気まぐれ神様の物語 真剣恋Ver.   作:ジーザスルージュ

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8話

 岡本一子が川神一子となって早1年経ち、モモは5年生、他は現在4年生である。

 今日も今日とて川神院では修練に勤しむ修行僧に交じって2人の少女が鍛錬をする。言わずもなが、川神百代と妹となった川神一子の2人だ。

 今日は学校は休み。

 生憎と母は不在だが、休みは大抵こうして川神院にて修行風景を釈迦堂氏の横で眺めるのが日課だ。

 もっとも出番までは、であるが。

 

「よーし、全員それまデ!」

 

 ルー師範代の合図と共に修行僧の多くはその場に蹲る。

 中にはバケツのお世話になる程で、修行したてのワン子も例外ではない。なので、即座にバケツを持っていく。

 

「あ、ありがオウェー…」

 

「礼には及ばぬ故、存分に吐くがよい」

 

「うぼゎー…」

 

 吐きながら肯くんじゃありません。

 

「大丈夫か、ワン子?」

 

 ワン子の背を優しくモモがさするが、こればかりは慣れる他ないだろう。

 川神院の鍛錬法は一言で言うなら根性論。健全な肉体は健全な精神に宿るといったまさしく"武道"に於ける正道を行く。

 根性論を除いて、綺麗すぎる方針には個人的に付き合いきれないが。

 そも戦いに正邪は無いというのが持論だ。

 まぁ、それは兎も角、ワン子が落ち着いたら毎回恒例のアレ(・・)が始まる。

 

「それではこれより、筱宮ノルンと川神百代の仕合を行う!東方、川神百代!」

 

「おう!」

 

「西方、筱宮ノルン!」

 

「はい」

 

 モモとの仕合だ。

 

「決着はどちらかがギブアップ、もしくは試合続行不可能と見なした場合とする」

 

 場には緊張が満ち、周りは固唾を呑んで見守っている。

 

「それでは両者、はじめい!」

 

「川神流無双正拳突きー!!」

 

「!?」

 

 正拳突きを極めた末の川神流の奥義。それを模擬刀で逸らす。

 開幕から大技を繰り出す事でこちらに流れを掴ませない様にするのは戦術として理に適っている。

 しかし、今回ばかりは少し勝手が違っていた。

 その場から動かずに、手の届かない間合いから此方へ届かせて見せたのだ。

 

「これは…私の狐月を」

 

「あぁ、何度も喰らってるからな…いい加減体が覚える!」

 

 そのまま溜めていた左手を突き出す。

 

「そうそう当たらぬよ」

 

「ちぃッ!」

 

 半身捻るだけで躱せる。

 打点と力点の延長、文字通り伸びるだけでありその真価は奇襲にこそある。

 馬鹿正直では当たるモノではないし、そも古式の遠当てを生かすには高い空間把握能力が必須だ。

 どんなに真似ても圏境のレベルが此方よりも低いモモでは生かしきれない。

 才のみならず経験は大事である。

 それが証拠に

 

「くっ、当たらない!」

 

「出掛かりを把握しておれば、な」

 

「いってろ!はあぁーー!!」

 

 苛烈な攻防。

 繰り出される拳撃はまさに疾風怒濤も斯くやと言うばかりの激しさである。

 モモの成長速度は真実既知外そのもの。

 攻撃のキレは1試合どころか1合ごとに増していっている気がする。

 軽やかに振舞ってはいるが、捌くのが段々と難しくなってきた。

 加えて―――

 

「ぐっ!」

 

 狐月による刺突での攻撃を防ぎながら吹き飛ばされるモモ。

 しかし、そのまま気を失うことなく踏ん張って見せた。

 ―――そう、『暗器暗武(我が力、武を交えず)』の効果に対応し始めているのだ。

 恐らく、打撃に合わせて化勁の類で衝撃自体を分散されている。

 

「ふぅ…一撃必殺、武を交えぬのがこちらの信条なのだがなぁ」

 

「ハハっ!ようやく克服できたんだ、そんなツレないこと言うなよノルン!」

 

(最早、神経系のみに限定しての打ち込みでは倒しきれぬとは…いやはや末恐ろしいものだ)

 

 だからと言って成長期真っ只中の身体に勁脈込みでの打ち込みは気が引ける。

 モモレベルの相手では全力で掻き乱さなければならないだろう。

 それでは成長に障害を残しうる。

 手を抜くのは失礼だが、殺す事を主眼に於いて鍛えてきた弊害か、こういう手加減は正直苦手である。

 なので、今回は攻め方を変えようと思う。

 

「今日こそ勝たせてもらうぞ!」

 

 構えるモモ。

 攻撃の機先を更に先読みをして持っていた模擬刀を抜き打ち気味に放つ。

 先の先と言う勝機の1つ。

 

「こんなのもの!」

 

 容易く見切られるが、結果として出鼻は挫いた。

 自身に迫るそれを躱さんとするモモ。

 その動きに合わせて後ろに跳ぶ(・・)

 無防備なその後頭部に掌打一閃。

 

「ガッ…」

 

「それまで!勝者、筱宮ノルン!」

 

「ありがとうございました」

 

「お姉様!」

 

 気絶こそしてないが倒れたモモへと心配そうに駆け寄るワン子に手ぶりで大丈夫なのを告げるモモ。

 少ししてムクリと身体を起こした。

 

「むぅ…また負けた…今日は行けると思ったのになー」

 

「まだまだ取らせぬよ。具体的には後1年ぐらい」

 

「なんだその具体的な数字は。みてろよ、もう背中は見えてるんだ。絶対一本取って見せる!」

 

「お姉様も凄いけど、ノルンも凄いわねー…アタシももっと頑張らないと!」

 

「おー、燃えてるなワン子。その意気だ」

 

「呵呵ッ、善哉、善哉。ともあれ、道は険しいぞ?」

 

「うん、頑張るわ!」

 

 元気よく返事をするワン子に思わず微笑んでしまう。

 至極和むモノだ。

 周りのみんなも微笑ましく見ている。

 

「ところでぜんざい何てどこにあるの?」

 

「あ?あー…」

 

 こんなオチが付くとは…正直スマンかった。

 

 

 

「なぁなぁ、ホントの事教えろよ―」

 

「だから、先のアレは縮地と申したであろうに」

 

「凄かったわよね、こう…フッって消えたと思ったら、お姉様の後ろにシュパッって現れて!」

 

 稽古も終わって現在は何時もの面子の待つ場所―――今日は空き地である―――へ向かう途中。

 道すがらモモはこんな調子でずっと聞いてきている。

 先の瞬間移動の説明が縮地では納得がいかないらしい。

 

「なんか違うん気がするんだよな…何て言うか、遠当ての時と同じで認識のズレを感じる」

 

「そうか?」

 

 なかなか鋭い。

 しかし、種明かしはしない。

 

「あー、ノルンだー!」

 

 声のする方へ視線を向ければ小雪が居た。

 嬉しそうに此方に駆け寄ってくる。

 あれから、小雪も葵文病院の看護師の人に養子に貰い榊原と名字を変えている。

 その後折を見て諸々の(・・・)事情が小雪の口からみんなにはかるーく語られているが、まぁそこは割愛する。

 ただ一言で言うなら約1名、罪悪感に苛まれてるぐらいである。

 人生、こんな筈ではなかった事ばかりだ。

 え?名台詞をこんな場面で使うな?失敬。

 

「ユキちゃんは今日は遊べるのか?」

 

「うん。ブラブラしながらみんなの所に行こうと思ってたところー」

 

「それじゃあ一緒に行きましょう」

 

「うん!」

 

「と言うか、これ以上ゆったりやっておると遊びの時間が減るな」

 

「だな!」

 

 

 

 遊び場の1つである空き地へ到着すると、他のみんなが一際高い茎の前に屯っていた。

 ワン子が声を上げながら近付いていき、自分たちも後に続く。

 

「みんなー!」

 

「おう、ワン子。モモ先輩達も」

 

「や、やぁユキ。」

 

「ウェーイ、大和元気?」

 

「おう、元気さ…」

 

「僕もげんきー!」

 

「なんのさ、このやり取り」

 

「それでどうしたのだ?みな、挙って集まって」

 

「いやーこの草良く伸びてるなーって話しててさ!なんかの妖怪植物だったりしてな」

 

 なんて冗談めかしにキャップが言うもんで。

 

「ある日、ワン子が消えた。するとワン子の身長分だけ成長していた…」

 

「ひぃ!?こ、怖い事言わないでよぅ…」

 

 なんてキャイのキャイの盛り上がっている。

 こういう正体不明なモノに対して、怪談じみた発想が浮かぶのは仕様なのだろうか。

 と言うか―――

 

「言ってはおらなんだか?これはリュウゼツランと言う植物だぞ?」

 

「聞いてないよ!ってか知ってたの!?」

 

「うむ」

 

「いや、なんで其処で胸をはるのさ!?」

 

「や、モロのツッコミは今日キレがあると感心しておった」

 

「そっち!?」

 

 ちゃんとボケにツッコミを返してくれる存在と言うのは重要である。

 

「フッ、成程な。これが別名センチュリープラント…数十年に一度しか花を咲かせない植物か…」

 

「博識であるなー大和」

 

「ハッ、お前ほどじゃないさノルン」

 

 ありがたいが、そのニヒルかぶれで色々残念だ。

 文面だと、此方と指して変わりない様に見えるだろうが大和はクネっとポーズを付けたり、鼻で良く笑ったりしている。

 何というか、雰囲気とでも言うのだろうか。

 自分と大和ではどうしても大和のそれは奇妙な背伸びに見えてしまう。

 逆にこちらが見た目相応の子供っぽく振舞うと気味が悪く見られるのと同じ様なものだ。

 

「数十年に一度か…前に咲いたのって何時なんだろうな?」

 

「リュウゼツランの生態からして、前にも此処で咲いた事があるはず…鉄心殿に聞けば分かるやもしれぬな」

 

「じゃあ呼んでみるか」

 

 そういって、明後日の方を向いた。

 大きく息を吸っているので大声を上げる様だ。

 

「色ボケのブルセラじじいーー!!」

 

「モモ!おまえいい度胸をしとるの!」

 

「ホントに来るとか…流石川神院」

 

「スゴイのだー」

 

 言いたい事は分かるがそれで片づけてよいものか。

 やってきた鉄心殿に事情を説明すると、ここのリュウゼツランは50年周期に花を咲かせている様で、ちょうど明後日に咲くらしい。

 それを聞いてみんなワクワク顔だ。

 

「明後日かー…」

 

「楽しみだなー!どんな花が咲くんだろうな?」

 

「当日のお楽しみだな」

 

「うむ。ん?」

 

「どうかしたか、ノルン?」

 

 後ろへ振り向いた私に大和は訪ねてくる。

 釣られて大和も後ろを向き、あ、っと声を上げる。

 そこには塀の陰から此方を覗く青い髪の少女が見えた。

 どこか陰気の強い雰囲気を漂わせており、知り合ったばかりの頃の小雪を何処か連想させた。

 

「知り合いか?」

 

「あ、いや名前だけは知ってる」

 

「どうしたのー?」

 

「なんだー?お、あれって椎名京?」

 

「なんかこっちをじっと見てるね。それに…僕と同じ?」

 

 小雪の言った通り、椎名京なる少女は此方をじっと見つめている。

 表情からは緊張が伺え、目からは小雪と同じモノ(・・・・)を感じた。

 向かおうとした小雪の手を咄嗟に取る。

 

「ノルン?」

 

 小雪の疑問に答えずキャップが彼女の元へ近寄っていくのを静観。

 

「なんか俺らに用かぁー?」

 

「……」

 

 問いに答えずそのまま姿を引っこんでいく。

 足音もしたから去っていったのだろう。

 

「なんだぁ?」

 

「キャップに惚れてんじゃないか?」

 

「ばっ、ふざけんな!女はメンドーだからごめんだぜ」

 

「フッ、子供だな」

 

「私達は子供だけどな」

 

 ベタである。

 そんなやり取りをしながら、大和が椎名京がいた場所を真剣に見つめていたのを見逃さなかった。

 小雪はそれを見て思う所があったのか、再度訪ねてきた。

 

「良いの、ノルン?」

 

「彼女には悪いが、彼女を救うのは私ではないよ。や、小雪についても直接何かを為した訳ではあらぬがな」

 

「そんな事は無いのだ、僕が此処に居られるのはノルンのおかげだもん。でも、じゃあどうするの?」

 

「それは彼次第、だな」

 

 大和の横顔を見る。

 視線に気付いたのかモモにじゃれ付かれている彼が、どうした?っと聞いてくるが、何でもないと返す。

 

「そっか…でも、僕の時と違うのは何で?」

 

「私はイイモノとは言い難い。助けも請われぬのに手を差し出したりはせぬ。加えて基本身内贔屓…故に大和の成長に椎名京を利用する」

 

「そっか」

 

 大凡最低下劣なモノ言いに小雪は然も何でもない様に返す。

 正直、幻滅されると思ったのだが。事実、こんな考えをみんなに聞かせたらモモとワン子を筆頭に罵声の嵐である。

 そう問いかけると―――

 

「ノルンが大和次第って言うんなら大和なら彼女を助けられるんでしょ?僕の時みたいに。だったら大和に任せてみる事にしたのだー。大和が僕に申し訳ないって思ってるのも知ってるしねー」

 

 なんて返されてしまい、色々と思い知らされてしまった。

 テラチートだろうが、コミュニケーションに於いては受け以外はトコトン2流である事を思い知らされる。

 同時に小雪の強さには感謝してもし足りない。

 

 

 

 翌日の夜。

 夕飯は終わり、まったりと過ごす中外は暴風雨に見舞われていた。

 台風が接近しているのである。

 明日にはリュウゼツランが咲く予定だが、この分では正直マズイとしか言い様がない。

 グループのみんなもそう思ったのか、連絡が来た。

 キャップの命令でリュウゼツランを保護しに行くので全員空き地に集合との事。

 既に全員に連絡が回っており、自分が最後らしい。

 

「この暴風の中外へ出るだなんて、何考えてるの!?」

 

「既に他の者達は出向いておるそうです。なれば私が出向かぬ道理は皆無です母さん」

 

「なら私も―――」

 

「無用です。これは我々が決めた事、母さんまで出張ってしまっては罪悪感に罪悪感が重なる為、遠慮して下さい」

 

 そんな言葉を聞いた母は何とも言えない顔を作る。

 

「この状況でなんだけど、罪悪感とか思ってもいない事をよく口にしたわね?」

 

 ヒドイ言い様だ。この状況で罪悪感ぐらい自分だって湧く。

 心配は重々承知だが、あんまりな物言いだったので、こうする。

 

「なんとでもご随意に」

 

「ちょ、影縫い!?か、身体が動かない…」

 

「では行って参ります。拘束は1時間程度で取れますよ」

 

「トイレとかどうするのよ!?」

 

「今しがた済ませた筈では?」

 

「そうだけども!だからって―――」

 

 何やらまだ騒いでいるが、いい加減待たせても何なので玄関をでる。

 

「スルー!?帰ってきたら覚えてなさいよー!」

 

 バタンと無情にドアが閉まるのを確認して、一応玄関の鍵を閉める。

 戸締りは大切である。

 圏境で周囲を探知してみれば、全員空き地に揃っている。

 何やら1人多いが。

 

「ともあれ、参ろう」

 

 空地まで3キロの距離があるので、縮地で跳ぶ。

 

「瞬間到着」

 

「うわ、びっくりした!?」

 

「どっから出てきたんだよ今!」

 

「つうかおせぇーぞノルン!遅刻だ」

 

「済まぬなキャップ。親に言ったが聞き入れてもらなくてな」

 

「そりゃそーだよ!」

 

「故に縛って参った」

 

「縛って!?」

 

「漫才は後だ。それより手伝えノルン!」

 

「心得た」

 

 そういって蔵から例の如く模擬刀出して、横に振るう。

 モロに向かって飛来していた看板を叩き落とした。音に驚いたのかモロは尻餅をついてしまったが、手を差し出して立たせる。

 今度は、小雪と何故か此処に居る椎名京に向かって飛んでくるポリバケツを刎ね飛ばす。

 

「飛来物は私が対処する。モモは花にカバーを被せる作業が終わったら私と共に危険物の排除を」

 

「おっけーだ!」

 

 瞬く間にカバーを被せ終わり、他の作業に集中しているメンバーの護りにつく。

 色々なモノが色んなところから飛んでくるこの状況は中々に危険だ。

 

「にしても、さっきまで一個も無かったのにノルンが来た途端に色々飛んできたな。やっぱりノルンの傍は退屈しないで良い」

 

「なんともコメントに困る事を申す。と言うかモモ、えらくはしゃいでおるな?」

 

「大和にも言われたな。なんか胸がドキドキしてるんだ…」

 

 何と言うリスキー発言だろうか。

 そうこうしていると、出来得る限りの補強が完了した。目的は果たした以上、長居は無用の為、全員即座に退散する。

 

「じゃあなー」

 

「みな、帰りは気を付けるのだぞ?」

 

「ノルンに言われるのはなぁ…」

 

「うっ…確かに」

 

 再度別れを告げて、みんなと別れた。

 そして、ある程度離れたところで、圏境を使い椎名京を捕捉。

 

「……」

 

 一定の距離を保ちつつ、屋根伝いに遠くから椎名京を見守る。

 

「クッ…それにしても、鬱陶しいな飛来物…」

 

 色々と降りかかってくる物を手で受け止めその辺りにそっと捨てる。

 その間も椎名京の方に注意を割くのも忘れない。しばらくそのまま続けていたが、何事もなく帰宅できたようだ。

 無事を確認したところで改めて、帰路に着く。

 

「お帰り、愚息」

 

 しかし、魔王による折檻からは逃れる事はかなわない。

 

「アッー!」

 

 

 

 

 翌日の昼。

 今日は祝日なため、昼食を終えて空き地に全員集合した。

 リュウゼツランは既に花を咲かせており今はみんなでそれを見上げている。

 ワン子なんかはガクトの背に肩車されて、長身故に高い所から見たいという要望でこういう形に帰結した

 

「これがリュウゼツランの花…」

 

「コラコラ、暴れるなワン子」

 

 肩の上に乗っている状態ではしゃぐのは危険だぞ。

 

「50年も待たせる割に…大したことないな…」

 

「うん、なんかショぼいね」

 

 あんまりな言い草だ。

 

「言っちゃったー!?思ってても口に出さなかったのに!」

 

「みんな元気ね」

 

 そんな声に振り返ってみると母が来ていた。

 

「あ、幸恵さん。こんにちは」

 

「どちらさま?」

 

「私の母だ」

 

 へぇー、なんて声を揃えて上げてマジマジと見るモモとワン子以外のみんな。

 川神院組以外では初である為無理もない。

 何やら手にはカメラを持ってきている。

 

「折角50年に一度の花なんだし、記念撮影でもと思ってね」

 

「それは名案ですね!」

 

「よぅーし!そうときまったらみんな並べー!」

 

 みんな思い思いにリュウゼツランの前に並び出す。

 しかし、キャップは何かを見つけた様で、空き地の入り口の方に目を向ける。

 

「あ、椎名だ」

 

「ホントだわ」

 

 昨日と同じ様に、しかし昨日よりも前に身を乗り出して此方を見つめている。

 

「どうしたんだろうね…」

 

「さぁな、大体椎名って何考えてんのかオレ様わかんねーンだよなー…暗いし無口だし」

 

 どうしたものかと相談していると、大和が一歩踏み出して椎名京に近付いていく。

 何やら話しこんだ後、彼女を手を引っ張って此方に戻ってきた。

 

「おー?消極的な弟が珍しい事をしてるな」

 

「もしかして、椎名に惚れてんのかー?!」

 

「ち、ちげーよ!ただ、昨日手伝ってくれたし、折角だから一緒に見ようと…そう、施しをしてやったのさ…物静かなようだから、な…彼女は」

 

 顔を赤らめると思う壺だというのに。何時ものならば、だが。

 この場には椎名京もいるのでどうやら追及の手も其処まで深入りはしなかった。

 

「あ、あの…良い、の?」

 

「構わねぇーよ、大和の言うとおり昨日手伝ってくれたしな!みんなもいーだろ?」

 

「私は構わぬ」

 

「異議なし」

 

「ぼ、僕も良いと思う」

 

「オレ様も良いぜ」

 

「おっけーよ」

 

「いいよー」

 

「決まった?じゃあみんな並んでー…ハイ、チーズ」

 

 記念すべき一枚だ。

 その後、椎名京も交えて遊ぶ事になった。

 母は写真を現像する為に近くのカメラ店に行くと去っていった。

 色々な遊びを試してみるが、やはり初回だとゾンビ鬼は奇抜で楽しめる。

 そうこうしている内にお開きの時間となり、みんな帰って行こうとするが、自分に大和が待ったをかける。

 どうやら、機会を窺っていたようでみんなに別れを告げて公園に留まる。

 時間は夕刻なためこの場には2人だけ。残りたそうな小雪にも先に帰ってもらった。

 2人だけの公園は思いのほか静かである。大和から切りだすのを待って早30分。言いだそうとしては口籠りの繰り返し。

 大分気温も落ちて肌寒くなってきた。

 

「俺、椎名京を仲間に入れたいんだ」

 

 要約切り出してきた。

 

「ふむ、ここ最近思いつめておったのはソレか」

 

「気付いてたのか?」

 

「分からいでか。それで、また何故キャップでは無く私に?」

 

「それは…」

 

 一度目を瞑って開く。

 

「まずはノルンに聞いて貰ってからの方がみんなに話も通り易いとおも―――」

 

「怖いのか?」

 

「!!」

 

 言いきらぬ内に放った言葉に大和は顔を強張らせる。

 何と言うかこの少年、やる時はやるが、基本は策士の常道を行くタイプらしい。

 そこはそれ普通だが、仲間内に対してもとは。

 いや、仲間であればこそか。子供であるし。

 是非も無い。

 

「キャップ達とは私よりも長い付き合いであろう?ならば、正直申せばよい」

 

「た、確かにそうだけども…でも時間なんて…」

 

「時間の差で全ては決まらぬが、絆を育むには時間も必要であろう。まさしく時として(・・・・)と言う奴だよ、大和」

 

「そうかもしれない…だけど」

 

「それでも…」

 

「?」

 

 未だ踏ん切りのつかぬ彼の背中を後押しするとしよう。

 

「キャップならば話せば分かってくれよう。モモだって姉気分である前にこの一件は味方するであろうな。ワン子や小雪は語るに及ばず、だ」

 

 あっけらかんと此方見る大和の眼を見つめながら更に言葉を紡ぐ。

 

「無論、全員賛成ではないだろうな。ガクト辺りは真っ向より反対するは必至。それでも大丈夫だ」

 

「な、なにが―――」

 

「大和は軍師なのであろう?大和なら説き伏せられる。このグループで一番頭が切れるのは間違いなく其方なのだよ、軍師殿?」

 

「……」

 

 まだ渋るかと頭を抱える。しかし、同時に後ひと押しと言ったところだろうと心眼は告げてくる。

 小雪の一件は随分と大和に強い影響を与えたようだ。

 こう来ると、あの時の言葉は完全に裏目に出ていると言える。

 少なくともこの問題に於いては、だが。

 人間、怯えるなと言われると恐怖は増すものである。

 お化け屋敷などで、怖くないと自分に言い聞かせると逆に恐怖心が増す様に。

 全く、色々とままならない。

 

「私と小雪は何となしに察せておる故、少なくとも確実に2人は味方だ。1人で無理でも3人おればなんとでもなろう」

 

「……」

 

 大和の表情は、この一言を機に変わっていく。幼いながらも決意を秘めた良い顔つきであった。

 その後、日を改めて皆の前で大和は胸の内を明かす。

 予想通りと言うか、所謂いじめられっ子である椎名京を仲間に入れる事にガクトが反対するも、それ以外の全員が賛成の上、モモや己の事もあり、封殺された。

 そして大和主導で、椎名京に対するイジメ問題に取り組む。

 こっちは全員の協力の元、速やかに目立った動きを鎮圧。更に大和と協力して情報操作に奔走して火消しをした。

 後は当事者に対するメンタルケアのみ。

 もっとも小雪と違い、生来の性格の違いかそれなりに時を要したが、この辺りに大和にまるっと全部投げた。

 1年にも及ぶ念入りなケアの結果―――

 

「大和、好き。付き合って」

 

「お友達で」

 

 見たいなことに。

 

「どうしてこうなった…?」

 

 仕様だと思う。

 

 

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