転生したら、異常な程事件が起きる世界だったんだが 作:紫最槻鱗
何処か遠くの世界の中で
‐side ××× ××‐
ねぇ、君はきっと、まだ、この世界を憎んでるんでしょう?
そしてきっと、自分を許せず、赦すことができずに、自分を犠牲にして生きてるんだろうね
自分は罪人だからって、自分は愚かだからって、自分には壊すことしか出来ないからって、本気で思って、本気で信じてるんだろうね
真っ直ぐに、愚直な程真っ直ぐに、ふふっ
でもね、君だけじゃないんだよ
君だけじゃ、ないんだよ
私も、この世界が憎いんだ
ふふっ 君はきっと、信じてくれないかもしれないけどね
でも本当に、私はこの世界が憎いんだ
君が苦しむ世界が憎い
君が悲しむ世界が憎い
君が傷つく世界が憎い
君達が争う世界が憎い
君達が苦しむ世界が憎い
君達が悲しむ世界が憎い
みんなで生きられない世界が憎い
君を独りにする世界が憎い
君を殺す世界が憎い
君を壊す世界が憎い
ふふっ 真っ黒だね、私も、君も
でもね、やっぱり、私はそれ以上に
この世界が愛しいんだ
君が生きる世界が愛しい
君が守る世界が愛しい
君が笑う世界が愛しい
君と一緒に居る世界が愛しい
君達と一緒に居る世界が愛しい
みんなで生きる世界が愛しい
みんなで守る世界が愛しい
君が頑張る世界が愛しい
君を生かす世界が愛しい
君を産んだ世界が愛しい
そしてなにより
君が私を愛してくれる世界が愛しい
歪んでるかな?
矛盾してるかな?
でも、これが私の思い
不謹慎かもしれないけど、これが私の本当
最初はね、君じゃなくて彼が好きだったんだ
彼が格好良かったから
彼が私達よりも何処か大人っぽかったから
そして、彼が、君よりも
不安定だったから
支えてあげたいと思ったんだ
側に居てあげたいって ふふっ
君はそれに妬気持ち妬いてたんだったね
でも、私のそれはきっと"愛"じゃなくて、"恋"、だったんだろうね
彼は私を見てくれなかった
君は私を見てくれていた
そしてなにより君は、太陽の様に笑う人だったから
彼が月なら、君は太陽だったんだ
皆を照らす太陽
だからかな、私はね、君なら大丈夫だって勝手に思っていたんだ
君があの日、神無毘橋の戦いで死んでしまった筈の君が、あの日、あの場所に来るまで
君なら大丈夫だって、本当に思ってしまっていたんだ
私はね、死んだらきっと、君が迎えに来てくれるだろうと思ってたんだ
彼を置いていってしまうのは気が引けたけど
彼には先生や、里の皆が居るから大丈夫だって
馬鹿だよね、私
彼 彼 彼って彼のことばっかで、君のこと、ちゃんと見てなかったんだ
君は強い心を持っていたけど、それと同じくらい、脆かったこと
忘れてしまってたんだ
気付いたときにはもう、手遅れだった
君を壊してしまった
君は、私に"恋"していたんじゃなくって、私を"愛"してくれていたんだよね
君は人一倍、うちは の中でも特に、愛情深かったから
そして、人一倍、寂しがりだったから
ごめんね ごめんね ごめんね
何度も何度も君に言ったんだ
何度も君の涙を拭おうとした
何度も君を抱きしめてあげようとした
でも、手はすり抜けて、声は聞こえなくって
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
辛かった 悲しかった 胸が張り裂けそうだった
ねえ、すり抜けるって、触れないって、辛いね、悲しいね、寂しいね
でも、私よりも、君の方が辛かったし、悲しかったし、胸が張り裂けそうだったよね
私達のために頑張って、辛くても痛くても頑張って、私達の元に帰るんだって頑張ったんだろうね
ごめんね
君が生きていたことに気付いてあげられなくって
ごめんね
君のことを独りにしてしまって
ごめんね
君の心に塞がらない
それから君は、私の知る君ではなくなってしまった
太陽は二度と上がることがなくなってしまった
君は、世界を憎み、世界を偽りと断じ、世界を壊そうと動き出した
胸に虚を空けたまま
私ね、君が里を襲ったあの日、君を憎んでしまったんだ
なんでって
先生を
クシナさんを
里の皆を
君は奪ったから
でもさ、君から"愛"を奪って、君に塞がらない虚を空けて、君から希望を奪って、君に絶望を植え付けた私が、君を憎むのは違うよね
ふふっ きっと、君は憎んで良いと言うんだろうね
恨んで良いと、自分が勝手にしたことだって
でも、違うんだよ、私は、君を分かっていた筈なんだよ
"愛"に飢えた君が、"愛"を喪ったらどうなるかって
わかっていた・・はずなんだ
君は段々壊れていった
笑えなくなった
泣けなくなった
痛みがわからなくなった
感情が、わからなくなった
嗤うようになった
涙の代わりに血を流すようになった
他人を理解しようとしなくなった
平淡に淡々と、冷徹に冷酷になった
そして、自分が誰か、わからなくなった
私はそれを・・・見ていることしかできなかった
仮面の裏で涙のように血を流しているのを知っていた
胸に空いた虚から血を流しているのを知っていた
心が、身体が、悲鳴を、慟哭をあげているのを知っていた
君の知らない心の奥底で、偽りの名じゃなくて、本当の名を求めていたのを知っていた
いつだったかな、気付いたら私は君を好きになってたんだ
"恋"じゃなくて、"愛"してたんだ
太陽のような君が好きだった
陽だまりのような君が好きだった
明るく笑い、表情豊かな君が好きだった
闇のような君を愛した
絶望のような君を愛した
冷徹に冷酷に嗤い、感情を無くした君を愛した
反対で、全く別人なのに、それでも私は、君だから愛したんだよ
その血の涙を止めてあげたかった
胸の虚を埋めてあげたかった
誰にも気付かれずに流し続ける血を止めてあげたかった
悲鳴と慟哭をあげ続ける心と身体を癒したかった
本当の名を呼んであげたかった
君のために
贖罪なんかじゃない
ただただ単純に哀しくて哀しくて哀しくて哀しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しかったんだ
なによりも、そんなにも私を想っていてくれて、嬉しかったんだ
だから、君を助けたかった
愛したんだそんな君を
誰がなんと言おうとも、そんな君だから私は愛したんだよ
ねえ、●●●
どうか幸せになってね
●●●は覚えていないかもしれないけど
もう、私は、罪に縛られ続ける●●●は見たくないんだ
●●●が此方に来たときからずっと●●●は罪を忘れるのを恐れて、埋まってきた胸の虚に爪を立てていたから
もう良いんだよって、六道仙人様も先生もクシナさんも、アスマ達だって言ってたのに●●●は辞めてくれなくて
いつも血だらけだった
鬼鮫さん達が●●●を止めても、ずっとずっとずっと、虚が埋まらないように、爪を立てていたよね
痛くても痛くても痛くても痛くてもずっとずっとずぅっと
私、●●●に幸せになって欲しかっただけなんだよ
当たり前を当たり前のように過ごして欲しかっただけなんだよ
もう、●●●が絶望しなくて良いように、●●●が私を想っているのと同じくらい、私も●●●を想っていたんだよ
●●●が私の"愛"で溺れてしまうくらいに
●●●が幸せで溺れてしまうくらいに
●●●が心から笑っていてくれるように
だから●●●、
そこで傷を癒してきて
私、ずっと待ってるから
●●●が当たり前を受け止められるようになるまで
ずっとずぅっと待ってるからね
大丈夫だよ
オビト
ちゃんと見てんだから
遠い世界で君を想う