気まぐれ神様の物語 真剣恋Ver.   作:ジーザスルージュ

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23話

「ノルン、俺は漸く気付いたぜ。世界はこんなにも残酷でどうしようもないんだってな」

 

「与一、藪から棒に何を―――」

 

「お前も気を付けろよ、悪魔のナイフは俺達の直ぐ側にあるものだ。特に俺の周りには」

 

 それは川神に来て初めての秋を迎えようとした頃。

 突然与一は何があったのか突拍子もない事を言ってきた。

 

 手で顔を覆う様にしてクネッとポーズを取る。

 フッと鼻で笑うおまけ付き。

 

 クールやニヒルを履き間違えたかのような振る舞い。

 会話がまるで成立しない物言い。

 ある意味で見慣れており、己の知るなかではある意味超えている―――

 

(廚二病とは……)

 

 一体与一に何があったと言うのか。

 少なくとも一週間前までは普通だったはず。

 そう考えた所で、1つの事柄が思い出された。

 

 ―――約半月前の出来ごと。

 

 その時は定期的な健康診断だった。

 此方に来てからは半月に1回行われており、既に此方に来てから大分経つので既に慣れた作業で戸惑う事も無く、滞りも無く終えた。

 問題はその後近くを通りかかった社員達の言葉だ。

 

 ―――何故に那須与一なのか。

 

 ―――他にも有名どころがあっただろうに。

 

 あまりにもあんまりな心無い言葉。

 否、その場で聞いた限りは当人たちに悪意はない。

 それは察せた。

 しかし、それ故に言われた当人にとってそれがどんなに受け取るかまでは考えに到らない。

 それを聞いてしまった与一は不機嫌そうに走ってその場を去ってしまった。

 止める間もないほどに足早に去り、そのまま部屋に1週間程籠ったのだ。

 籠ってからも主に義経が説得を続け、1週間目で部屋から出てきたが。

 それからは口数やテンションの低さは見られたものの、比較的何時も通りだったと記憶している。

 

 記憶していたのだが―――

 

(元々素養があったとはいえ、何故(なにゆえ)ここまで重症に)

 

「そういや、"あいつら"を殴り飛ばしたんだってな」

 

「む……ああ。あの発言は個人的にも思うところあった故、つい、な」

 

 ここで言う"あいつら"とは陰口を叩いた社員達の事。

 あの発言は己にとっても逆鱗に触れたのも同じだった。

 その場で殴り倒し、骨折などを負わせない様に加減しながら痛みはそのまま与える様に殴打。

 

 数分後にはヒュームに粛清されてしまったが―――

 どんな事をされたかと言えば一言では表せない。

 敢えて言うなら色々(・・)である。

 

「『其方に分かるのか。生まれだけを理由に言われる者の気持ちが』なーんて言ったらしいな? たっく、余計な事をしやがって」

 

「呵々、すまぬな。今しがた申した通りの故だ。許して欲しい」

 

 状況的にあの場で殴れば与一に無用なやっかみが向く事など予想は出来ていた。

 事実己がしでかした事で騒ぎが大きくなり、謂れもない咎めを軽くではあるが与一も受けてしったのだ。

 あの一件に関して自体は反省も後悔も微塵もない。

 誰だって分かっていても納得できない事はある。

 私にとってあの社員達の言動がまさにそれ。

 

 偶々帰省していた母上からは大目玉を食らい、父上に大笑いされたがそれはそれ、これはこれである。

 

「ま、そのせいでこれから海外に行くんだったか?」

 

「うむ。立場的にこれが社交界デビューと言う訳でもあらぬがな。それでも回数が少ないのも事実故、偶には行って来いと父上から申し遣った」

 

「ハッ、御愁傷さま」

 

 再びクネっとポーズ。

 少し昔の大和を見ている様だ。

 しかし、これはこれで面白いのである程度付き合う事にする。

 それに似合ってはいる―――似合っては。

 

 ―――後々元に戻った時地獄を見るのは明々白々ではあるが、敢えて無視。

 

 ではな、と与一に別れを告げてその場を後にした。

 

 

 

 

 

 ―――九鬼家所有の飛行場。

 

 毎度お馴染と言えばお馴染の場所。

 基本的に九鬼の人間は此処から世界各地へと足を運ぶ。

 それもこれもセキュリティの観点らしい。

 如何に従者部隊の護りがあるとはいえ絶対ではない以上は用人に子地事は無い。

 その点理に適っていると言えよう。

 

 飛行場には思いがけない人物がいた。

 ノースリーブの白いシャツにズボン、銀色の長髪を風に靡かせ、威風堂々として空港で出迎えてくれたその人物―――

 九鬼揚羽その人である。

 

「姉上もこちらに?」

 

「うむ。前日に急遽我もノルンと同じ、中国のパーティに出向く事になったのだ。道中よろしくな」

 

「はい、よろしくお願いします姉上」

 

 共に飛行機へ登場し中国へ。

 姉上も大差を付けて勝負に負けてから最初は気落ちしたものの、持ち前の性質から物の数時間足らずで自力で復帰された。

 流石は、と驚嘆の念を禁じ得なかったのは記憶に新しい。

 聞けばかなり一方的だったようで、紋や兄上はかなりご立腹。

 というか、紋はまだ随分と怒っている様子。

 姉上はそんな様子に笑って喜び、気にしていないと語っていた。

 何と言う剛毅さか。

 

 話は変わるがこの身が"飛行機に乗る"という事で再び堕ちるのではと思うモノがいるかもしれない。

 が、しかしそうはならない。

 何故ならば姉たる九鬼揚羽が乗っているから。

 この家系自体キャップ程ではないにしろ此処でかなりの運気を持っている様で、極東本部や九鬼親族の誰かと言えばどうやらある程度の幸運値の判定を補ってくれる様なのだと九鬼家に入ってしばらくして気付いた。

 ならば今まで堕ちていたのは何故かと問われれば―――単純に本部から遠かったからの一言に尽きる。

 此方も流石と言えば流石か、父上に到っては麻雀をやれば一発で天和をだし、ポーカーをやれば何をやってもロイヤルストレートフラッシュを出す御仁。

 

 ハッキリ言ってやってられねーという話だ。

 

 ―――閑話休題。

 

「鉄鋼部門、早くも右肩上がりだそうで。やはり蘭鉄重工との商談が大きかった様子」

 

「うむ。上手く話が纏まって良かった。まぁ、上手く行きすぎて縁談まで話が飛んだのは些か予想外であったが」

 

 蘭鉄重工。

 中国における鉄鋼系部門で最近出没してきた新星で業界第3位の成績を叩きだした企業である。

 ちなみに、今回向かうパーティの主催者。

 

「呵々、見目麗しい姉上ならば件の企業に関わらず引く手数多でありましょう。年齢問わず」

 

「まさしくズバリだな。その縁談相手も30も歳が離れておってはな……それに我は―――いや、なんでもない」

 

「30差とはまたなんとも……」

 

「で、あろう」

 

 何かを言いかけた姉上の言葉を聞かないフリをして話題をそのまま持っていく。

 

 姉上は何時ぞや友人宅に泊まりに向いた時、その家の1人の執事に懸想らしきものを抱いたと耳にした覚えがある。

 その人物は何やらその家の主、即ち自らの雇い主と恋仲になり近々結婚を予定されているとも。

 色々と心中複雑なのだろう。

 

「このパーティ、有意義なモノと相成れば良いのですが」

 

「フハハハ! そう心配する事もあるまい。商談成立を記念した物だ。そうややこしい事には成るまいよ」

 

「そう願うばかりです」

 

 目的地に近付くにつれて増してゆくこの嫌な予感を払拭して欲しい限り。

 

 切に長う―――

 

 

 

 

「―――まぁ、所詮叶わぬ夢想という事か」

 

「貴様ら、動くんじゃないぞ!!」

 

 上海にある蘭鉄重工所有のホテル。

 催されたパーティの会場で乱入してきた珍客。

 耐久性に定評があるAK-47の発展型のAK-74突撃銃を構えた6人ほどの覆面の集団が突然会場に押し入ってきた。

 会場は一瞬騒然になるものの天井へ打った威嚇射撃で全員沈黙し、今は静かなモノ。

 

 ―――無論、襲撃グループが喋っているので比喩表現だ。

 

 剣呑な空気を身に纏い此方を見渡している覆面衆。

 喋っている言語は中国語で動きからして軍隊あがりの傭兵か。

 だがそれよりも肝心な事は―――

 

(我が圏境を潜り抜けようとは、な)

 

 こういう事態も遺憾だが初めてではない。

 だからこそ圏境をビルから半径200メートルまで広げていたと言うのに、この集団はそれを掻い潜ってきたのだ。

 

 どう見ても強さの(・・・・・・・・)壁を越えてない(・・・・・・・)にも関わらず。

 

(尤も、それも魔宵伽を用いて直ぐさま割れたが)

 

 武装集団は気配を隠匿する高位の呪符を所持してのが原因である。

 加えてそれ以外にも唯のテロリストにしては装備が充実している点も気になる所。

 

 ―――装備と言い、呪符といい、誰かが手引きしているのは明らか。

 

 更に心眼が警告を発している。

 敵は目の前だけではないと―――

 それに従って魔宵伽を広域に広げてみた。

 狙撃手か、と思いきや感覚に引っ掛かったのは眼の前の者達と同じ強力な認識阻害の呪符で隠された4連装地対空ミサイル搭載可能の車両を捉える。

 しかも2台。

 

 鎮圧に乗り出そうとした姉上を思わず止めた。

 此方を睨むように鋭い眼差しで非難の視線が心苦しい。

 その様相に苦笑いを浮かばてしまいながら事情を小声で話す。

 

「何故止める!? 奴ら程度なら此処で潰せるぞ」

 

「それは私も百も承知。然れど敵はミサイルを攻撃手段として持っております」

 

 姉上の顔が驚愕に染まった。

 

「真か……?」

 

「然り。ここは相手の出方を見るべきかと―――」

 

 続けられる筈の言葉は武装集団によって遮られる。

 九鬼の次男は姿を現せ、と―――

 

 つまるところ、この身の事だ。

 姉上を制止し、此処はお任せを、と言って振り切り、前へ出る。

 

「我が九鬼家の次男、ノルンである」

 

「ほう、素直に出てきたな」

 

「九鬼は世界に先立ち民を導く存在、故に例え如何なる相手であろうと背を向ける道理なし!」

 

「その物言い、まさしく九鬼だな。一緒に付いてきてもらうか。抵抗しても構わないがその場合―――」

 

 王道ともいうべき分かりやすいパターン。

 だが思い通りにさせるつもりはない。

 

「心得ておる。然れど素直には行けぬな」

 

「立場が分かって―――」

 

「故に、この場におる者のみ、口約束で構わぬ。誓って貰えぬか? 他のモノには(・・・・・・)一切危害を加えぬ(・・・・・・・・)と。然すれば、この身は大人しく其方に従うと誓う。抵抗もしない」

 

「……良いぜ、口約束で良いならな」

 

 口々に6人は構わないと言う。

 ならば、と改めて危害を加えないこと誓わせる。

 一文を加えて。

 

「もしも約束を違えた時はその舌、たちどころに腐り落ちるものと心得よ。よいな?」

 

 そんな言葉も虚仮脅しと取ったのか、6人とも肯く。

 こっちへ来い、と両腕を拘束されて連れて行かれる。

 

 

 

 

 九鬼揚羽の心は憤怒で満たされていた。

 弟を、家族をムザムザ連れていかれてしまったが故に。

 この場には4人の武装集団が残っているが、迂闊には手出しも出来ない。

 弟が言っていたことが本当なら此処を丸ごと爆撃される恐れがある。

 実に歯痒いばかりだ。

 

 既に連れ去られて30分近く。

 こうしている間にも状況は悪くなる一方。

 

(どうする? このままでは埒も明かぬが下手に動けば被害も増す)

 

 揚羽1人であったなら、まだ対処も楽だっただろう。

 しかし、このホテルにはパーティの参加者以外にも宿泊客も多くいる。

 万が一が起こり得ては大事だ。

 そんなもどかしから焦りばかりが先走る。

 

 すると―――

 

「もう、もういや! 早く返してよ! 目的はさっきの子だったんでしょう!?」

 

 1人の女性が声を上げた。

 監禁拘束された状況に耐えられなかった様で、耳に響く甲高い声で武装集団で責め立てる。

 

「よせ、やめぬか!」

 

 案の定と言うべきか、武装集団は威嚇発砲。

 責め立てていた女性はその音に恐怖して尻餅をつく。

 

「動くなって言っただろうが!」

 

「ひっ……」

 

 怯えて後ずさる女性。

 そんな態度に武装集団は嗜虐的な部分を刺激されたのか、雰囲気が怪しい色を帯び出す。

 尻餅をついて立てない女性の腕を掴み自分達の元に引き摺りこむ。

 

「なかなか上玉だな、やっぱパーティに参加するお嬢様ってか」

 

「で、どうするんだよ?」

 

 野卑た目と声で話す彼らの中ではとっくに答えは出ている。

 これは茶番だ。

 

「決まってんだろ? 此処で居るのも退屈だし、な」

 

 九鬼揚羽は見ておれぬと動こうとするが―――

 

「おっと、動くなよ九鬼の御令嬢さん。あんたが化け物みたいに強いのは知ってんだ。動けば弟の安全は保証しないぜ? 生きてさえいれば良いみたいだからな」

 

「きさまらぁ……!!」

 

 握りこぶしから思わず血が滴る程力が入る。

 同じ女性として、何より人間として許せるものではない。

 野卑た声で1人の人物が女性のドレスを破かんと、手を伸ばす。

 

 

 瞬間、響き渡る悲鳴―――

 

 

 4人が4人とも全員悶絶して床を転げ回っている。

 どうやら顔、それも口周りに異常がある様で、一様に口を押さえてなお響き渡る獣如き叫びを上げ続け、ついには被った覆面すら外してしまった。

 やがて1人の男が口を押さえていた手を外すと其処には赤い歪な三角形の肉片―――

 

 ―――人間の舌だ。

 

「な……これは一体―――」

 

 

 

 

 

 

「おい、どうした!? おい返事をしろ!!」

 

 男は耳にしていたインカムに必死に声を掛ける。

 本来インカムの発する音量は其処まで大きくは無い。

 しかし、今し方聞こえた悲鳴は隣にいる己はおろか運転席の2人にすら響き渡る程の絶叫だった。

 

 そしてその悲鳴が己にとって予想通りの状況である。

 だからこそ呵々、と笑う。然も可笑しいと言わんばかりに。

 

「何が可笑しい!? 同士に何をした!?」

 

 笑い声に腹を立てたか、或いはこの悲鳴が己の策の結果と勘付いたか。

 隣の男はこちらの米神に銃口を突き付ける。

 

「どうやら、其方(そなた)の同士とやらは我との約束を違えた様だな?」

 

「何を――」

 

「申した筈。約束を違えばその舌はたちどころに(・・・・・・)腐り落ちる(・・・・・)、とな」

 

 先程交したのは唯の口約束ではない。

 契約に基づいた条件を口頭で告げ、それを必ず履行する魔術、呪言遵守(ギアスシール)

 

「貴様!」

 

 男の引き金に掛けた指に力掛かる。

 怒りにまかせて引くつもりのようだ。

 人としては正しいが、傭兵としては間違った選択である。

 そして何より―――

 

「―――遅い」

 

 車の防弾ガラスを破って胸から一本の矢が己の胸から突きだした。

 "矢"と表現するにはそれは些か奇妙な物体で、余りに大きく、金属の板の様な見た目は先が尖っているため、"剣"と表現した方が正しいかもしれない。

 驚愕する男達を置き去りにフッ、と口角を釣り上げる。

 

 ここは詰みだな―――

 

 呟きと共に、車内は閃光と轟音に支配されるのだった。

 

 

 

 

 ―――あるビルの屋上

 

「距離4508m。この程度造作もない」

 

 己の長弓で以って()を撃って、目標である車内の己を射抜いたの確認した。

 追跡防止で色々と街中を暫く走らせ、徐々に郊外に出る心算だったようで車は現在人気の限りなく少ない場所にあった。

 既に車内は音と閃光の衝撃で無力化されているが。

 無論、その中でも尤も人気が少なくなり、かつ停車している機に中てているので周辺被害も最小限。

 

「さて、残すところはミサイルのみか」

 

 言うまでもなくそちらも既に対策済み。

 

 

 

 

 ―――路上で隠れている(つもりの)車両2台。

 

 彼らにとってそれは楽な仕事だった。

 目標は九鬼家の次男の誘拐。

 それさえ達成すればその後は好きにして良い。

 ある日匿名でコンタクトを取ってきた人物が誘拐を依頼してきた。

 摩訶不思議な札とこの車両や装備と共に。

 

 最初は疑ったモノの成功すれば莫大な富が入り、加えて装備と共にその前金も既に送られてきてあった。

 ミサイル運用すら可能な車両や何よりその札もひっくるめて向こうが用意してくれるのだ。

 経費も実質唯で、しかも金まで入るなんて、こんなに割のいい仕事は無い。

 

 その筈だったのに―――

 

「こら、大人しくしろ!」

 

「クソっ!!」

 

 気付けば自分達はバレ無い筈の状況でありながら当局に包囲され、何時の間にか持ち前の装備の全て、銃やナイフはおろか手榴弾ですら信管を起動できなくされていた。

 ならばミサイルはと言えば、こちらも使用不可能。

 故障では無い―――外部からの要因で発射装置やミサイル自身も既に使えなくなっていた。

 

 何故だ、簡単な仕事の筈だったのに―――

 

 当局に拘束されながら、何処で歯車が狂ったのかと頭の中で埒もない考えに浸るのだった。

 

 

 

 

 

 ―――パーティ会場。

 

「これでそちらの持つ全ての手段が無力化された。其方(そなた)らの負けだ」

 

 告げた所で、それ言われた側は口を押さえてそれで所で意味は無い。

 しかし姉上は驚いて此方を見る。

 連れされた筈の弟が目の前に現れれば驚きもするか。

 

 種を明かせば魔宵伽による感覚操作で、拘束する段階で身外身と入れ替わり連れ去られた。

 しかも破壊される事で音と光の衝撃するよう術式を加えるオマケつき。

 連行される時にもう一方の身外身に屋上から狙撃して車の方は制圧させた。

 魔宵伽によって認識阻害も無効化し、連れて行かれると同時に当局へ連絡。

 迅速に鎮圧に到ったのだ。

 

 姉上には魔宵伽の説明を気配遮断とした。

 この技自体説明しても要らない軋轢を生み得る。

 

「そうか、兎も角無事で何よりだったぞノルン。それどこか逆に襲撃犯を迅速に無力化するとは流石は我が弟だ! フハハハ!」

 

 どんな時でも剛毅な姉に笑って返すのだった。

 

 

 

 

 

「―――とまぁ、そんなこんなでパーティは有耶無耶と相成り、こうして帰国した次第」

 

「いや、どんだけだよお前の不幸値は」

 

 まさかこいつも特異点か、などと後半ブツブツ隣で喋っているのは那須与一その人。

 現在極東本部の自室。

 申し子達―――と言っても―――義経は就寝、清楚は部屋で読書中で現在部屋には酔い潰れて寝ている弁慶と付き合わせれて結局最後まで起きている与一だけ。

 

 件の騒動から既に4日が経っている。

 帰って来た時にはそれはもう手厚い歓迎を受けたものだ。

 4人にも運悪く入られたらしく、義経に到っては泣かれてしまった。

 義経の就寝する時間帯も早いのも泣きつかれたのが原因だろうか。

 

 一頻り夕飯で盛大に盛り上がったが、弁慶はそれでも物足りなかった様で与一を強制的に伴って押し掛けに来た。

 尤も、件の人物は開始1時間で酔い潰れたがそれでも此方を気遣いっての事。

 膝上で気持ち良さ気に寝る弁慶に感謝をこめて頭を撫でた。

 

「んっ……ン~…zzz…」

 

「はっ、そうしていれば鬼も可愛いもんだ」

 

「おやおや、鬼の居ぬ間に、という奴か? 私からしてみれば普段から弁慶は可愛いぞ」

 

 そう言った瞬間、この世のモノとは思えないものを見たかのような顔をして後ずさる与一。

 何か其処まで驚かれるような発言した覚えは無い。

 

「ほ、本気かノルン!? お、お前、妾の子でもやっぱ九鬼なんだな……」

 

 こんなことで九鬼たると言われても正直微妙である。

 事実しか言ってないと思いながらも、苦笑いは禁じ得なかった。

 何やらやっぱりこいつは俺と同等かそれ以上の、なんて言葉が与一から微かに聞こえる。

 どんだけなのだ。ラノベ意外に一体何に影響されているのやら。

 

 そんなこんなで飲んで語りながら夜は更けて行った。

 

 

 ―――そして物語は2009年、春へ―――

 

 

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