーはサーヴァントをお願い!」

 

「……任された」

 

「——ニトちゃんはそのまま近くで援護」

 

「了解です」

 

 赤い外套を纏う、アーチャーと呼ばれた男はマスターに云われ、ほんの一瞬逡巡したがマスターと挟むように館の上に飛び乗り弓を可視化させた。

 

「動かないで。一歩でも動きを見せたらアーチャーに速射してもらうわ。アサシンであるそちらと、三騎士のアーチャー、どちらが有利かわかるわよね?」

 

 遠坂凛は、抑揚もなくただ合理的に云い放つ。

 アサシンは具現化し、後ろからやられる心配は皆無。サーヴァント以外による不意打ちは二人に目を向けつつも視界以外で周囲を監視するアーチャーが防いでくれるだろう。

 

「……どちらが有利、か」

 

 

 

 風を切る音がした。

 

 

 

 ただ一射。

 いつものように手を顎にやろうとしたアサシンのマスターを射殺す。

 魔力が込められた黒い矢が飛んだ。

 

「——」

 

 その光景に、遠坂凛は然程驚きはしない。爆風により多少眉根は歪んだものの、聖杯戦争において殺しは常套の手段で、殺される気は無いがその覚悟はある。息を吐くこともなくアーチャーに次の行動を指示しようと目を向けた。

 

「……アーチャー?」

 

「凛——どうやらまだ終わってないらしい」

 

「っ、追撃!」

 

 一瞬気が緩んだ自分に喝を入れ指先を向ける。

 爆風により舞い上がった砂煙に視界は悪いが、やらないよりはマシだろうとガンドを繰り出した。

 

「——サーヴァントの攻撃は頼んだ、後ろにいてくれ」

 

 陽に照らされ肌色になった砂煙から青い光が見えたと思えば、紺色のコートが突出して走り込んだ。

 持っていたアンティーク調のカバンは消え、コートはアーチャーによる攻撃で裾に穴が見える。

 

 だが、それだけだった。

 

 投影魔術を駆使し、ランクは落ちるとも宝具を使い潰せるアーチャーの、サーヴァントの最上の一手の一部を食らいながらマスターである、サーヴァントでもない人間が服装以外の欠損は無し。その結果に遠坂凛は頭を痛めたくなるが、すぐに振り払い——拳を構えた。

 

「——女で魔術師だからって、近接格闘ができないと思わないでよね!」

 

「もちろん、そんなことは考えていない!」

 

 両腕、両拳に濃密な魔力を込め迎え、討つ。

 

「——はっ!」

 

 骨が軋む音がした。

 

「っ!?」

 

 遠坂凛の腕からだ。

 魔力は腕が血飛沫を上げない程度に込められ、尽力は大の男を上回る。走っているものは無理かもしれないが、止まっている車くらいならば殴り飛ばせる。

 疑問に思い、目を上げた。

 

「————陣術ッ!? あんた何百年前の魔術師よ!!」

 

 そして声を荒げた。

 

 ——陣術

 

 遥か昔、魔術というものが編み出され形態化され始めた頃の魔術構築法である。

魔術は自らの魔力を媒介にするが故、その消費を極力抑えるのが常。そのため西暦になった現在、単純な強化魔術は魔法陣を空間に描かずとも工程を省くことで簡略化された。

 

「最近の流行りにはついていけなくてな、途中で魔力切れなんてことは起こらないから心配しないでくれ」

 

 そう云って、淡く滲む深緑色の魔法陣を両拳に纏わせながら構えた。

 

「……」

 

 遠坂凛の額に汗が流れる。

 人数は同じ、サーヴァントの力量は僅かに上か。しかし先ほどの攻撃がなんらかによって無力化されたのは事実。そしてマスター同士の実力の差。旧々世代あたりに位置する魔術の使い手、燃費が悪く、古臭いと一蹴できればいいが近接魔術の至高の一端であることは変わりない。

 

「——ふぅ」

 

 だからと云って。

 遠坂凛に引くことは無い。

 相手が自分よりも格上ならば、

 

 ——自らがその上をいけばいい

 

 腰を落とし、五メートルの距離を瞬きの間で埋める。初動なく、相手の意識外をついた一撃——では終わらず、両腕ともに同時に突き出すことによる中国拳法の技。

 

「はッ!」

 

 肘から手首にかけ、ほぼ同時に捻り体内に衝撃を伝える。たとえ腕を前に防いだとしてもその上から肉を抉る。

 

 ——が、それは陣が弾いて終わった。

 

「堅っ……どれだけ魔力込めてんのよ!」

 

 右足に魔力を循環させて土を蹴った。アサシンのマスターは思わぬ奇襲に魔法陣を纏った右手を前に出した。

 その隙に一歩下がる。赤いコートの内側から小石サイズの宝石を二つ取り出し、夜空へと投げる。

 

Gewicht(重圧)! ……アーチャー、サポート!」

 

マスター(同盟者)……やらせません!」

 

「弓兵に背を見せるか、アサシンが!」

 

 鈍く、紫の明かりに一面が包まれる。そこに現れるのは結界。地面が陥没し、尋常ではない重力がかかる。

 

「鉱石魔術か、俺とあんまり変わらないじゃないか——」

 

 肩が降りていきそうなアサシンのマスターの姿が地面に吸い込まれるように消えた。

 

「凛……!」

 

「いっ、み、わかんない、し!」

 

 そして、重力に飲まれた場所に現れたのは遠坂凛だ。逆にアサシンのマスターが入れ替わるように遠坂凛の場所にいた。

浮いていた宝石を二つ、アーチャーがアサシンを射るよりも優先して砕いた。三発目にアサシンに狙いを付けたが、その周りにある白く捻れた異様な空間を見て下がった。

 

置換魔術(フラッシュ・エア)——。日常生活程度の役に立つものだが、戦闘用にまで昇華したか。

 そのレベルの魔力ならば別の魔術に傾倒するものだが、物珍しい」

 

 再び距離を置き合間見える。

 

「完全に利用された。宝石は使うわ、仕留めきれないで大損」

 

「いや、むしろ良いほうだろう。才能差はわからんが、向こうの魔術師のほうが経験から来る戦闘は上。現状その他の知識も比較できるかはわからん。マスター同士の戦いでは負けたな、凛」

 

 皮肉めいたアーチャーの言葉に舌打ちで返した。

 鉱石魔術も一度といえど返され、本来不意打ちで使うべく格闘術にも対応された。さらには卓越された置換魔術。先ほど条件付き転移魔術のような芸当を見せられたのだ。才能だけでは埋められぬ経験の溝が存在した。

 

マスター(同盟者)

 

「問題はないか、ニトちゃん」

 

「ええ。こちらも、向こうも様子見で終わりました。向こうは弓を除く手の内を晒すことなく、こちらも問題はないです」

 

「無事で良かった」

 

 マキリの虫が飛んだ。

 羽に映えた月光が視界に散らつくが、意識は両者とも眼前の敵を見やっている。ぬるい風が遠坂凛を撫でれば、相対していた男は腕を下げた。

 拳に纏われた陣がガラスの音と共に消えていく。粉々に砕けたそれは地面に残留することなく水のように溶けていき、剣呑な気も男から霧散した。

 

「アーチャーの英霊と、歳に合わない魔術の器用。君は遠坂で良いのかな」

 

「ええ、どこぞの古臭い魔術師さん」

 

 辛辣な評価のされ方に男は困ったように笑った。

 

「セイバーのマスターからなにも聞いてないのか?」

 

「……」

 

 今思えば、勢いのまま戦闘に入ったのではないかと遠坂凛は自身に投げかける。同盟者の衛宮士郎はアサシンとマスターについて聞いており、同盟とまではいかないまでも事実上の不可侵を一定期間敷いたと話していた。サーヴァントの様子から瞬時にアサシンと判断したとこまでは良い。しかし、間桐家から出てきたため敵と決めつけガンドを撃ち込んだ。

 引けも引けぬ状況を見たアーチャーが口を開いた。

 

「幸いにも、こちらが構えた矛より先に向こうが下げてくれた。あの小僧のこともある。ここは正直に頭を下げることが君のするべきことじゃないか」

 

「わ、わかってるわよ……」

 

 そう言いながらも不満げな顔をしていた。それは男への理不尽な感情の表れではなく、たまに出る自身の感情的な行動に対してであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事態はとりあえず収束に向かった。

 未だ聖杯戦争という大ごとに呑まれている状況に変わりはないが、杯を求める以上にやるべきことがある現状無駄な戦闘を避けられるのはありがたい。

 

「——伝承科(ブリシサン)臨時講師!?」

 

 そして、現在はマキリの屋敷から少し離れた展望台にて情報を交換していた。途中まで大人しく話を聞いていたアーチャーのマスターだったが「この地を治める私はともかく、あなたはどこの魔術師なの」と言った疑問が上がった。そのため、マスター(同盟者)は口で説明するよりも早いと思ったのか、コートから適当に入れていたであろう中折れしたカード(?)を渡すとアーチャーのマスターは声をあげた。

 

「りり、臨時講師って……」

 

 魔術協会における三大部門の一角——時計塔。

 時計塔は魔術を習うのはもちろん、基礎を学びさらに十二の自分に合った学科へ分かれる。分かれて以降はその学科に専念するのが基本だが、『中立派』と呼ばれる学科は『貴族主義派』と『民主主義派』の学科とは異なり別学科の授業を掛け持ちすることもある。

 十二の学科はそれぞれ『全体基礎科』『個体基礎科』『降霊科』『鉱石科』『動物科』『伝承科』『植物科』『天体科』『創造科』『呪詛科』『考古学科』『現代魔術科』『法政科』からなる。君主(ロード)と呼ばれる各学科を牛耳る一族を中心に魔術師が寄り、排他的な学科からオープンな学科まで選り取り見取りである。

 

「アーチャー、あんた澄まし顔してるけどわかってるの?『伝承科』っていうのは院長自らが指揮を執る、この世に存在しないものを継承し続け、研究する十二の学科でも一際異質なところ。そこの臨時(・・)講師よ!講師ってだけで意味わからない役職なのに、臨時まで付いたらめちゃくちゃよ!」

 

「あ、ああ……」

 

 八つ当たりのように、後ろで腕を組んでいたアーチャーに吠えた。

 

「どういうところなのですが、マスター(同盟者)?」

 

「彼女が云ったこととあまり変わりないさ」

 

 マスター(同盟者)は肩を竦めた。

 不意に、あのときの夢が脳裏を過ぎった。静謐な、神代の香りがした世界。オリーブの木漏れ日から差す陽射しを私は憶えている。女王をしていた頃の、太陽(ラー)とは違った優しく包んでくれるような光。

 彼は一体、何者なのだろうか。

 

「時計塔の講師ならまだはっきりしてるか。この烙印は間違いなく院長の印、あれは偽造できないしね」

 

 偽造と、不必要な摩擦を防ぐため時計塔院長の印、そして名前すら書くことができないよう魔術的措置を施されている。そもそも院長の名前を知らない者が殆ど。君主(ロード)でやっと、以下の者は見たこともなければ、興味を抱くことも少ないかもしれない。

 

「遠坂の名において、今より不可侵の事を認めます。衛宮君とセイバーが見た聖杯戦争のイレギュラーであろう呪詛、虚数魔術。それを解決、もしくは処理するまで私たちアーチャー陣営もこちらから手を出すことはないと約束しましょう。

 絶対遵守の法(セルフ・ギアス・スクロール)でも結ぶ?」

 

「いや、別にいい。そちらがキシュアに連なる誇りがあるならば俺はそれを信じよう。時計塔でも遠坂の家訓は聞いていた。君の様子ならば大丈夫だろう」

 

 口より紙を信じる魔術師にしてはマスター(同盟者)はきっと異端だ。魔術師は人より自身が魔術師であることを優先する。

 魔術師でありながら、人っ気の強い同盟者がなんとなく誇らしかった。

 

 

 

 

 






・主人公
ほんとこいつ何者なんだよ……。
「伝承科」臨時講師。一体なにを伝承というか持ってるんでしょうねぇ……。
伝承科については設定資料集等をお読みください。もしくはネットで調べるのだ!
割と軽そうな口調をしてますが、優しい声音を想像しながら自分は書いています。

・ニトクリス
ケツ担当。

・遠坂凛
殴ればわかる、という家訓の元今日も魔術を振るう。

・アーチャー
ある意味一番の苦労人。いれば頼りになるってなかなかいないですよね。

・その他
ちょっとルビについて整理したい。
弓兵とか剣士とかに振っても仕方ないから全部カタカナ表記に改稿します。一話書いてからしたいので、少し時間がかかりますがちょいちょい編集していきます。

割と本気で完結まで持ってきます。





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