うさ耳ファラお尻と行く聖杯戦争。   作:神の筍

19 / 26
『挨拶』

最近久しぶりに小説情報というものを見まして、この「ファラお尻」にカラー評価が付いているのを拝見しました。正直タイトル詐欺で「ギャグ路線か、読も」みたいな感じでお目に通していただいている中シリアスにもそんなギャグ路線にも染まらない半端な二次小説かもしれませんが、多くの方々に評価されるのはとても励みになります。
遅ればせながら、この前書きにて「読者様、これからの読者様、ならびに評価者様とお気に入り登録者様方」に感謝の気持ちを。
stay nightは終盤に入り、最終回近いこの二次小説ですが最後まで付き合っていただけると嬉しいです。

神の筍










ファラお尻の夜Ⅱ

 

 

 

「我が魔力の寄り辺となり力を貸したまえ——出ませい!」

 

 『目によって撃ち、姿は見えない』

 伝承に記された——メジェドは白布をまとって現れた。尖った眼は見つめると不気味さから思わず体が硬直してしまいそうになり、すらりと伸びた生足は妙に情を煽る。怪物の定義である''正体不明''を見事に体現したメジェドは二人のマスターの視線を背に浴びながら竜牙兵を怪光線で焼いていく。

 

「これがアサシンの使い魔ですか……珍妙な……」

 

「なにをおっしゃるのですかセイバーよ。あなたにはこのお方たちの素晴らしさがわからないというのですか? 穢れを知らぬ、むしろ穢れすら飲み込む神威。瞳からもたらされるビーム(恵み)はああやって傅かない者たちを楽園へ送るのです。

かのブリタニアの王が理解できないとは……」

 

「聞き捨てならないぞ、アサシン。

 私は幼少より王になるべくして生きてきた身、世の流行程度とうに理解している。たしか、マーリンもあんな感じのを着ていた」

 

 それはまた違うだろう、と突っ込むものはいない。

 メジェドの召喚によりアサシンはもちろん、凛と士郎は怪訝な視線を向け、アサシンのマスターに至ってはなにか幻想種を見るような少々マッドな光を目に浮かべている。依然アーチャーは冷静に努め、緩んだ空気を締めるように「気を抜くな」と云った。

 

「強いわけではない。だがこうも雑兵が続くと疲弊するのは当然。士郎、下がっていてください。私も加勢します」

 

「——待て、セイバー。ここは私が行こう。私の能力と宝具ならば対多数戦闘に向いている。アサシンのマスターから貰った霊薬はあれど、できるだけ魔力の消耗は避けるべきだ」

 

 そう云ってアーチャーは黒い洋弓を投影する

 

「————赤原猟犬(フルンディング)

 

 赤い猟犬が洞窟内を駆けた。壁に天井、と走る抜ける猟犬はのろのろと動く竜牙兵の頭部を砕いて倒していく。破片が散り、それによってさらに進行が遅れる。その隙に走り出さした五人はすれ違うように竜牙兵を倒していった。

 視界不良はあるがそのたびに凛が小さな宝石を砕いて投げる。小さな宝石は一面を照らしてなんとか足早に奥へ向かった。

 

「まったく、あんまり近接格闘は苦手なんだが——なっ」

 

 陣術を発動したアサシンのマスターは二体三体と竜牙兵を殴りつける。背後に回った竜牙兵が剣を振り上げるが、アサシンが杖で脚を破壊しとどめを刺した。

 

「ガンド——! ガンド! ガンド、ガンド、ガンド!——もう、減らないわね!ガンド!」

 

「供給源から経つしかない。近くにキャスターの影があるはずだ、探せ!」

 

 アーチャーが手を仰げば空中に剣が投影される。音速で発射されたそれは直線上すべての兵を倒して道を開け、間を縫うように走っていく。殿にアーチャー残してセイバーが対魔力の壁を張って先行する。

 

「弓兵です、気を付けて——!」

 

 岩陰に隠れた竜牙兵は躊躇なく弓を引く。たやすく頭蓋を貫く矢はアーチャーの一撃には到底足らないものだが、魔術師である凛と士郎には致命的な攻撃となる。

 

「風よ——はぁ!」

 

 横薙ぎ一線。

 風を受けた矢はそのまま跳ね返り地面へ落ちる。待機していた斧を持った兵にあたり自滅を誘う。

 

「セイバー」

 

「大丈夫です、士郎。ただ崩落の危険があるため何度もできませんが……進みましょう」

 

 セイバー、アサシン、そのマスター、士郎に凛、背後に目を光らせるのはアーチャー。とりあえず一掃した竜牙兵にすら注意して前に進む。岩肌の鋭い地形を抜け、一際広く空いた空間に出た。

 セイバーが一歩踏み込むが、異変はない。

 

「下がって——」

 

 剣を前にセイバーが腕を出す。止められた士郎たちはたたらを踏んで前を見た。

 そこにいるのは黒い影をまとったあの夜の——ランサー。

 そして、

 目を剥いたまま、口から虫を出す——キャスターであった。

 

「なにあれ……」

 

 生きている気色ではない。白より白い、青褪めた表層はただの屍であることを証明している。口から溢れ、隙間から見えた甲虫類は間違いなくマキリの虫。体内はすべて食い尽くされ、ただの魔力炉と化したキャスターは魔方陣を展開した。

 

「来るぞ——ッ!」

 

 紫光が煌めきセイバーは剣の()を解く。

 初めて見るその輝きに目を奪われそうになるが、状況は切羽詰まっておりすぐに脚を動かした。左右に分かれた凛、士郎とアサシンとそのマスターは挟み込んで挟撃の隙を狙う。対魔力に優れたセイバーはキャスターを狙い、アーチャーは牽制するようにランサーへと剣を投げた。

 

「やることがないな、ニトちゃん」

 

「なにを呑気なことを——っ、マスター(同盟者)、あれは」

 

「援軍ってわけじゃなさそうだね。キャスターはゴーレムを混ぜていたか。竜牙より脆いが、また数を揃えられたら面倒だ」

 

「では」

 

「ああ。サーヴァントは向こうに任せる」

 

 今来た道をなぞって、空いた空間の入り口でアサシン組みは竜牙兵と、破壊されたが地面を取り込んで再生したゴーレム兵の相手をする。敵サーヴァントに完全に背を向ける形だが、今のところ優位に立っているならばかまわない。アサシンは竜牙兵の相手を使い魔に任せ、自身は背後から攻撃されないように身を構える。

 

「傀儡にされてもなお、私の対魔力を削るか。そこまで卓越したキャスターがなぜ——せあっ!」

 

 手のひらから出した魔力塊ごと切るが宙へとキャスターは逃げる。空を飛べないセイバーは鋭い目を向け、凹凸のある壁を無理やり身体能力で登り、飛んで剣を何度も振るったが蝶のようにローブを広げて舞うキャスターにはあと一歩足りなかった。

 

「——ふんっ」

 

 白黒の双剣は赤い魔槍に吸い込まれるように弾かれる。

 弓兵(アーチャー)にもかかわらず、剣技を基本に戦うアーチャーとランサーの戦いは未だ決着は付かず、武器がぶつかり合う金切りだけを響かせる。

 むやみに宝具を開帳できないアーチャーと、泥に侵され英霊としての宝具を失ったランサーとの戦いは拮抗にもつれ込んだ。

 

「——ッ」

 

 百戦錬磨の槍技は肉の器のみであっても油断ならない。

 正しく武技でサーヴァントに至ったランサーの槍は、しょせん贋作を揃え弱点を突くような戦いをするアーチャーを歯牙にもかけず攻めたてる。武器の数で優っているアーチャーは武器を捨てる気でその技をしのぎ、やり過ごすがそれでも肌を擦る一撃に眉を顰める。

 

「その槍技に鈍さは見当たらんか、まことやり辛い——!」

 

 突き、薙ぎ、切る——すべてを修技したランサーに隙はない。

 正面から挑めば軈てじり貧に陥るのは悪手。ならば後左右から剣を振り上げるがすべて躱され受け止められる。投影した剣に振動が与えられ、筋肉が硬直したのも束の間。ランサーは己のクラスと生前に山谷を踏破し鍛えあげた脚力から齎される視認不可能の速さで後ろをとってくる。小さな小競り合いも含めれば、踏んで来た場数は大英雄に負けず劣らずのアーチャーは脳の痺れを頼りに身を低くする。

 

「……ぐっ!」

 

 槍の一撃を避けた先の強烈な蹴りが腹部を襲う。

 態勢の崩れたアーチャーはもろに受け、唯一残っていた右足で踏ん張るが岩壁へ叩きつけられる。

 

「アーチャー!」

 

「……問題ない」

 

 衝撃で三半規管が朦朧とするが、すぐに立ち上がり剣を投影する。真っ向から届かぬランサーとの差を自覚し、如何に相手を崩そうか思考した。

 

「——待て!」

 

 不意に、セイバーの声が聞こえた。

 決してランサーから焦点を離さぬようセイバーを伺うと、どうやら天井に近い宙で旋回するキャスターに攻めあぐねているようで、決定的な一撃が当たらない。長期戦になれば圧倒的にこちらが不利で、いつ士郎の魔力が尽きるかわからない。

 光明を見出したアーチャーは走り出す。再び双剣を手に、ランサーに切り出した。

 

「——セイバー!」

 

 声高にセイバーを呼ぶ。同時タイミング、投げて回転した白黒の剣がランサーの上で舞った。

 

「っ——わかりました!」

 

 キャスター狙っていたセイバーは最初と同じように聖剣に輝きを灯す。矢を払ったときと同じように横に薙ぐと、強風に煽られたキャスターが魔方陣を展開して低空飛行になるが、その上から勢いよくセイバーは聖剣を叩きつけた。

 

I am the bone of my sword——赤原猟犬(フルンディング)!」

 

雑兵を倒すものではなく、今度はサーヴァントを貫くレベルまで魔力を込めた必殺の一撃。

 

風王(ストライク)——」

 

腕を肩まで上げ、剣を耳の横平行に構えたセイバーに光の奔流が走る。

 

「——鉄槌(エア)!」

 

 聖剣の名を隠した宝具『風王結界』を利用した攻撃。先ほどまで風を起こしていた正体はこれであり、ただの風と雖もそれは人を容易く撃ち落とす。

 そこで初めてキャスターとランサーが苦悶の表情を見せた。

 魔方陣を食い破るように現れた猟犬はキャスターの脆い体に食らい付き、風王の嗎はランサーの構えた槍を抜け、右半身に大きな穴を開けた。

 

「一匹たりとも逃がさん!」

 

 消滅したキャスターの肉体からマキリの虫が溢れ出でる。数百を越すそれはセイバーに襲いかかろうと牙剥けるが、事前に矢を射ったアーチャーによってすべて爆破された。

 

「アーチャー、他は?」

 

「マキリの虫も含めてこの空間にはいないようだ」

 

「先を急ぎましょう士郎。この先から、柳洞寺で会ったものより嫌な感じがする」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「向こうは終わったみたいだな」

 

「ええ、しかしキャスターを倒してもまだ出てきます。この洞窟内に召喚陣が」

 

nodus(結び) ac argentum(銀よ)

 

 杖を取り出して呪文を唱える。すると地面や壁は粘土細工のように渦を巻いて来た道を塞いでしまう。

 

「幸いにもメジェド様が竜牙を焼いてくれた。再生に利用されるのがこの材質のものなら、同じ壁を用意して魔除けの銀を込めればあいつらには壊せない」

 

 念のため、と一重二重と渦を巻く。帰る場合は呪文の主か、同じ呪文を逆巻きに唱えられる者がいれば簡単に開けることができる。もし壊される心配があれど、壊される頃はどちからに決着がついている頃である。

 

「先に進もう」

 

 再び、五人は奥へ走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ランサーとキャスターがやられたか……まぁ、あのセイバーたち相手なら当然。よもやアサシンと組んでいるとは思わなんだが、奇怪な魔術師が一人おるな」

 

 虫を介して臓硯が見たのは洞窟内を動かして道を封鎖した魔術師。虫がいたのは彼らが通ってきた天井で、ばれないように監視していた。虫一つ通れないよう封鎖されたことにより追いかけることはできないが、サーヴァントが倒された時点で虫でどうこうできる相手ではない。

 

「……」

 

 注目すべきは奇怪と称した魔術師。

 紺のコートを纏い、振るったのは魔術世界形成初期に魔術師たちが使っていた短杖。今では必要ないと手放されたもので、陣術を使えるなら普通使わないものである。

 前回の聖杯戦争参加者である遠坂時臣も似たような杖は使用していたが、あれは遠坂家の特性である''転換''を利用し、魔力を宝石に溜めていたからだ。そして、なにより注意すべきは——「聖杯の魔力で満たされた洞窟を、自身の魔力で上書きし動かした点」だ。

 

 どろりと、マキリの杯が蠢いた。

 

「主もなにか感じておるか。その生命への冒涜さ、見せてみよ——」

 

 

 

 




・主人公

おさらいですが、主人公の青いコートはよくアニメとかで出て来る変なコートではなくて、現実の衣服みたいなコートです。コートは良いですよね、雨の日も晴れの日も雪の日も着ていけますし。

・お尻

最近礼装がパーティー画面で動かせるようになったので、ステキなお臍を見ることができます。みんな見よう(提案

・その他

キャスター……最近公式で魔法使いより技術があると知りました。さすがというかやっぱりかというか…神代は魔法使いみたいなやついっぱいいたとかやべぇよ…やべぇよ…。本作では原作桜ルートと同じく虫で傀儡にさせられてます。ただ、虚数に吸い込まれてはいません。

ランサー……セイバーとライダーのいざこざのあとにお爺ちゃんが拾った。バーサーカーを虚数含めて仕留めるために役にたった。こちらはシャドウサーヴァントのような状態で、黒い靄と宝具開帳はできません。また、(悪神による)黒化しなかったのは太陽神ルーが父にいるため、反転せずにシャドウサーヴァントみたいになっています。

マキリ……原作が遠坂は慎重さから、アインツベルンは焦った、マキリは腰が重かった故に。だとするとこの二次小説はマキリの腰が軽かったお話になります。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。