うさ耳ファラお尻と行く聖杯戦争。   作:神の筍

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……正直、この話はあまり筆が乗らなかった。

——神を冠する筍は、シガレットを口に呟いた


ファラお尻の夢の魔術師

 

 

 

「——衛宮クン、なにこの明細書? 私よく宝石魔術でお金使うけどこんな額見たことないなぁ〜?」

 

「うっ、いや、その遠坂……」

 

「馬鹿者が。魔術のマの字も知らん素人が見知らぬ魔術師に助けられ、挙げ句に億単位の借金を作るとはな……」

 

「シロウ……」

 

「いや、でも……結果的に俺もセイバーも助かったし、なんか聖杯戦争に虚数魔術? ってのがサーヴァントを呑み込んでるってのを知れたから……」

 

「——あぁ?」

 

「……それにセイバーも調子が良いって……なんか俺の魔力よりも魔力があるとか……なんとか……」

 

「確かに、あの魔術師(メイガス)が置いていった呑み薬は豊富な自然魔力が込められているようです。おそらく全て呑めば、全力戦闘に加え、宝具二発は撃ち込めます」

 

「だからと云って! なんかあとから来る遅効性の毒薬だったりしたら……」

 

「そもそも虚数魔術の使い手がその魔術師ということはないのか? 一応広い家屋を持ってる貴様にたかりに来た可能性もあるぞ」

 

「おい! 命を助けてくれた奴をそんな風に云わないでくれ! それにたぶん、あれは間桐の爺さんの仕業だと思う……」

 

「間桐があの場にいたのか?」

 

「ああ。俺とセイバーが別れたあと、一階であの爺さんが出てきて襲われたんだ。アサシンがいなければ俺はやられてた」

 

「はぁ……。っち、やばいのが出払ってきたわね。セイバーは?」

 

「私もあの魔術師(メイガス)が虚数魔術の使い手だとは思えません。呑み込まれる瞬間、彼の身体も呑み込まれていました。あと一歩遅ければ、私もこうしてここにいなかったでしょう」

 

「アサシンにそのマスター、間桐の当主に謎の虚数魔術使い……。もー! どうして私のときはこんなにめんどくさいことが多いのよ!」

 

「お、落ち着けよ遠坂」

 

「普段の装いが剥がれているぞ、リン」

 

「うっさい! あんたの借金と、アーチャーの記憶喪失もよ!」

 

「うぐ……」

 

「くっ……」

 

「はぁ……。ん? この明細書の紋様……」

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、なんとなく見覚えがあった紋様があってね。私の勘違いよ」

 

 こめかみを押さえながら息を吐く。これからどう進めようかと考える脳裏に浮かぶのは、何故か亡き父の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——これを使えば間違いなくあの(・・)サーヴァントが呼び出せるだろう

 

 ——しかし……これは些か高い……

 

 ——買えば根源に到達して、金のことなんてすぐ解決だ

 

 ——確かに、あのサーヴァントを呼び出せるならば私の勝ちは確定

 

 ——じゃあ買うしかないだろう?

 

 ——ぐっ。私は宝石魔術の使い手で、ただでさえそっちにかかるのです……。どうにか、どうにか少しだけでも安くなりませんか……!

 

 ——まぁ、魔術協会でもよく面識のあるお前だ。わかった、半額の170億だ

 

 ——本当ですか!? あ、ありがとうございます!

 

 ——友達じゃないか。——はい、明細書

 

 ——必ずや支払わせていただきます!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 今のは夢だろうか。

 魔力で繋がったマスター(同盟者)英霊(わたし)はどちらかの生きていた、生きてきた世界の夢を見る。少なくとも私にあのような髭を生やした魔術師の知り合いはいない。つまるところ、あれはマスター(同盟者)の記憶なのだろう。

 

「…………」

 

 一番最初に見た夢は綺麗な世界が広がっていた。

 あれがおそらく''裏側''という世界だろうか? 次も見ることがあれば、私が見たことのない幻想種たち。ときおりマスター(同盟者)と邪竜娘が話してくれる、マスター(同盟者)が巡ってきた冒険譚のような一部が見れると思ったのだ。

 

「…………なんですかあれ」

 

 やっとかと思えば髭に蛇の脱皮? のようなものを170億で売りつけていた場面だ。確かにサーヴァントと云っていた、つまりいつの日かの聖杯戦争の触媒になったのだろう。

 横を見るとマスター(同盟者)が口を開いてアホそうな顔して寝ている。

 ちなみに同じベッドで寝ているわけではなく、ビジネス(・・・・)ホテルのように横並びになっているだけだ。邪竜娘は和室に適当に敷いた布団に雑魚寝している。この前布団にスナック菓子の食べ屑を落としすぎるなと怒られていた。

 

「取れるとこではしっかり取ってたんですね……」

 

 マスター(同盟者)は、基本的に幻想種の材料は魔術師には売らないと云っていた。売る場合は直接 マスター(同盟者)が魔術師に会い、売ってもいいか査定すると。もちろん生き物を売るのではなく、卵の殻や自然に抜け落ちた羽、落し物と云ったものだ。

 一応(・・)魔術協会に属していたらしいが、封印指定を受けたときに、めんどくさがって出奔せず魔術協会に行くと何人か襲ってきたので踊る装飾品にしたと笑いながら怖いことを云っていた。今でも廊下を歩けば踊っているらしい。

 能力と、持ち運んでいる神代の幻想種の多さから彷徨海と一部のアトラス院が目をつけて、(物理的に)勧誘に来たらしいがその粘着質の高い勧誘に苛ついたマスター(同盟者)が彷徨海の移動石柩の三割を削ったと笑いながら怖いことを云っていた。実際に話を聞いただけで、その移動石柩とやらがどんなものかわからないが山脈並みと云っていたのでとんでもないこと間違いない。

 

マスター(同盟者)が怖い。

 

 まあ、つまることなんなのだろう。

 あの髭の魔術師は、マスター(同盟者)にとって愛している幻想種の一部を売ってもいい、きっと芯の通った魔術師だったのだろう。

 

「——そいつの顔ジロジロ見てなにしてるのよ」

 

「いえ、マスター(同盟者)の記憶を見まして」

 

「へぇどんな?」

 

「赤い服を着た魔術師でした」

 

「赤い……。んー、いたようないなかったような……」

 

「知っているんですか?」

 

 邪竜娘は寝ていた布団を抱き枕のように抱えると話し始めた。

 

「私が寝坊助(そいつ)のとこに来てちょっと後、雌狼(アセナ)に会いに行くってトルコ行きの飛行機にイギリスから乗ったわけよ。んで着陸寸前に私たち以外の乗客が……」

 

「乗客が……?」

 

「——全部爆発したのよ」

 

「ば、爆発?!」

 

「そ——。なんかそいつによると『またか……』って云って」

 

「それが私の夢に出てきた赤色の魔術師ですか」

 

「たぶんね。でもびっくりして私が飛行機ごと全部燃やしちゃったから。それで下に落ちる際に『だから傷んだ赤色(スカー・レッド)って呼ばれるんだ』とかも云ってた」

 

「まさか、そんな魔術師だったとは……」

 

「そうよ。碌でもない魔術師よ、きっと」

 

 どこかずれた、朝の一幕である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「——今日は監督者のところに行くぞ」

 

「冬木教会ですね」

 

「外は雨が降ってるからそこにある傘と、寒いだろうからコートは忘れないように」

 

「準備おーけーです!」

 

「よし、行くぞ。……留守番頼んだよ引きこもり」

 

「頼みましたよ引きこもり」

 

「——うるさいわよ」

 

 邪竜娘の言葉を背に受けながら最初の部屋(さぎょうべや)を抜け、梯子に登り外へ出る。

 マスター(同盟者)が先に傘をさしてくれており、濡れる心配はない。

路地裏のゴミ箱に紛れて置いた鞄はもちろん防水機能を施している。重さで流されることもない。

 

「どんな人でしょうか」

 

「行ったことないからね、ある意味楽しみだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先の柳洞寺とはまた違った装いの建物が冬木教会だ。石の塀に鉄の柵が敷かれ、不気味な雰囲気が漂う。裏には西洋式の墓石もあるようで、その表面が少し見える。

 木扉に鉄の装飾があしらわれた扉を開けると、軋む音とともに聖域が露わになる。

 

「——ようこそ神の館へ、迷える子羊……ではなさそうだが」

 

 そこにいたのは男だった。

 カソック着に、金色の十字架。聖職者であろう。

 

「お前が監督役であってるかな?」

 

「いかにも。此度の第五次聖杯戦争の監督役、言峰綺礼だ」

 

「言峰綺礼か。挨拶はいい……——なにかあったのか?」

 

「ふむ……」

 

 周りを見てみると長椅子が砕け、散らかっている。壁もなにかに切り裂かれたように割れており、青銅の破片が至る所に落ちている。

 

「昨日、キャスターの竜牙兵に襲撃されてな。あまりに数が多かったためまだ片付けていない。少し埃っぽいが、許してほしい」

 

「キャスター……? 倒されたはずでは」

 

「そちらが今回のアサシンか。……ハサン以外の者が呼ばれるとは、珍しいものだ。それに、可愛らしい装いをしている」

 

 あの体躯で可愛いと云われると少し身構えてしまう。本人は悪気は無いのだろうが、似合わないものだ。

 

「ニトちゃんが可愛いのは知ってる。それよりもキャスターだ、なぜ倒されたにもかかわらず生きている」

 

「それを話すのには少し長くなるが、よろしいかな?」

 

「時間はある、大丈夫だ」

 

「始まりはライダーが間桐に召喚され、そのまま自害を命じられて死霊術によって隷属させられたところから始まる」

 

「死霊術……!」

 

 どこの地域にもある、忌まわしき呪術の一種だろう。

 

「ライダーを隷属させた次に狙ったのはキャスターだ。キャスターのマスターであった穂群原学園が教諭、葛木宗一郎を間桐の虫によって捕らえた間桐は葛木宗一郎を人質に柳洞寺に赴きキャスターを自害させた。

 

——''愛''という捨てきれぬ俗念の果てにな。

 

真に愛する者のために死を選ぶ。ライダーを見てなお選択するとは、なかなか信心深いものだ」

 

 俗念の果て、彼はそう云った。

 ''愛''とは原初より人に備わる感情で、人に与えらた最初の価値だと聖書には綴られている。

 聖職者にとって''愛''とは自らを形成する芯である。それを妄執と表すには、彼はあまりに 無感情(・・・)すぎるのではないか。

 

「間桐が二体のサーヴァントを操ってるということは、虚数魔術も間桐側の人間か」

 

「——ほう、あれ(・・)を見たのかね?」

 

「無事襲われたよ」

 

「くっ、そうか。しかしあなたとアサシンは無事生還した。それだけで今回の聖杯戦争、勝敗がある程度読めるというものだ」

 

「オプションにセイバー組みも助けたけどな」

 

「衛宮士郎に会ったのかね?」

 

「セイバーのマスターか。うちのアサシンが助けたから、やられてたセイバーの治療代に億単位の借金を取り付けてきた」

 

「は、はははっ——。なるほど、それは」

 

「監督役が教えてくれる情報はそれくらいか? 無いならそろそろ行こうかと思うんだが」

 

「最後にまだ一つ。間桐の隷属したサーヴァントを討ち取った場合は令呪二画の贈呈をこちらからする。あまりイレギュラーが続いた場合はこちら側が被る被害も多く、最悪の場合は聖杯が異常を察知して動き出すかもしれないのでな。できれば早急に対処してくれるとありがたい」

 

「二画か。ニトちゃんに命令できると考えればほしい……」

 

マスター(同盟者)……?」

 

「あはは、冗談だよ。二割」

 

「ほとんど本気じゃないですかっ!」

 

 そんなものを手に入れたらマスター(同盟者)のことだ、とんでもないことに使いそうだ。最初の三画が消費されずに残っているのに、二画増えればさらにややこしいことになってしまう。

 

「ふっ——。仲が良さそうでなにより。二人がそのまま勝ち進むことを、私は祈っておこう」

 

 わざとらしく十字を切るのを見届け、私たちは振り返る。天窓に打ち付けられる雨音がやけに聞こえる。

 扉に手をかけたとき、ふとマスター(同盟者)を見ると杖を取り出し頭上に掲げていた。

 

「——話をしてくれたお礼だ、言峰綺礼」

 

 円を描くように杖を動かすと、音を立てて散らかっていた瓦礫が動き出す。

 

「…………これは」

 

 竜牙兵の残骸を残し、教会は元どおりになる。扉に破損は無かったようで、もう一度軋むような音を聞いて外に出た。

 

「——マキリの杯、おそらくそれが今回の騒動の枢要となっている」

 

 閉まりゆく扉から、その言葉が投げられた。

 

 

 

 




・主人公【???】

傷んだ赤?誰だそれは。過去なにかあった?
第四次聖杯戦争の間接的な元凶。

・ニトクリス【夢を見た】

赤い髭魔術師が出てきた。もう少し良い夢を見たい。

・邪竜娘【昔語り】

傷んだ赤と赤い宝石魔術師を勘違いしてる。

・言峰綺礼【苦労人】

一番の被害者。
寺の住職死体に、血の跡。全部後処理こいつやぞ! 教会は直してくれてすごく助かった。愉悦が反転するレベルで胃痛。たぶんエクスカリバー使ったら手術受ける。原作より愉悦寄りじゃない。

・令呪二個

すでにマキリは一般市民に被害を出してるから妥当か?第四次で放っておけば自衛隊出てくるまでの事態を見てるからこそ、マスターたちにより動いてもらえるよう一個増やした。

・マキリの杯

マキリが聖杯を模倣して、願望を叶える能力はないが蓄える能力はある。たぶんどっかのヤンデレが吸収属性と合わせて悪いことしてる。
なぜ言峰綺礼が知ってたかというと街中で見かけたとき面白そうだったから調べただけ。

・最後に……

書き溜めしてた次話が投稿予定しようとコピーしたところ誤って違うものをペーストしてしまい、全削除という大事件に見舞われたので次の投稿は遅れます。

ぜんぶmhwと雨降ってるのが悪いんや。
次話割と気に入ってたんやけどなぁ……

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