マミとベルはリリルカ達と別れてホームに戻り、ベルがステイタスの更新と成果の報告を行い、マミは明日からの『ロキファミリアのテスト』の為の支度を済ませて眠りに就いた。
「へぇ、マミさんロキファミリアの大遠征に着いていく予定なんですか……凄いなぁ」
「ボクから見ればベル君も十分凄いと思うけどね」
ステイタスの延びはレベル差があれど間違いなくマミ以上、外部サポーターと言え一人雇って潜るダンジョンの稼ぎは多ければ日に3万ヴァリスに届く程になった、マミとリリルカとは『何故か』未だに一緒に潜っては居ないが。
「うんうん、ボクの想像以上の活躍だぜベル君」
「えへへ……ありがとうございます!」
誉めてくれるのが敬愛する女神であれば、心から嬉しさが込み上げてくる、しかしそれでも憧れている女性の一人、マミと過ごす時間が少し減っているとも感じていたし、これから暫くは会うこと自体難しい日が待っている、それを思うとどうしてもレベル差を感じ、寂しさや共に在れない自身に悔しさを覚えてしまうのだった。
ダンジョン第17階層を進むのはマミを先頭にリヴェリア、ロキファミリアのレベル2前後の冒険者二人をサポーターとし、レフィーヤと殿にアイズを置いた順で並んだパーティー。
規模としては小規模ではあるが、戦力としては下層域に余裕をもって到達出来るだろうとは編成したリヴェリア談。
「さて、この先に現れる階層主は、討伐レベルで見ればレベル3の君なら十分単独撃破可能であるはずだ、問題は討伐されている場合だが……現れるまで次の階層で宿泊することになる、問題はないかな?」
頷いたマミを見て気負いはないと判断したリヴェリアは、サポーター二人とレフィーヤを先に18層に向かわせ階層主『ゴライアス』の存在確認を行うことにした。
「階層主というくらいですから一つ所に留まって居るんだと思っていたんですが違うんですね」
この疑問に答えたのもリヴェリアである、産まれ処は一ヶ所だそうだがその後はこの17層を彷徨っているのだそうだ、運が悪ければ16層から降りた直後に出会ってしまうこともあるのだとか。
「ま、それでも基本的に産まれた所からそうは離れることはないさ……っと、ここがその『産まれる場所』だ、今は居ないようだが……何処かに行っているのか、産まれていないのか……ともかく相手は巨大だから早々不意討ち等は無いだろうが気を付けるようにな」
その言葉を受けて、マミは警戒レベルを上げるのだった。
18層は所謂安全領域、この階層に冒険者達は自らリヴィラと呼ぶ街を拓き、下層域を目指す冒険者のベースポイントとしている。してはいるが、場所が場所であるせいか色々と足元を見られた料金設定なのだと、リヴェリアはため息を溢す。
「需要と供給ですね、実際に値段の設定を見てみないことには何とも言えませんが、こんなところに拓かれた街なんですから案外安上がりかもしれませんし」
マミの言うことはリヴェリアとしても理解はしているが、さて実際の値段を知って何と言うのかと、少し楽しみが湧くのを感じる、尤もそれを表情には出しはしないが。
「先ずは宿の確保だな、遠征時は何時も世話になっている宿がある、そこが空いていればよいが……」
「何時もは先見隊が予約してますもんね」
基本的にリヴィラで中長期的に渡ってベースを敷くロキファミリアにとっては当然の宿の確保、今回それを事前に行わなかった理由としては主な目的がマミのテストである、と言うことに起因する。
ゴライアスは他のファミリアによって討伐されていた様で、結局この街に滞在せざるを得なくなったのだ。
「まあ考えられない事でもなかったんだがな」
なにも、ゴライアス討伐が自分達ロキファミリアのメンバーしか行えない訳ではないのだしと、レフィーヤは続けて笑う。
自分達の様に下層に挑む者にとってゴライアスは危険な存在であることに変わりはないが、手をこまねく程でもない。そう自信をもってリヴェリアは言うが、そこでレフィーヤを見て一つ思案する。
「リヴェリア様?」
「様は止せと……いや、そろそろお前もゴライアスの単独討伐をさせる時期かと思ってな、流石に戦い慣れもしているだろうし問題はなかろう」
この言葉に喜ぶのかなとアイズは思ったようだが、どうにも芳しくはなさそうだ。何か不安か不服なのかと聞いてみれば、外部のマミが先に単独討伐に挑戦出来る事に不満があるのだとレフィーヤは語る。
「ふむ、ならば次に現れるゴライアスに先に接敵出来た方が単独討伐に挑む、と言うことにしようか」
不満の解消もあるが、何よりレフィーヤ本人も漸くやる気になった事を受け取り、リヴェリアはそう提案する、アイズは少し驚いた様で眼を大きく開いてリヴェリアを見た。浮かべていた表情は厳しい物ではあったが何故だろう、どこか嬉しそうにも見え、アイズは疑問符を頭に浮かべるのだった。
実際のところ、リヴェリアはレフィーヤにこの『試練』を課すつもりはなかった。最近アイズが面倒を見ているベルに対して、レフィーヤはどこか敵愾心を抱いてはいるようではあったが、それはまだ格下の者への侮蔑と嫉妬が混じりもあっての物だろうとの見方をリヴェリアはしている。
だが、ベルと同じファミリアからの『大遠征』参加希望者であり、その実力テストに挑むマミに対してはどちらかと言えば『負けたくない』と言う思いの芽生えを感じていた、同じレベル、似たような年齢、何よりも同性であると言う事に、レフィーヤは確かに対抗心を覚えたのだ。
「マミさん、負けないから」
「ええ、レフィーヤさん、こちらも負けませ……ん?」
ふと、マミはソウルジェムに反応を感じた、本当に違和感程度ではるが、確かにあった。それはこのオラリオで過ごす日々で感じることはなかった魔女の結界の物。
だからこそ、マミはその場の誰よりも早くその場を駆け出した、それに驚きはしたがロキファミリアの面々は流石と言える反応を示し、マミの後を追っていく。
リヴィラの街から外れた広場にマミは辿り着いていた、そこに遅れたとは言え直ぐに追い付くリヴェリア達、だが彼女達が見たのは、今までの冒険者の格好ではなく、軽装も軽装、ともすれば街歩きでもしているような、全くこの場に相応しくない、しかし似合っている、そんな格好になっていた。
その格好は?リヴェリアがそう聞こうと思った矢先、マミの手に一挺の銃が握られた、それは銀の砲身に豪華な装飾が施されている、とてもオラリオにあるその系統の店では見られない逸品だろう。
「マミ!」
銃に見とれたリヴェリアの隣でアイズが声を上げる、見ればマミが先に向かってしまう、慌てて追い掛けたその先で、リヴェリア達は怪物祭で討伐したモンスターとは違うが、この階層前後でも見たことのない小型のモンスターが確かに涌いていた。
「魔女に似たモンスター……本当に居たのね……結界こそ作っていないけれど、使い魔が居るのだと言うのであれば間違いなさそうね!」
狙いを定めるまでもなく、マミはマスケットで使い魔を撃ち抜いていく、相手がダンジョンのモンスターではなく、馴染みある不定形の怪物達であるからか、マミはついぞ魔法少女としての戦い方を繰り広げる、それを見られていると知りつつも形振り構っては此方が殺られる、それだけだとばかりに。
弾を撃ったマスケットを放り投げ、次のマスケットから弾を撃つ、遠距離に居る使い魔はそれで仕留め、射撃を逃れマミに近寄った者は、直々に蹴られ浮かされて撃ち抜かれるか、マスケットのグリップで打ち上げられて撃ち抜かれるかである。
「結界を張らない魔女、はっきり言って危険極まりないわ、さっさと仕留めさせて、貰うわよ!」
使い魔をある程度仕留め、更に奥へと進もうと足下を見ると、其処には見慣れた魔石が散乱している、どうにもあの使い魔達が落とした物なのだろう、ともすればそれは本来モンスターを産まない筈のこの18層で、モンスターが産み出された事となる、或いはやはり元来の魔女宜しく、魔女が魔石を基にして産み出しているのか、何れにせよ急ぐ必要は変わらない。
「……拾っている暇はないか、仕方無いわね」
捨て置く、その選択をしたところで、マミはリヴェリア達に振り向き、一つ頭を下げて再び先へと向かっていく。それを見て、リヴェリアはアイズとレフィーヤに、辺りに散乱する魔石の回収を命じるのだった、後で必ず事情を訊くと心に決めて。