「ブラボー・ワン、こちらアルファ・ワン、見張りを排除しろ」
俺が指示をすると、監視塔にいた男がその場で両手を上げて座り込む。重傷、及び死亡判定の合図だ。不可視レーザーが当たると、当たった箇所を判断して、背中に背負った機械が静かに持ち主の死を告げる。最新の導力端末による管理によって動く代物であり、ペイント弾に代わる物だ。
俺はよくやった、と言い、建物の四方を囲んでいる塀の裏口から、部隊を連れて侵入する。森林の中にひっそりと佇むプレハブ。
〈アルファ、こちらブラボー・スリー、目の前の部屋に三人以上いる。それ以上は部屋の様子が分からない。だが、ドアにトラップの類いは見られない〉
俺はハンドサインで、アルフレッドとエドワードをドアの前に立たせて、シルヴィとジョージをラペリングで屋上に。そして、俺はドアの右側に立つ。遠くにスコープの反射光が見え、そこに向かって突入の合図をするということをジェスチャーで伝える。すると、了解、援護する、と返事が帰ってきた。
アルフレッドとアイコンタクトで準備完了を知ると、エドワードがハルバードを水平に振り、ドアを破壊する。それと同時に、窓から身が出ている人間は次々に手を上げて、それ以外の人間に照星を固定して引き金を絞る。
三秒も経たないうちに部屋は制圧され、上の階からの銃撃音とブラボーとアルファ・スリー、フォーから「無力化」の報告が飛び交う。
しかし、
〈こちらアルファ・スリー、アルファ・フォー、ダウン〉
シルヴィから冷静に、ジョージの仮想戦死の報告が告げられる。
俺はアルフレッドに「救助にチャーリーをまわす」と言うと、アルフレッドは渋々と頷く。彼は戦闘能力は高いのだが、隊長の俺に従うことを良く思っていないようだ。
「こちらアルファ・ワン、アルファ・スリー、耐えてろ。チャーリーはアルファ・スリーの援護に向かえ」
〈アルファ・ワン、こちらチャーリー・ワン、了解〉
早々に突入を崩されたことにより、部隊の士気は下がっている。スナイパーを頼りに進まなければいけないが、ただでさえ少ない窓を木材で塞いでいるこの建物は、狙撃するのに不向きだ。
「ブラボー、接近戦が可能な人材をこちらに送れ。狙撃手はそのまま残るんだ」
〈こちらブラボー、了解────ブラボー・フォー、ファイブ、シックスをそちらに送る〉
俺は無線を切って、先行するエドワードの後を追う。
この程度の屋内戦なら憲兵隊でもやっていたから、指揮をするのは慣れている。が、それを行う部下は、並の隊員として入隊するつもりだったから、銃撃戦になれば勝ち目は五分五分といったところだ。
幾つも部屋が並んでいる廊下の奥に、最重要目標、つまり人質が囚われている部屋が見つかった。事前の偵察のお陰だ。
〈アルファ、こちらチャーリー、アルファ・スリーに合流した。これよりラベリングで“小包”のある部屋に突入する〉
「チャーリー、こちらアルファ・ワン、了解。五秒だ」
俺は再び、エドワードにドアを破壊するように命令し、サプレッサーの付いた銃口をドアに向ける。
「スリー…ツー…ワン…ゴー」
安っぽいドアの破片が辺りに飛び散り、防塵ゴーグルをこつこつと叩く。
無理やり部屋内部に進もうとした時だった、グレネードのピンが外れる音が耳に入る。そして、逃げる間もなく、俺とエドワードが死亡判定。後に入ってきたアルフレッドも、撃たれて死亡判定を受けてしまった。同時にラペリングで侵入してきたチャーリーも、窓際に待機していた敵に全滅させられてしまった。
プレハブから出ると、初老の教官が険しい顔をしてこちらを見据えていた。
「何人の犠牲者が出た」その声には怒気が混じっている。
「人質の救出に成功するも、アルファとチャーリーが全滅、ブラボーには二人の被害、計十二人の“戦死”です」
「その原因は自分たちで分かるか」
「アルファの戦力を分断したこと、チャーリーの到着が遅れたこと。そして、それらによって起こったアクシデントに対応しきれなかったことです」
俺は原因だと思われるものは全て言った。すると、教官はそれに対して怒鳴ることもなかった。
だが、
「隊員の戦死は、人質からしても良いことではない。自分を助けるために人が死んだとなれば、心を病む人間すらいる。少なくとも、そんな目的で警備隊に来た奴はいないだろう。次からは同じ失敗をするな。もし、してしまったら、お前たちは無能だという証明になる」
と、必要なことだけを言うと、積もった雪に足跡を刻み、門へと向かった。
そして、俺が作戦の見直しをしていると、おいチャールズ、と声を掛けられる。この若々しい声はアルフレッドの声だ。多分。
「なんだアルフレッド、作戦に関して指摘があるのか」
アルフレッドは腕を組んで、こちらに明らかな敵意を向けてきている。
「あんたの立てる作戦、シルヴィとジョージにリスクを追わせすぎだった。彼女たちに恨みでもあるのか」
アルフレッドは感情的に話しかけてきて、その唾が顔にかかりそうになり、俺は少し距離をとる。
「それはすまなかった。これからの作戦を立てるうえで参考にしよう。礼を言おう、ありがとうな」
「その態度が気に食わない」そう言って、俺の胸ぐらを掴むと、軋ませている歯の前方部分を口から覗かせる。
「もし、これが訓練でなければジョージとシルヴィは真っ先に死んでいたっ。なのにお前は────」
「そのように、戦闘で『死』が間近にあることを知るためのこの訓練だ。今は感情的になるのではなく、どうすれば戦死者を出さずに戦えるのかを考えろ。そして、それを実行するには更なる訓練が必要だ。わかったな」
俺はアルフレッドを黙らせると、胸ぐらにある手を下げる。「だが、指摘をする部分は悪くなかった。俺も悪かった。それは認めよう」
すると、アルフレッドは舌打ちをして「その態度が気に入らないって何度言えば分かるんだ」と言う。そして、そっぽを向いてしまうと、周囲の視線を集めながら地団駄を踏むように帰っていった。
「隊長…大丈夫だった…」
シルヴィが心配した様子で駆け寄ってきた。まだまだ男の比率が大きい警備隊ではある意味、これも視線を集めてしまう。
「作戦に関して、指摘を受けた。お前とジョージに負担をかけ過ぎたってな。すまなかった」
俺が謝ると、シルヴィは焦って否定する。
「そんな、今回の失敗はチャールズのせいじゃないって。だって、この部隊が結成されてから三日しか経ってないし、チームワークを固めれば成功すると思う」
「優しいな、シルヴィは」
すると、シルヴィは冗談めかして鼻を鳴らせてみせる。
それにしても、今回の作戦は二人にリスクを追わせるものだった。これが実戦でなくて、本当に良かった、一番強く思っているのは俺なのかもしれない。シルヴィの微笑を見てそう思った。
‹Note//starting sequens......›
“Note”の蒼い画面に黒いプログラムが大量に表示され、一瞬の不安に駆られるが、すぐにレクターの顔が画面に広がり、安堵する。
〈よぉ、これ見えてるか。見えてるなら二回ウインクをしてくれ。見えてないなら────〉
「見えている。音声もクリアだ」
俺はレクターの冗談を塞ぐ
〈それは良かった。……んで、初めての報告だが何か良い情報は手に入ったか〉
レクターの質問に得意げに答える。
「勿論だ。警備隊は『特殊警備群』という名の特殊部隊を結成した。俺もそれに入れられてしまったのだが、まあ、好都合だろう」
すると、レクターは、おぉ、と感嘆の声を漏らす。
〈そいつは期待以上の情報だな。それで、規模はどのくらいなんだ〉
「まだ二十人ほどだ。恐らく、試験的に特殊部隊という枠組みを作っただけだろう。しかも、人員は……正直、特殊部隊には向いていない」
すると、レクターはなるほどね、と言って暫く黙り込んでしまった。
〈よし、分かった。こちらでも憲兵隊に重きを置いてみよう。次に何かわかったらまた三日後に連絡してくれ〉
「了解、通信終了」
Noteをそっと閉じる。この倉庫に鍵はかけてあるが、念のために他の人間が入っていないかを確認すると、倉庫から出る。流石に倉庫からノートを持って出てくるのはあまりに不自然だから、あまり人目につきたくない。といっても深夜だから見回りの隊員くらいしかいないのだが。
それにしても、警備隊の装備は中々使いやすい。小柄な人間でも使えるように、人間工学に基づいた設計をしているらしい。それに加えて高精度──何にしろ、これがかなり嬉しい。帝国でもそのような方針はありはしたのだが、俺の所属していた
部屋に戻ると、アルフレッドとエドワードが既に寝息を立てていて、ジョージはまだ作戦のマニュアルとにらめっこをしており、俺が部屋に入ってきたことに気付いていないようだ。
「ジョージ」
「はい、なんでしょうか、隊長」
「今日の作戦についてだ」
俺がそう言うと、ジョージは畏まるように姿勢を正す。
「いや、俺の作戦にミスがあったことだ。お前とシルヴィに負担をかけ過ぎた。今度からは気をつけよう、すまなかった」
「いえ、気にしていません。我々も部下として、戦闘能力が低かったのは分かっていましたから。明日の訓練で頑張りましょう」
俺はジョージに礼を言うと、あまり遅くまで起きてるなよ、と付け加えて眠りについた。
遥か彼方に死者の行進が見える。
彼らは弾丸で頭部を吹き飛ばされていたり、首から上が綺麗に無くなっていたり、多種多様な死に方をしている。
「死者の国って知ってるか」
左腕の根本から胴の半分が吹き飛んだバーナードが言う。
「さあな。お前の出身じゃないのか」
俺は左腕があった辺りを見やる。
「これから行く所、だよ」
バーナードはそう言って、左腕の袖を捲るように右腕を動かすが、虚空を掴んだことで、羞恥を誤魔化すようにバーナードは豪快に笑った。
「なにせ、今でも左腕があるように感じるからな。幻肢痛ってやつだ。いつまでも感覚が残ってやがる」
「左の胴も、だろ」俺は先程のバーナードの口調を真似て言う。
「確かにそうだ。お前からすれば、まだまだ分からない話かもしれないがな」
「まだ、それが分かるようにはなりたくないんでな────で、死者の国っていうのは何なんだ」
「ある国で伝えられる話さ。その死者の国じゃ、今まで死んだ人物が楽しく幸せに暮らしているんだと」
「馬鹿馬鹿しいな。死者は死んだんだろ、なら楽しく幸せ、なんて感じることもできない。まず、非現実的なところから話が始まっているからな」
「そう言うな。夢のある話じゃないか、生前に散々苦労したら、死者の国で永久に楽しく暮らせるんだぜ。これ以上に幸せなのがあるか」
「あるさ」
バーナードは不意を突かれたように、眉間にしわを寄せる。
「何だ」
「わからん。だが、その死後の世界が人間にとって一番幸せな所だとは思えん」
「なるほどね。じゃあ、限りがあるからこそ、人は輝く、みたいなのを言いたいのか」
「それも分からん。だが────」
「だが、死者の国にはまだ来たくないのか」
バーナードのそれは、俺の言葉を代弁していた。
俺はただ頷き、バーナードに溜息を吐かせる。
「強情なやつだ。そういうところは昔から一つも変わってない」
「お互いさまだ」俺はそう言うと、バーナードに別れを告げる。何処に向かうかも分からないが、取り敢えず死者の行進に背を向けることにした。
そして、少し様子が気になって振り返ると、バーナードは居なくなっていた。あの死者の行進に加わったのなら、彼個人を探すのは無理だろう。
俺は再び歩きだした。
地平線に輝く夕日が俺の背中を焼き続けていた。
すると突然、背中を打ちつける。ベッドから落ちたのかと思ったが、明らかに周囲が騒がしい。
重い頭を持ち上げて周囲を見渡すと、パノラマ状に木、木、木であり、ここが森林であることは誰の目から見ても明らかだった。そして、一アージュと離れていない場所にジープの轍が刻まれて、恐らくは抜き打ちのサバイバル訓練なのだろう。特殊部隊員に対して厳しすぎやしないだろうか。
俺は立ち上がり、先程より高い位置から視線をあちらこちらに動かすが、俺と同じ境遇に置かれている人間は見当たらない。だがせめてもの支給品としてサバイバルナイフが、俺の倒れていた位置のそばに置いてあった。
ナイフを腰から下げると、俺は他の隊員を探しに出る。
もしこれが訓練ならば、他にも隊員がいて、俺と同じ状況のはずだ。パニックを起こしていなければいいが、そうでない場合、大声を出せば魔獣に囲まれて死を確実なものとしてしまう。それだけは避けておきたい。
すると人の足跡が見えた。俺のものと同じ靴跡が深く捺されている。
俺がその靴跡を辿っていると、ある異変に気づいた。途中から靴跡の感覚が広くなって形が崩れていっていると共に、他の動物らしき足跡も増えている。持ち主は走って逃げたということだろう。
俺は歩くのをやめて走り出す。この大きさからして女性の靴だろう、魔獣に襲われているならかなり危険な状況だ。やがて、足跡の上に血がトッピングされていき、それはさらに、先へと進んでいる。
引き摺られていった体が流した血は、引いている者の止まった場所すらも教えてくれた。止まった場所には他より血が溜まっている。
そして、その溜まった血が叢の向こうから、石や土の隆起している部分を避けながら流れてくる。
俺は藪をかき分けて向こうに飛び出す。すると、視界に映ったのは、警備隊員の制服と獣の毛皮が限界だったが、動いたのは警備隊員の方だった。体全体が、首を始点として後ろに地面に打ち付けられる。そして、それは俺の鼻先にナイフを突き立ててきた。が、その勢いは目と鼻の先で止まる。
やがて、刃は退いた。刃が無くなった景色にはシルヴィがいた。このナイフはその美しい顔に酷く似合わなかった。
「チャールズだったの」
シルヴィは、俺の喉を押さえていた手を引くと、ナイフを仕舞い、こちらに手を差し伸べる。
「警察学校じゃナイフファイトも教わったのか」
と、言いながら俺はシルヴィの手を握って立ち上がる。
「サバイバル訓練で動物を狩ることには慣れたけど、ナイフファイトは教わってない」
俺はシルヴィの後ろに横たわっている獣を見る。
「ああ、あれ。私が他の隊員探そうと思って歩いてたら、襲ってきたの」
彼女はそう言ってから、致命傷ではないから治療済みだし放っておいても治るよ、と狼に視線を落とす。
「で……、シルヴィも起きたらここにいたっていうことか」
俺はシルヴィに質問をする。
「うん、辺りにあった痕跡からして、多分抜き打ちのサバイバル訓練じゃないかな。ジープの轍といい、支給品のナイフといい、人工物が多すぎるから」
「流石だ。警察学校でのサバイバル訓練の成果だな」
シルヴィは、うん、と頷くと、他の隊員を探すよ、と言って藪の中を進み始めた。無駄に草を踏むことも切ることもない、優しさに溢れている進み方だ。先ほどの狼に件もあるが、彼女は優しすぎる。いずれその優しさが彼女自身を傷付けないか心配だ。
すると、突然シルヴィの足が止まる。
「どうした」
俺が質問をした瞬間に動き出し、今までの何倍もの効率で藪を進む。
俺は先に何があるのか気になり、シルヴィの横から様子を見てみるが何者かがいる気配もない。だがシルヴィは依然として進み続けている。
「なあ、何があったんだ」
俺は訊くが、シルヴィは、いたっ、と言って無視をした。
シルヴィがしゃがんだ下には、まだ寝ている隊員がいた。アルフレッドだ。
あんな雑な下ろし方をされたのに寝ているのは最早、評価に値するだろう。もしくはアルフレッドだけ、下ろし方が丁寧だったのか。どちらにせよ、環境の変化に気付かないのは問題でもある。
「起きろアルフレッド」
俺はアルフレッドの体を揺する。すると、アルフレッドは不機嫌そうに目を覚ます。
「ここは………ベッドの上じゃなさそうだな」
「ああ、ドンピシャだぞ」
アルフレッドはおもむろに時間を確認しようとしたが、こんな樹海の中では日の位置も分からない。まず東西南北が分からない。
すると、シルヴィはしーっと人差し指を口に当てる。それと同時に複数の魔獣が藪の中を移動する音が聞こえる。葉の擦れる音。それはじわじわと俺たちを囲んでいき、やがてピタリと止んでしまった。
アルフレッドは思わず警戒を解くが、それを隙と見たのか、一匹の狼が飛び込んできた。その牙先はアルフレッドの喉へと一直線に進んでくる。
俺がアルフレッドの襟を掴んで引っ張ると、狼の牙がアルフレッドの目の前を通過する。シルヴィは狼を引き離すようにナイフを振って牽制し、俺は退路を見つけ、それを知らせる。
背後にある道、多少開けすぎているが他の隊員が見つけてくれるかもしれない。可能性を捨てるべきではないぞ、と俺は二人に言うと、二人は静かに頷く。
じりじりと、目を逸らさないようにして後退するが、これが何時までも効果を保っているとは考えられない。出来るだけ迅速に脱出しなければ。
俺たちが開けた道に出たとき、狼たちが吠え始めた。そしてこちらに向かって走り出し、俺たちは最悪の事態に対して最善の対策であるナイフを構える。
刹那、一発の銃声が鳴り響く。古典的なライフルの特徴的な銃声、こんなものを鳴らす知人は一人しかいない。
狼たちはその銃声に驚いたのか、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
俺を覗いた二人は呆然と立ち尽くし、何が起こったのかを理解しきれていない。それは仕方ないことなのだろう。
俺は銃声が聞こえた藪の方に視線を傾ける。するとそこには、骨董品の銃を抱えたクラレンスが小さく手を振っていた。彼は重度の収集家であり、一度家に訪ねたことがあるが、骨董品の類いは何でも好きなようで、聞けばいつも付けている腕時計は導力革命以前の物を使っているようだ。そんな彼も《
「これは借りだぞ」
彼の声ははっきり聞こえなかったが、口の動きと表情からしてそう言ったのだろう。俺がそれに対して頷きで返すと、クラレンスは俺のことを指さしながら去っていこうとする。
「誰かが居たんですか、お礼を言わなくちゃ」
俺の視線を辿ったシルヴィはクラレンスのいる藪の元へ駆け寄る。クラレンスは格好つけて去ろうとしたのが台無しになることを恐れ、無線機で誰かに連絡をしている。
そして、シルヴィが藪を掻き分けた瞬間、空に向かって腕を振り上げ、その手に握っているフックショットの引金を絞る。発射されたフックは高速で飛来してきた飛行艇の底部に掛かり、クラレンスはそのまま引っ張られて空へ去っていってしまった。
またもや異常の出来事に呆然とする二人を横目に、俺はジープの轍を見つけた。
「おい、これジープが通った跡だろ。これを辿れば樹海から出れるぞ」
「だけど、他の隊員はどうするの。まだいるかもしれないのに」
「大丈夫だ」
俺は落ち着き払って言う。
なんせ、クラレンスが俺たちを助けたからな。他のやつも助けるさ、あいつは。
「さっきの人、クラレンスっていうんだ」
「ああ」
「だとしたら、お前とクラレンスっていう男は知り合いなのか」
アルフレッドが訊く。
「親しい友人だ」
俺はそう答えた。