「いよーっし! 行くとしようかー」
「凄いやる気だな、弁慶」
「弁慶ちゃん、す、少し落ち着こうよ……」
開始からテンションクライマックスな弁慶を宥める清楚。
惰性がモットーな弁慶らしからぬ振る舞いは見る者を戸惑わせる。
ぶっちゃけて、ほぼ全員が置いてけぼりを喰らっているのだ。
「姐御、テンション高くないか?」
「それだけ心待ちにしておったのでは?」
主に、川神水を。
歓迎会が終え、4人が転入してきて最初の休日。街の案内を義経と清楚が願い出たのが始まりだった。
基本的には一通り地図などを渡され、極東本部から学園までの周辺の道のりは頭に入ってはいるがそれだけでは街の雰囲気までは肌で感じる事は叶わない。
そういう訳で案内を頼まれてこれから街へ繰り出す予定なのだ。
しかし、これだけでは弁慶のテンションの高さの説明にはなっていないだろう。彼女が此処までハイテンションな理由は、一重に
誕生日にも進呈した件の川神水がこの町の商店街である金柳街で入手した事を話したらこうなった。
一応念を押してはいるが―――
「弁慶、今一度申すが事情が特殊故、直接には
「私の川神水への熱意しだい、でしょ。分かってるよ」
どれだけかかるかは未知数だ。心眼はそれなりに時を要すると、曖昧な答えを告げている以上最後にした方が無難だろう。
「では、参ろうか」
5人で街中を練り歩く為に。
―――川神駅近辺。
「駅前だけあって流石に人が多いね」
交通の要所ともなればこれ位の人だかりは必然である。
一般的な都会の駅前を思い浮かべてくれれば分かりやすい。
「クッ……こんだけ人がいちゃどこから組織の人間が襲ってくるか分からねえぞ……」
―――この面子が揃ってなお追い返せない敵というのはどれだけの存在なのだ。
与一の独り言は聞かなかった事にして案内を進める。
といっても―――
「流石は義経達、注目の的であるな」
4人共美形という事も相俟って現在進行形で注目の的。
野次から写メを取っていた者達から義経ちゃん、ポーズとって、何て声が聞こえてきた。
「え、えっと……こうだろうか?」
律儀に応えて刀を抜いて構える義経。喝采と共に電子音がそこいらじゅうから響き渡る。
しかし、これ以上続けてもパニックに陥るだけ。
言霊を使って集まった野次馬達を散らせた。
「相変わらずデタラメだねぇ」
「これ以上集われても迷惑は必須故な」
周辺施設をざっと紹介して次に移った。
―――繁華街ラ・チッタ・デッラ。
川神駅からほど近い此処は若者がよく集う場所だ。
周辺の施設も"いかにも"なものが多い。
「なんだか街並みがガラっと変わったね」
「別名イタリア街といわれるほど、この辺りはヨーロッパ、ひいてはイタリア色をモチーフにして作られたそうだ」
この辺りは完全に大和からの受け売りである。というのも、この辺りが出来上がったのは約2年前とかなり新しい物だ。
小学校まではこの辺りは金柳街に近い景観の場所だったと記憶している。
何時であってもこういう街並みの変化は時の移ろいの速さを実感してしまう。
簡易な認識阻害を展開して先程の様なヘマはしないように注意して、そのままちょっとしたウィンドウショッピングを楽しむ。
「わぁ、可愛いぬいぐるみだな! おおーい、与一もこっちにきて一緒にみよう」
義経が与一を呼ぶ者の、そこは思春期真っ只中の初心な少年。照れて距離を開けたまま近付こうともしない。
ショボーン、と肩を落とす義経。
「あいつめ……主を悲しませるとは」
「まぁまぁ、良いではないか。別行動をせぬだけ進歩しておろう」
何時の間にかいなくなるケースが過去に多々あっただけ、マシだろう。
剣呑になりつつあった弁慶を宥めて、店を冷やかして周る。
「強い気が集まっていると思って見てみれば……」
「おやまぁ、何やら英雄達が揃い踏みだねぇ」
「モモと、松永先輩ですか」
私服姿のモモと松永先輩とはち合わせるとは。
聞くところによるとデートというの名の街の案内らしい。こっちとほぼ同じという事か。
「そっちも似たようなもんか」
「うむ、変則的なダブルデートだ」
「……確かに変則的だねぇ」
「で、デート……」
「義経ちゃん、大丈夫?」
「顔真っ赤だよ義経」
何やら赤くなってあたふたしている義経は弁慶と清楚に任せよう。
己の変則的発言に松永先輩がこちらを見て、次いで離れた所にいる与一を見る。
男子の内1人は離れて行動し、もう一人が女子の相手をしていれば可笑しく見えても無理は無い。
モモが話題を変えてこちら側のこれからの流れを聞いてくる。
予定としては今から少し早めの昼食を取り、川神院へ向かい、仲見世通り、金柳街へ向かう予定だ。
それを聞いたモモが―――
「いやぁ、奇遇だな。私達もこれから昼を取ろうと思ってたんだよ」
「……詰まる所、奢れと」
「ノルンはこういう時に絶対に相手に払わせないからな」
確信犯め、と悪態ついてもモモはゴチになりまーす、と開き直っている。
ヤレヤレ、と頭をふる。
清楚や義経が気を使ってくれるが、こういうのは男の役目だと無理やり押し通す。
「松永先輩も遠慮されませぬよう」
「お、私も良いのかな」
無論です、と首肯する。
「こういうのは男の甲斐性というもの」
「あはっ、男の子だね。んじゃま、遠慮なくゴチになりましょう」
大和からオススメされた喫茶店で軽食を頂く。
頼んだ料理に片っ端から納豆を掛けるのは流石納豆小町。しかし、流石に普通のバニラアイスには合わなかったと記しておく。
一通り食事を終えて喫茶店を出て、そのまま繁華街を後にした。
―――川神院。
己のとっては最早お馴染の景色である其処は義経達にはやはり珍しいのか興味深げに門の周りか辺りを見渡している。
「凄い威圧感だね」
「義経も驚いた。日本が誇る無敗の流派の総本山だけあって凄い迫力だ……こっからでも感じる大きな気配が学園長のものか?」
「うむ。今の時分ならばちょうど修行僧が絞られておる最中だろうな」
「ご苦労なこったな」
それはそれとして、だ。
横に眼を向けると視界に入るモモと松永先輩。
繁華街からこちらに付いてきているのだが、案内はどうした。
「今日案内する所は既に回った後だ」
「私は家が仲見世通りの辺りだから」
「然様か」
折角来た川神院だが、事前に許可なく敷地内に部外者が入るのは本来禁じられているので此処で見せられる事は特にない。
みんなを引き連れてこのまま仲見世の方に向かう。
筈だったのだが―――
「勝負だ、川神百代!」
「モモ、
「あー……メンドイなー」
どうみても雑魚じゃないか、などと漏らすモモ。
メンドイという気持ちは同意する。どうみても修行僧にすら負けるレベルの実力者。
道を塞ぐようにして阻む空手の道着を着た男はそのレベルで一体どうして其処まで自信に溢れているのは不思議でならない。
予想するに、地元で負け知らずという蛙タイプだろう。
心眼も己の予想を肯定している。
別段、其処はどうでもいい。
では何が言いたいかと言えば―――
「HA・NA・SE!」
「だが断る」
この身の腕を掴んで離さない武神殿に物申したい。
彼はあくまでモモへの挑戦者であり、こちらに用は無い。なので、さっさと案内に戻らせて欲しい。
脇で4人も待っていることだし。
抗っていると今度は腕はおろか背中に抱きついてきた。
大概にせよ、だが断る、無益な応酬が続く。
「バカにしてんのか、お前らぁーー!」
痺れを切らした地元負け知らず(笑)が殴りかかってくる。
今モモに突撃されるということは即ち、負ぶさられてる自分に向かってるという訳で―――
「はぁ……モモではあらぬが、七面倒な」
「オラあぁーーー!」
お瑣末も振りかぶった拳に対して一歩踏み込む。
「ブッ!?」
背後にいたモモに見事命中。ダメージは無いだろうが鼻っ面に入ったため、僅かに怯んだのだろう。
真横にあるむさ苦しい顔にコツン、とノックする様に小突く。
音もなく崩れ落ちる格闘家。
「大丈夫か、モモ?」
「ノ・ル・ン……確信犯だろ!?」
「離れぬ
ギャースカ騒ぐモモに場の後始末を任せて次に場所に移る。
アレの面倒を肩代わりしたのだ、これぐらい任せてもバチは当たるまい。
―――仲見世通り
川神院から眼と鼻の先にある商店街。
古くからある老舗が多く、中でも久寿餅は名物品として有名だ。
現在は元の5人で行動中。燕先輩は晩御飯の買いだしと準備とかで別れた後。
「活気が良いな」
「商店街でもあるからな。観光名所としても有名でもあるし」
この界隈は自分よりもモモの方が詳しいし顔も広いがそれでもある程度顔を知られている。
主にモモの相方的に。
複雑甚だしい。
「―――あそこにある練り物点の川神ちくわは絶品だぞ」
「何、そんなにか!? しかし私はちくわには愛ゆえにうるさいぞ?」
「あぁ、存じておるよ」
「おや、ノルンさん」
案内をしていると見慣れた和菓子屋の女性から声を掛けられた。
「こんにちは
「可愛らしいお連れさん方で、どなたかいいひとでも?」
「呵々、相も変わらずですね」
上品な出で立ちな和服美人だというのにこういうのが好きな御仁である。
モモや小雪とお邪魔した事もあるが、やはりこんな感じに上品な笑みと好奇な視線を絶やさない。
全く、和菓子に対して意見を出していたのが切っ掛けだった筈なのに、会えば何故か事あるごとにコイバナに持っていこうとする。
「へぇ、なかなか美人さんじゃないか」
「ノルン君も隅に置けないね?」
清楚に弁慶、文面に反して雰囲気が怖いぞ。
そんな色のある関係ではない。断じて。
「あらあら、照れるわ。こんなお婆ちゃん捕まえて妬かれちゃうなんて」
「や、私では倖さんとは釣り合いませぬよ」
呵々、ウフフ、と笑い合う。
和む雰囲気のなか、えっ、と4人全員から声が上がる。
「お、お婆ちゃん?」
「呵々、やはり驚くであろう? 女性に歳を尋ねる非礼と思うたが、小6の頃訪ねた時還暦はとうに迎えた……と聞き及んでおるぞ」
4人全員、あまりに驚きすぎて声もないといった具合だ。弁慶、清楚も思わずマジマジと倖さんを見つめており、与一は1、2歩後退、義経に到ってはこっちと倖さんを交互に見ており、小動物的だ。
気持ちは分かる。
初めて聞いた時は驚いたものだ。ある意味鉄心殿以上のツワモノである。
「それはそうと、新しく新作が出来たんですよ。また味見して意見を下さいな。お連れさん方もどうぞ」
差し出されたのは手のひらサイズの白兎をモチーフにした饅頭。手にとって食んでみる。
ここは饅頭で有名な老舗の和菓子店。柔らかくモッチリした皮と程良く甘い餡のマッチングは流石だ。
「美味しいね、これ!」
「うん、とても美味しい!」
「川神水にも合いそうだ」
「……確かにウマイな」
概ね皆に好評の様だ。
ただ弁慶、幾らなんでも川神水は合わないと思う。
「ふむ、この感じと大きさなら餡はもう少し練って、皮の部分はもう1ミリと僅かに薄くした方が良いやもしれませぬ。一個ならともかく手の平サイズなら複数買うでしょう。然りとて複数で食べるのも些か食べ応えがあります」
「どこの評論家か」
「あらあら、じゃあそうしてみましょうか」
「何時もここではこんな感じなのか?」
「大体、な」
「家の饅頭の人気が上がった切っ掛けは彼が作ってくれますからね」
倖さんの話を聞いて義経がキラキラした眼でこっちを見る。
苦笑しながらそろそろ、時間も時間なので、と後にすることにした。
離れようとしたところでチョイチョイ、と手招きしている倖さん。
近付いてみると―――
「所でノルンさん」
「はい?」
「ホントに誰もいないの? 私的にはあの清楚とした子がオススメよ。あ、でもポニーの子も良いわねーまっすぐな感じで。逆に女としてならあの瓢箪持っていた子かしら……どうなの?」
「倖さん……」
最後まで彼女らしい感じで締めくくられたのだった。
―――金柳街
今日の案内の最後の場所。自分にとってはとても馴染み深い場所だ。
「来たぞー! ここがそうなのか?」
「うむ」
「よし! じゃ、早く行こう行こう」
グイグイ、と腕を引っ張って先へ行こうとする。
今の段階でこの興奮具合で見つけられるだろうか。
「テンションたけーな、姐御」
「弁慶ちゃんの場合ここが主だからね」
残りの3人は遅れながら付いてくる。
仲見世と同等以上に活気立つ商店街の街並みに一歩入れば顔なじみの人たちが親し気に挨拶を投げかけてくる。
「おう、坊主。偉い別嬪さんだねぇ―――ってその人、あの」
「あぁ、おやっさん。騒ぎは法度で」
騒ぎかけた鮮魚の店主を静めて―――
「お、ノルン君じゃないか。別嬪さん達連れてデートかい?」
「呵々、そんなものです」
野次を投げる青果のおばさんに応えて―――
「キヒヒ、こんにちはノルン君」
「うわ! び、びっくりした……」
「初見では無理からぬか。こんにちは店主」
「キヒ、酷いじゃないか。本当の事だけでも……キヒヒ」
鮮肉店の店主の独特の雰囲気に義経が驚いたり―――
他にも並ぶ店にも相応に声を掛けて貰い、交流を温めた。
「ノルン君、人気者だね」
4人はただただ感心するばかり。金柳街でやっている個人経営――と思しき――の店の人間は殆ど親し気に声を掛けてきたのだからそれも当然といえば当然だ。
「有難う。さて、これで一通り周ったのだが―――」
「どこにもなかったよね? 狐狗狸なんて店」
「確かになかった」
弁慶達の疑問は尤も。
しかし、無かったのではなく、
こうして改めて客観的に見てみるとやはり彼の張った人払いの凄さが窺える。
マスタークラスやそれに準じる実力者4人全員の意識に掠りもしない。
店の名前を告げているにも拘らず、だ。
「初めに申した通りだ。仕掛けを見破るか、真実ソレを求めておらぬ限りあの店は見つける事は叶わぬ」
「上・等! 私の川神水への想いをなめるな!」
「それって、声上げて言う程の事か?」
与一のツッコミも聞こえていない様で、商店街を勇んで歩んでゆく弁慶。
凄まじい熱意である。
どれくらいかと言えば、気迫で漏れ出す闘気で陽炎が発生するぐらい。
―――2時間後。
夏も近い6月と言えど辺りも大分薄暗くなり始めた。
商店街の人通りも少なくなり出したのが分かる時間。
勇んで歩いていた弁慶はと言えば―――
「駄目だ……何処にも見つからない…」
「大丈夫か、弁慶? そら、水でも飲んで」
無言で受け取る弁慶。
返事をする気力もないらしい。
(然りとて、妙だ。弁慶の熱意と目標である店の名前を知っておる以上30分もすれば見つけられと思うたのだが……)
そう考えた時、心眼はその仮定を否定した。
ならば何が原因かと考えを巡らせた時、狛さんの言葉が頭に蘇ってきた。
―――本当に欲した者、もしくは店の仕掛けに気付けるものしか―――
―――本当に欲した―――
言葉の一節が浮かんできた時、同時に己の失態を悟る。
(そういうことか……多重に掛けておったのだな)
簡単な話、店の名前を知っていても、こんどはそれすら認識阻害の効果対象になるのだろう。
本来、認識阻害の効果を術式の観点から見れば隠している対象物の名前や見た目など具体的に事前に知っていれば個人差はあるが掛りにくい物だ。
なんであれ、探すものを強く意識すれば自ずとそれを阻害するモノとぶつかり合う。ようは探すものと隠すものの根比べ。
しかしこの認識阻害は事前にそういった聴覚に基く情報に対して視覚情報と合致しない様になっていたのだろう。
即ち、店、建造物という視覚情報と、店の名前という聴覚情報、二つに対する認識阻害だったのだ。
具体的には片方は通常の認識阻害、もう1つは特定のキーワードを元にした思考に対して記憶と視覚情報を錯乱させて認識させなくするという暗示催眠。
本来異なるこれらの術を併合し、1つの呪として設置するというのはなかなか出来るものではない。
ましてや、一度張れば術者がこれを管理しない永続型とは、地味だが恐ろしくレベルが高い代物である。
(流石は落ちぶれても神様、と申した所か)
なまじ高い心眼と対魔力があるが故に盲点。勉強になるばかりだ。
だが、店を隠す為だけにこれだけの高レベルの隠行を用いるなど、どんだけ道楽気分なのだろうあの御仁。
此処まで来ると商売をする気概が皆無なのは間違いない。
「あー、弁慶。見つからぬ理由に見当が付いたぞ」
「何、本当か」
「うむ、まずは謝ろう、すまなんだ。これは私の失態でもある」
どういう事だ、と弁慶は首を傾げるが時間も時間なので詳しい説明は省かせて貰おう。
「で、どうすればいい?」
「単純だ、探すのではなく求めればよかったのだよ。最高の一品を、極上の川神水を」
「求める?」
「むむ……なんだかなぞなぞみたいだな」
「難しい事は要らぬ。ただただ、思い浮かべれば良い。そして思い浮かべたそれを強く求める事だ」
小首を傾げながらも弁慶は念じるかの如く眼をつぶる。
待つ事5分もしない内にあ、と眼を開けて首を動かし一点を見つめる弁慶。
そして、彼女は呟く。
―――見つけた、と。
他の三人も振り向く。
見つめる先にはこの間もお邪魔した見慣れた看板。
「狐狗狸……ここだね」
「ってか、真ん前かよ!」
「今まで気付かなかったぞ」
「はぁ……なんだか今日一日で凄い驚きの連続だよ」
「さて、目的のモノを見つけられたのだ。お邪魔するとしよう」
2時間も探し回ったというのに、いざやってみれば物の5分足らず。
変な倦怠感を禁じ得ないみなに入るまで平謝りを続けて店に入った。
中には入れば、店主狛がいらっしゃい、と静かに歓迎してくれる。
4人でそれに会釈して応える中、弁慶は周りに眼を輝かせていた。
飾られている瓶の中には川神水もあり、分かる人には分かる一級品。彼女は目敏く見抜いた様だ。
興味深そうに狭い店を眺める4人を置いて狛さんに話しかける。
「全く、見事にしてやられました。ここの人払いの呪が異なる効果を併せ持つ多重複合式とは思いませなんだ」
対して狛さんは柔らかい笑みを浮かべた。
「フフ、それに気付けた辺り優秀だね君は。後ろの子達はお友達かい?」
問いに対して首肯で返す。
興味深げに4人を見つめる狛さん。武士道プランの、という問いに再び首肯。
「今日は弁慶たっての頼みで
彼女がここの川神水を気に入った事を話すと、嬉しそうに彼は笑う。
「それは光栄だな。とすると、彼女が実質この店の客第2号か……どれ、彼女にも何かプレゼントしよう」
そう言って彼は奥の方へ消えて行った。
弁慶を呼び、事情を話す。
その後戻ってきた彼が手に持つ川神水を弁慶は喜んで受け取った。
「でも、いいんですか? 本当にこんな一品を貰ってしまって」
「構わない。お客第2号の記念さ。一度来られれば次来るのにそう困ることは無いだろう」
コツは掴んでる筈だ、と語る狛さんにハイ、と肯定する弁慶。
左程広くない店内、直ぐに見終わり、時間も時間で帰る事に。
またいらっしゃい、という変らない風変わり店主の言葉を背に受けて店を後にしたのだった。
「あー、本当に良い店だったな。探すの大変だったけど来たかいがあったよ、ありがとうなノルン」
「どう致しまして」
「よかったな、弁慶」
弁慶は終始笑顔で貰った瓶に頬ずりして嬉しそうだった。