うさ耳ファラお尻と行く聖杯戦争。   作:神の筍

4 / 26
本来ならば、拙作の雰囲気を出すため適当に考えた幻想種のピンからキリを書いていたのですが、感想にて設定があやふやによる疑問が出ていたので数話後書きにてオリジナル単語の説明及び登場人物の紹介をネタバレが無い程度にさせていただきます。

拙僧の文体により困惑されていた読者に腹の底から謝罪を。(食いしん坊


ファラお尻の偉大なる神殿計画

 

 

 

 ——(そら)があった。

 

 色は青色ではない。

 翠、紫、紅、紺。

 

 星霜のような色をしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここに来て数日、週が回ったくらいだろう。神殿作りを始めてはや三日。思ったより作業を進められたため、神殿が半分作り終われば紹介すると云っていた小さな幻想種の説明を受けていた。

 

「こいつの名前は''ごみ箱の悪魔(ノェリ)''、主食は生活ごみ一般。ごみを食べてくれるうえに排泄をしないからエコな生物。でも一度入れたら食べてしまうから気をつけて。それにたまにいたずらでごみを荒らすときがあるからそれを見たら注意してくれ」

 

 家庭用ゴミ箱の中に細長い蛇の体に、小さな翼を持った生き物がしゅるしゅると云いながらぺこりと頭を下げた。黒っぽい色に、黄色の斑点とは毒がありそうだが致死性は無いらしい。

 一度だけ羊皮紙をゴミと勘違いしてマスター(同盟者)と綱引きをしていたのを見た。

 

「ゴミを処理するには溶かすくらいの毒がいるだろ? それぐらいだから大丈夫」

 

 和洋折衷な部屋から出ると壁に掛けられた絵の中の剣が二本で戦っていた。魔術道具の一種だろう、絵に知性を持たせ装飾具にするなど余裕のない昔は無駄だと思っていたが何度も見ていると中々面白いものだ。

 廊下を抜け、例の竜種が現れた四方の中心へと出た。

 

「渓谷と雪原には翼竜と地竜が住んでるから気をつけて。タンニーンの寝床は地上には無いから、なにかあったら自分でこっちに来る。寝起きに俺以外の奴が行くと不機嫌になるんだ。同じ竜種でも消し炭にするくらい」

 

「……全然怖くありませんからね? 次に会ったらしっかり云わなければ」

 

「あっ、ちょうどよかったな——」

 

「——っ!」

 

「冗談だけど」

 

「くっ」

 

 思わず振り返ってしまう。

 もちろんそこには四種類の空が広がっているだけでなにもない。

 

「——本当はまだまだいるんだけど、全部説明すると一月も足りない」

 

 ゴミ処理担当の小さな悪魔、洗濯の役割を担う北風と太陽、お湯を沸かしてくれる湯沸か獅子(ロマンスライオネル)、温度調整ができる魔法の暗幕(マジックカーテン)など魔術道具も含めて色々見て回った。

 額縁の中で謳う詩人や、一人でに演奏するヴァイオリンなど娯楽として楽しめるものも紹介してもらった。

 

「ニトちゃんが作ってる神殿は、どういうモノにするんだ?」

 

 ここで云う神殿とは煉瓦を一つずつ組み立てるものではない。魔術で大地に陣を描き、触媒となる——つまり大きさは違えど作る神殿と同じ質量のものを利用して召喚、という形なのが一番正しい。

 陣を描くのと、触媒を用意するのが神殿を作る上で一番時間のかかる工程だ。

 

「エジプトをモチーフにすることで、ピラミッドを四方に建て不文律を作り私だけの世界にします」

 

「その不文律に''壊れる条件''を入れることはできるか?」

 

「ふむ……。壊れない概念を付与するのではなく、壊れる条件を付与することによって限定的な破壊のみを指定するのですか」

 

「そ——。敵には霊脈を確保して、神代魔術の結界を張れるキャスターがいる。生半可な不壊魔術ならすぐに解かれてしまうからね」

 

「それならば四方のピラミッドを破壊……。——いや、いくつかあるアヌビス神の像を対象に結界を作り——。ただし曖昧なものにしてしまうと——」

 

「エジプトをモチーフにすると敵にニトちゃんの名前が簡単にわかってしまう可能性が……。いや、わかってもあんまり変わらないか」

 

 ああ、それはつまり私には弱点が無いと云いたいのですね。きっとそうでしょう。決して他の偉大な英雄と比べて薄い人生なんて思われていないはず。

 

「そもそも私のことを''ニトちゃん''って呼んでる時点で隠す気ないじゃないですか」

 

 ジト目で睨む。

 

「幸いにも見た目キャスターだから初対面にはアドバンテージ取れそうだろ?」

 

「だからと云って''ニトちゃん''は……。''ファラオ''とか他にも……」

 

「…………クリちゃん?」

 

「——おいやめろ」

 

「ごめんごめん、だからその先端から刃が出た杖をこっちに向けないで!」

 

 生前にも使ったことがないほどの仕込み杖の秘密を出してしまうほどに憤慨する。エジプトの黒い土(ケメト)毒蛇(アペプ)眷族の蛇の毒液を混ぜ込んだ刃でつくっているため古代金属で編んだ王権守護者であるコブラすら溶かすものになっている。

杖の説明をしたときに、アペプ眷族も大樹林のほうに行けば棲息していると聞いたのは少し驚いた。

 

「このままなにもしないのも暇だし、認識阻害かけて遊びに行くか」

 

 なにをバカなことを云ってるのかと思ったが、現代がどうなってるのか、生前全く関係ない東の都に対する興味はもちろんある。

 

「服は引きこもりに貸してもらって、ニトちゃんに似合いそうな服を探しつつ町内探訪だな」

 

 マスター(同盟者)はそう云うと食事をした部屋へと入って行った。

 おそらくあの邪竜娘のであろう和箪笥をあれでもないこれでもないと粗探ししている。

 

「なんだこの下着」

 

 ああ、と頭を抱える。

 マスター(同盟者)の手には蚊帳のように透けた黒い下着。

 

「——ちょっと! なにやってんのよ!」

 

「——いや、その……。ってなんだこの下着! お父さんはこんな娘に育てた気はありません!」

 

「——娘の下着を弄る変態が! 育てたもなにも生まれたときからこの姿よ!」

 

「——それよりニトちゃんに外に出れる服を……」

 

「——燃えろ!」

 

 軽く小火が起きているが洋室のほうへ行って傍観する。幾夜明けた関係だが、マスター(同盟者)が邪竜娘に手傷を負わせられることも、邪竜娘がマスター(同盟者)に手傷を負わすような存在ではないとわかっているからだ。

 マスター(同盟者)は運の良いことにこの時代においてかなりの実力者。弱点を上げるとすれば放任主義だったり、抜けているところがあるくらいだろう。現に神殿作りも触媒を用意すると隣で見ているだけだった。

 それでも場合や、所業が歯車のように重ねれば私たちと同じサーヴァントになれるほど。

 

「——部屋で旗出すな!」

 

「——うっさい!」

 

 クラスはキャスター、または幻想種生物学者と名乗っているあたりライダーが妥当だろうか。

 

「——あっち!」

 

「——はっ、ざまあないわね!」

 

 そういえば邪竜娘の名前を聞いていなかった。邪竜娘はなんの因果でここ(・・)に来たのだろうか。座から派遣されたのか? 人類の最高遺産とも云える聖杯から目をつけられたこの場所。——忘れられた大地(ロスト・エイジ)とでも呼ぼうか。 マスター(同盟者)は特に名前はないと云っていた。

 

「——左腕が溶けたぞ!」

 

「——あっ……。ご、ごめん」

 

 マスター(同盟者)は''想い''や''可能性''から産まれた存在が、世界の修正を受けないよう曖昧な世界であるここに紛れ込むことがあると云っていた。

 

「——溶け千切れた!」

 

「——ど、どうすれば——……あはは、あんたが悪いのよ! 全部!」

 

 つまり彼女も''大衆の支持を得た想い''、もしくは''辿り得た万感の可能性''から産まれたのだろう。

 ''女性、邪竜娘、黒、旗……引きこもり''……。何者なのかはまったく予想できない。

 

「——ごほっ……」

 

「——あ、はははははっ。ざまあないわね! あはは、あはははは!」

 

 ふう。

 さて——。

 

「——マスター(同盟者)! 邪竜娘! なにをしているのですか! マスター(同盟者)も最初から非を認めていればこうはならず、邪竜娘も大いにやり過ぎです! 割合にしてマスター(同盟者)が悪いですが、邪竜娘も——」

 

 頼もしいが、頼れない。

 私のマスター(同盟者)は、そんなマスターである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「——ねえ、バーサーカー。町を歩いてみて、あの二人の気配は感じた?」

 

「◼︎◼︎◼︎」

 

「そ——。まさか真正面からやって来てあなたから逃げるとは思わなかったけど。さすが聖杯戦争の参加者なだけあるのね」

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎」

 

「当たり前じゃない。次こそは息の音を止めなさい。あいつらだけじゃない、他の参加者も一緒よ」

 

「◼︎◼︎」

 

「私に勝利をもたらす。それがあなたの使命。わかったわね?」

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎——ッ!!」

 

 

「——そろそろ他の陣営も動き出すはず。衛宮君がマスターなのは驚いたけれど」

 

「大丈夫なのか凛? 槍兵(ランサー)は私と同等、まだ余力を残しているとみた。それに柳洞寺に潜むキャスターは結界から見るにただ者ではないぞ」

 

「ライダーはまだ確認できてないし、バーサーカーはかなりやばい相手。なにより全騎揃ったのにアサシンの音沙汰無しはめんどくさいわね」

 

「案外、側まで来ていたりな」

 

「ちょ、ちょっと! あるかもしれない嘘は云わないの! これ、マスター命令よ」

 

「やれやれ、冗談で済んだらいいものだが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

剣士(セイバー)、今日のご飯はなにがいい?」

 

「ふむ……。ではハンバーグを所望します」

 

「了解。でも意外だな、初日に作ったのが気に入ったのかな?」

 

「サーヴァントは本来食事は要らぬ存在。ただシロウは魔力量が少ないため食事から取れる微力な魔力も重要な供給源。やがて訪れる波乱を含む聖杯戦争に備えるため精神的——」

 

「はいはい、俺のせい俺のせい。とりあえずハンバーグはソースでいいかな?」

 

「シロウ、私は大事な——。いえ、もういいです。……それと、あの……きのこの煮込みハンバーグも作ってもらえたら……」

 

「よし、腕によりをかけて任された」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 星々が輝いている。

 私が見ている星々よりも輝いてた。

 

 自然が生きている。

 私が見ている自然よりも生きていた。

 

 空が近くに見える。

 されど手に届くことはない。身近に感じるが、触れることは叶わない。

 

 地を見る。

 脚があった。

 

 ——私は誰で、ここはどこだろう。

 

 命が燃えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「——さて、儂も動くとするかの」

 

 

 




一週間丸々進めました。時間があればこの一週間なにをしていたのか一話書きたいと思います。


・主人公【???】

今作の主人公。
現在わかっている点で「自称・幻想種生物学者」。
詳しく語ればそちらのイメージが付いてしまうので書きませんが、モデルにした創作人物がいます。
身長は180を超えており、魔術礼装である紺色のコートを着ています。(普通に服屋にあるリアルなものを想像していただければ)
20代後半から30歳くらいの''見た目''をしており、人種は不明。ただ10人中9人はイケメンという顔立ち。ただ初対面でもボサッとしたイメージがする。
魔術教会では退廃した「杖術」を使い、バーサーカーあいてに逃げ切れるほどの逃走術は持っている魔術師です。杖の大きさは30センチほどのものとなっています。
ただ、幻想種自体、存在するだけで「準魔法級(神代)」と称される面々なので、幻想種を飼育、管理している主人公の実力は逃走術''だけではない''です。

・ニトクリス【お尻】

拙作のお尻。
本来ならば「キャスター」で召喚されるはずですが、モデルを「ステイナイト」にする場合、生前を調べるとあのまま「アサシン」で召喚されても違和感はないと考えたので「アサシン」で限界しています。

・邪竜娘【引きこもり】

拙作の引きこもり。
ニトクリスが召喚されるよりも前に「聖杯から落とされた」野良英霊。
fgoではジルが聖杯に望んだがために生まれたとされていますが、こちらでは現代人が考察した「火炙りにされて人々を恨んだ聖女」の可能性として存在しています。あまり関係ないので正直どうでもいいです。聖杯に例外は付き物。
ニトクリスの悪き隣人として仲良くしてもらおうと思っています。なぜ聖杯から落とされたのかは追々と説明していきます。

・最期に……

今話はおおまかに説明させていただきました。
感想欄にて「亜種聖杯戦争を知っているのは矛盾している」とありましたが、この場面を言及するには主人公についてネタバレするので伏せておきます。今は「なぜ主人公が、第五次聖杯戦争に参加しているのに別世界の亜種聖杯戦争をしてるんだ? しげしげ……」程度に考えてくだされば。拙僧の地文が雑なことも原因で、申し訳ありません。

タグに「設定改変」とつけていますので、その意味を汲んでいただけると非常にありがたいです。
もちろん基本的なことは変えないつもりではありますが、何ぶんfate/自体セイバールートと、桜ルートしかやったことがない、他型付きでは魔法使いの夜、その他wiki知識とfgo(あんまり詳しくやってない)知識なのでおかしなところがあった場合は気付き次第随時直して行く次第です。

誤字脱字については気付いたときの空き時間、十話を目処に直させていただきます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。