気まぐれ神様の物語 真剣恋Ver.   作:ジーザスルージュ

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40話

 一触即発の雰囲気で睨み合う7人の男女と5人の女集団。仕置き人衆と雪花、妖星衆組。

 しかし、それぞれが浮かべている表情は千差万別。

 好戦的な笑みを浮かべる者、表情を変えず無表情な者、微笑みを浮かべたままの者、警戒の色を見せる者と様々である。

 

「それで、誰が誰の相手をする?」

 

 口を先に開いたのは雪花。

 いの一番に応えたのは酔花だ。その表情は品定めの様な視線を川神院総代と九鬼家従者部隊零番に向けている。

 

「アタシはご老体2人を貰うよ。あいつらならアタシも楽しめそうだ」

 

「佐々木といい、お前さんといい、近頃は意気の良いネエチャンが多いのう」

 

「ハッハッハッハ! 言うではないか女」

 

 不敵に笑顔で笑い合う。

 しかし、何かにつけては赤子、赤子と言う九鬼家の切り札が、極々自然に酔花に対して女と口にした。

 目の前に立つ遊女の様な彼女がどれだけ脅威と認識しているかが窺える。

 

 次いで答えたのは問いを投げかけた雪花自身。

 その視線は川神百代を射抜いて離さない。

 

「私は武神、お前だ」

 

「ほう、この私に挑むか。清楚ちゃんに激似の綺麗な姉ちゃんと喜びたいところだが、お前にはノルンとの関係を問いただしておきたかった」

 

 何やら違った意味で視線から火花が飛び散っているのが幻視出来る。

 モモの言葉に雪花にフフン、と鼻で笑い彼女に負けず劣らずの豊満な胸を張り、自慢げにしている。

 

「彼との関係なら単純明快、私と彼はお互いを愛し合った伴侶の仲さ。小娘」

 

「なん――はん、りょ!?」

 

 何故か狼狽を見せるモモ。

 その表情に更に挑発的に見つめ、こちらに近付き――――

 

「ン――――」

 

「んむ……」

 

「……(口をパクパク)」

 

 唇合わせる。

 それに留まらず舌を入れて啜り合う。艶めかしい淫らな音色が響く。

 

「あむッ……ちゅろ、ちるちる…ちゅっ、じゅるる…ん、じゅ、んンッ」

 

「ン……ちゅるちる…っぷは――」

 

 たっぷりと堪能し、離した唇からは銀の橋が名残惜しそうに繋がっており、瞬く間に切れる。

 舌舐めずりをした雪花はモモに向き直り、言葉を紡ぐ。

 

「ノルンは私のモノだ、己の心も定かでない小娘が勝手に粉を掛けないで貰おうか?」

 

「クッ……だ、誰がッ!!」

 

 ギリギリと歯ぎしりをしながら雪花を睨むモモ。

 鬼の形相も斯くやな顔は真っ赤なまま。怒りか、はたまた別の感情が原因かは定かではないが。

 

 横で顔を赤らめながらシキがヤレヤレ、と(かぶり)を振る。

 

「ま、全く姉さまも独占欲の強い……それは兎も角我は釈迦堂とやらを頂きましょう。この中では売約済みの者達に次いで強者と見ました」

 

「ハッ――――いいぜ、お嬢ちゃん。相手になってやらぁ」

 

 話題を強引に引き戻し、シキは釈迦堂を見据え、対する釈迦堂は獣染みた笑いと目つきで答える。

 お互い、武芸者として好戦的な部類、何か波長でも合ったのだろう。侮る様な真似をしない。

 シキは目線を鍋島にも向けた。

 

「そちらも共に参られよ」

 

「ほう、俺とこの男……2対1で戦うと? 舐め過ぎじゃないか?」

 

 怒気を込めて睨む鍋島。仁王と呼ばれた男の怒気を涼しい表情で否、と答えるシキ。

 どの道数が合わない以上は誰かが2人で挑まねばならないと言う。

 仁王と呼ばれたその異名に恥じない闘氣を更に醸し出す。

 

「言うな、嬢ちゃん。それだけ吠えたなら是非とも闘って貰おうじゃないか」

 

「無論です」

 

 次いで口を開いたのは珠百合。視線はルー師範代に向いている。

 何処までも無感情、無表情な瞳に射抜かれても師範代は動じない。

 

「川神院が師範代、私がお相手仕る」

 

「……いいだろウ。君たちが油断ならない相手だということハ、さっきまでの振る舞いが物語っているからネ。こちらも本気でいくヨ」

 

 言葉少なに闘氣を高めるルー師範代。静かに睨み合う。

 

 その様子をやはり微笑みながら見ていたディズィーは必然最後に残った揚羽に視線を向ける。

 向けられた揚羽も状況を察して同じ様に目を向けた。

 

「我の相手は必然、お前か」

 

「はい。貴女の相手はディズィーが務めます」

 

「……」

 

 揚羽はそれ以上語る事無くディズィーを睨み、そしてチラリ、とこちらに視線を向けるも直ぐに戻す。

 其処に思う所があるが、頭の片隅に捨て置いた。

 少なくとも、今はその時ではない。

 

 一通り話が纏まった所で雪花がポツリ、と呟く。

 

 ――――さぁ、始めようか。

 

 それを合図に方々に散る面々。

 後に残されたのは己と佐々木のみ。後ろにいる彼女は興味深そうにこちらを見つめ、どうするか、と問うてきた。

 

「万が一にも邪魔が入らぬ様に仕置き人衆が倒されてから死合うとしよう」

 

「へぇー、彼女たち伴侶とやらの勝利を疑って無いんだね」

 

 意外そうに語る佐々木に首肯で返す。当然である、と。

 彼女達に、我が切り札たる伴侶達に負けなど無い――――

 こちらのそんな声のない声を察したかのように佐々木はそれ以上言葉を発すること無く静観に徹した。

 

 

 

 

 

 

 ――――珠百合VSイー・ルー。

 

「バーストハリケーン!」

 

 師範代の持つ闘氣で繰り出される暴風。二桁単位で人を容易に吹き飛ばす威力を誇る技。

 しかし、向けられた珠百合は涼しい顔でそれを受け止める。

 何事も無いかのように。

 彼には知る由もないが、珠百合には持ち前の宝具 "疾風迅雷"は絶対なる風と雷の加護の元、己を雷化させ、風を操るだけでなく風と雷に類するものの干渉を受け付けない。

 

「!? ならば、ロケットクロー!」

 

 今度は氣で作られた拳の弾丸。

 珠百合は眼前に迫ったそれを掻き消える様に躱した。

 種も仕掛けも無い師範代すら視認の難しい程の高速移動。

 

 反射的に身を翻す師範代。身体から血飛沫が奔る。

 

「クッ、やるネ……!」

 

「……」

 

 ただ速く動き、素早く攻撃する。

 単純、だからこそ突き詰めれば強力無比なモノと化す。

 

 繰り返される攻防。

 拳を躱し、爪をいなし、蹴りを避け、爪が掠る。

 戦況は珠百合が推していた。風を支配下に置き、己を後押しさせた速度はルー師範代をジワリ、ジワリと削っていく。

 1合交えるごとに彼の身体には幾つもの擦過傷と切り傷が増えていく。

 

 誰よりも彼自身が己の不利を悟っている。

 このままでは何れ致命的な所まで追いつめられるだろう。

 だがしかし、彼も伊達に無敗と謳われる川神流の師範代ではない。

 

 直感の赴くままに何もない空間に手を伸ばし、掴むかのように指を動かす。

 ガシッ、と確かな手ごたえ。

 

「!?」

 

「ワタシを、舐めるナぁ!!」

 

 捉えた珠百合を拘束し、莫大な闘氣を放出する。

 

「ストリウムファイヤー!」

 

 炎熱に変換しての放射攻撃。一瞬の元に呑みこまれ爆散した。

 爆煙に包まれながらその場を脱するルー師範代。

 零距離だけあって唯では済まず、呼吸は乱れ、身体はボロボロ、それでも煙の中心を見据える。

 

「やったカ……」

 

 確かな手応えと勝利を確信して。

 

 

 ――――それが浅はかな事とは知らず。

 

 

「……見事」

 

「!?」

 

 まさか、と驚愕するルー師範代。

 煙は晴れ、その中心には一切傷を負っていない珠百合の姿。

 

「古来より、炎と雷は密接な関係にある。それは雷に打たれた木々が燃える様や、気体から生じるプラズマと呼ばれる現象が炎を象徴するが故に」

 

 気体を構成する分子が部分的に、或いは完全に分離し、発生する物質の第4形態であり、古来から炎はこれに属するもの。

 地球上で言えば、雷もまたプラズマの一種。

 故に、珠百合の宝具"疾風迅雷"の効果にある風と雷に類するものの影響受けない効果は、質量の無いモノに限り火に属するモノすら受け付けない。これらは実は無意識で害あるものとそうでないものを区別しており、ストリウムファイヤーは紛う事無く敵意であったために珠百合への干渉を許さなかったのだ。

 爆発による衝撃波も風に類ずるモノであり、敵意あるとみなされ効果を為していない。

 

「貴殿を侮っていた覚えはないが、ここからは全力で倒す」

 

 言葉と共に黒い靄に包まれ、瞬く間に珠百合の身体は黒い獣と化す。

 豹に近しい姿だが既存の動物の大きさを逸脱した巨体、立ち上る禍々しい妖気と気迫はただしく魔獣と呼ぶのが相応しい。

 更に黒い身体が、放電する音と共に蒼白く染まる。散々とモニターで見ていた彼女の状態。

 

 ――――瞬間、閃光が奔る。

 

「――――ガァッ、あ……!?」

 

 咄嗟に防御の姿勢を取ろうとしたのは格闘家として鍛え上げた経験によるものか。

 それでも雷の速度の前に、耐えきれず崩れ落ちるルー師範代。

 

 彼の背後には静かに佇む珠百合。

 完全に倒れ伏し、起き上がらない事を確認して、身体を人型へ戻す。

 倒れはしたが彼の傷は重症ではあるが致命傷では無い。

 

「……」

 

 無言で一礼をして霞の如く消えていった。

 

 

 

 

 

 ――――ディズィーVS九鬼揚羽。

 

「九鬼家決戦奥義――――」

 

 音速領域の高速移動。即座に目の前に現れ

 

「――――古龍昇天破!」

 

 叩きこまれる剛拳と氣による衝撃波の二重攻撃。

 だがしかし、見えない壁に阻まれ防がれる。

 思わず舌打ちせずにはいられない程の鉄壁の防御力。仕事に集中して一線を引いているとはいえ、マスタークラスたるものの一撃をこうも涼し気に防がれるのは精神的にクるものを禁じ得ない。

 

 ディズィーの周りに停滞していたアメジスト体が光りを帯び、無数の光弾を放つ。

 

「チィッ……!」

 

 即座に離脱し紙一重で光の雨を避け、時には叩き落としてていく。

 外れたり逸らされたりした光は地表に着弾し爆発を生みだす。

 

 一向に攻め入る隙が見いだせないまま揚羽は傷を増やしていった。

 忌々しげに中空に浮かぶディスィーを睨みつける。

 対して睨まれた側は笑って受け流す。

 

「氣に限りのある貴女ではディズィーには勝てません。大人しくして頂く事をディズィーは勧めます」

 

「断る! まだまだ我は戦えるぞ!!」

 

 吠える揚羽にディズィーは内心頭を抱えていた。自分が今言った通り、ディズィーと九鬼揚羽では限りが氣、もしくは魔力量には限りがある。

 人間にして莫大な氣の大きさは眼を見張るものがあるが、それでも使えば減るモノ。

 対してディズィーの本体にある炉心は、魔術協会があった世界において分間に供給されるその量は地上全ての魔術師が100年間全開に使って有り余るほどの量を供給されている。

 八卦炉を基礎に汲み上げた半永久機関にして、パスを繋ぐノルンの魔力で起動する動力。

 その差は歴然である。

 

「我にはまだあやつに用がある、ここでてこずってはおれんのだ!」

 

「……」

 

 気持ちは痛いほど分かる。

 ディズィー自身も同じ立場なら同じ事をしている自信があるから。

 ソレは即ち、九鬼揚羽にとってノルンという存在はそれだけ掛け替えのない存在だという事に他ならない。

 資格云々と彼は言っていたが話す位はと思わなくは無かった。第一、九鬼とは縁を切ったから、九鬼の内情を語るのはご法度というのも、その時取った手段が手段であるため、筋が通ってはいるが何か違う気がするというのが正直な気持ちである。

 

(さてはて、この後どう転ぶのでしょうか)

 

 事態が差し迫っていたとはいえ、らしくない行動ではある。

 だからといって、じゃあここで譲るかといえばソレはあり得ない。彼女の心情は大いに同意できるが、何時如何なる時であってもノルンが自分達の味方であるように、己もまた彼の味方であり続けるのだ。

 この程度で揺らぐ絆では無く、故に彼女は目の前の敵を撃つ。

 

(今は倒す事に専念しましょう)

 

「――――主砲を除く全砲門、開け」

 

「な――――」

 

 言葉と共に続々と現れる宝玉の様なアメジストの結晶体。

 その数は先程まで30程度だった数に対して実に16000にも及ぶ、文字通り無数の宝石が空を覆う。

 宝玉の全てが星々の如く煌めき出す。

 

「――――発射」

 

 流星群の如く降り注ぎ、回避や防御で対処するも濁流に呑まれるが如く、呆気なく撃破された。

 地表は粉々だが、揚羽自身には目立った怪我は無い。

 

<<お館さま、どうあっても彼女は是が非でもお館さまに追い縋りしょう。覚悟された方が良いですよ>>

 

<<あぁ、分かっておるさ>>

 

 ――――己の振る舞いが誠実さに欠けるのも。

 

 口には出さないがそう言っているようにディズィーは感じてしまった。

 倒れる揚羽をディズィーはもう一度見据え、ノルンの元に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 ――――シキVS釈迦堂&鍋島。

 

「いけよっ、リングゥ!!」

 

「おらっ!!」

 

 氣弾と拳の十字砲火。マスタークラスに恥じない残像すら霞む速度。

 向けられたシキは事も無げに拳を掌で受け止める。

 そして迫るくる環状の氣弾に対しては――――

 

「こいつ、俺のリングをッ!?」

 

 

 ――――事も無げに手に持った槍で払われる。

 

 

 釈迦堂や鍋島には知りようがない事だがそれこそがシキの持つ朱槍『絶対戦勝の朱戈(殺剋(サイカ))』の宝具の能力の1つ。

 "打ち合った相手に必ず克つ"という相克の概念を持って作り上げられた概念武装(原典宝具)

 紆余曲折の末シキと共に逸話を築いた槍は同ランク以下の宝具の効果を刃に充てるだけで"打ち克ち"無力化するにまで到ったのだ。

 加えてこの槍が紡いだ歴史には魔槍としての特性もあり、ノルンや雪花達から手厚く練磨された直伝武術と槍を以って数多の難敵、強敵を打ち克ってきたが故に付いたもの。

 ありし世界にては闘神姫(とうしんき)の異名と共に無敗の武芸者として名を馳せる事になったが其処は割愛。

 魔槍足るの由縁、それは――――

 

「もっかい、いけよリン――」

 

(きざ)め、殺剋(サイカ)

 

 呟きと同時に銀月の刃は鮮血の彩色に染められる。

 再び無造作に振るわれる朱槍は真紅の軌跡と共に釈迦堂の腕に纏まっていた氣が忽然とその勢いを無くす。困惑する釈迦堂。

 

 これこそが絶対戦勝の朱戈の魔槍としての能力。

 攻撃対象に向かって振る事で発動し、距離や物理防御関係なく、対象の実体の有無に関わらず斬撃を呪詛として相手を必ず両断する宝具。

 この刀で肉体を傷付けられれば呪詛によって再生が阻害され、槍が同次元にあるうちは絶対に直せない傷を刻む。唯一効果を半減する方法はAランクの対魔力を以って呪詛を弾く事のみ。

 最もシキ自身は安易に致命傷を与えられるこの魔槍としての能力で身体を傷付けれる心算はない。

 元々、この槍は前述通りに作られており、魔槍としての特性はもってはいなかった。

 ならばどんな偉業を成せばこんな能力が生じるのかといえば、偏に兄であるノルンの闇夜剣、ひいては参の太刀 逆月の打点と力点を完全制御する武芸が何時の間にか槍と共に伝来したが為にこんな能力が付加されたのだ。

 間合いを問わずに攻撃できる逆月の太刀筋は、元々振るわれる武器に準ずる。

 ただの拳や武器ならばその武器を。

 宝具や概念武装ならば、その特性すら打点と力点に反映するのがこの技術のある意味1つの特徴と言えよう。しかし、少し考えれば分かる様にこれもある種当然の事で、どれだけ破格だろうと所詮は技術であり魔術では無い。

 故に無敗の武芸者として名を馳せたシキの逸話の中に何時の間にか彼女の体術と槍としての能力がごちゃまぜになった結果だ。

 ちなみに余談だが、どちらの能力も常時発動型であり真名開放は特にない。

 

 戸惑っている釈迦堂を尻目に手の中の身の丈を超す槍を手の延長の如くグルリ、と回転させ持ち前の怪力で掴んだ拳を手繰り寄せ、腹目掛けて石突きを叩きこむ。

 鍋島はこれを腕で防ごうとするも――――

 

「グッ――――ハァ!?」

 

 防御に回した腕ごと肋骨を一撃で砕き、握ったままの腕を思いっきり振り上げ、鍋島の巨体を持ち上げる。半分とはいえ鬼の怪力を舐めてはいけない。

 然もあらん。

 

 頭上に上がったところで大地に思いっきり叩きつけた。

 蜘蛛の巣状に広がる地割れと共に1メートル近く陥没する地面。

 叩きつけられた鍋島は吐血して蹲る。意識は辛うじて保っているが全身各所の骨折や全身打撲、それまでに蓄積したダメージもあってとてもではないが立てそうにはない。

 

「チッ……に、仁王とまで呼ばれたこの俺が、こんなお嬢ちゃんに…」

 

「貴方は確かに強かったのでしょう、風格で察せます。然れどそれも以前の話。相手を見た目や氣のみで判断しておる様では未熟の証」

 

「は、返す言葉も……ねぇな…」

 

 吐血しながら意識を失う鍋島。

 流し目にそれを確認し、釈迦堂に視線を向けるシキ。顔には疲労が窺えず、汗一つかいて無い。

 そんな様子に釈迦堂は思わず笑みを深めてしまう。

 

「ハッハー、いいねぇ、やっぱ戦いは――――こうでなくっちゃなぁ!!」

 

 滾る闘氣は今までの比では無い。

 川神院を出て、技術を腐らせていた彼であったが、5分と経たない内に彼の肉体は戦いによって練磨され、急速に成長していた。

 それだけに、彼の前に立つ小学生で通る様な小さな少女は強敵なのだ。

 

 腰を低く落とし、次の瞬間にはシキの目の前に立つ。

 

「ッ……」

 

「おらよッ」

 

 振り下ろす手刀。

 事も無げに受け止める。

 しかし嵐の様な攻撃は止む事無く回し蹴りを放つもこれを跳び上がって躱し、更に円軌道をそのままに重心を制御してすくいあげる様な起動を描く下段からの蹴り。

 腕を離して離脱する。

 

「読んでたぜ! もっかい、行けよッ、リング!」

 

 軌道を読んで放たれる氣弾。

 だが、やはり手に持った槍で軽く払われる。どれだけ暴威的な氣の量であろうとも一瞬の内に速射するには一度の技に注がれる燃料()の量には限られている。

 絶対戦勝の朱戈の刃を打ち破るには至らない。

 

 苦々しく舌打ちする釈迦堂。

 氣を斬る事自体は彼は知っている。今回のことの中心である人物が似た様な事をやってのけているから。

 舌打ちした割には更に笑みを深める釈迦堂。好戦的で獣的、戦闘狂(バトルジャンキー)の顔だ。

 更に仕掛けようと再び腰を落とす。

 

 ――――目の前には既にシキが得物を振りかぶっていた。

 

「ちぃ!?」

 

 寸でのところで半身を捻って躱すが、その方向が分かっていたかの如く二之太刀が迫る。

 身長の低さ故に、軌跡が低いそれを映画よろしくブリッジで避けるものの、目の前には空を遮る影。

 背筋に奔る悪寒に従って腕で顔を防ぐ。

 

「ガフッ……!」

 

 下向きに来た回し蹴りで鍋島と同じ様に地面に沈む釈迦堂。

 しかし、交差した腕を強引に押し退けてシキの身体を吹き飛ばす。

 そこは予想しなかったのかそのまま吹き飛ばされ、対する釈迦堂はバク転の要領で体勢をなんとか戻した。腕をブラリと力無く下げ、息は絶え絶えで、苦しそうにしている。

 

「ぜぇー……はぁー……」

 

(氣で防御したってぇのに、腕をもって行きやがったクソッタレ! しかもこりゃ、アバラにも罅が入ってんな……)

 

 ズタボロだ、これ以上ないぐらいに。釈迦堂は思わず力無く笑ってしまう。

 訝し気に首を傾げるシキ。

 

「たっく、何やってんだかな……ハハッ、まぁ給金分は働かねぇ、とな……ゲホッ、割に合ってねぇけどよ」

 

 ――――給金アップして貰わねえとな。

 不敵に笑う彼に、シキも釣られて笑う。その顔の意味が何となく分かってしまったから。

 

「素直ではありませんね、我も似たようなものですが」

 

「アン?」

 

 今度は釈迦堂が訝しむも、何でも無いと首を横に振って返すシキ。

 

(いま見せた顔は戦闘狂のそれではない。アレはなにか大切なモノを思う顔)

 

 そこから先は言わぬが花だろう。

 いい歳をした強面のオッサンが、というのは傍から見てあまりよろしくない。色々と。

 第一、シキと釈迦堂とでは感情が異なる。

 彼の場合、秘した方が何となく似合っていると思うのだ。

 

 目の前にいる男は好戦的に笑い、ギラついた眼でこちらを睨んでくる。

 

「さぁ、続きと行こうぜ?」

 

「受けて立ちます」

 

 語るまでもなく其処からの勝負はあっさりとシキの勝利で終わり、負傷した2人に応急処置をしてその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 ――――酔花VS鉄心&ヒューム。

 

 この戦場はある意味で一番驚愕の光景が浮かんでいた。

 

「顕現の参、毘沙門天!」

 

 闘氣によって作られた神仏の再現。巨体の足が酔花に迫る。

 彼女は笑みを湛えたまま片腕を徐に上げていとも簡単に受け止めた。

 

「こんなもんかい?」

 

「こちらのセリフだ」

 

「お?」

 

 声と共に背後に目を向けてみると金髪執事が足を振り上げていた。

 

「ジェノサイドーッ――――」

 

 それは当てれば体力を10割削ると言われる彼の必殺技。

 

「チェーンソー!!」

 

 名剣の如く鋭い蹴りが酔花襲う。凄まじい勢いで飛ばされる酔花。

 しかし、空中で体勢を立て直し、危なげなく着地。首に手を当てながら首の関節を鳴らし不敵に笑う。

 

「アッハハハ、やっぱ見立て通りに強いねぇ。(アタシ)の身体に傷付けられるのは中々に無いよ。誇っていい」

 

 防御した腕を見てみると軽く赤くなっている以外にはそれらしい外傷が見あたらない。

 揃って顔を顰める2人。

 

「アレを喰らって無傷とはのう」

 

「フン、やはりあの女は赤子では済まされんようだな」

 

 次の瞬間、2人は酔花を既に挟みこむ。

 初手はヒュームから。

 閃光と見紛う蹴りを腕で防ぐ。どこまでも好戦的で、余裕の笑みを湛えたまま。

 動きの止まった酔花が背後から鉄心が仕掛ける。

 

「顕現の七、神須佐能袁命――」

 

 赤く浮かび上がる神人。厳つい顔で剣を構えたその姿は見るモノを圧倒する。

 

「――からの~八岐斬り!!」

 

 8回にも及ぶ神速の斬撃。速度においては毘沙門天にも劣らない疾風怒濤の連撃。

 それを―――

 

「ハハッ!」

 

「なっ……」

 

 振り向きもせずに初撃で受け止める。

 それをチャンスと見たのかヒュームは即座に鳩尾目掛けて渾身の蹴りを放つ。

 蹴撃は見事に身体を貫き、蹴りの威力が全体に入る。

 一切相手を動かさず全てのダメージが身体に伝わる一撃。

 耐えられる筈の無いそれを受けた酔花は、やはり肉食的笑顔を絶やさずにヒュームの方をみる。

 

「終わりかい?」

 

「ッ!」

 

 手に持った神人の剣をあろうことか握力だけで砕く。

 全身余すとこ無く氣で作られているためか、剣が砕かれると共に氣の配分バランスが崩れ、身体も崩壊していく須佐能袁命。

 しかし、それだけが彼の技では無い。川神院総代の名は伊達では無いのだ。

 狙いを悟ったヒュームはタイミングを合わせて離脱。酔花は鉄心の方を向く。

 

「川神流――――無双正拳突きぃッ!」

 

 百代に劣らない剛拳の一撃は、またしても鳩尾に入った。

 流石にこれならば、と思う鉄心。

 

「その程度の攻撃ならやめときな」

 

「!?」

 

 しかし、その期待もあっさり裏切られるのだった。

 先程とは異なり、詰まらなそうな顔をする酔花。

 

「中途半端な攻撃()は――――」

 

「グアああぁぁぁーーーーッ!?」

 

「お呼びじゃないんだよッ」

 

 殴り飛ばされる鉄心。傍から見たらジャブ程度の拳だった。しかし、酔花の宝具 鬼神武闘はあらゆる打撃系の攻撃は問答無用でAランク相当の威力となり、更にステータスの耐久値がB以下にはダメージが3倍という鬼畜仕様。ちなみにAランク未満の宝具を打撃で破壊する能力もあるがこの場では完全に余談だ。

 到底高くないと思える見た目に反して、凄まじい威力を誇る。

 酔花はフン、と鼻で一蹴。

 

「安心しな、キッチリ肋一本に留めておいたよ、臓器にも到って無い筈だ。まだ戦えるだろう?」

 

「ゲフッ、ゲフッ、無論じゃよ。川神流、瞬間回復」

 

 闘氣に包まれた身体が淡く光ると疲労すらも回復した鉄心が其処にいた。

 ニヤリ、と酔花の笑みが鋭く深まる。視線はヒュームの方にも。

 

「そっちの執事もいけるかい?」

 

「フン、舐めるなよ、女ッ」

 

 やる気十分な2人の反応に酔花は笑う、実に満足そうに。

 しかし、どれだけ闘う気概を見せようとも消費した氣までは戻ってはこない。正直にいえば必殺技を全力であと一回といった所だろう。

 だからこそ、次の一撃で決める腹積もりである。

 ヒュームは高速移動で鉄心の隣に立ち、気を高め、同じく鉄心もまた今までで最高出力の気の放出。

 2人の意思をくみ取った酔花が初めて構えをとった。

 

 張り詰める緊張感、高まる闘氣、最高潮にまで達したその時、状況は動く。

 初手はヒューム。足に気が凝縮しており、その濃度は既に光で足が見えないほどだ。

 

「破アアアァァァァァーーーーッ!!」

 

「雄雄らあぁッ!!!」

 

 ジェノサイドチェーンソーと拳のぶつかり合い。それは拮抗する事無く酔花の拳に軍配が上がる。

 轟音と共に吹き飛ばされるヒューム。

 しかし、その直後の隙を逃す鉄心では無い。

 

「顕現の壱、不動明王ッ!」

 

 それは日本における仏教の最高仏神である大日如来の化身でありその教えを知らしめるモノであり、仏罰を犯したモノを矯正する五大明王の中心仏の再現。

 金色の身体に背には迦楼羅炎、右手には魔と煩悩を断つ三鈷剣、左手には悪意を縛り上げる縄、羂索を持つその姿は不動明王であった。

 

 勢いよく振り下ろされる剣。

 氣の密度からして、他のモノとは比べ物にならない威力を誇っているのは明白。

 しかし酔花は――――

 

「……面白い!」

 

 これ以上に無い程にいい笑みで剣に対し、真っ向から拳をぶつけるのだった。

 拮抗する力と力。閃光が迸り、辺りが眩しく輝く。

 

 終わりが見えない様な光景は、やがて呆気なく終わり告げる。

 

 

 

 ――――不動明王が砕かれる音と共に。

 

 

 

 一気に氣を放出しすぎて意識を失った鉄心。

 離れた所には同じ様に倒れたヒュームが見えた。

 

「……鬼の頭がお前達の武に敬意を表するぞ。見事だった、武士(もののふ)よ」

 

 称賛と共に鬼火が2人を包み込み、炎が収まった時には2人とも無傷の状態であった。

 誰が想像しただろう、川神院総代と九鬼の切り札がよもや1人の女に負けるなどと。

 

 

 

 

 

 ――――雪花VS百代。

 

「こぉのおぉ! 川神流無双正拳突きぃーーッ!」

 

「攻めが雑すぎやしないか?」

 

 ヒョイ、という具合にその剛拳を躱す雪花。

 先程からこんなやり取りが続いている。文面だけを見るなら宛ら駄々をこねる子供と、それをあしらうお姉さん。

 だがしかし、マスタークラスの中でもトップクラスである百代とそれを軽くあしらう雪花。

 これだけでも必然、レベルの高さが窺えると言うモノ。

 何せ傍からは残像すらも捉えられるか怪しい領域に踏み込んでいる。

 

 弧月効果付きの剛拳の連撃を払う雪花。

 それに向きになって更に攻撃が雑になっていく百代。

 完全に空気が弛緩してしまっている。今迄のシリアスは何処行った。

 

「だったらッ!」

 

 瞬間的に目の前まで移動し、百代が放つ至近距離からの無双正拳突き。

 だが雪花は冷静に出掛かりを正確に予測。

 突き出すタイミングを見計らい、顔の横を通過する腕。伸びきったそれを掴んで即座に投げ飛ばす。

 投げられるも苦も無く着地する百代。

 

「あぁ~……何なんだよ!」

 

「それはこちらの台詞だよ。何がしたいのだ、お前は」

 

「知るか! 自分でも分からないんだ! ただ、あのキスシーンは不快だった」

 

「だから?」

 

「お前を一発殴るッ!!」

 

「なんだいそれは!?」

 

 猛追してくる百代の駄々っ子な攻撃、だがしかし、其処はそれ腐っても武神であるからして。

 繰り出される攻撃は本当に必殺足り得る威力を誇る。

 雪花は呆れ顔で連撃を捌きながら、不意に踏み込んだ百代の足を払う。

 一瞬とはいえ体勢を崩した彼女の頭を掴み、地面にたたきつける。見た目に反して怪力を誇る一撃は地面を陥没させた。

 

 雪花の心情は、正直に言えば――――

 

(どうしてこうなった?)

 

 ――――である。

 

 最初はある程度力差を見せつけるだけでよかったのだ。

 それがふたを開けたら何故か一方的な八つ当たりにあっている。

 本当に、どうしてこうなった。

 

「川神流、瞬間回復!」

 

 淡い光が全身を包み、傷や体力を回復させていく。

 彼女が名実ともに武神として名乗っているのも、瞬時に完全に身体を回復させるこの技を一戦に付き30回以上使用できるという点が大きい。

 絶大な効果故に以前は3回使えば氣が底を付いていたが、今では10倍以上使えるというのだから恐れ入る。

 

(この技だけは厄介極まる。大体因果干渉でも無いというのに被術者の掛る負担が考慮されないとはどういう了見なのだろうか)

 

 尤も、彼女にとって同じくらいに厄介なのは今の彼女の心情。

 正妻――――というのが最も近しい表現という意味だ、受肉化してるとはいえ真っ当ではないので戸籍が無い――――として、少しだけ色ごとでも武力でも立場を示せれば良かったのだ。

 だというのに、肝心の百代はノルンに対する感情が定まって無いと来た。

 ある意味でこれは雪花にとって予想外のこと。

 

(てっきり色の方に傾いているかともえばそうでもない、しかし完全にそういう方向が無い訳でもなし)

 

 どうしたものか、というのが現状の雪花の心。

 頭を掴んでいる手を必死に剥がそうとしている彼女を見て思わず嘆息した彼女は悪くない。

 

 このまま気付かせず、曖昧に終わらせる、という選択肢は無論あるし、その方が合理的だ。人情的に。

 しかし、それはアンフェアである。別段正々堂々を旨にしている訳ではない。

 

(ここでのアンフェアな振る舞いは、己が彼にとって一番だ、と矜持の元に自負している心を己で揺るがせる行為……それは断じて見過ごせない)

 

 己こそがノルンの正妻的存在である――――その誇りが彼女を駆り立てる。

 もう一度嘆息をつき、仕様が無いと手を腰の刀に伸ばし、抜かずに(・・・・)名を唱えた。

 

輝ける不屈の戍(明鏡止水)

 

 真名の開放。

 それは、宝具という物質化した奇跡を駆動させる言霊。

 鞘が光の粒子となり、衣の如く、或いは鎧の如く雪花の身体を蓋う。

 刀身は三尺余りの打刀は真名開放すると共に魔力炉心を兼ねた鞘が光の粒子の衣となってAランク以下の攻撃を無力化する。ちなみに鞘自体にも不死を齎す効果あり。

 加えて刀身は魔力を光に変換、集束、加速させて刀身自体に光の断層を作り上げる事が可能なだが、今の刀は光を発していないところを見るとそちらは使用する気が無いらしい。

 纏い終えると共に手を離した。

 

「なんだ、その光は? まぁ、いいさ。今はお前を殴るだけだッ!!」

 

 再び無双正拳突き。渾身で放たれる剛撃は、光の粒子に容易く阻まれる。

 驚愕を露わにして更に殴り続けるも、ビクともしない。

 ならば、と手段を変えてくる百代。

 

「川神流、星殺しーーー!」

 

 圧縮された氣による波動。だが、これも敢え無く弾かれる。

 続けて、と色々試してみるが全くの無傷に終わった。一部の技はこの状態の守りを抜き得るモノがあったが、乱れた精神による制御の雑さが目立ち、結果として無効化されたのだ。

 一度に大量に消費して息が少し上がった百代。

 

「ハァ、ハァ、ハァ……」

 

「気は済んだか? ならばいい加減話を聞けというのだよ」

 

「話、だと?」

 

 疑問符を浮かべる彼女に首肯で答えた雪花。

 

 話というのは単純明快な禅問答――――何故接吻一つで怒っているのか。

 

「それが分からんと言っているだろう!?」

 

 ――――では、これが例えば仮にノルン以外の異性の友人なら激昂したのか。

 

「……無いな。アレ、なんでだ?」

 

 ――――今真っ先に浮かべたノルン以外の異性達は己にとってどんな存在なのか。

 

「どんなって、友達だよ。後、弟が1人」

 

 ――――では、己にとってノルンとはどんな存在なのか。

 

「一番最初の幼馴染、初めて自分を負かしてくれた人間、今は相棒。そして……そ、して…? なんだろうな、言葉が出てこない」

 

 ――――仮に、己が先程私が為した事と同じ事を自分に置き換えて想像してみろ。

 

「お前と同じって……キス、か――――ぁ」

 

 途端に顔を赤くして首を振る。

 だがしかし、なかなか消えてくれないのか何度も何度も首を横に振っている。

 

(あぁ……分かってはいたが腹の立つ)

 

 内心の怒りを押し殺して再度4番目の問いを投げかけた。

 

「私にとっての……ノルン…」

 

 顔を赤らめたまま、やはり百代は分からない、と答えるのだった。

 もう一度嘆息を吐く。

 これ以上は続けまい、と即座に考える。雪花にとってこれ以上は茶番だ。

 今ので尚分からないなら最早このやり取りに意味は無い。

 

(これ以上の義理立てをする道理はない)

 

「そこから先は自分で考える事だよ、小娘」

 

「オイオイ、一方的に投げかけておいて、それはないだろう!」

 

「知った事では無いな。そこから先は君の領分、私が与り知るところではない」

 

 ――――眠れ。

 

 そう命じた途端に急速に意識を失い、文字通り眠りに着く百代。

 言霊の原典である統一言語から派生させた自己流魔術であり、言葉に含まれるニュアンスだけで事象を起こす神秘だ。

 

「ヤレヤレ、世話の焼けること」

 

 複雑そうにその場で眠る百代を一瞥し、霊体化して去るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これで、仕置き人衆は全員己の伴侶達が制した。

 自慢げに顔がつい、綻んでしまいそうなる。

 

<<みな、お疲れ様>>

 

 念話で労いの言葉を掛けると一番に反応したのは今日一番の大金星である酔花。

 

<<いやー、楽しかったねぇ>>

 

 思いっきり戦えたからか晴々とスッキリした雰囲気がこちらに伝わってくる。

 次いで答えたのはシキ。

 

<<我もそれなりに愉快なひと時でした>>

 

 こちらもそれなりに満足出来た様で、声が僅かに弾んで楽しそうだ。

 2人に対して疲れた声を上げるのは雪花。

 

<<本当にお疲れ様だよ、あの小娘にも困ったモノだ>>

 

<<ゆるりと休んでくれ>>

 

 あぁ、という返事が返ってきた。やはり活気は薄い。

 一体何をやらかしたのやら。

 3人に対して変わらずに報告してきたのは珠百合とディズィーの2人。

 

<<珠百合、こちらは滞りなく>>

 

<<ディズィーも同じくです、お館さま>>

 

<<うむ、改めてみな御苦労さまだった。雪花にも申したがゆるりと休んで欲しい>>

 

 労いの言葉と共に念話を切り、佐々木の方へ向きあう。

 其処には一定の状態から表情を変えなかった彼女らしからぬ――――と言える程の付き合いは無いが――――少し唖然とした顔。

 

「驚いたな、あの布陣に完勝するなんて大したものだ」

 

 掛け値なしの称賛。

 敵であろうと愛する者達への高評価には、やはり我がことの様に歓喜が溢れてきてしまう。

 

「で、あろう? アレこそが我が愛しの伴侶達だ」

 

「クフフ、本当に愛しているんだねぇ。表情が活き活きしている。少し彼女達が妬けちゃうよ」

 

「呵々、そんな柄でもあるまいに」

 

 失敬な、と返して笑い合う。そこには戦いの雰囲気など嘘の様に一切無かった。

 だが、それも次の瞬間一変してしまう。

 

「さて、余興は十二分に楽しめたよ。そろそろ――――」

 

 ――――始めようか。

 見慣れた猟喜的な笑みと共に佐々木は得物を抜く。

 

「あぁ、ここが我等の大一番」

 

 呼応するように蔵から一振りの野太刀を取り出す。反りは浅く、白い水晶の様な半透明の刀身、唾は無い刀身以外は割と典型的な形状だ。

 これを見た佐々木がモノ珍しそうに声を上げる。

 

「半透明の刀身とは珍しいね、とても綺麗だ」

 

「見た目に惑わさるる無かれ、正真正銘私の愛刀だ」

 

「クフフ、まさに本気という訳か、楽しみだなぁ」

 

 場にそぐわない恍惚とした表情。今にも己の得物に頬ずりでもしそうな勢いだ。

 改めて向きあう己と佐々木。

 

 

「さぁ、始めようじゃないか。KOSという茶番では為し得ない本物の殺し合い(戦い)を、さッ!」

 

「私は、これも1つの形と思うが、なッ!」

 

 二つの刃が煌めき交わる。

 KOSは終わりを迎えようとしていた。

 

 




相変わらずやりすぎた感は否めないですが、悔いも後悔もない。

むしろたりn(ry
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